艦娘と改造人間   作:断空我

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41.轟沈を願う

太陽が閉ざされた海。

 

そこに二つの存在がぶつかっていた。

 

拳と蹴りで相手に挑む仮面ライダーBLACK。

 

サタンサーベルと重厚な拳と蹴りを放つ魔王・シャドームーン。

 

大破した加賀が二人の戦いを見ている。

 

どうして、こんなことになっているのか、それは少し前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

南光太郎は鎮守府の倉庫に置かれているロードセクター、バトルホッパーの整備をしていた。

 

バトルホッパーはゴルゴムから脱走する際に出会ったバイク。

 

普通のバイクと違い、バトルホッパーは意思を持っており光太郎の危機を感知すれば駆けつけてくれる。

 

ロードセクター。

 

大門というバイクの神様といわれる人物が発明した超高速バイク。

 

一度はゴルゴムの文明破壊マシンにされそうになったが仮面ライダーBLACKの手に渡った。

 

光太郎は相棒達の手入れを日課としている。

 

食堂の仕事を終えた光太郎が手入れの為に倉庫へ入ろうとした際、見慣れた姿がやってきた。

 

「あれ、皐月ちゃん、望月ちゃん?」

 

倉庫の中には食堂でともに手伝うことが多い駆逐艦皐月と望月の姿があった。

 

「あ、光太郎さん、遅かったね」

 

「んあー、おい、バトルホッパー、押すな押すな」

 

皐月がロードセクターを掃除しておりさぼろうとした望月をバトルホッパーが急かしている。どうして、二人がいるのか、傍で控えている長月が教えてくれた。

 

「元々、光太郎さんがここでマシンの手入れをしているのは知っていた。そこで皐月が」

 

「わーわー!長月!それ以上言わなくていいから!」

 

顔を赤らめて手をばたばたさせる皐月を見て望月とバトルホッパーが笑う。尤もバトルホッパーは赤い複眼を点滅させているのみ。

 

「とにかく~。光太郎さんも手伝いをしたいってことで望月たちはいるんだよ~あ、ねみぃー」

 

「そうだったんだ。ありがとう」

 

光太郎はそういって皐月たちの頭を撫でる。

 

「うむ」

 

「えへへ、光太郎さんに撫でられるの大好きだよ!」

 

「提督とはまた違った味がするって、バトルホッパーつつくな」

 

三人に手伝ってもらいながら光太郎は相棒達の手入れをする。

 

それから三人を部屋に送り届けてから(望月と皐月は途中で寝てしまった)自室に戻ろうとした光太郎は動きを止める。

 

港に人の姿があった。

 

一瞬、川内かと思って素通りしようとした光太郎だが髪型と背格好から違うと気づく。

 

「確か…」

 

光太郎が近づいていくと彼女は振り返る。

 

青い袴に白い着物、髪を片方に結って、弓を構えている姿は。

 

「加賀さん、だったかい?」

 

「貴方は…南光太郎ね」

 

正規空母加賀。

 

少し前に舞鶴鎮守府所属となった艦娘、ヤマトから聞いた話だと「何を考えて内へやってきたのかわからない奴」ということだった。

 

勿論、ヤマトだけでない。鎮守府に所属する艦娘達がどれだけ話しかけても加賀はまるで相手にしない。それどころか今のように弓を構えて訓練をする毎日。

 

変わり者という言葉が定着しつつある空母の艦娘。

 

「もうそろそろ零時になる。寝たらどうだい?」

 

「必要ないわ」

 

「…仮にも女の子なんだからさ」

 

「私は兵器よ。そんな扱い不要。ここの提督にも伝えてある」

 

どこまでも冷たく加賀はいう。

 

光太郎としては何故か彼女の事が気になっていた。

 

一目惚れとかそういうものではない。

 

何かが光太郎の中で気になっていたのだ。

 

だから、他の艦娘達が様子を見始めている中で光太郎のみが毎日、話しかけている。

 

「貴方もしつこいわね。私は誰かと関わることを望まないのに」

 

「そんな寂しいことを言っちゃいけないよ。ここにいるのは仲間で家族なのに」

 

「仲間、家族」

 

何かを思い出すように加賀が海の遠くを見る。

 

しかし、それは一瞬の事で光太郎へ拒絶の言葉を伝えた。

 

「必要ない。私に、家族や仲間なんてもう、要らない」

 

「どうして――」

 

「話はそれだけ?集中が切れたから部屋に戻るわ」

 

光太郎の横をよぎって加賀は寮へ向かう。

 

残された光太郎はただ、加賀の背中を見ているだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「加賀の事を教えろ?いきなりなんだよ」

 

執務室で書類の山に囲まれた親友の立花ヤマトは訊ねかえす。

 

「少し気になって…所で、大丈夫か?」

 

「俺が大丈夫みえるなら、眼科にいくことをお勧めするよ」

 

ヤマトの周囲を囲むように展開されている書類の山、秘書艦代理として手伝っている吹雪も苦笑を浮かべている。

 

「叢雲ちゃんは?」

 

「性質の悪い風邪だとさ。一日休めば何とかなるそうだ」

 

「そっかぁ」

 

「秘書艦交代本気で検討すべきだと理解したよ」

 

ぽつりとヤマトが愚痴を零す。その横で微笑んでいる吹雪の目は「危険、対策を練らなければ!」と焦っていた。

 

それに気づいているのか気づいていないのか、光太郎は本題へ戻る。

 

「ところで、加賀さんの件だけど」

 

「正規空母加賀、少し前まで別の鎮守府にて一番艦隊を務めていた…ことまでしかわかっていない。なぜ、大本営直属になり舞鶴へきたのか、それらが真っ黒だ」

 

「真っ黒?」

 

「ほら」

 

ヤマトは光太郎へ書類をみせる。

 

言葉通り、加賀の経歴が途中で真っ黒に塗りつぶされていた。

 

「これは…」

 

「色々と知られたくないものがあったんだろうなぁ」

 

溜息を零しながらヤマトは書類を片付ける。

 

どうやらノルマを達成したらしい。

 

そこで吹雪がお茶を入れてくれる。

 

「ま、この鎮守府、正確に言えば俺の所へ送られてくる時点で問題があるんだろうけどなぁ」

 

「……信頼されているんじゃないのか?ほら、彼女達の不信感とかを取り除いたわけで」

 

「違う」

 

光太郎の言葉をヤマトは否定する。

 

「違う、って?」

 

「ここは最後の砦ってことだ」

 

「最後?」

 

「まぁ、ありていに言えばここで改善が見られなければ解体するってことさ」

 

え!?と吹雪が驚いた顔を浮かべる。

 

「そんな!」

 

「文句を言いたくなるだろう。俺だって言いたいさ。人をなんだと思っているんだとな」

 

光太郎は察した。

 

ヤマトは本気で怒っている。

 

艦娘を大本営の一部がどう捉えているのかわからない。けれど、一部が舞鶴鎮守府をゴミ箱のように見ているということにヤマトは怒っている。

 

そして、艦娘達を消耗品のように見ている連中がいるという事に。

 

光太郎も憤慨していた。

 

加賀は消耗品などではない。

 

何故なら…。

 

「俺からいえることは加賀が気になるのはいいけれど、問題は起こすなよ。ロリコン光太郎君」

 

「わかっ…待て、誰がロリコンだ!」

 

「お前以外に誰がいる?倉庫で駆逐艦と何やってんだ?」

 

「何もやっていないのは知っているだろう!?からかうなよ」

 

「ストレス解消だ」

 

ニヤニヤと笑うヤマトをみて、光太郎は殴るか?と検討してやめる。

 

此処の快適さは目の前の男にかかっている。この程度でなんとかなるのなら多少の事は目をつむろう。

 

何せ。

 

「悪いな、俺が動かないといけないのに」

 

「僕が気にしているんだ」

 

「そうか」

 

「ヤマトは背負い込みすぎだ。僕にも任せろ」

 

「お前にもいえることだろーに。吹雪、お茶のお代わり」

 

「は、はい!」

 

ヤマトと吹雪のやり取りを見て、光太郎は微笑みつつ外に出る。

 

どうするかと考えていた時、バタバタと慌てた様子で睦月と如月の二人がやってきた。

 

「…どうしたんだ?」

 

やけに慌てた様子だったので光太郎は尋ねる。

 

「た、大変なの、か、加賀さんが」

 

「無断で出撃したの!一人で!」

 

普段冷静な如月まで焦っていたのを見て光太郎は落ち着くように促す。

 

「どういうことか説明してくれるかい?」

 

「港を歩いていたんだけど…」

 

「加賀さんが「見つけた」って叫んだと思うと艤装を展開して海に飛び込んだの」

 

「睦月達が止めようとしたんだけど、とんでもない速度で出て行っちゃって追いつけなかったの」

 

「……見つけたって、何を?」

 

「わからないわ、ただ、空を凝視していたから…深海棲艦か何かだと思う」

 

「とにかく、司令官さんへ早く伝えないと!って、光太郎さーん!?」

 

嫌な予感がする。

 

光太郎は窓から外へ飛び降りると倉庫に置かれているロードセクターへ跨る。

 

エンジンを入れて光太郎は走りだす。

 

港から海面へ飛び込むようにしてロードセクターを走らせる。

 

ロードセクターは妖精の手によって改造されて海面でも走ることが可能となっている。

加賀がむかった先がどこなのか、どこに向かうべきか考えていた光太郎の耳は艦載機のプロペラ音を捉える。

 

「あっちか!」

 

ロードセクターを向かわせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、加賀は弓を構えて艦載機を放つ。

 

矢が炎のようなものに包まれると紫電改二へ姿を変えて、空を舞う異業へ攻撃を仕掛ける。

 

しかし、相手は大きく上昇して攻撃を逃れた。そればかりか紫電改二を叩き潰す。

 

「やはり一筋縄ではいかないようね」

 

艦載機が叩き潰された事に怒りを感じつつも加賀は続けて第二攻撃を開始する。次々と艦載機を放ち相手へ攻撃を続けていく。

 

鬱陶しくなってきたのか空を舞っている異形、コウモリ怪人は遠くにいる加賀へ向かう。

 

「上等です。きなさい」

 

加賀が弓を構えた時、海が静まり返る。

 

それだけでない。風が止む。

 

「……なに?」

 

周囲がまるで切り取られたような静けさに加賀の動きが止まる。

 

それと同時に空を飛行していた怪人も海面へ降り立っていた。そればかりか膝をついて頭を垂れていた。

 

乾いた音が響きだす。

 

加賀は音の方へ弓を構える。

 

いつの間にか雨雲に包まれた海、

 

海面を歩いてくる新たな異形の姿があった。

 

人の姿をしていた。しかし、全身を銀色のような鎧に身を包み、腹部に緑色のベルト、飛蝗を模した顔。緑の複眼。

 

「貴方、あれの仲間かしら?」

 

「仲間?あれは私の手下だ」

 

「そう」

 

「今度は私から質問しよう。貴様は艦娘か?」

 

「だとしたら?」

 

「ゴルゴムの実験体として貴様を連れていく」

 

「そう…ようやく見つけた!」

 

憎悪の炎をたぎらせて加賀が矢を放つ。

 

彗星へ変わる瞬間、矢が真っ二つに断たれる。

 

「なっ」

 

息を飲む。

 

艦載機に変わる瞬間、赤い光によって矢が両断される。

 

異形の手の中にある剣によって斬られていた。

 

「成程、興味深い力だ」

 

シャドームーンは驚愕で目を見開いている加賀をみて感想を漏らす。

 

ゴルゴムが艦娘という存在に興味を持ったのは少し前。

 

深海棲艦と艦娘に興味はなく、牙をむけば叩き潰すという方針をとっていた。しかし、ビルゲニアが派遣の為にひっそりと艦娘のデータを集めていたことを知ったシャドームーンは拉致を命じる。

 

しかし、それらを「仮面ライダー」と名乗る男に妨害され続けたことによってシャドームーンは自ら一人拉致することを決めた。

 

彼が目を付けたのは正規空母加賀。

 

加賀は冷静に次の矢を射る。

 

それをサタンサーベルで切り落とす。

 

矢を放つ。

 

怒りに身を任せた加賀は何度も矢を放ち続けた。

 

そして、

 

「しまった…」

 

矢筒がからになる。

 

下がろうとしたところでシャドームーンがサタンサーベルを振るう。

 

赤い斬撃が加賀を襲う。

 

体への直撃は躱せた。

 

しかし、手の中にあった弓が音を立てて折れる。

 

「ゴルゴムの脅威…とはならんな。だが実験材料としては使える」

 

膝をついた加賀を回収するようコウモリ怪人へ指示を出す。

 

立ち上がったコウモリ怪人は加賀を捕えようと近づく。

 

唯一の武器を破壊されながらも抵抗の意思をみせる。

 

コウモリ怪人が加賀へ覆いかぶさろうとした瞬間、何かに弾かれた。

 

「…来たか」

 

シャドームーンが静かに呟く。

 

海面に現れるのはロードセクター。

 

そして、南光太郎。

 

「貴方!どうして…いえ、人間が海を」

 

「来ると思っていたぞ。ブラックサン!」

 

「…信彦」

 

ヘルメットの中で光太郎は顔を歪める。

 

大切な親友を前にするとやはり迷いが生じた。

 

彼と戦いたくない。

 

元に戻ってほしい。

 

その気持ちに嘘偽りはなかった。

 

「信彦!お前は信彦なんだ!」

 

「確かに、俺は秋月信彦だ」

 

「だったら!」

 

「しかし!今の私は世紀王にして、ゴルゴムを統括するシャドームーン!そして、貴様はブラックサン!我々は戦う運命にあるのだ!」

 

「違う!俺達は戦う事なんてない!そんな」

 

「運命からは逃れられんのだ!」

 

叫びと共に振るわれる斬撃を躱す。

 

シャドームーンの指示を受けていたコウモリ怪人が加賀へ近づく。

 

「…触れるな!」

 

咄嗟に加賀が足の艤装で蹴り飛ばす。

 

女性といえど艦娘。

 

通常の人間の倍の力がある。

 

攻撃を受けたコウモリ怪人は吹き飛ばされた。

 

「武器はなくても私は戦える」

 

「目障りだな」

 

シャドームーンが呟くと加賀に向けてサタンサーベルを向けた。

 

「やめろぉ!信彦ォ!」

 

光太郎の叫びを聞かず赤い斬撃が加賀を襲う。

 

「加賀さん!!」

 

直撃を受けた加賀は爆炎の中から姿を見せる。

 

艤装のほとんどが壊れて、服も所々破けていた。

 

それをみた、光太郎は慌てて彼女へ駆け寄る。

 

意識が朦朧としているのか光太郎の声に応じない。

 

「加賀さん!加賀さん!しっかりするんだ!!」

 

「……ごめん、なさい。私は…何も、できなかった…私、は」

 

伸ばされた手を光太郎は掴む。

 

加賀を停車しているロードセクターへ寝かすように預けると振り返る。

 

その顔にある感情は怒り。

 

仲間である加賀を傷つけたシャドームーンへの激しい怒りだ。

 

「信彦……いや、シャドームーン!」

 

指を突きつけて光太郎は叫ぶ。

 

迷いはある。

 

それよりも、

 

加賀を傷つけたシャドームーンへの怒りが勝る。

 

「俺はお前を許さん!!」

 

叫びと共に光太郎は仮面ライダーBLACKへ変身。シャドームーンへ走る。

 

その道を阻もうとコウモリ怪人が前に立つが。

 

「邪魔だ!」

 

「失せろ!」

 

あろうことかシャドームーンのサタンサーベル。BLACKのライダーパンチを受けて死亡となる。

 

「これは俺とブラックサン、いや、仮面ライダーBLACKとの戦い!誰にも邪魔はさせん!」

 

叫びと共に繰り出される斬撃、受け流し拳を放つ。

 

近距離でぶつかり合う二人。

 

どちらも引かない。

 

引くわけにいかなかった。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおお!」

 

「はぁああああああああああああああ!」

 

拳と拳がぶつかろうとした時、砲撃が二人を襲う。

 

BLACKが顔を上げると深海棲艦の艦隊がこちらに向かってきていた。戦いに気付いてやってきたのだろう。

 

「誰だ!水を差す愚かな存在は!」

 

戦いを邪魔されたシャドームーンは怒りを露わにする。

 

BLACKはロードセクターにもたれていた加賀の事を思い出す。

 

彼女は艤装を破壊され、戦うことができない。

 

「……」

 

砲撃から逃れるようにBLACKは後退してロードセクターの所へ向かう。

 

「逃げるのか!」

 

シャドームーンが音を立ててBLACKへ近づこうとするが深海棲艦の魚雷による水柱で阻まれる。

 

ロードセクターを起動させてBLACKは加賀を連れて走り出す。

 

「己ェエエ!」

 

シャドームーンの怨念がこもった声を残して海域は荒れる。

 

後日、とある艦隊がこの地域を通った時、大量の深海棲艦の亡骸があったことで騒ぎになった。

 

彼女達は知らなかった。一人の魔王によってこの被害がもたらされたことを。

 

深海棲艦は魔王を敵にしたという事を知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

加賀が目を覚ますとそこは入渠施設だった。

 

「ここは!」

 

体を起こそうとしたら誰かにそっと戻される。

 

「無理に動いたら傷に障るわ」

 

「…赤城、さん」

 

「久しぶりね、加賀さん」

 

加賀の前にいるのは同じ一航戦の赤城。

 

同じ正規空母の艦娘だった。

 

「どうして、ここは」

 

「舞鶴鎮守府の入渠施設、驚いたわ。光太郎さんが貴方を連れて戻ってきたら轟沈寸前だったもの」

 

「そう…」

 

「敵を倒せるのなら轟沈しても構わなかったって顔に出ているわ」

 

赤城に指摘されても加賀は否定しなかった。

 

悲しそうな表情を浮かべつつ、赤城は尋ねる。

 

「貴方に、何が…」

 

「赤城さん、貴方は南光太郎を知っているのね」

 

「……えぇ」

 

「おしえて、彼は何ものなの?あの姿は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺はもう、迷わない。信彦、いや、シャドームーン。お前が立ちはだかるのなら」

 

足音に気付いて光太郎が振り返ると加賀がいた。

 

「加賀さん!もう大丈夫なの?」

 

「お蔭さまで、貴方が提督に頼んで高速修復剤の使用を申し出てくれたそうね」

 

「長風呂が好きかどうかわからなかったからね…迷惑だったかな?」

 

「いえ、感謝しているわ」

 

「よかった」

 

微笑む光太郎を見て、加賀はゆっくりと訊ねる。

 

「貴方、ゴルゴムに拉致されて改造手術を受けたそうね」

 

「……まぁ、ね」

 

突然の問いに驚きながらも光太郎は頷く。

 

その証拠を見せるように掌より大きめの岩を掴んで軽々と握りつぶす。

 

ぱらぱらと崩れていく岩をみて加賀は「そう」と返した。

 

「訊きたいのはそれだけ?」

 

「いいえ」

 

その時、加賀の目に激しい感情が浮かび上がる。

 

「私はゴルゴムを許さない」

 

「…それは」

 

「私は仲間をゴルゴムに殺された。指揮官だった提督も」

 

加賀は鎮守府に所属していた。

 

最前線で戦っていた加賀達の前にある日、ゴルゴムの人間が現れる。

 

自らを博士といった男は艦娘のデータをゴルゴムへ提供せよと提督に迫った。彼がそれを拒絶すると改造怪人が現れる。

 

マンモスのような怪人は鎮守府を破壊して艦娘、提督を皆殺しにする。

 

唯一、医務室で休んでいた加賀のみが生き残った。それから加賀は復讐を誓った。

 

ゴルゴムを潰す。それだけの為に今の加賀は生きている。

 

「奴らを潰せるのなら、轟沈したって私は怖くないわ」

 

「ダメだ!」

 

光太郎の叫びに加賀は驚く。

 

「倒すために命を捨てるなんて…そんな考えは最低だ」

 

「貴方に理解を求めてなんていないわ。私は復讐のために生きている。それができるのならこんな命だって」

 

「僕だって同じだ!」

 

光太郎は叫ぶ。

 

「僕だって最初は平和や誰かのために戦っていたわけじゃない。ゴルゴムに、奴らに殺された両親…もう一人の父さんの復讐を果たすために戦っていた」

 

「…それは、どういう」

 

「僕が生まれた時、両親は飛行機事故で命を落としていた…そして、僕は秋月家、総一郎さんという人の所でお世話になることになったんだ……でも」

 

秋月総一郎はゴルゴムのメンバーで、自分を引き取ったのはゴルゴムの命令だったという事、

 

「……そんな」

 

「そして、誕生日に僕と信彦はゴルゴムに拉致されて……改造人間になった」

 

“あの日”、全てが動き出した日を光太郎は鮮明に覚えている。

 

三神官に拉致され、体を改造され、頭を弄られるという瞬間、信彦へ伸ばして届かなかった手。

 

必死に叫んだ総一郎の声。

 

「あの日、義父さんは全てを話してくれた。僕を引き取ったわけ、両親の死の原因…激怒したよ。ふざけるなって…それでも、僕は」

 

あの人をもう一人の父親だと思っていた。

 

「その義父さんもゴルゴムに殺された…激しい怒りが僕を襲った。怒りに身を任せるように僕は変身した」

 

光太郎にとって初めての戦い。

 

怒りに身を任せて襲い掛かってきたゴルゴム怪人を叩き潰した。

 

「奴らを許さないのは僕も一緒だ。でも、誰かが死ぬのはみたくない。だから…ゴルゴムの事は僕に任せてほしい」

 

「ふ、ふざけないで!」

 

加賀が声を荒げる。

 

「貴方の気持ちはわかる!でも、それと私が復讐することを止める繋がりはないはずよ!」

 

「確かに、ない…でも」

 

「でも、なに!?」

 

普段と違い、声を荒げる加賀。

 

それでも光太郎は譲らない。

 

互いに白熱していたことで光太郎はつい、本当につい、叫んでしまった。

 

自分の中にある気持ちを。

 

「答えなさい南光太郎!私に復讐を指せない理由を、轟沈することに恐怖なんかない。私は!」

 

「俺は加賀さんみたいな美人に沈んでほしくない!!」

 

場の時が止まる。

 

白熱していた加賀も、叫んでいた光太郎も言葉を失う。

 

どちらも突然の事に頭が真っ白になっていた。

 

ガサガサと茂みの揺れる音がして二人は身構える。

 

「お前ら…こんなところで何をしているんだ?」

 

現れたのは立花ヤマト。

 

彼は不思議そうな顔を浮かべている。

 

「何でもないわ」

 

興がそがれみたという表情で加賀は言う。

 

光太郎もうんうんと頷く。

 

「そうか…ヤベッ!」

 

何かに気付いたのかヤマトは茂みに隠れる。

 

しばらくして、茂みが揺れて瑞鶴が現れた。

 

瑞鶴を見て加賀の表情が険しくなる。

 

「あれ~、ヤマトさん、どこにいったんだろ?あ、光太郎さん」

 

「やぁ、瑞鶴ちゃん」

 

「ねぇねぇ、ヤマトさんみなかった?このあたりに来ていたと思うんだけど」

 

「いや…あ、あっちにいったんじゃないかな?」

 

「そう、ヤマトさんの臭いがするからまだこのあたりにいると思うんだけど」

 

「まるで犬ね。さすがは五航戦」

 

「さて、ヤマトさんを探さなきゃ」

 

加賀の嫌味に応じることなく瑞鶴は茂みの中へ消えた。

 

「…とにかく」

 

唐突に加賀は光太郎を見る。

 

「貴方が何を言おうと私はゴルゴムの復讐をやめない。私は、アイツらを許さない。それだけは、伝えておくわ」

 

そういうと彼女は寮に向かう。

 

少し、疲れたと彼女は言った。

 

 

 

 

 




今日、あと一話、投稿します。
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