艦娘と改造人間   作:断空我

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40.潮達頑張る。

「え、提督と恋人になりたい?」

 

「は、はぁ!?何言ってんのよ」

 

「させるかぁぁぁぁぁ!司令官のハートは漣のものだぁああああ」

 

「ち、違うよ。恋人じゃなくて仲良くしたいっていいたかったのぉ!漣ちゃん、胸もまないでぇえええええええ」

 

第七駆逐隊の部屋。

 

休暇の彼女達は元気がなかった潮に気付いて話を聞いていた。

 

「いきなりどうしたのよ?今までそんなこといわなかったじゃない」

 

「その、実は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綾波型駆逐艦潮は悪夢を見た。

 

それはヤマトがいなくなり悪夢の日々が再来するというもの。

 

潮の目の前で曙、朧、漣たちが轟沈してしまうという夢。

 

目が覚めて夢だとわかっていても潮は不安で仕方がなかった。

 

みんなが寝静まっているのを確認して部屋を飛び出す。

 

ヤマトの部屋は頑丈な造りに変わって普通に入ることはできなくなっている。会えないかもしれないと思ったが、意外となんとかなった。

 

「あとで、謝らないと」

 

小さな壁を壊して中に入った潮は持ってきた道具で蓋をして中へ入る。

 

こそこそと泥棒みたいだと思いながらヤマトを探す。

 

「…ぁ」

 

潮は小さな声を漏らす。

 

布団の中でヤマトは眠っていた。

 

規則的な吐息がきこてきたことでようやく潮は安心する。声が聞こえなくても、素顔が見られただけで安心する。

 

その途端、急に眠気が襲い掛かってきた。

 

潮は気づかなかったが時刻は深夜の二時。

 

演習の疲れがまだまだ残っていた潮はそのまま眠りにつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝の五時ごろ、正規空母の瑞鶴は鋼鉄の扉を前にして針金を操作していた。

 

「瑞鶴には恋愛の女神がついているんだから」

 

カチャリと音を立てて扉の鍵が開く。

 

瑞鶴にとってこの程度の敵など楽勝。ポーキサイトを大量消費する心配もない。

 

意気揚々と扉を開けて瑞鶴が見たモノ。

 

「すぅ…すぅ…すぅ…」

 

ヤマトの布団の上に覆いかぶさるようにしている艦娘が一人。

 

それだけなら、それだけなら問題はない。瑞鶴の目が向かったのはその艦娘の胸部装甲。

駆逐艦にしては異常ともいえる大きさ。それが愛しい人の胸板にぶつけられている。

 

ぶるぶると瑞鶴は体を震わせて弓を構えた。

 

「艦載機、発艦!狙い、ヤマトさんにくっついている邪魔虫ィィィィィィィィィ!」

 

立花ヤマトの部屋が炎上。

 

時雨が消火器を持って部屋へ突入するという事態になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、それと仲良くなりたいっていう理由が見えないんだけど」

 

壁を壊したことにつっこみたかった曙だが、それより潮の気持ちの理由が見えなかったことから戸惑い、訊ねる。

 

「その、爆撃で提督さんが私を助けてくれたんだけど」

 

潮が言うには飛来する爆撃機の中から自分を抱きしめて守ってくれたらしい。

 

その時に、潮の中で口にできない気持ちがわきあがった。

 

「よくわからないんだけど、ヤマトさんをみていると胸が痛くなって、体が熱くなって、呼吸が苦しくなるの」

 

「へぇ、病気とかじゃないの?」

 

「ううん」

 

検査を進める朧と不安そうな表情を浮かべる潮に対して曙と漣は互いの顔を合わせる。

 

「どうしたの?二人とも」

 

「疲れたの?」

 

「疲れたというか」

 

「ピュアと天然ほどややこしいものはねぇ!」

 

潮の気持ちがなんなのかわかってしまった曙と漣はなんともいえない表情を浮かべる。

 

「気持ちはともかく、アイツの役に立ちたいのよね?」

 

「……うん」

 

恥ずかし気に頷く潮を見て漣と曙は溜息を吐きたくなる。

 

彼へ好意を寄せる。それは仕方のないことだろうと曙は思う。

 

前、前々の提督にひどい目にあい続けてきた。そこにやってきた提督として必要だと心の底から思わされた人物。

 

好意を寄せることも必然になってくるのかもしれない。

 

だからといってあの正規空母のように積極的にアピールするつもりはない。少しでも役に立てるならという気持ちからなら…。

 

「だったら、私達ができるのは一つね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駆逐隊の部屋。

 

ヤマトは艦娘の部屋を特に指定していなかった。使いたい部屋を見つけた申請するようにという手続きをもってくるようにということのみ。

 

そのため、ヤマトの部屋の向かいへ正規空母瑞鶴が申請しようとしたが陸奥達によって却下される。

 

ヤマト達から少し、かなり離れたところで駆逐艦の暁と響の部屋があった。

 

「ねぇ、響…」

 

「なんだい?」

 

「そのお菓子、食べないの?」

 

二人部屋、向かい合うようにベッドに座っている暁が響へ訊ねる。

 

「信用できないからダメだ」

 

「……でも」

 

暁の表情を見て響が制す。

 

「忘れたわけじゃないだろう?暁。人間が私達にしたことを」

 

びくぅと暁が自分の体を抱きしめる。

 

悪いことだと思いつつも響は必要なことだと自分を納得させた。

 

あの司令官がどれだけ信用できるかわからない。

 

それなら――。

 

コンコン、と扉がノックされた。

 

音に暁が震える。

 

「私が出るよ。暁はそこにいて」

 

響は艤装を展開できるようにしつつ、ノックされた扉を開ける。

 

「あ、あの」

 

扉の向こうにいたのは綾波型の駆逐艦。

 

「潮さん、だっけ?」

 

「う、うん、綾波型十番艦の潮です」

 

「…何の用だい?」

 

「提督さんから連絡を受けたと思うけれど、明日からの艦隊編成で一緒のメンバーになったから、その」

 

「懇親会をやろーZE!」

 

「あ、漣ちゃん」

 

潮を押しのけて漣が前へ出る。

 

「おいしい、お菓子もあるよ?」

 

「お、朧ちゃん!?」

 

「ほら、困惑するから全員で突撃しない。ごめんね。まだ通達が来ていないかもしれないけれど、一緒に戦う仲間だから親睦でもしようかと思ってね」

 

「結構」

 

響は潮達の提案を拒絶する。

 

「任務は受けるとも、けれど、必要以上の接触を持つつもりはない。断るよ」

 

「そ、そういわず」

 

「失礼」

 

潮達の話を最後まで聞かずに響は扉を閉める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…それで、僕に愚痴を言いに来たって?」

 

「何なのよ!あの態度!こっちは善意からいっているっていうのにぃ!」

 

「落ち着きなよ。曙さん」

 

「皐月のいうとおりだよ~」

 

「長月も同意見だ。それより、光太郎の邪魔をすべきではない」

 

食堂で皿洗いをしていた光太郎の前にやってきた第七駆逐隊。

 

漣と朧はお菓子をぼりぼり食べて曙は先ほどの事を思い出して怒っている。

 

手伝いをしている皐月や文月、長月は曙をなだめようとするが光太郎は気にしていなかった。

 

「僕は別にいいさ。それよりも響って子、気になるね」

 

「どういうこと?」

 

「みんなと仲良く成りたがらないってところだよ。年齢はわからないけれど、あれぐらいの子だと誰かと親しくなりたいとかそういうことがあっても」

 

「いやー、どうでしょう?艦娘、特に駆逐艦は変わり者が多いですから」

 

「変わり者代表のアンタが言うと説得力あるわね」

 

「なんですとぉ!?」

 

『確かに』

 

「ガッデム!全員、敵だったかぁああああああ」

 

騒ぎ出す漣を置いて光太郎は響のことが少し気になった。

 

話を聞いている限り、最低限の食事しかしていないのではないだろうか?光太郎は残っている食材などをチェックしてあることを思いつく。

 

夕飯の時間。

 

響と暁がいそいそとやってくる。

 

二人はいつも誰もいない時間を狙っている。光太郎の予想通り彼女達は姿を見せた。

 

「あれ、張り紙がない」

 

疑問の声を上げたのは暁だろう。

 

それを見計らって光太郎が現れる。

 

身構える二人へ手短に伝えた。

 

「実はメニューの食材が切れたんだ」

 

「夕飯はなしかい?」

 

「いや、まかないになってしまうんだけど、それでいいなら作れるんだ」

 

「…どうする?」

 

「何も食べないというのは体に良くない…頼んでもいいかい?」

 

「あぁ」

 

光太郎は頷くと二人と食堂へ案内する。

 

つかず離れずの距離を保って二人は席に着く。

 

響は周囲と光太郎を逐一警戒している。料理に怪しいものを入れないかのことだろう。

 

料理をしながら話しかける。

 

「キミ達は好き嫌いとかはあるかい?」

 

「あ、暁は」

 

「基本的、私達艦娘に好き嫌いはない」

 

「あう」

 

暁は嫌いなものがあったのだろう。

 

光太郎は苦笑しつつ、暁へ訊ねる。

 

「暁ちゃんだっけ?嫌いな野菜とかある?」

 

「あ、暁はレディーよ!好き嫌いなんてないわ!そうよ、ナスなんて嫌いじゃないわ!」

 

「わかったよ。ナスは入れない」

 

「本当!?」

 

「あぁ、約束だ」

 

はじめて顔を輝かせる暁の横で響の表情は険しかった。

 

「ほらよ、チャプチェとごはん、水餃子のスープだ。少し辛いけど、おいしいはずだよ」

 

「あ、ありがとう」

 

「スパスィーバ」

 

響と暁はご飯を手にチャプチェを食べる。

 

「辛い~でも、おいしい!」

 

「驚いた。これはおいしい」

 

「そういってもらえると調理した甲斐があるというものだよ」

 

光太郎は微笑む。

 

「どうして、こんなことをしてくれるんだい?」

 

「え?」

 

「貴方は軍属というわけでも私達の料理の世話をする義務もない。なぜ、こんなおいしい料理を作ってくれたんだい?」

 

「響…」

 

「お腹がすいている子に料理を作る。大人として当然のことだと思うけど」

 

「人間は打算がない限り動かない。そういうものだ」

 

断言するように言う響。

 

その姿を見て光太郎の胸は痛くなる。

 

外見にして小学生から中学生の少女が何もかも疑っているという事。本来なら無邪気に楽しんだりしている年齢だというのに…光太郎は思う。

 

何が彼女達を変えてしまったのだろうか。

 

「本当に、そう思うかい?」

 

「当然だ。ここの提督もその一人だ」

 

響の言葉は断言するものだった。

 

「提督という存在は己の地位と名誉だけに拘っている、昔の艦長等と違い、誇りや確固たる意思が存在しない。ここの提督も同じだ、いずれ艦娘を消耗品みたいに使い潰すだろう」

 

「そんなことはないよ」

 

「同じ人間を庇うのは当然のことだよ。悲しいけれど」

 

「違うよ。そんなことは絶対にしない」

 

「残念だけど、信用できない。ご飯、おいしかったよ。ありがとう」

 

悲しそうに光太郎は言う。

 

響は表情を変えずに食堂を出る。

 

暁もぺこりと頭を下げて後を追う。

 

「キミ達が本当に助けてほしいと望んだ時、アイツは動く。キミ達を見捨てるなんてことはしない」

 

立ち去る二人の背中へ光太郎は声をかける。

 

返答はないことがわかっていたので厨房を片付けて、光太郎は倉庫に向かう。

 

――バトルホッパーとロードセクターをきれいにしないと。

 

彼女達の事を心配しつつ、何もしないヤマトがどうするのか彼のいる部屋へ視線を向けつつ光太郎は厨房を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなに人間は信用できない?」

 

響と暁が部屋へ戻ろうとすると壁にもたれている朧がいた。

 

「当然だよ」

 

間髪いれずに響が答える。

 

「理由を聞いても?」

 

「話したとして何か変わるかい」

 

「変わるかもしれない変わらないかもしれない…すべては話してみてからだと朧は思うな。なにより、みんなと同じだもん」

 

「……同じ、何を」

 

「私達も一時、提督を不要として艦娘だけで生きていくつもりだった」

 

「え?」

 

「それは、どういう」

 

朧は短いながらも話す。

 

提督やお手伝いが改造人間であることは明かさない上で前と前々の提督がしてきた非道なことを、反乱を起こして提督を追い出したこと。艦娘達で生きていこうと決めていたなどを伝える。

 

「それなら、なんでここに提督が」

 

「色々あったと話しておくわ…とりあえず、明日の任務はよろしく~」

 

ひらひらと手を振って朧は廊下を歩いていく。

 

残された暁と響は困惑する表情を浮かべるのみだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雲一つない、天気だね~」

 

「絶好の出撃日和ですなぁ」

 

潮と漣の言葉に曙は静かに同意して、朧は随伴している響と暁をチェックする。

 

艤装を展開して二人は少し離れたところに続く。

 

旗艦を務める朧達の艦隊は順調に航路を進んでいた。

 

道中、深海棲艦と交戦するが全て撃沈、こちらの損傷はゼロだった。

 

「これならご主人様に良い報告ができそうです」

 

「あのクソ提督の事だからちゃんとしたねぎらいしてきそうね」

 

順調だったことから空気にゆるみが入る。

 

普段なら気を引き締めている曙すら少し言葉を零していることからそれは誰もが感じていたのだろう。

 

だからこそ、奴の出現は予想外過ぎた。

 

「っ!?」

 

飛来する光弾を曙はギリギリのところで躱す。

 

「曙ちゃん!」

 

「私は大丈夫!それよりも鎮守府に連絡!」

 

潮は戸惑いながら艤装で連絡を取る。

 

その時、上空から唸る音。

 

「艦載機だおとぉ!?」

 

叫びと共に漣へ襲い来る深海棲艦の艦載機。

 

「させない」

 

響が対空砲で艦載機を撃ち落とす。

 

しかし、数が多く数機漏らしてしまう。

 

隊列が乱れたところで海面を歩いてくる存在がいた。

 

「艦娘、深海棲艦を脅かす存在」

 

「…死神」

 

 

「深海棲艦を俺は守る。脅かすものは排除する!」

 

深海棲艦と共に現れる死神。

 

大本営によって危険指定された彼は至る所に姿を現して艦娘を襲う。

 

今の所鎮守府近辺に現れなかったことから大丈夫だろうと思っていたがこんなところまで現れるとはと朧は内心舌打ちしつつ、目の前の状況を見る。

 

「姿はないけれど、空母がいるわね」

 

「エリートじゃないことを願う!」

 

「漣、被害は?」

 

「小破程度、まだまだやれるぅ!」

 

「潮、提督へ連絡は」

 

「つ、ついたよ。すぐに」

 

「危ない!」

 

曙が足蹴を咄嗟に繰り出す。

 

海面を蹴り、死神が潮めがけて拳を振り出すのとほぼ同時だった。

 

蹴りを受けてバランスを崩したことで死神の拳は海面に突き刺さる。

 

派手な音と揺れで彼女達はばらばらになる。

 

「なんつぅ衝撃よ!」

 

「死神、おそろしすぎる!」

 

「暁!」

 

「あ、こら、離れたら!」

 

ふらふらと倒れた暁へ響が駆け寄る。

 

「だ、大丈夫」

 

「良かった、すぐに離れよう。ここは」

 

「響!後ろ!」

 

暁の叫びに響は振り返る。

 

海面から深海棲艦、戦艦タイプが現れた。

 

冷めた目が二人を捉える。

 

そして、主砲を放つ。

 

飛来する砲弾、躱すことができない。直撃コースだ。

 

響は呆然と見ていることしかなかった。

 

「だめぇええええええええええええええええええ!」

 

その時、潮が信じられない速度で間に割って入る。

 

飛来する砲弾に自らの艤装をぶつけた。

 

派手な音と共に潮の艤装がはじけ飛ぶ。

 

そして、潮は海面を転がる。

 

「潮!」

 

「だい…じょうぶ」

 

ふらふらと体を起こす。

 

魚雷発射管は無事だが主砲は大きく歪んでいて発射できそうになかった。

 

響が瞳を揺らして声を漏らす。

 

「何で…」

 

「大丈、ぶだよ」

 

潮はそういって響を抱きしめる。

 

「私達がいる限り、絶対に、死んだり、しないから!」

 

「無理だ」

 

響はその言葉すら否定する。

 

相手は明らかに自分たちより各上。

 

そんな存在に勝てるわけがない。

 

「大丈夫」

 

尚も潮は言う。

 

「当然!」

 

彼女だけでない。

 

「私達には最高の」

 

「クソ提督がいるから」

 

朧、漣、曙は諦めていない。

 

それがより響を混乱させた。

 

何故、

 

何故、という言葉が頭の中で繰り返される。

 

「だって」

 

曙の言葉と共に海面で聞こえるはずのない音が轟く。

 

「私達のクソ提督は最高で、最強なんだから!」

 

風と共に響達の前に彼は現れる。

 

特殊戦闘服に身を包んだ。

 

仮面ライダー。

 

その姿に響と暁は目を見開き、潮達は希望の色を浮かべる。

 

仮面ライダーは彼女達の無事を確認したところで前を向く。

 

同時に死神の拳が襲い来る。

 

拳を受けた仮面ライダーの体は近くの岩礁にたたきつけられた。

 

「仮面ライダー…敵、排除スル!」

 

叫びと共に繰り出される拳。

 

その一撃を受け流してから仮面ライダーは右に左へ飛び回る。

 

「逃がさん!」

 

逃げる仮面ライダーを追う死神。後を追う深海棲艦達。

 

それをみて朧は決意する。

 

「撤退する」

 

「この隙に、逃げるわよ」

 

朧と曙が潮を抱えて、漣が動揺している暁と響へ手を伸ばす。

 

「さ、帰りますよ」

 

「……帰る?」

 

そうです、と漣は言う。

 

「ご主人様が私達を守ってくれている間に、このまま鎮守府へ向かいます」

 

「え、あれ、提督なの!?」

 

「……」

 

「そうですよ」

 

きょとんとした顔で漣が言う。

 

暁は呆然と遠くから聞こえる音を見ていることしかできなかった。

 

漣と暁に手を引かれて響は動き出す。

 

その目は未だ、猜疑心で満ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、仮面ライダーと死神の戦いは苛烈さを極めていた。

 

一撃を受ければ同じくらいの一撃を返す。

 

深海棲艦を倒したら激怒して拳の威力が増していく。

 

「死神と恐れられるわけだ…それにしても」

 

仮面の中でヤマトはある疑問が浮かぶ。

 

仮面ライダー。

 

先ほどから死神はこの言葉に過剰反応を起こしている。

 

ヤマトとしてはこのジャンクの集まりと戦った記憶はない。そもそも出会ったら忘れることがないだろう。だが、目の前の死神は仮面ライダーという言葉に異常な反応を見せていた。

 

果たして、死神とは?

 

ヤマトが考えていた時、全身を冷たい殺意が包み込む。

 

あまりの冷たさに一瞬、動きを止めてしまいそうになる。

 

迫る死神の拳と拳をぶつけた。

 

衝撃の余波で二人とも海面に倒れる。

 

その時、水底から白い手が死神へ伸びた。

 

「…!?」

 

「………わかった」

 

死神はその手を掴むと仮面ライダーへ背を向けて去る。

 

残された仮面ライダーはただ、死神の背中を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「疲れた」

 

鎮守府の執務室へ戻った立花ヤマトは椅子へ深く腰掛ける。

 

改造人間は普通の人間より疲労が少ない。

 

しかし、命の危険をいくつも行うと疲労の貯まり具合は半端ないものだ。鎮守府へ戻ると勝手に抜け出したことで激怒した叢雲とベッドインさせようとする瑞鶴との乱闘がはじまったのだ。

 

命の危険の少ないが疲労は貯まる。

 

たまってしまうものだ。

 

「提督って職業は難しいよ…長門」

 

嘗て殺した彼女の事を思い出してヤマトは自虐的な笑みを浮かべる。

 

その時、扉がノックされた。

 

「どうぞ」

 

「失礼するよ」

 

「……響か、入渠を終えたのか?」

 

「立花ヤマト提督、貴方に質問がある」

 

「答え次第によっては艤装で砲撃か?」

 

「そうなるかはあなた次第だ」

 

響は艤装を纏っておりいつでも主砲を撃てると宣言していた。

 

厄介ごとばかりだ、とヤマトは溜息を零したくなった。

 

「どうぞ」

 

「まずはあの姿、あれは本当に司令官なの?」

 

「これで満足か?」

 

目の前でタイフーンを出現させて戦闘服を纏う。

 

仮面を装着せずに机へ置く。

 

「事実のようだね」

 

「終わりか?」

 

「まだだよ。続きになるけれど、司令官は何ものなの?」

 

「ただの化け物だよ」

 

「それで納得すると思うかい?」

 

「……大本営の極秘事項に触れるがいいのか?」

 

「構わない、答えが聞けるなら」

 

ヤマトは響へ改造人間であるという事、秘密結社ショッカーについて話す。

 

「そんな存在がいたのかい」

 

「まぁな……」

 

「どうして司令官は戦っているの?」

 

「話したくない」

 

「何かメリットがあるのかい?」

 

「命のやり取りだ、メリットよりもデメリットしかねぇよ」

 

「嘘だね」

 

響は否定する。

 

「戦う理由は何かメリットがあるんだろう?何か褒美でももらえるのかい?それとも勲章とやらが欲しいのかい?」

 

駆逐艦響。

 

彼女は人を信じることができない。

 

元々、彼女は小さな警備府で頑張ってきた。

 

提督は無口だけれど優しい人で色々と教えてくれた。

 

しかし、その警備府は深海棲艦の襲撃で崩壊した。提督の響きを守って命を失う。その後、配属された鎮守府、そこで響は人間に絶望する。

 

自分の出世にしか興味のない提督。

 

兵器として自分たちを扱い続けて、轟沈は当然のような態度ばかり。

 

極めつけは姉共々怪しい組織に売り払われた事。

 

他の人間、憲兵、仲間であるはずの艦娘ですら響達を助けてくれなかった。

 

だから、響は絶望した。

 

人間を信じないことにした。彼女が信じるのは姉妹のみ。

 

そんな響は目の前の異形、しいて言えば人ならざる存在がいる鎮守府、もしかしたら前みたいなことがあるかもしれない。

 

だからこそ、目の前の男の真意を問い詰めるつもりだった。

 

だというのに。

 

「何でそんなもん欲しがらないといけないんだよ」

 

目の前の男は勲章や出世という言葉に思いっきり顔を顰める。

 

「……え」

 

響は困惑してしまう。

 

目の前の男が今までの人間と違う態度を示したからだろう。

 

「最初のころと変わったけれど、俺が戦う理由は…………お前達を守りたいからだよ」

 

ヤマトの脳裏に雨の日の出来事が蘇る。

 

何度も、やり直したいことを願った。

 

けれど、それは叶わない。

 

「嘘だ……そんなこと、そんなことあるわけ」

 

「別に信じなくていいさ。お前が俺の事を嫌いなら従わなくていい。ずっと疑い続けていろよ…でもさ」

 

その時になってヤマトが響に近づいて目を合わせる。

 

離れようとした響だが彼の目を見て動きを止めた。

 

今までの人間にないものがあった。

 

提督という人間の目はどこか濁っていた。それだというのに、目の前にいる男ははじめて着任した時の。

 

ポロ、

 

響の目から涙がこぼれる。

 

とまることなくぽろぽろと涙を零していく。

 

声を上げて響は泣き出す。

 

大好きだった提督の名前を言いながら。

 

数十分くらいの時が流れて。

 

「気は済んだか?」

 

「恥ずかしいね」

 

「そうか?受け止めてくれる人がいるんだからそれぐらい喜びに思っておけ」

 

「…微妙なところだよ」

 

「そうか」

 

肩をすくめたヤマトへ響が声をかける。

 

「悪いけれど、私はまだ司令官が信じられない。だから、長い時間をかけて貴方という人を見極めさせてもらう」

 

「好きにしろ…ただな」

 

ヤマトは扉の方を見て笑みを浮かべた。

 

「お前の仲間くらいは信じてやれ。ここにいる奴は良い奴ばっかりだからな」

 

「あの、響、ちゃん」

 

後ろからおずおずと潮が現れる。

 

「これからみんなで食堂にいくんだけれど……こない?」

 

響は潮を見てからヤマトをみた。

 

「少しずつだけれど、やっていくよ」

 

「そうか」

 

「え、あの」

 

「同行するよ……潮、さん」

 

「うん!」

 

パァッと輝く笑顔を浮かべる潮を見てヤマトは微笑む。

 

「潮」

 

去ろうとした彼女へヤマトは声をかける。

 

「今日はごくろうさま、ゆっくり休めよ」

 

「は、はい!」

 

先ほどよりも輝いて潮は響と出ていく。

 

「あと、お前らもな」

 

外で話を聞いていたであろう第七駆逐隊残りのメンバーへ声をかけてヤマトは椅子へ深く腰掛ける。

 

遠くへ去っていく足音を聞きながらヤマトは薄暗い空を見た。

 

「長門、俺は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光一つない海の底、

 

そこに彼女はいた。

 

彼女だけではない。死んだように佇む死神の姿もある。

 

「愛しい彼…」

 

ぽつりと呟く。

 

白い肌で血のように赤い瞳はある場所を見続けていた。

 

「愛しい彼を感じる。彼が私に気付く…その日が近い…」

 

ニタァと三日月の笑みを浮かべて彼女は時を待つ。

 

 




感想が少ない。この作品についてどう思われているのかというものが知りたいという気持ちが強くなる。しかし、この好奇心、自分を殺しかねないというややこしさ。

ちなみに暁は響と一緒に売られたショックで人間を信じることが怖くなっているという設定があります。

信じたいけれど、裏切られたらどうしょうという不安で怯えた暁です。

次回の話は…新入りの一人に話が行きます。

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