艦娘と改造人間   作:断空我

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24.公爵(Duke)

「思った通りに計画が進行していないようだな」

 

「あぁ、そうだよ。くそっ、あの艦娘殺しめ!僕の艦娘達にあることないことを吹き込みやがって!」

 

「その男の事だが南光太郎ともども海の底だ」

 

「本当か!?」

 

上条は笑みを浮かべる。

 

彼同様にビルゲニアも笑顔だった。

 

「その通り、俺の一撃で奴らはそろって海の底…いや深海棲艦とやらの餌になっているだろう」

 

「よーしよし、アイツがいないのなら艦娘達は命令に逆らえない!僕のモノに」

 

「待て」

 

動き出そうとした上条をビルゲニアが止める。

 

「言葉で伝わらない連中なのだろう?ならば、私に良い提案がある」

 

「提案?」

 

そうだ、とビルゲニアが告げる内容に上条は目を細めて同意する。

 

上条とビルゲニア。

 

この二人は同盟関係を結んでいる。正確に言うならばビルゲニアを上として上条を下とした立場関係だが気にしていない。

 

ビルゲニアは創生王としてこの世界を掌握するため、彼は

 

「しかし、貴様も物好きだな。艦娘というよくわからん女たちを集めたい等」

 

「世界なんて言うものに興味はないさ。ほしいものは手に入れる。その機会をくれるなら悪魔にだって仕えてみせる」

 

「ふん、まぁいい。俺が創生王になるためだ。お前の力ならあの三神官達も倒せるだろうからな」

 

ビルゲニアが創生王になるべく必要なものはいくつかあるがその中でも重要なのは力。

 

年老いているといっても腐っても相手は創生王。その気になれば世界を壊すことも可能な相手だ。戦うには力がいる。圧倒的優位へ立てる力。

 

その力を偶然にも上条は持っていた。

 

上へ登る意思がないことからビルゲニアにとって都合が良かった。いつか反逆の動きをみせれば殺せばいい。だから、上条を利用している。

 

上条もビルゲニアを利用していた。

 

ビルゲニアの能力で欲した艦娘を集める。そのおかげで多くの艦娘達が上条のもとに集まっている。

 

互いに利益があるからこそ付き合える。

 

そんな関係で二人は成り立っていた。

 

だからこそ、今回の件は二人にとって上々といえた。

 

上条は欲しい艦娘がいくつも手に入る。ビルゲニアは邪魔な仮面ライダーBLACKを潰し、創生王になる。

 

そのための計画が完遂しつつある。

 

ビルゲニアは笑みを深めた。

 

自分の目的がかないつつあるという事。

 

上条も欲した艦娘がそろいつつあること。

 

そして、上条は叢雲達がいる鎮守府へあるメッセージを送る。

 

舞鶴鎮守府と上条の鎮守府による演習の申し込みだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

演習の申し込みに目を通した叢雲は隣の陸奥へ訊ねる。

 

「どうすればいいのかしら」

 

「本来なら受ける、受けないは自由よ。でも、ここは受けるしか選択がないわね」

 

立花ヤマトはまだ見つかっていない。

 

この演習を拒否すれば上条は鎮守府へ乗り込んでくるだろう。そうなればヤマト不在がばれて命令に逆らうことができない。

 

それを防ぐためにも演習を受けないといけなかった。

 

「それにしても、相手の鎮守府か」

 

「うちの演習施設は使えるようなものじゃないから」

 

経費削減と前の提督が施設を埋めてしまったのだ。

 

そのため、今の艦娘達は戦闘以外で自らの練度を上げることができない。現状、どうすることもできなかった。

 

「まずは演習に参加するメンバーよ。旗艦を含めた六人を決めないと」

 

「六人…そうなると」

 

 

現状、食堂の騒動で半数の艦娘が動けない。

 

無事な叢雲や天龍、吹雪を含めてあと三人を選ばないといけなかった。

 

「あのぉ~」

 

扉が開いておそるおそる顔を覗かせる艦娘が一人。

 

「青葉、さん」

 

「その、演習、青葉が参加しても構わないでしょうか?その、青葉のせいで提督さんにご迷惑をかけてしまいました。ならば、青葉に、今の青葉にできることで挽回したいんです!」

 

叢雲は陸奥を見る。

 

彼女は静かにうなずく。

 

尚、大井は時雨によって別室へ連れていかれている。

 

「青葉さん、演習参加を認めます」

 

「はい、重巡洋艦青葉!全力で挑みます!」

 

「あとは二人ね…」

 

「それなら適任者が一人~~」

 

「あ~~髪を弄らないでクダサーイ!」

 

北上が阿武隈を連れてきた。

 

「北上、さん」

 

「やっほう~、演習なんだよね?それならこの阿武隈を北上さんは推薦するよ。本当なら瑞鳳がいくべきなんだけど、まだまだ戦闘は無理そうだからね~」

 

「髪が乱れる~~~」

 

くしゃくしゃと阿武隈を撫でながら北上が言う。

 

「対空砲火は優秀そうだからねぇ。うりうり~」

 

「ひぃぃぃぃん!」

 

「最後の一人は決めています」

 

叢雲は扉の外にいる曙へ視線を向ける。

 

「曙、アンタに演習へ参加してもらうわ」

 

「…なんで、私が」

 

「必要だからよ。アンタの力が償いとかそういうことは求めていない。アンタの、駆逐艦、曙としての戦力が必要なの」

 

「…わかったわ」

 

目を合わせない曙へ叢雲は言う。

 

「メンバーがそろったところで演習までの訓練だけど」

 

「それなら僕に案がある」

 

部屋へ戻ってきた時雨に全員の視線が集まる。

 

「ここの演習施設が使えないからかなり荒っぽいことになるけれど、それでもいいかい?」

 

時雨が全員へ確認するように告げた。

 

迷わず、舞鶴鎮守府の艦娘達は頷く。

 

その姿を見て陸奥は窓へ視線を向ける。

 

外は未だ雨が降っていた。

 

「みんな、前へ進んでいるわよ。ヤマト」

 

ここにいない人間の事を思いながら陸奥は呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『提督の件、谷大将から聞いたけれど、断ったそうね』

 

大本営の屋上、陸奥はヤマトへ問いかける。

 

彼は飲んでいたコーヒーを床へ置いて頷く。

 

『俺にその資格はない』

 

『なぜ?確かに艦隊指揮の経験はないけれど、模擬における結果は』

 

陸奥は知っている。

 

彼は実戦における艦隊の指揮経験は0、しかし、模擬における艦隊指揮経験は100を超えている。それらすべてがS評価だ。

 

普通なら提督へ着任させて戦果を期待するレベル。しかし、ヤマトはそれに応じない。

 

何故なら。

 

『艦娘を殺した人間と共に戦いたいと考える艦娘がいると思うか?』

 

艦娘殺しだぞ?というヤマトの言葉に陸奥は答えられない。

 

戦艦長門を沈めた男として心無い人間からヤマトは艦娘殺しという言葉をぶつけられた。

詳しい内容を知らない艦娘、特に初期艦の子達は噂を真に受けてしまい、怖がっている。

 

目が合っただけで近くを通りかかった暁は涙を零したほどだ。そんな人間と共に戦おうとする艦娘がいるわけが――

 

『いるわ』

 

夕陽を見ているヤマトへ陸奥は言う。

 

『いつか、貴方の事を本当に理解した子達が、共に戦ってくれる。その時がきたら逃げないで受け入れて…私との約束よ?』

 

『……わかった、約束だ』

 

そういって二人は指切りを交わす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陸奥は自分の小指を見る。

 

あれから多くの月日が流れたがヤマトを理解してくれる子達はまだまだ少ない。

 

けれど、ここならば。

 

「この鎮守府なら」

 

彼を受け入れてくれるかもしれない。

 

泥だらけになりながら訓練に励んでいる艦娘達を見ながら陸奥は呟く。

 

「そうよね…姉さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

演習当日、叢雲は留守を足柄と愛宕に任せて上条のいる鎮守府へ向かう。

 

尚、大人数の移動は海による航行ではなく。陸奥が用意したジープによる移動だった。

外の景色を眺めながら叢雲と吹雪は緊張していた。

 

「お前ら、何緊張してんだよ?」

 

「だ、だって、だって」

 

「演習経験がないから、し、仕方ないじゃない。そういう天龍さんだって」

 

「俺は世界水準だからな。こんなところで緊張はしねぇよ」

 

「よくいうわ。前日うるさかったくせに」

 

「な、て、てめぇ!」

 

大井のつぶやきに天龍は顔を真っ赤にした。

 

遠足のように騒ぎながらもみんなが緊張していた。青葉に至っても無駄に騒ごうとしてから回り。その中で曙だけ無言で景色を見ている。

 

隣に腰かけている時雨が訊ねた。

 

「緊張しているの?」

 

「当然よ。負けたらみんな、バラバラになるんだから」

 

後半を小さくして曙は言う。

 

少し、自己嫌悪になっていた。

 

自分が立花ヤマトへ余計なことを言わなければこんな騒動にならなかった。みんながバラバラになるようなことを防げたかもしれない。

 

「まだ終わったわけじゃないよ」

 

「え?」

 

時雨の言葉に曙は顔を上げる。

 

「まだ、全てが決まったわけじゃない。これからの君たち次第で決まるんだよ?勝手に諦めていたら他の仲間に失礼だ」

 

「……」

 

曙は周りを見る。

 

みんなも緊張している。しかし、その目は諦めというものがない。絶対に勝つ。みんなと一緒にいたいからという気持ちが伝わってくる。

 

「ほらね?」

 

時雨に言われて曙は息を吐く。

 

自分だけ終わったつもりだったのが馬鹿らしい。

 

「…そうね、まだ終わりじゃない」

 

「うんうん、頑張ってね…それと」

 

時雨が微笑みながら。

 

「ヤマトが戻ってきたらちゃんと謝罪するんだよ?でないと、僕等が怒るから」

 

「わ、わかったわよ」

 

殺気に少し怯えながら曙は頷く。

 

そうしている間に車は鎮守府に到着した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入口で待っていた駆逐艦に案内してもらい演習場へたどりつく。

 

設置された大規模プールに叢雲達は艤装を纏っている。

 

陸奥達は岸沿いで待機していた。

 

舞鶴鎮守府と対峙するように立つのは上条提督の艦娘達。

 

「戦艦が二隻、空母が一、正規空母が一、駆逐と軽巡が一かぁ」

 

「どれもレア度は高ぇなぁ」

 

叢雲と天龍が呟く。

 

戦力からすればこちらよりも高い。

 

しかし、勝てないというわけじゃない。

 

叢雲は周りを見る。

 

軽巡二、重巡一、駆逐三。

 

少し火力が足りないがまぁ、なんとかできるだろレベル。

 

「うわぁ~」

 

阿武隈は対峙している艦娘の顔を見て涙目になる。

 

艦娘達の顔に感情の色はなかった。艤装などの装備はかなり高いものばかりだが感情が見えない。まるで人形、悪く言えば。

 

ギリッと叢雲は歯をかみしめる。

 

こんな提督の下に誰がつくか!と意志を高める。

 

「勝つわよ!」

 

叢雲の叫びと共に演習開始の合図があがった。

 

先に仕掛けたのは天龍。

 

「オラァ!行くぜぇ!」

 

艤装の刀を振り回しながら主砲による牽制を始める。

 

天龍の攻撃に相手はバラバラになった。

 

「行くわよ!青葉!」

 

「はい、行きます!」

 

「阿武隈!」

 

「あわわわわ!」

 

半々に別れた所を青葉と曙、阿武隈と叢雲といった形で攻撃を仕掛ける。

 

彼女達は降ってくる砲撃の雨をその身に浴びながら連装砲や主砲の攻撃を続けていた。

 

「少しは痛がれよな!」

 

飛来する砲弾を躱して天龍が連装砲を撃つ。

 

直撃したが相手は顔を顰めるのみで反撃に映る。

 

まるでロボットを相手しているようだ。

 

天龍は顔を顰めつつ、旗艦の叢雲を見る。

 

「作戦スタート!」

 

彼女達は敵から大きく離れる。

 

突然の事に相手の艦娘達は戸惑いつつも追撃を始めた。

 

飛来する砲弾を躱しながら叢雲達は逃げ続ける。

 

追いかけてくる敵の速度は中々に速い、すぐに追いつかれてしまうかもしれない。

 

ある程度、距離が縮まってくる。

 

瞬間、叢雲が叫ぶ。

 

「今よ!」

 

合図とともに仲間と旋回して相手の前に立つ。

 

相手の艦娘達が目を見開いた瞬間、艤装が輝く。

 

衝撃と共に上条提督の艦娘達は大破判定が出される。

 

演習は叢雲達の勝利に終わる。

 

「…呆気ない」

 

「そうですね」

 

戦いの結果を見て陸奥は呟く。時雨も頷いた。

 

時雨と北上も険しい表情だ。

 

相手の練度は叢雲達よりも高い。時雨たちが教えた戦法でかろうじて勝てるかもしれないという予想だった。しかし、結果は大きく異なる。

 

「練度が高いのに、動きにキレがまるでない。操り人形みたい」

 

「そうだね~」

 

大井と北上が同意する。

 

なのに勝利判定が下された。

 

この状態をどう考えるか。

 

陸奥が言葉を発しようとした時、パチパチと拍手が響く。

 

手を叩きながらゆっくりと上条提督が歩いてくる。

 

負けたというのに彼の顔は笑顔だった。

 

それがより不気味さをだしている。

 

「いやぁ、流石だねぇ。練度が低いというのに僕の優秀な第一艦隊を倒しちゃうんだからさ。ますます欲しくなってしまったよ」

 

「私達の勝ちです。だから」

 

「さて、楽しい余興もここまでだ」

 

笑みを浮かべたまま上条は告げる。

 

「キミ達は僕のモノになってもらう。これは既に決定していることだ」

 

「何をいっているのよ!!」

 

「ふざけんな!俺らはモノじゃねぇぞ!」

 

上条の言葉に反発するように天龍と叢雲が叫ぶ。

 

やれやれと上条は肩をすくめる。

 

「どうやら…少しお灸をすえる必要があるらしい」

 

懐からレモンの錠前みたいなものと赤い四角い道具を取り出す。

 

四角い道具を腹部に当てるとそれはベルトへ形を変える。

 

レモンの錠前のスィッチを起動させながらそれをベルトの窪みへはめ込む。

 

『レモンエナジー』

 

「な、なにを」

 

「変身」

 

動揺する叢雲達の前で上条は変身する。

 

『ロックオン、レモンエナジー、ソーダァ』

 

上空から光り輝くレモンが落下すると同時に上条の体を青色の騎士甲冑が包み込む。

 

しばらくしてレモンが開き、さらなる鎧がその上へ重なっていく。

 

赤い弓矢を取り出して上条は告げる。

 

「大人しく僕のモノになるなら今のうちだよ?これから手加減はしないから」

 

「みんな!逃げる」

 

「逃さん!」

 

眩い閃光が陸奥達の前を通り過ぎて入口に別の男が現れる。

 

「何よ、あれ」

 

「気持ち悪い」

 

剣聖ビルゲニアがビルセイバーを手に退路を断つ。

 

叢雲達に残されたのは戦うという選択肢のみ。

 

みんなが艤装を構えたのを見て上条は溜息を零す。

 

「やれやれ、少しは利口なのかと思っていたんだが、しつけが必要か」

 

「俺達はペットなんかじゃねぇぞ!」

 

叫びながら天龍が刀を振り下ろす。

 

上条は赤い弓矢『ソニックアロー』で天龍の刃を防ぐ。

 

人間が艦娘の攻撃を防いだことで彼女達は目を見開いた。

 

「なっ、てめぇ、人間じゃねぇのか!?」

 

「人間だよ?最も、選ばれた人間だけどね」

 

そういいながら刃を押し返して上条が弓を構える。

 

「天龍さん!」

 

「下がって!」

 

叢雲と阿武隈が牽制のため主砲を撃つ。

 

上条は弓を上へ構えて放つ。

 

エネルギーで形成された矢が砲弾を破壊する。

 

「嘘!?」

 

「一撃、なんて威力」

 

阿武隈達が驚きつつも脱出の為に振り返る。

 

そこで言葉を失う。

 

陸奥達が地面に倒れている。

 

自分たちよりも練度の高い彼女達がたった一人に倒されていた。

 

「ふん、これが噂に名高い艦娘の実力か、俺様の盾を傷つける程度とは」

 

「おいおい、彼女達も僕が愛でるんだから大事にしてくれよ?」

 

叢雲達が振り返る。

 

上条がかなりの近くに来ていた。

 

前方に上条、後方にビルゲニア。

 

逃げるには戦うしかない。

 

「くそっ、なんでこうも変なことに俺達は」

 

悪態をつきながら刀を天龍が構えた瞬間、背後で音がした。

 

「…あ?」

 

音に天龍は振り返る。

 

立っていたのは曙、彼女は主砲12.7cm連装砲を構えていた。

 

その先は天龍。

 

言葉を発しようとした瞬間、連装砲が輝く。

 

爆発が叢雲のすぐ傍で起きる。

 

突然の事に彼女達は動かない。

 

目の前で黒煙をあげながら天龍が水底へ沈んでいく。

 

「え?」

 

その声を誰が出したのか、撃たれた天龍、撃った曙、傍で見ていた叢雲達なのか。

 

しばらくして、曙が戸惑った声を漏らす。

 

「え、え!?なんで、私!?」

 

「うっわぁ~、ビルゲニア、えげつないことするねぇ」

 

「フン、使える駒はなんだって使う。それが基本だ」

 

上条とビルゲニアの会話で曙に何かしたと叢雲は気づく。

 

「アンタ達!曙に何をしたの?」

 

「何?うん、簡単な催眠術を施したのさ」

 

「催眠…術?」

 

困惑する吹雪。

 

ビルゲニアは語る。

 

彼は曙に催眠術を施し、機会がくれば指示通りに動くよう操っていた。

 

「例えば、食堂の鍋に劇薬を放り込むとか、いやぁ、ゴルゴム特製の毒薬で腹痛起こす程度とか、流石艦娘だよね。頑丈だよ」

 

笑いながら言う上条へ叢雲だけでない。吹雪、阿武隈、青葉の顔に怒りの感情が浮き出る。

 

「アンタ達は、私達をなんだと思っているのよ!!」

 

我慢ができず叫ぶ。

 

対して、上条は当たり前のように。

 

「え?ただ愛でるための人形だけど」

 

人形だと告げる。

 

その言葉にビルゲニアも嗤う。

 

目の前の奴も同じだ。

 

言い方は違えど、自分達をちゃんと見ていない。

 

叢雲は怒りで拳を握りしめた。

 

「ふざけるなぁあああああああああああ!」

 

連装砲と魚雷全弾を叩きこむ。

 

弾薬が底をつく心配よりも怒りが優先された。

 

「さて、お遊びもそろそろ終わりにしようか」

 

飛来する砲弾と魚雷を前にして上条はバックルの錠前をソニックアローへ差し込む。

 

「ビルセイバー、ダークストーム!」

 

眩い光と斬撃が全ての攻撃を打ち消す。

 

その光景に全員が言葉を失う。

 

圧倒的すぎる。

 

前のショッカー襲撃とは別の絶望が彼女達へ降りかかってきた。

 

「さて、お遊びもそこそこにして、そろそろ僕のものになってもらおうか」

 

上条の言葉に吹雪や阿武隈は顔を青ざめて、青葉は何も言わずに座り込む。

 

曙は悔し涙を流している。

 

その中で、叢雲は“彼”の事を考えていた。

 

 

 

 

『裏切り者ねぇ、勝手に人さまの頭をいじくりまわして忠誠心をもたせて、自我を取り戻したら裏切り者ってことで排除する。あー、いやだいやだ。そんな目にあうからこそ、俺はお前達のやろうとしていることを認めない。許さない』

 

 

 

『何のって、勝手に艦娘を連れていくなよ。あいつはここの所属だ』

 

 

 

『何でも何も人が気持ちよく寝ていた所を「助けてください」っていって泣きじゃくった奴らがいた。それだけのことだよ』

 

 

 

『お前達も聞いていると思うが俺はショッカーに改造された。残念なことに頭の改造もされて最初はショッカーに忠実な兵士だった』

 

 

 

『そうだな、俺は戦わなければならない。ショッカーと』

 

 

 

『馬鹿は馬鹿だ。兵器?お前達は笑ったり飯を食べたり、怒ったりしている。そんな奴が兵器なわけがないだろう。ふざけたことをいうのもいい加減にしろ。俺もこんな会話をするのは嫌いなんだよ』

 

 

 

『俺は改造人間だ』

 

 

 

『俺はお前達を守る。血まみれの手でも守れる何かがあるというのなら、ショッカーが、悪意が多くの誰かを傷つけようというのならそれを潰す風になってやる。悪を許さない風に!』

 

 

 

彼はどんな時でも自分たちを助けてくれた。

 

それに頼るわけじゃない。

 

けれど、思ってしまう。

 

 

 

「守るっていったんだから…」

 

涙をこらえながら叢雲は叫ぶ。

 

目の前の上条をみず、彼女は願う。

 

彼へ届けと。

 

 

 

 

 

 

 

「とっとと助けにきなさいよ!バカ~~~~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

叢雲の叫びに風が応える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰がバカだ。誰が」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?がぁぁっ!?」

 

轟音と共に鎮守府の一角からサイクロンが飛び出し上条を薙ぎ払う。

 

呆然とするみんなの前でサイクロンは停車する。

 

被っていたヘルメットを脱ぐ。

 

立花ヤマトの顔を見て叢雲はぽろぽろと涙を零す。

 

「アンタ…」

 

「悪い、遅くなった」

 

 

「どこで…アンタ、どこで、なにやってたのよぉ」

 

「わー、泣くな、泣くな。こっちも色々あったんだよ…まぁ」

 

――よく頑張ったな。

 

そういってヤマトは叢雲の頭を撫でる。

 

あまりの気持ちよさに目を細めていたがじぃーとみている阿武隈と吹雪の視線に気づいて慌てて離れた。

 

「な、にゃにするのよ!?」

 

「さて、お前が頑張ったんだから」

 

「話聞きなさいよ!?」

 

ヤマトは冷たい目で上条を見る。

 

正確にいえば纏っている騎士甲冑をみていた。

 

「そうか、お前か」

 

「おっと、動かない方がいいぞ。艦娘殺し」

 

上条は後ろを指す。

 

吹雪が叫ぶ。

 

「陸奥さん!」

 

ボロボロの陸奥へビルゲニアが刃を向けている。

 

「動けば、この女の命はないぞ」

 

刃が陸奥の皮膚を切り裂いて血が流れる。

 

人質を取られているというのにヤマトは動じていない。

 

むしろ。

 

「あ~、そういや、お前もいたんだったか?」

 

「なっ!?」

 

ビルゲニアの存在を忘れていたような口ぶりだった。

 

「貴様ァァ!」

 

「そういうお前こそ、忘れていないか?」

 

激昂するビルゲニアへヤマトが指を突きつける。

 

――もう一人、いるぜ?

 

その言葉と同時にビルゲニアを一人の青年が殴り飛ばす。

 

「グッ!?貴様は南、光太郎!?」

 

「ビルゲニア!貴様の野望もこれまでだ!」

 

陸奥達からビルゲニアを突き飛ばした南光太郎は立花ヤマトの後ろに立つ。

 

「遅かったな“光太郎”」

 

「無茶言うなよ。ヤマトのバイクが速過ぎるんだ」

 

背中を合わせながら立花ヤマトと南光太郎は話す。

 

まるで親友のようなやり取り。

 

何故なら立花ヤマトと南光太郎は昔からの親友だった。

 

 

 

 

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