艦娘と改造人間   作:断空我

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38.深海棲艦を護る者

ヤマトの朝は寝苦しさからはじまる。

 

最近は第七駆逐隊と北上大井のコンビが布団に侵入してくるので中々に寝れない。

 

そこでヤマトは対策を立てた。

 

「何やってんの…アンタ」

 

「ン、朝か」

 

起床時間になり起こしにきた叢雲の声にヤマトはハンモックから降りる。

 

少し腰が痛い。そこは我慢するしかないだろう。

 

「いつの間にそんなものを」

 

「布団をアイツらに占領されるからな。対策を練った」

 

「流石にばれるでしょ。布団だけだったら」

 

「そのために提督君人形を使った」

 

提督君人形。それは一部の鎮守府の艦娘が製作した特殊人形で顔写真を張り付けることでその提督の顔へ変わる人形だ。

 

一部の提督ダイスキーメンバーからすれば魅力的なものらしい。運よく入手したヤマトは使う機会が来ないと思っていたものを使う羽目になったことで溜息を零す。

 

「でも、一回キリだろうな」

 

提督君人形は艦娘達に抱きしめられて無残な姿になっていた。

 

「あんなもの使ってまで安眠が欲しいの?」

 

「お前も体験してみるか?両腕と両足の自由が奪われて腹部に暖かいものを押し付けられるんだぞ」

 

「…ごめん、私も遠慮するわ」

 

それを想像したのだろう。

 

顔を青くした叢雲を横にヤマトは部屋を出る。

 

数十分後、偽物だと発覚したことにより提督君人形は姿を消した。尚、人形は曙が回収していた。

 

今日の朝食の当番はヤマトと睦月、叢雲の三人。

 

叢雲は最近、味噌汁を作る腕がめきめきと上昇しておりヤマトがおかずを作り、睦月が配膳などを担当している。

 

「にゃー、叢雲ちゃん上手になったねぇ!」

 

「フフン、この私にかかれば当然よ」

 

「そうだな、俺よりも上達できるだろう」

 

「そ、そうかしら」

 

頬を赤らめて嬉しそうに叢雲は味噌汁を作る。

 

ふと、叢雲の頭の中である言葉が浮かんだ。

 

味噌汁を作れる人は結婚を申し込む際に毎日味噌汁を作ってあげるという言葉があるという。

 

「け、結婚!?」

 

「お、おい!」

 

「叢雲ちゃん!ストーップ!鍋が鍋が歪んじゃうからぁあああああああああああああ」

 

 

朝食の味噌汁は鉄の味がしたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失敗したわ」

 

叢雲は待機所でずーんと沈んだ表情をしていた。

 

相棒で親友の吹雪はおろおろしている。

 

「げ、元気出してよ。私なんか失敗の毎日だよ!」

 

「…慰めてくれてありがとう、でも、吹雪、つらくない?」

 

「やめて!考えたら…」

 

「「はぁ」」

 

二人は同時に溜息を吐いた。

 

「あれ~、二人とも何しているの~」

 

「ちょっと!貴方達、私達とこれから出撃なんだからそんな暗い空気だすのやめてくれる!?北上さんによくないものが憑いちゃうかもしれないでしょ!」

 

「あ、ごめんなさい」

 

「溜息くらいで神経質すぎるのよ」

 

「なんですって!?」

 

「あわわわ、大井さん、落ち着いて!って北上さんなんで私の頭を撫でるんですかぁああ!」

 

「そこに阿武隈がいるから」

 

「うわぁぁぁぁぁん」

 

「大丈夫か、この艦隊」

 

本日の出撃メンバー。

 

旗艦:叢雲。

 

以下、同行艦。

 

駆逐:吹雪。

 

軽巡:阿武隈。

 

雷装:北上。

 

雷装:大井。

 

軽巡:天龍。

 

という配置である。

 

「今回は少しだけ遠出するけれど、無茶な進軍は許可されていないから!いくわよ!」

 

「うん!いきます!」

 

「はい!」

 

「いーきーます」

 

「北上さんとならどこまでも!」

 

「世界水準の実力、みせてやるぜ!」

 

以前は重巡の深海棲艦に苦戦していた叢雲達だったがヤマトの指揮や陸奥達遊撃部隊の同行や演習のおかげでかなりの練度を上げており苦戦なく外へでることができた。

 

「(やっぱり、アイツを提督にしたのは間違いじゃない!だから……)」

 

「あれ~、どうしたの?顔が真っ赤だよ」

 

「う、うるさい!」

 

「ちょっと北上さんになんて失礼な態度をとるのよ!?」

 

「うるさいといったのよ!何か問題ある!?」

 

「上等!ここで沈めてあげるわ」

 

「わぁぁぁぁ、魚雷を構えないでください」

 

「大井さん、ごめんなさい!叢雲ちゃん!言い過ぎだよ」

 

「……真面目に大丈夫か?こいつら」

 

戦闘能力は高いが連携能力に大問題なメンツに流石の問題児天龍も頭を抱えそうになった。

 

尚、無線によって話を聞いていたヤマトも頭を抱えている。

 

「どうしました~?」

 

「いや、少しあいつらの仲の悪さというか…おい、瑞鳳」

 

「提督もたべりゅ?」

 

瑞鳳が差し出してきたのは卵焼き。

 

何故、それがここにあるのか。さらにいえば朝から一緒にいる瑞鳳はいつの間にそんなものを作り出したのか。

 

新たな謎が生まれる瞬間だった。

 

「いや、俺は」

 

「はい、あーん」

 

「だから、いらな…おいしいな」

 

「えへへへ、提督ならそう言ってくれると思いました!」

 

花のような笑顔を浮かべる瑞鳳。

 

問い詰めることがバカらしくなりヤマトは口をふさぐ。

 

ちらりと外を見ると睦月、文月、曙、朧、皐月が光太郎たちとサッカーをしている。

 

別の所へ視線を向けると足柄と愛宕を筆頭に演習をしている潮達の姿があった。

 

舞鶴鎮守府が運営を開始して間もなく四か月。

 

平穏が場を包み込みつつあった。

 

ヤマトは空を見た。

 

黒い雲が空を覆いつつある。

 

不吉な何かをヤマトは感じてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

叢雲達は順調に海域を進んでいた。

 

まもなく海域を突破できるだろう。

 

「敵影視認!重巡と軽巡、駆逐です!」

 

「よし、先制は私と北上さんが行きます!」

 

叫ぶとともに大井と北上が魚雷を連発する。

 

大量の魚雷に敵の駆逐艦が煙を上げて沈む。

 

「うっし、俺らも行くぜ!」

 

「は、はい!」

 

天龍が刀を振り回し、阿武隈が後を追う。

 

飛来する砲弾の雨をかいくぐりながら天龍が接近して、刀を振るう。

 

「近接しすぎですよぉ!」

 

刀で軽巡を沈める姿を見て、阿武隈が叫ぶ。

 

阿武隈も飛来する砲弾を躱して近距離で連装砲を放った。

 

何気に天龍の影響を阿武隈も受けている。

 

「あ、重巡が逃げます」

 

「逃がさないわよ!吹雪、いくわ!」

 

「うん!」

 

叢雲と吹雪は同時に魚雷を放つ。

 

逃げようとしていた重巡級は躱す暇もなく轟沈した。

 

残ったのは軽巡の深海棲艦のみ。

 

止めを刺そうとした時、吹雪の顔が険しくなる。

 

「ソナーに反応!嘘…速い」

 

「全員、構えて!」

 

突如、空が薄暗くなる。

 

波が荒れ始めた。

 

「何だ、ってんだよ…」

 

天候の変化に天龍が悪態をついた瞬間、大きく荒れた波の中から漆黒のバイクが現れる。

 

咄嗟に刀で防いだことで天龍自身にダメージはなかった。

 

「天龍さん!」

 

「北上さん」

 

「うん!」

 

阿武隈と叢雲が天龍の所へ駆け寄り、大井、北上、吹雪が魚雷を放つ。

 

黒いバイクは迫る魚雷をやすやすと躱す。

 

「速い!」

 

「……おいおい、海面を走るって、まるで」

 

天龍の言葉を体現しようとするかのようにバイクが海を切り裂いて姿を見せる。

 

バイクの中心にある銀色の髑髏。

 

紫と黒のバイクに乗っている存在はさらに異形だった。

 

有体な言葉で言ってしまえばジャンクで組み合わされた肉体。

 

顔の半分が銀色のパーツで覆われ、オレンジ色の複眼が怪しく輝いている。

 

体のパーツは車のエンジンなどを想像させた。

 

「何だよ…コイツ」

 

間近で姿を見た天龍はあまりの異形さに息を飲んだ。

 

今までにショッカーの改造人間やゴルゴムの怪人を見てきたが全ての群をぬくほどの異形さをもっている。

 

「……俺は守る」

 

「しゃべった!」

 

吹雪が驚き叫んでいる横で異形は逃げの体勢の深海棲艦へ告げる。

 

「逃げろ、ここは俺に任せて」

 

振り返らずに軽巡の深海棲艦は走り去っていく。

 

「おい、てめぇ!」

 

誰もが警戒する中、天龍が刀の切っ先を向ける。

 

「何者か知らねぇが、てめぇも深海棲艦か!」

 

「違う」

 

天龍の言葉を異形は否定する。

 

そして自らの存在を名乗る。

 

「俺は死神…深海棲艦を護る者だ!」

 

叫ぶとともにバイクを走らせた。

 

「うぉぉっ!」

 

猛威に天龍と阿武隈は慌てて躱す。

 

水面で反転させて狙いは吹雪と叢雲へ変わる。

 

「吹雪!」

 

叢雲は咄嗟に庇って槍を構えた。

 

しかし、バイクの先端へ当たった瞬間。乾いた音を立てて折れてしまう。

 

死神が叢雲へ手を伸ばす。

 

手が細い首を掴んで持ち上げる。

 

「グッ…ガッ…」

 

「これは警告だ」

 

死神は叢雲へ顔を近づける。

 

仲間が近すぎることから大井や北上は動けない。

 

「これ以上、深海棲艦を攻撃するな」

 

「なん、ですって」

 

「攻撃するなら俺は敵としてお前達を処分する。警告は一度きりだ。感謝することだ」

 

それだけ言うと海面へ放り投げて逃げ出した軽巡の深海棲艦の後を追う。

 

残された艦娘達は呆然と死神の姿を見ることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、別の海域で戦闘していた呉鎮守府の所に死神が姿を現して戦艦二隻、駆逐一隻を轟沈させたという報告が大本営へ届き、緊急警戒体制が敷かれることとなり、しばらくの間、出動が自粛されることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死神が海で猛威を振るい始めていた頃、南光太郎は買い物へ出ていた。

 

本来なら皐月や文月といったメンバーがついてくるのだが演習と授業が重なってしまったことから光太郎ひとりの外出である。

 

本来、買い出しは軍から送られてくる物資があるため不要なのだがヤマトの独断で栄養第一方針がとられたことから足りない物を買うために光太郎は外へ出ていた。

 

深海棲艦が猛威を振るっていることから食材不足は問題となっていた。ほとんどが輸入にたよりつつあったことが原因。

 

物価の値上がりなどをみながら光太郎は思う。

 

戦いが終わればこれも元に戻るのだろうか?

 

深海棲艦をすべて倒す事。

 

そうすれば、全てが解決するのか?

 

光太郎も何度か深海棲艦と戦ったことがある。憎むべき敵…と完全に思えなかった。

 

同様にヤマト思っているのだろう。戦いの中でお互いに感じている疑問。

 

その答えはどこかにある。

 

「…ん?」

 

買い物を終えて帰る途中、男達が何かを囲んでいる姿が見えた。

 

深海棲艦が出現したことによる物価の上昇は治安の悪化につながってしまった。

 

裕福なものは少し苦しくなりつつも裕福な暮らしを最悪な生活を送っている人たちはより最悪な生活に。

 

最悪な生活から抜け出すべく盗みや犯罪の悪化となった。

 

もしかしたらあれも犯罪なのでは?と光太郎は近づく。

 

大人たちは声を荒げながら白い何かを殴っている。

 

大きなケガにならないよう身を守っているのか白い何かは丸まっていた。

 

見ていた光太郎と赤い瞳と目が合う。

 

「やめろ!」

 

その瞬間、光太郎は男達を突き飛ばしていた。

 

「な、なんだ!」

 

「やめるんだ!こんな小さな子を虐めるなんて!」

 

「うるせぇ!」

 

男達は酔っているのか顔が赤い。

 

鉄パイプを持っていた一人がそれを振り上げる。

 

光太郎はそれをよけると男の手をひねり上げた。

 

「い、いでええええええ!」

 

悲鳴を上げる男を突き飛ばすと仲間と共に逃げていく。

 

「……大丈夫かい?」

 

光太郎は丸まっている少女へ近づく。

 

少女は全身が白かった。

 

人間にしては恐ろしいくらいの白さ、ダボダボの服?をきている。

 

赤い瞳と目が合う。

 

光太郎が微笑むとゆっくりと立ち上がる。

 

少女の服が土まみれだと気づいて光太郎は払い落とす。

 

「ポ?」

 

「うん、これで大丈夫だよ」

 

光太郎が微笑むと赤い少女も笑う。

 

「気を付けて帰るんだよ?」

 

そういって離れようとすると腰辺りに衝撃が来る。

 

振り返れば白い少女は腰にしがみついていた。

 

「どう、したの?」

 

「ポ!」

 

片手を上げて海岸の方を指す。

 

もしかして、と光太郎は考えた。

 

「わかった、送ってあげるよ」

 

「ポー!」

 

嬉しそうに少女は手を上げた。

 

「僕は南光太郎。キミの名前は?」

 

「ホッポ!ホッポ!ダヨ」

 

「ホッポちゃんか、よろしくね」

 

そういって腰にぶら下がっているホッポを抱えたまま光太郎は海の方へ向かおうとした時、誰かが駆け寄ってくる。

 

「ホッポ!」

 

「ポー!」

 

「あ、家族の人ですか?僕は」

 

「ニゲロ!」

 

女性が叫んだ途端、後方からうなりを上げて漆黒のバイクが迫りくる。

 

「うわっ!」

 

光太郎は女性を突き飛ばしてホッポを守る。

 

衝撃と共に壁にたたきつけられた。

 

ホッポの無事を確認して光太郎は顔を上げる。

 

骸骨のついた漆黒のバイク、跨っていた人物は外に向かってはねた髪。鎖などがついた紫の服。

 

無表情の男が冷めた目で光太郎を見る。

 

男の手の中には紫と銀のグリップのようなものを握っていた。

 

光に包まれた瞬間、異形の姿へ変わる。

 

「一体…」

 

「返せ」

 

手を伸ばして異形の死神が見る先はホッポ達。

 

「やめろ!」

 

光太郎がその手を掴んだ瞬間、上空へ投げ飛ばされる。

 

空中で反転、BLACKへ変身した。

 

「トゥア!」

 

反転して死神の顔へ拳を繰り出す。

 

のけ反りながらも手の中の武器で反撃する。

 

「くっ」

 

BLACKは光弾を受け流すと構えをとった。

 

「…貴様は」

 

「仮面ライダー…BLACK!」

 

「……」

 

自ら名乗った途端、死神の動きが止まる。

 

何故、動きが止まったのか。

 

BLACKが身構えていると死神の体がぶるぶると震わせた。

 

「仮面…ライダー、敵、憎い、ホロボス!」

 

「なっ!?」

 

速度が増した死神の動きをBLACKは捉えられなかった。

 

衝撃と共に首を掴まれコンクリートの壁へめり込む。

 

そのまま建物の中へ放り込まれる。

 

「ぐっ」

 

何本もの柱を潰して投げ飛ばされた。

 

BLACKは地面を転がりながら起き上がる。

 

ランランと死神の瞳が怪しく輝いた。

 

「ホロボス…ホロボス!カメンライダーハホロボス!!」

 

叫びと共に死神の拳が迫る。

 

ギリギリのところで躱す。

 

馬乗りになって何度も何度も拳を繰り出していた。

 

一撃受ければさすがの仮面ライダーでもただでは済まない。

 

その時、壊れた壁の向こうから緑のバイク、バトルホッパーが現れる。

 

意思のあるバトルホッパーが死神へ体当たりを仕掛けた。

 

不意打ちの隙をついて、離れる。

 

あの二人の姿はない。逃げているのだろう。

 

バトルホッパーに乗り込んでBLACKは外へ走り出す。

 

死神も後を追いかけようとしたが急に動きを止めた。

 

バトルホッパーで遠くまで逃げた所で光太郎の姿へ戻る。

 

「死神…なんて、奴だ」

 

痛む体を触りながら改めて死神が恐ろしい存在だと思い知る。

 

「……ぁ」

 

光太郎はあることに気付いた。

 

買い物袋を置いてきたという事。食材が盗まれているかもしれない。慌てて光太郎は道を戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アレガ、カメンライダー…モシカシタラ」

 

 

 

 




死神が登場しました。

尚、死神です。死神なのです。

次回、は土曜日くらいに更新予定です。話の修正と…結末検討していますが、終わりまでノンストップでいくつもりです。

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