水瀬隼人が二人と共に警備府へ戻ると榛名達が出迎える。
朝潮と雷が無事な姿を見ると彼女達は安堵の表情を浮かべた。しかし、緊張した顔で隼人を見ていた。
「…榛名、木曾、那智…話がある」
二人は医務室へ預けてから隼人が真剣な顔でいう。
「私達は、ありません」
尚も拒絶しようとする榛名へ隼人は無言で頭を下げる。
「すまなかった!」
突然の事に榛名はぽかんと口を開けて、木曾と那智に至っては目を見開いていた。
「今までの事を許してくれとは言わない…キミ達の気持ちを踏みにじるようなことばかり言ってすまない!」
呆然としていた那智は隼人の言葉の節であることに気付く。
「記憶を取り戻した…のか?」
「あぁ、全部…着任してから記憶を失う直前まで、思い出したよ。那智」
記憶を取り戻した。
その言葉に那智と木曾はいきなり涙を零し始める。
榛名は目を見開いて動かない。
「今になって、と思うかもしれない…でも、俺はキミ達に感謝している。沈んだ子達は恨んでいるかもしれない。けれど、俺の事を最後まで信じてくれたキミ達へ伝えたい。ありがとう、こんな最低な俺についてきてくれて」
ぽろぽろと那智と木曾が涙を零す。
突然の事に隼人は困惑する。
「え、ちょ!?」
いきなり二人が駆け出すと隼人を抱きしめた。
「何も言うな。言えば殴る」
「木曾だ。今はしばらく…しばらく…うぅぅうううううううううううううう」
泣き出した二人を見て隼人はただ、困惑することしかできなかった。
「あれで…いいのか?」
「いやぁ、感動的な光景です。カメラに収めたいですねぇ」
「やめた方がいいと思うよ」
「良かったよ…ちゃんと和解できたみたいだ」
泣いている那智と木曾、困惑している隼人を少し離れたところでヤマト、青葉、時雨、光太郎がみていた。
「それにしても、よく納得しましたね?青葉的に提督は水瀬提督のこと、否定するかと思ったのですが…」
「最初は否定していたさ…でも」
「でも?」
「何でもない」
「えぇ!?生殺しはないですよ!?ちょろっとぐらい教えても」
「時雨、青葉は演習がしたいそうだ。七割で相手してやれ」
「了解」
「え、ちょっ、青葉は遠慮…あれ!?手錠!?時雨さん、へ、ヘルプミ~~~!」
騒ぐ青葉を時雨が引きずっていた所で光太郎が訊ねる。
「でも、認めたのはなんで?」
光太郎の言葉にヤマトは思い出す。
――不思議と似ていた。
水瀬隼人と一文字隼人。
戦っていた二人の言葉が重なった。
「魂が…似ていた、かな」
「…魂?」
「クサイか?」
「いいんじゃないか」
光太郎の言葉に小さく頷いた。
ちらりと彼女達の姿を見てヤマトは微笑んだ。
一か月後。
水瀬隼人は大本営にゴルゴムへ関与した鎮守府の情報を伝えた。
それによりゴルゴムメンバーと至った鎮守府の提督は憲兵に連行される。
誘拐された艦娘達は無事に保護された。
しかし、人間に裏切られたというショックで戦闘復帰は難しいという結果だ。
摘発された鎮守府の提督は新たに後任を見つけることとなり、大本営の負担は大きくなったらしい。
そして、摘発した水瀬隼人というと。
「おい、考え直せ」
那智の言葉に水瀬隼人は首を横に振る。
結論から言えば警備府のメンバーのほとんどと和解できた。
最初は誤解もあったが今は無事に打ち解けることができた。それが隼人にとって何より嬉しい。
「悪いけど、もう決めた事なんだ」
「ふざけるな!折角、元通りになったのに」
木曾も納得できないという表情で隼人を見る。
「上の決定というのもあるけれど…少し、色々とみてみたくなったんだ。世界を」
「世界?」
「大げさだけど、今のみんなが何を思っているのか…深海棲艦によってどんな世界となっているのか…それを見て回りたい…そして」
ちゃんと生きてみたい。
人間水瀬隼人として。
隼人の言葉に那智と木曾は未だに納得できないという表情だ。
「だからといって提督をやめるなど」
「あとの事は舞鶴鎮守府の提督に頼んである。悪い奴じゃないから」
「…雷と朝潮になんと説明するつもりだ」
「……既に話したさ」
二人へいの一番に隼人は伝えた。
雷と朝潮は泣きつつも「提督が決めた事なら」と納得してくれている。
最後まで悲しそうにしていたのは後味悪かったけれど、と隼人は願う。彼女達を大事にしてくれる提督と出会えるよう。
そう思いながら荷物をまとめた隼人は外に出る。
すると意外な人物がいた。
「立花」
「よぉ」
私服姿の立花ヤマトがいた。
「どうして」
「どうも、てめぇが俺に厄介ごと押し付けてでていこうとするから顔を見に来たんだよ」
「それはすまない」
「…あと、元帥に無理言って休職扱いにしているから」
「え?」
困惑している隼人へヤマトが告げる。
「人に色々押し付けすぎなんだよ。てめぇも提督としての苦労ぐらいは味わえ。安心しろ、無理に戻れとは言わない。戻りたくなったら来い…ま、そうしないとお前の事を追いかけそうな奴らばかりだからなぁ」
ヤマトの視線を追うと笑顔の朝潮と雷、艦娘達がいる。
中には涙を流している娘もいるが全員が笑顔だった。
隼人は何とも言えない表情だ。
「色々と考えるのは良いさ。ま、考えすぎてうだうだするなら一度、ここに帰ってきたらどうだ」
「…そうするよ」
頷いて隼人は彼女達へ約束する。
「またな」
ビルゲニアは満身創痍でゴルゴムのアジトへ戻った。
「なっ!?」
戻ったビルゲニアに赤い光が襲った。
折れたビルセイバーで防ぐことすらできず彼は目を見開いて後ろへ倒れる。
「敗者をゴルゴムは必要としない」
冷たい複眼で見下ろす存在を見てビルゲニアは声を震わせる。
「…魔王」
それが彼の最後の言葉となった。
サタンサーベルを持つ異形。
南光太郎、仮面ライダーBLACKと対をなすもう一人の世紀王の姿。
「ゴルゴムの王道を阻む者は何ものであれ、この私が排除する。私こそが創生王になる器なのだ」
南光太郎はバイクを止める。
坂道から音を立てて異形が姿を見せた。
全身から放つ闘気からとてつもない強さを誇ることがわかる。
「南光太郎、ブラックサン……否、仮面ライダーBLACK。ビルゲニアは滅びた。これよりゴルゴムの指揮はこの私が執る。いずれ、貴様と雌雄を決するだろう。それまでの時間を大事にすることだ」
「……生きていたのか、信彦」
「違う。わが名は」
――魔王、シャドームーンなり。
新たな戦いが起こる日は近い。
というわけで今章は終わりです。
次回からほのぼのを放り込んで新しい話に入ります。
さて、どっちから終わらせようかな。