あと、少しアンケートを入れますので、活動報告の方で意見お願いします。
「何じゃこりゃ?」
立花ヤマトは執務室で山積みになっているものをみて驚きの声を漏らす。
目の前に置かれているのは大量の手紙。
しかも、全てがこの鎮守府提督宛となっていた。
叢雲はどこかげんなりした表情で山を見ている。
「どうもこうもないわよ。ここの所うちに演習申し込みの手紙とその他、抗議よ」
「抗議?」
ヤマトは一枚を手に取る。
そこには「たるんでいる」という言葉から「何故、もっと進軍しない!」という文句が山のように書かれていた。
「うん」
一通り目を通したヤマトは用紙を全て暖炉へ放り投げる。
「大井、燃やせ」
「了解です!」
どこからか現れた大井が火炎放射器で暖炉に放り込まれた手紙を燃やし始める。
呆然としていた叢雲だったがすぐに冷静さを取り戻す。
「ちょっとぉぉぉぉぉぉお!」
バケツをあわてて抱えて暖炉へ放り投げた。
しかし、火炎放射器によってほとんどの手紙が灰となっている。
「何してんのよ!?」
「不要なものを焼却した」
「准将とか、大佐クラスの人たちからの手紙なのよ!?無下に扱ったことがばれたら」
「別に問題ないだろ?ただ偉そうに文句を言うだけの連中の言葉だ。耳を貸す必要はない…ちっ、燃やし損ねた奴があったか」
「アンタ、時々、外道になるわよね」
「流石です。ヤマトさん」
大井をスルーして叢雲は溜息を零す。
ヤマトは地面に落ちている手紙を拾う。
「…あ?トレード申請?」
ある項目が目に入ってヤマトは手紙の封を開ける。
「…なぁ、叢雲」
「何よ?」
「うちの鎮守府に空母、いたよな?」
「………えぇ」
「この手紙、ずっと来ているのか?」
「………そうよ」
がしがしと髪をかきむしってからヤマトは立ち上がる。
「その艦娘に会うことはできるか?」
「…会ってどうするつもり」
「話がしたいじゃ、ダメか?」
「ヤマトさん」
「無駄だと思うけれど、ま、ついてきなさい」
微笑みながら外へ出ていく叢雲にヤマトは続く。
釈然としない表情を浮かべながら大井も後を追う。
「うちの空母は瑞鳳よ」
「小さいながらも優秀な艦娘だったか?」
「それは紹介文です…空母としてはそこそこレアだったと覚えているけれど」
「本当に偶然、建造されたの」
昔を思い出すような表情の叢雲だがヤマトは疑問が残った。
「それだけ優秀な艦娘なら最前線に駆り出されていただろ?」
「…実は、瑞鳳には欠陥があったのよ」
「欠陥?」
「そこはおいおい話すわ。ここよ」
ヤマトは案内された扉をノックする。
しばらく待つ。
少しして扉が音を立てて開いた。
珍しいなと思いながらヤマトは挨拶をする。
「いきなりですまない。俺は立花ヤマトという。キミと少し話が」
「瑞鳳は解体処分ですか?」
「…すまん、ちょっと出直すわ」
いきなりの発言にヤマトはブチ切れそうになるのを必死にこらえる。
開口一番に解体処分ですか?ふざけんなぁ!と窓に向かって叫びたい気分だった。
「悪いが、俺にそういう権限はない。しいて言うなら、瑞鳳、キミと話がしたいんだ。中へ入っても?」
「構いませんよ」
瑞鳳の案内に従って中へ入る。
どうやら開口一番に人間殺す!人間嫌い!というタイプではないらしい。解体処分というあたりでかなりのマイナス思考なのは否定できないが。
「それで、瑞鳳に何の話ですか?改造人間さん」
「立花ヤマトだ」
「すいません、解体処分以外に何の用が?」
訂正、コイツはかなりのマイナス思考だ!
ヤマトは頬を引きつらせながら話を始める。
今回は自分から始めたことだ、放り投げるつもりはない。
「じゃあ、本題に入ろう」
一枚の便箋をヤマトが見せる。
宛先を見た途端、瑞鳳が目を見開く。
「お前のトレード申請が来ている。お前が望むならそこへ異動しても構わないと思っている…んだが、その様子からすると嫌みたいだな」
瑞鳳は目に見えてわかるほどに怯えていた。
何をそんなに恐怖しているのか。
「叢雲から聞いたぞ。お前、ここの提督にストーカーまがいの事されて引きこもったらしいな」
叢雲から道中に話されたことの一つが別の鎮守府の提督によるストーキングだった。
ヤマトへ送られてきた便箋は普通のモノだったのだが、念のためと彼女が保管していたモノはおそろしくドロドロした内容で満ち溢れている。
「…」
「瑞鳳、お前はこれからどうしたい?」
「どうしたい、っていうのは」
「このまま部屋に閉じこもり続けるか、奴に抗うか」
「私は」
続きを声に出すことを躊躇う。
それを形にして大丈夫なのか?
このままでいいのか?
様々な葛藤が入り乱れて彼女の心はグラグラだった。
「俺が手助けする」
「…………え?」
瑞鳳は驚きで顔を上げる。
ヤマトが真剣な表情で瑞鳳を見ていた。
叢雲は普段のちゃらんぽらんな態度と違うことに気づく。
「俺がお前を助ける。だから瑞鳳、どうしたいか選べ」
助けるといったうえでヤマトは彼女が選択することを促す。
彼女が選ばないと本当の意味で先へ踏み出すことはできない。
「私は…」
瑞鳳は抗うことを選択した。
「随分と乱暴な行動ね」
「ヤマトさんにしては珍しいです」
外へ出ると叢雲と大井が待っていた。
二人とも反応はそれぞれだがヤマトのやることへ反対はしない様子だ。
「私としてはあそこの提督をなんとかしてもらえるなら助かるわ。アンタが来る前からうちへこないかって勧誘が鬱陶しいし。他の子を見る目がどこか気色悪かったから」
別の鎮守府の提督と面識がある叢雲も気に入らないようだ。
人間不信が入っていたとはいえ、人を見る目は確かなので評価できる。
大井はヤマトがやるなら自分もついていくという考えだ。
「さて、瑞鳳の欠陥ってのは?」
「艤装を纏わして海へ出ればわかるわ」
言葉の意味をヤマトは十分後に理解した。
「あうぅぅぅぅ~~~」
「まさか、艤装で海へ出たことがなかったとは」
「出たとしてもうまく航行できず同行艦と激突、遠征も出動もさせられないってことになっていたの」
「よくあの最低な提督は解体しなかったな」
「中々のレアだから手放したくなかったんでしょうね」
海面で派手に倒れている瑞鳳をみながらヤマトと叢雲は話をしていた。
結論から言って瑞鳳は全く航行できなかった。
走り出した途端、海面へ頭から突っ込む。
艤装の弓を構えようとしたところでバランスを崩して柱へ激突とみていて痛々しかった。
「艦娘の最初ってこんなものなのか?」
「私は、そんなことなかったかな」
「成程…どうすっかなぁ」
ヤマトは真面目に困っていた。
航行ができない艦娘の指導はさすがに経験がない。
「こんな時に北上がいればなぁ」
「呼んだー?」
「ひっ!?」
叢雲が悲鳴を上げる。
ヤマトがゆっくりと振り返ると一人の艦娘がいた。
黒い髪を三つ編みにしてどこかのほほーんとした雰囲気の艦娘。
北上という艦娘が背後にいた。
「お前、いつから?」
「いや~、ついさっき鎮守府についてさ。それからぶらぶらしていたらーヤマトの声がきこえたからこっちにきたわけ~」
のんびりと話す北上へ叢雲は頬を引きつらせていた。
尚、大井は北上の出現に喜びのあまり昇天してしまっている。
「というわけで北上さん、鎮守府に着任しました~」
「ねぇ、あの北上という人も遊撃部隊所属なの?」
「そうだな」
「さっき頼りにしていたけれど」
「そうだ。北上は艦娘、生まれたばかりの子の面倒ばかりみていてな。指導関係においてかなりずば抜けているんだよ」
「あんなのんびりなのに?」
「のんびりでも」
「さっき阿武隈の髪を弄り倒していたのに?」
「それでも」
叢雲とヤマトの前でおぼつかない彼女を指導している北上を見て他愛のない話をしていた。ちなみに大井は鼻血を流し過ぎたために入渠施設にいる。
こんなことのために使ったの初めてだわと叢雲は零す。
「貴方の部下ってとんでもない人材ばかりね」
「部下じゃねぇよ」
海を眺めながらヤマトは言う。
そこから先の言葉を叢雲は聞けなかった。
いや、彼は言わなかったのだ。
理由はわからない。
「さて、あの調子だと俺の手助けはあまりいらないな」
「この後はどうするつもり?」
「手紙が届いたらこう書くさ」
――瑞鳳はうちの鎮守府において優秀な空母なので手放すつもりなし。ほしければ他の奴を探せ。
数日後、ヤマトは送られてきた返事に対してそう記した。
「ふざけるなぁ!」
ある鎮守府の司令官は激怒する。
激しい音と共に机に置かれている書類が舞い上がった。
彼は呉鎮守府から送られてきた手紙を見て激怒していた。傍で秘書艦がいるがあまりの恐怖に動けないでいる。
「この僕が申請をしているんだ。…大人しく差し出せばいいものをぉ!ここの提督め、舐めた態度をとりやがって!!」
「随分と機嫌が悪いようだな」
荒い声の提督は顔を上げる。
逃げ出した秘書艦と入れ替わるようにして現れた男へ怒りを抑えた。
「どうもこうもあるか、僕の思い通りにならないから苛立っていた。それだけのことだ」
「ほぉ」
男はにやりと笑う。
「話を聞かせてくれ。もしかしたらよい提案ができるかもしれん」
ようやく北上さんが登場…話に出して登場までにかなり間をあけてしまったかもしれない。