立花ヤマトが倒れた。
この話は緘口令が敷かれ、外へ漏れないようにされた。その中で一部の駆逐艦、叢雲と吹雪、川内が呼び出される。
「ごめんなさいね。緊急事態だから信頼できる者を呼ばせてもらったわ」
「へー、陸奥さん達にとって私達は信頼できる人なんだ」
「あまりふざけた態度をとらないことね。あくまで信頼に足りるということだけよ。私はまだあなた方を信頼したわけじゃない」
大井がいつでも攻撃できると暗に脅す。
吹雪がおずおずと訊ねる。
「あの、立花さんが倒れたって」
「そうね。倒れたわ、でも異常なのよ」
「異常?」
首を傾げる川内へ「見せたほうが早いわね」と陸奥が仕切っているレースをあける。
叢雲達は目を見開く。
立花ヤマトはそこにいた。
しかし、体の至る所から植物が生えていた。
「なに、これ?」
「わからない。医師にみせたら原因不明といわれた」
「さらにいえば、これ、外でも多発しているみたいなの」
陸奥が情報を叢雲達へみせる。
写真はヤマトと同じように体中から植物をはやした人間の映像。
「外で起こっていることなら…」
「ショッカーの仕業かな?」
川内の言葉に陸奥達は頷く。
「それで、私達は鎮守府の外へ調査に出ないといけない…そこで、貴方達にヤマトの護衛を頼みたいの」
「外に出るの!?」
「遊撃部隊の特権でね」
「あの、そもそも遊撃部隊というのは?」
「いい加減、説明しようかしら」
陸奥は遊撃部隊について説明を始めた。
遊撃部隊とは大本営から「ライセンス」を与えられた艦娘で構成されている。
本来なら鎮守府で生活することが義務付けられているのに対して「ライセンス」持ちの艦娘は外で行動することを許されていた。
「凄いなぁ」
「外で行動可能…確かにね」
川内が羨ましいと漏らす。
「それともう一つ」
陸奥が指を立てる。
「私達はショッカーをはじめとする敵対組織と戦うことを目的としているの」
既に陸奥と大井、時雨は何度も任務で怪人たちと戦った。
完全に倒すまでは至っていないが敵の計画阻止は成功している。
今回の騒動もショッカーの計画と陸奥達は睨んでいた。
だからこそ、情報を集める為に外へ出ようとしている。
「私達も!」
「ダメです」
「何でよ…」
「外へ出ることが許されるのは提督の…人間の許可が必要よ。それにこの隙を狙って敵が攻めてこないとも限らない。動ける貴方達がここを守るしかない」
陸奥の言葉に叢雲は目を見開く。
「僕達の大事な人なんだ。キミ達なら任せられると思った。だからお願い」
その時になって叢雲は理解した。
自分達なら彼を守ることができるだろうと三人は思っているのだ。
少し前の自分なら突っぱねていただろう。
こんな人間は信用できない、と。
しかし、彼女はみてきた。
立花ヤマトがどのような人物なのか。彼の姿を見てきたからこそ、叢雲は彼だけは信じてみようと思う。
だから、
「やろう。叢雲ちゃん」
「吹雪…」
「ま、信頼されているならやってもいんじゃないかな?」
「川内、さん」
しばらく考えてから叢雲は。
「任せなさい。私達が守って見せるわ!」
叢雲の答えに彼女達は満足して鎮守府を出る。
ヤマトのいる鎮守府で騒ぎが起きていた頃、当然のことながら陸地は大混乱だった。
体から植物が生える事件。
マスコミは奇病の疑いと騒ぎ立て。
警察や医者は患者を一か所の病院へ集めていく。
この事態に政府はレベル4のウィルス研究施設を使用することを検討し始めていた。
その中で、大本営に所属する遊撃部隊の赤城はある人物と街中で調査をしている。
「気象庁の報道によると植物を体からはやした人はこの区域だけのようです」
「この区域だけ、なんで?」
首を傾げる男へ赤城は「そういえば」と声を漏らす。
先日、この地域で雨が降ったこと、被害者は全員、雨に打たれたことがあるという事実を話した。
「雨の中に、何かが紛れていた?」
「そう考えるのが妥当かもしれないわね…あら」
「どうしたの?赤城さん」
「えぇ、さっき艦娘ネットワークで通信が入ってね…陸奥さん達がこっちに合流するみたい。どうも、この騒動に巻き込まれたみたいなの」
「巻き込まれたって…あぁ、そういえば」
男は思い出す。
陸奥、時雨、大井の三人はブラック鎮守府となった施設で艦娘達のケアを行っていたはず。そこに同行している人間もいたはずだ。
「僕はまだ会ったことがないけれど、頼りになる人なんでしょ?」
「そうよ」
頬を赤らめていう赤城。それと、と真剣な表情で言う。
「どうも、怪しい情報を入手したみたいなの」
「久しぶり、赤城」
「お久しぶりです。陸奥さん、そちらの様子は?」
「奮闘しているわ…それよりも、そちらの方は」
「こちらは前に報告しました。私達の協力者で」
「はじめまして、南光太郎です」
灰色のジャケットにブルーのズボンをはいた青年。南光太郎が陸奥へ握手を求める。
彼女は微笑みながら握手をした。
時雨と大井はぺこりと頭を下げるのみ。
「それで、陸奥さん」
「慌てないで、これなんだけど」
陸奥はある写真を赤城へ見せる。
それをみた光太郎が目を見開く。
「ゴルゴムの怪人…」
「そう、ショッカーの改造人間にしてはやけに生々しかったからもしかしてと思ったら」
「これをどこで!?」
「この先の山岳らしいの。話だと光り輝く何かを持っていたという事よ」
「怪しい」
「そうだね。怪しい」
光太郎の言葉に時雨が同意する。
「調査に行きましょうか」
「はい」
光太郎はバイクへ、残りは陸奥が運転する車に乗り込む。
助手席に座った赤城は陸奥へ訊ねる。
「陸奥さん、ヤマトさんは?」
「元気、よ」
「そう、ですか…また無茶なことしていませんか?」
赤城の心配するような声に陸奥は苦笑する。
「な、なんです?」
「まるで旦那の帰りを心配している妻みたい、って思って」
「な、にゃにを!?」
顔を赤らめる赤城をみて、大井は面白くなさそうに鼻音を鳴らす、隣で時雨がなだめる。
一番、付き合いの長い赤城だからこそヤマトが無茶をしていることを見抜いている。だから心配しているのだ。
陸奥はそれを半ばからかう形で確認していた。
「この事件を解決しましょう。そうすれば負担は少し減るわ」
「そう、ですね」
赤城は微笑みながら外をみる。
ゴルゴムという暗黒結社がある。
それはショッカーよりも怪しさと謎に溢れ、ショッカーよりも長く世界を裏から操ってきた存在だった。
ゴルゴムの全貌はわからない。さらにいえば、ゴルゴムの上部、構成員のほとんどは人間ではない。
一説によると彼らは人類とは別の文明人であり何かが起こった際に地下へ逃げ込み、あとから現れた人類を陰から操っているとされる。
そんなゴルゴムの配下に属する兵士こそが改造怪人である。
古代人と生き物の遺伝子を合成して生み出された怪人たちはショッカーの改造人間と能力が大きく異なる。しかし、両者とも弱点が存在していた。
改造人間は拒絶反応防止のため輸血。
改造怪人はゴルゴメスの実を食すことだった。
ゴルゴメスの実。それは暗く冷たい世界に存在するゴルゴムで採取していた果実である。
改造怪人たちはこの実を食すことで空腹から逃れる。
しかし、ゴルゴムに属する改造怪人たちは長き眠りから次々と目覚めており空腹で飢えていた。故に大量のゴルゴメスの実が必要だった。
ゴルゴムに保管されている実で数が足りなかったことで幹部の三人、大神官達はゴルゴメスの実を集めるべくある計画を立てた。
それは――。
「計画は順調のようだな」
「雨によってカプセルで胞子をばらまき、人間にゴルゴメスの苗床となってもらう。中々に使える」
大神官ダロム。バラオム。ビジュムの三人は次の指示をコウモリ怪人とサボテン怪人へ出す。
「苗床にした人間を回収せよ!」
山へやってきた光太郎と艦娘達は警官が集まっていることに気付いた。
「何だろう?」
「訊いてくるよ」
光太郎は担架で運ばれていく人を見てから警官へ訊ねる。
「何かあったんですか?」
訊ねた警官の話によると男は登山に来ていたらしく、崖から誤って落ちたという事、かろうじて意識があったらしくしきりに「コウモリ、光る玉」と繰り返していたという。
「怪しいわね。コウモリ、光る玉」
「話を訊く限り、ここにゴルゴムがいるのは間違いないかもね」
時雨が頷く。
その横で陸奥が地面を見ていた。
「どうしました?陸奥さん」
光太郎が訊ねると陸奥は土を触っていた。
「この土、乾燥しているわ…木も枯れているものが多い」
「ここでゴルゴムが何かをしていると?」
「その疑いが強いわね…」
陸奥が呟いた時、地面からサボテン怪人が現れる。
とっさの事に艦娘の反応が遅れた。その中で光太郎がサボテン怪人へ殴りかかった。
二人は地面を転がっていく。
離れた光太郎は叫ぶ。
「ゴルゴム!何を企んでいる!」
サボテン怪人は胸部から無数の針を放つ。
ギリギリのところで躱す光太郎。
木々は刺さった針によってドロドロに溶けていく。
「!?」
「あれがゴルゴムの怪人」
「大変!すぐに彼を助けないと」
「大丈夫です」
動こうとした時雨と大井を赤城が止める。
「赤城さん!?」
「貴方何を言っているの!!」
「彼は…」
眩い光が周囲へ広がる。
目を隠した大井と時雨、しばらくして二人は言葉を失う。
サボテン怪人と対峙していた一人の男。彼の姿が変わっていた。
全身が黒い飛蝗のような外見をしており、腹部に銀色のベルト、中心が赤い。赤い複眼、黒い仮面は黄色と赤のラインが走っている。
「赤城さん、まさか、彼は」
黒い飛蝗は自らを名乗った。
「仮面ライダーBLACK!」
叫びと共に仮面ライダーBLACKが拳を放つ。
サボテン怪人は攻撃を受けてのけ反りながら胸部から溶解針を放つ。
躱しながら再度、拳で狙う。
「!?」
BLACKがくぐもった声を漏らす。
どうやらサボテンの針が刺さったようだ。
痛みを堪えるBLACKへ腕の針で襲い掛かろうとした時、赤城の艦載機がサボテン怪人を爆撃する。
攻撃を受けたサボテン怪人はごろごろと岩に体を打ち付けた。
そのまま穴へ潜り込む。
「しまった…逃げられた」
BLACKはサボテン怪人に逃げられたことに顔を歪める。
そこで時雨と大井、陸奥がやってくる。
その目は説明してくれと語っていた。
光太郎はうっかりみんなの前で変身してしまったことを思い出す。
南光太郎は改造人間である。
彼は日蝕の日に生まれた。その時から彼の運命は決まっていた。
誕生日を迎えた時、光太郎は誘拐された。
ゴルゴムに。
彼はゴルゴムの創生王の後継者たる世紀王ブラックサンとなるべく誘拐された。
脳を改造される直前に逃げ出した彼は育ての親を殺された際に仮面ライダーとして奴らと戦う決意をした。
「…」
話を訊いて陸奥は似ている、と思った。
ヤマトは世界侵略の先兵として、光太郎は世界を掌握する王として、理由に差異はあれど改造人間となった経緯がおそろしいほど酷似している。
もし、彼とヤマトが出会ったとき、どうなるのか。
そのことを想像して陸奥は体を抱きしめる。
「陸奥さん?」
「ううん、何でもないわ。それよりも急いでアイツを追いかけましょう」
陸奥の言葉に全員が頷く。
ゴルゴムの野望を阻止する。
それが大本営直轄遊撃部隊の役割だ。
ゴルゴムの大神官達はゴルゴメスの胞子を植え付けた人間を集め、紫外線を浴びせていた。
ゴルゴメスの実は地上の光を浴びて成長する。薄暗い闇のゴルゴムでは育たない。
もう一つ、紫外線を浴びせることでゴルゴメスの実が育つ。しかし、それは危険なことでもあった。
何故なら。
「ハラ…ヘッタ」
サボテン怪人が栽培されたゴルゴメスの実を味わう。
仮面ライダーと戦い、力を使ったことで彼は空腹になっていた。
元々、空腹だったことに加えての戦闘、食べなければ彼の身がもたない。
「貴様!盗み食いをするとは!」
そこを大神官バラオムに咎められた。
サボテン怪人はライダーが近づいていることを報告する。
「なに!?仮面ライダーだと…」
「可能な限りゴルゴメスの実を集めるのだ」
ダロムの指示で紫外線の威力を高める。
蔓で覆われている人間の体に次々とゴルゴメスの実が生えてきた。
栽培しようとした時、階段を下りてくる存在がいる。
「ゴルゴム!」
叫びと共に仮面ライダーBLACKが降りてきた。
「人の命を使って怪人の餌を作ろうとするなど、この俺が許さん!!」
拳を握りしめBLACKが叫ぶ。
「ここははわしとサボテン怪人が相手をする!その間にゴルゴメスの実を回収するのだ!」
「そうは」
「いきません!」
バラオムとビジュムがゴルゴメスの実を回収しようとした瞬間、壁を壊して時雨と大井が艤装で砲撃する。
二人は攻撃を躱す。しかし卓上に置かれていたゴルゴメスの実が炎上を始めた。
「しまった!」
「貴様らぁあああああ」
激昂したバラオムがショックビームを二人へ放つ。
二人はかろうじて躱す。標的を失った光線は人間へ紫外線を当てている機械へ直撃する。
BLACKがパンチを放つ。
しかし、攻撃を受ける前にダロムの念動力で弾き飛ばされてしまう。
追撃をかけるようにサボテン怪人が全身から蔓を放って仮面ライダーを外へ連れ出す。
ダロムも続いて外へ出る。
体の自由を奪われたBLACKは翻弄されていた。
ここで確実に仮面ライダーBLACKを倒そうとダロムは配下の怪人を呼び寄せようとする。
突如、ダロムへ緑の影が襲い掛かった。
慌てて躱す
「何者だ!?」
「…仮面ライダー」
「なんだと!?」
ダロムはもう一人の仮面ライダーの存在に目を見開く。
「馬鹿な、仮面ライダーがもう一人…そうか、貴様はショッカーが生み出した」
「なるほど、今回の企みはゴルゴムという組織の仕業か。だいたいわかった」
仮面ライダーは拳を構える。
赤い複眼が輝く。
ダロムからの援助がなくなりサボテン怪人はBLACKと陸奥、赤城の攻撃に翻弄される。
最初は自らの針で優位に立っていた。しかし、サボテンは水をやり過ぎてはいけないという事を思い出し、湖へ放り投げて体を柔らかくされたところで必殺技の「ライダーパンチ」と「ライダーキック」を受けて大爆発を起こした。
ゴルゴムはゴルゴメスの実が仮面ライダーによって回収できなかったことから復活させた怪人たちの三分の二以上を再び深い眠りにつかせ、ゴルゴムが有するゴルゴメスの実の熟す時を待つこととなった。
「おのれぇ、仮面ライダー…絶対に許さんぞ」
ダロムは激しい怒りを仮面ライダーBLACKへ燃やす。
それと同時にある疑問が頭に浮かんだ。
もう一人の仮面ライダー。
「(あれは我々が生み出した技術ではない…考えられるのはショッカーという秘密結社だ…だが、あいつらの出来損ないが。あそこまでできるわけがあるまい…いい加減、あの組織を潰すことも検討せねば)」
ゴルゴムの中で秘密結社ショッカー掃討の計画が練られた。
サボテン怪人を倒した仮面ライダーBLACK。
その彼の前に現れた仮面ライダー。
「キミは…」
BLACKは歴戦の風格を放つ仮面ライダーへ声をかける。
仮面ライダーは問いに応えず愛機サイクロンに跨って去っていく。
残された仮面ライダーBLACKはただ、彼の背中を見ているだけだった。
この出会いが新たなる騒動を生み出すことになるのはそう遠くないことの話。