艦娘と改造人間   作:断空我

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37.足柄は何を思う?

薄暗い闇の中に南光太郎はいた。

 

光がない場所を歩いていた、前方に立つ存在に気付く。

 

秋月信彦。

 

「信彦!」

 

幼馴染の一人にして兄弟のような片割れへ光太郎は近づこうとした。

 

信彦が微笑んだ瞬間“変身”する。

 

魔王・シャドームーン。

 

光太郎が歩みを止める。

 

しかし、シャドームーンは近づいてきた。

 

「お前はブラックサン!」

 

光太郎へ逃げることは許さないというように、彼は告げる。

 

「お前と私は戦うことが運命」

 

「運命から逃れることは許されない!」

 

「さぁ!私と戦え!ブラックサン!」

 

手を伸ばすシャドームーン。

 

しかし、光太郎はそれを拒絶する。

 

「できない!」

 

光太郎は叫ぶ。

 

「お前は信彦だ!信彦なんだ!戦えない!戦えるわけがないんだ!俺は――!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦えない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガバッと体を起こして光太郎は叫ぶ。

 

全身から汗が噴き出して纏っている衣服はずぶぬれになっている。

 

荒い息を吐きながら光太郎は体を起こす。

 

「あれは…夢だったのか」

 

いや、夢じゃない。

 

自らの拳を見て光太郎は否定する。

 

あれは夢ではないのだ。

 

いずれ自分は信彦と戦わなければならない。

 

目を背けていた事が現実になろうとしていた。

 

あの日、光太郎の前へ姿を見せた秋月信彦。彼を信彦ではなくなっていた。自らをゴルゴムの世紀王でありシャドームーンだと宣言する。

 

彼がゴルゴムにいる以上、戦うことは避けられない。

 

「(僕は戦えるのか?親友の信彦と……)」

 

拳を見ながら自問する。

 

答えは朝になっても出なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛宕がデート宣言した次の日、食堂の艦娘達の視線はヤマトに突き刺さっていた。

 

「……」

 

視線の的である当人は気にせず味噌汁をすすっている。

 

その横に座る叢雲はかなり不機嫌。対して向かい側に座る北上と大井は少し機嫌がよさそうだった。

 

陸奥の機嫌も少し悪い。

 

「お前ら、朝食くらい楽しくとはいわないけれど、機嫌直したらどうだ?」

 

「フン!アンタに関係ないでしょ!」

 

「俺の飯が不味くなるからいってんだけどなぁ」

 

「ヤマト、女の子にはいろいろあるのよ。察しなさい」

 

「面倒だ。パス」

 

「だめだよ~ヤマトっち、そこは北上さん的にポイント低いよ~」

 

「お前、変な影響受けていないか?」

 

北上と会話をしつつヤマトは朝食を味わっていた時、それは起こった。

 

「光太郎!私とデートよ!」

 

デートという単語に大井、陸奥、叢雲が飲んでいた水や味噌汁を吹き出す。

 

「ヤマトシールド!」

 

運悪く、それはヤマトへ直撃する。

 

「ぐはっ!?」

 

味噌汁と水まみれになったヤマトの胸倉を離して北上はふーという。

 

「危なかった」

 

「俺はアウトだよ!!」

 

雑巾で顔を拭きながらヤマトは声の方を見る。

 

そこでは足柄がビシッと光太郎へ指を突きつけた叫んでいた。

 

突然の事に呆然としている光太郎と驚いた表情でみている皐月たちの姿が見える。

 

もう一度光太郎の顔を見てひと波乱あるなと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

足柄の突然の提案に光太郎は断ることすらできずに外へ連れ出された。

 

尚、ヤマトのもとに足柄は許可証を無理やりもらいに行った。光太郎の内情を察して特別として許可した。後で、皐月や長月に文句を言われることになった。

 

いつものジーンズに上着姿の光太郎が待っていると私服姿の足柄がやってくる。

 

「どうしたの?」

 

「いや、随分、動きやすそうな格好だね」

 

光太郎は足柄が女性らしい格好をするものだと思っていた。しかし、ふたを開ければジーンズに動きやすさを重視した服になっていた。

 

「今日は、ね!さ、行くわよ!デートが私を呼んでいるわ!」

 

「え、ちょっ」

 

足柄は光太郎の手を引くと走り出す。

 

そして、上空にいる艦載機が後を追う。

 

二人は街へ繰り出した。

 

「いくわよぉ!」

 

「よし、こい!」

 

足柄が叫ぶとともにテニスボールを放つ。

 

光太郎はボールを追いかけてラケットで打ち返す。

 

激しい攻防が続いていた。

 

しばらくして足柄が空へ指を伸ばす。

 

「アイム、ウィン!」

 

「負けた……」

 

光太郎がガクッと項垂れる。

 

「私が勝ったから光太郎が昼おごるのよ」

 

「えぇ!?そんな約束していないよね!?」

 

「敗者は勝者に従うのよ!これは全ての鉄則!」

 

「嘘だぁ」

 

お金あったかなぁと思いながら光太郎は財布をめくる。

 

その横で足柄は微笑んでいた。

 

光太郎が選んだのは安い定食屋。

 

金額がお手ごろだが量が多く、味が豊富なことから選んだ。

 

「大丈夫かな?」

 

「問題ないわ!私はこういう所も好きだし!」

 

そういって足柄が選んだのはカツ定食。

 

光太郎は少し悩みながらからあげ定職をチョイスする。

 

定食は味噌汁かうどんをチョイスできる。二人はうどんでチョイスした。

 

少しの休憩を置いて足柄が選んだのはボーリング。

 

光太郎は初めてのボーリングに緊張しつつもストライクを叩きこんでいく。

 

結果、足柄の敗北、光太郎の勝利になりジュースを足柄がおごることとなった。

 

どういうわけか足柄が選ぶのはデートスポットとは異なる遊びに重点を置いた所ばっかり。

 

ラブコメ的なことを期待していたのかいつの間にか艦載機はいなくなっていた。

 

足柄と光太郎は公園のベンチで休んでいた。

 

朝から晩まで改造人間でなくても疲労を感じる。

 

同じように足柄も少し疲れている様子だった。

 

光太郎は近くの自販機で購入したコーヒーを渡す。

 

「ありがとう」

 

「いや、感謝をするのは僕の方だよ」

 

頬をかきながら光太郎は言う。

 

「色々と気を利かせちゃったみたいだし」

 

「あら、ばれちゃった?」

 

悪戯がばれた子供のように足柄はちょろっと舌を出した。

 

今日一日、光太郎は信彦の事を考えずにいられた。おそらく暗い光太郎を見て足柄が何とかしようと考えたのだろう。深い理由を考えず。

 

何気ない一日だったが光太郎にとって救いだった。

 

それが答えの先延ばしだとしても。

 

「足柄さんはさ…運命とか考えた事ってある?」

 

「運命?そうね、毎日考えているわ」

 

「ま、毎日?」

 

「そう、人との出会いを求める毎日!運命的な出会いよ!」

 

「あ…そう」

 

「光太郎が求めている答えは違うでしょ?」

 

「え、あ、その」

 

「私は光太郎の言う運命がどういうものかわからないから答えることはできないけれど、運命って変えられるものだと思うわ」

 

「変えられる?」

 

「どれだけ酷いものでも動かないと変わらないと思う。それなら私は動くわ。結果がどうあってもね」

 

足柄は昔を思いつつ話す。

 

人間によって姉妹が解体された時。自らの運命を呪った。運よく被弾しなかったことから解体を逃れた自分。その時の悲しみを糧にして足柄は人間を恨みつつ、仲間が傷つかない動きをとることを決意した。

 

光太郎の運命がどういうものか足柄はわからない。けれど、願うならば。

 

「(目の前の彼が無事に帰ってくることを願うわ)」

 

一人の男の無事を願いながら足柄は立ち上がる。

 

「さ、鎮守府へ帰りましょう!みんなが心配しているわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光太郎と足柄が鎮守府へ戻ってくると艦娘達が出迎える。

 

『おかえりなさい!光太郎さん!足柄さん!』という旗が待っていた。

 

戻ってきた二人は呆然としてしまう。

 

「よぉ、戻ってきたな?」

 

「や、ヤマト?」

 

「提督、その…格好は」

 

ヤマトはどういうわけか割烹着姿だった。

 

潮と曙も同じ格好。

 

「…え、一体」

 

「ささ、お客様二名だ。漣、朧」

 

「久方ぶりの出番です!」

 

「朧も手伝うよ~」

 

やってきた漣と朧によって二人は連れていかれる。

 

「いつの間に食堂が改装!?」

 

「これは驚きだわ」

 

「お客様がきましたよ~」

 

「文月も手伝いなよ!やること多いんだから~」

 

「二人が手伝え!」

 

厨房から文月と皐月が叫び。長月が訂正に入る。

 

一体、どうなっているのだろうかと光太郎と足柄の二人は困惑した。

 

外では「夜戦、夜戦~~!」と騒いでいる川内の声が聞こえる。

 

しばらくして、割烹着姿の瑞鳳がやってきた。

 

顔にガスマスクを装着して。

 

「え?」

 

「ガスマスク…まさか!!」

 

何かに気付いた足柄が立ち上がろうとしたが既に背後へ回り込んだ如月と睦月に抑え込まれていた。

 

「貴方達!」

 

「ごめんなさいね~」

 

「これ以上の犠牲はだしたくないんです!」

 

犠牲という事でようやく光太郎も理解した。

 

今日の夜の食事当番は。

 

「ぱんぱかぱーん!」

 

割烹着姿の愛宕がいつもの姿でやってくる。

 

それと同時に拘束していたメンバーが離脱。ガスマスクを装着した瑞鳳も即座にテーブルへ皿を置いていない。

 

「さ、召し上がれ~~」

 

そこから先の記憶を二人は失っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「以上が舞鶴鎮守府の報告です」

 

「ご苦労、陸奥」

 

大本営の一室、そこで陸奥は舞鶴鎮守府の現状について報告していた。

 

ヤマトが提督着任という結果に谷は満足している様子。

 

陸奥としても彼が腰を落ち着けて、よき理解者を増やしてくれることに喜んでいる。

 

「現状、ショッカーとゴルゴムは互いの利権をめぐっているのか各地で争いらしき痕跡が見られる。最近みつかった施設はショッカーのものだがゴルゴムと争っているようだ」

 

「互いにつぶし合っているわけですね」

 

「そうだ」

 

陸奥の言葉に谷は頷く。

 

傍で控えている大淀と赤城は沈黙を保っている。

 

「……陸奥、キミからみて舞鶴鎮守府は戦力として」

 

「駆逐、軽巡と少し偏りがあるから不安箇所が多いというところかしら」

 

「そうか…」

 

「……なに?」

 

谷の言葉の節が気になって陸奥は尋ねた。

 

基本的に陸奥は上官へ礼儀を忘れない。しかし、それはあくまで形だけであり彼の仲間であり敬愛するヤマトを侮辱するものがいれば容赦しない。最近も演習中にヤマトを侮辱した提督がおり陸奥や時雨、北上たちの洗礼を受けたことは記憶に新しい。

 

「舞鶴に艦娘を預けたい」

 

「……艦娘を?」

 

「先日の件で心がずたずたにされた艦娘達だ。カウンセリングを受けているが中々戦闘復帰に至らないのだよ」

 

「それなら別の提督でも」

 

「実は」

 

黙っていた大淀が前へ立つ。

 

 

 

 

 

 

「その艦娘達は立花ヤマト提督のもとに行くことを希望しているのです」

 

 




というわけで新しい厄介ごと?艦娘が出てくる話です。

ゴルゴムとショッカーのつぶし合い。

色々と邪魔になってきたということでつぶし合っています。

実は、この作品なんですけれど、ヒロイン…決まっていないんですよね。

ヒロイン候補は要れど…決まっていないという作者も驚きの展開です。


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