「くそっ、またか」
立花ヤマトは寝苦しさから目を覚ます。
体の上に何かが乗っている。
誰が来たのかみるとそれは。
「…島風」
最近、舞鶴鎮守府にやってきた駆逐艦島風だった。
やたらと露出度の高い服と黒い丸見えのパンツといった過激な格好をしている島風は戦うことに恐怖しているという問題を抱えている艦娘。
ヤマトと少し話をしてから毎日のように布団の中で丸くなっていた。
島風の相棒ともいえる動く連装砲ちゃんがいないのは外で侵入者を防いでいるのだろう。
本来なら自室で寝るよう促すのだが自由奔放、好き勝手、自分に忠実という少女のためカエルに水という状態。
そのおかげで。
「扉の向こうはいつも悲惨なことになっているなぁ」
特殊合金の扉の向こうはいつも煤や爆撃の痕跡でいっぱいだ。相手が戦艦だったらこれの倍、とんでもないことになっているのだろう。
「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ、瑞鶴には恋の女神がついているのにぃぃぃぃぃぃぃ」
ヤマトは無言で扉を閉める。
扉の向こうでぺたんと座り込んでいる艦娘なんていない。
ちらりとこちらをみていたような気もするが間違いだ。
絶対にないのだ。
部屋へ戻ると丸くなった島風に布団を占領されていた。
「……はぁ」
溜息を零してヤマトは設置しているソファーで眠ることにする。
そこに先客がいると知らずに。
早朝、叢雲が見たのはベッドで丸くなっている北上に覆いかぶさるように寝ているヤマトの姿だった。
爆音とともに修理妖精たちがその部屋へ急行する。
食堂、潮が隣でタブレットを操作している漣と話をしていた。
「漣ちゃん、食事中に携帯いじるのやめなよぉ」
「むほほほ、今良い所なんです!あと少しで」
「あと少しでなにかしらぁ?」
「いや、あと…」
声に振り返った漣は絶句する。
その後ろに立っていたのは足柄。
ニコニコと微笑んでいるがその目は笑っていない。
漣の悲鳴が食堂で広がっている中、阿武隈と睦月は元気のない如月と朧を心配していた。
「朧ちゃんどうしたの?」
「如月ちゃんも元気ないにゃー」
「実は…」
「外にいる親友と連絡がとれないの」
「それって…」
「確かアイドルの」
「ウホ!これは新しい都市伝説ですね~」
「アンタ、朝からうるさいわよ。さっきも足柄さんに絞られたのにまた弄っている」
「いやいや、これは見どころありますよ!アイドルの歌を聞いたら死ぬなんて、怪談映画にできそうな話じゃないですかぁ!」
「ハ?アイドルの歌を聞いたら死ぬ?」
「ボノちゃんも聞いたことがあるしょ?Chiharuの新曲を聞いた人が次々と死んでいるらしいんすよ」
ガタッ!!
「「ひっ!!」」
阿武隈と睦月の前に座っている二人が立ち上がる。
その顔を見た二人は互いの体を抱きしめた。
「その話」
「詳しく聞かせてもらえないかしら~」
漣は深海棲艦や改造人間と戦う時とは別の恐怖を感じたとのことだった。
ヤマトが執務を始めようとした時、扉が開かれる。
「失礼します」
「失礼します~」
「朧に如月か」
「司令官、話があるんだけど」
「外出許可の件だろ」
「…わかっていたの?」
ヤマトは無言でうなずく。
「話題のアイドルChiharuの歌を聞いたものは命を落とす。こんな都市伝説聞いたら気になるのは仕方ない」
そういって如月と朧から外出届の書類を受け取る。
書類に印を押すとヤマトも立ち上がった。
「あれ、司令官?」
「行くぞ」
「え?司令官も来るの!?」
「お前達だけ外出させるわけにいかないからな」
「でも、執務は…」
「数日遅れたところで問題ないさ」
「本当に?」
「あぁ」
入れ替わるようにしてやってきた叢雲はヤマトがいないことに激怒、親友の吹雪と夜戦と騒いでいた川内が止めに入る事態に陥った。
「あんのバカぁあああああああああああああああ!」
「叢雲ちゃん、落ち着いて!ね、ね!」
「あー、私も行きたかったなぁ」
車に乗ってヤマト達はChiharuのいる事務所へ向かう。
しかし。
「会えない?」
「はい、アポイントのない方をお通しすることはできないのです」
「でも!私達はちはるの友達で」
「落ち着いて、朧ちゃん…」
「どうすれば会うことができますか?」
「社長に話を通してもらわないと」
「では、社長さんに会うことは」
「…失礼ですが、そちらは」
「あぁ、自分はこういうものです」
身分証明をみせる。
受付の人は一瞬、目を見開くがすぐに営業スマイルを浮かべた。
「社長へ連絡してみます」
「どうも」
少し離れると朧が納得できないと憤慨する。
「友達と会うだけなのにどうして!」
「仕方ないわよ。私達は艦娘であることを除いたら普通の女の子でちはるちゃんは世間を騒がすアイドルなんだから」
「…でも、友達だよ?」
「そうだな」
納得できない表情の朧を撫でながらヤマトは言う。
「本来なら普通に会えるべきなんだよ…ま、世の中の難しい所だ」
「ややこしんだね」
「ホント」
呼ばれてヤマトが向かうと受付嬢が頭を下げる。
「社長は本日予定が詰まっていて誰ともお会いになれないそうです」
「そうですか、いつ、都合が良いでしょうか?」
「少なくとも今月はいっぱいとのことで…」
「わかりました。来月に予定を開けてもらえるよう伝えてください」
「はい」
ヤマトは二人を連れて外に出る。
しばらくして受付嬢は電話を取った。
「私です。はい、はい、そうです。早急な処理をお願いします」
電話を下した女性の制服の裾が少し動く。
そこには鷲のマークがあった。
「どうするの?」
「そうだな、直接会うことができないなら電撃作戦かなぁ」
「電撃作戦って?」
「彼女のいるマンションへ突撃する」
「そっか!」
「私達が聴いているからいけばいいんだ!」
「そゆこと、さ、行くぞ」
車を走らせる。
朧達のナビゲーションを頼りにマンションへたどりつくと既に夜となっていた。
「夜かぁ」
「迷惑かもしれないけれど、会うだけいきましょう」
「そうだな」
如月の言葉に同意してマンションの入り口を通る。
念のためポストで部屋の番号を調べようとヤマトが立ち止まる。
ドサリ!と大きな音が外でした。
「え?」
困惑した朧が入口へ走る。
そこにあったのは。
「ちはる!?」
白い服を着たちはるが見るも無残な姿で倒れている。
顔が刃物らしきものでズタズタにされていた。
「ちはる!!」
朧が倒れているちはるを揺らす。
ガシリ!と血でぬれている手が朧の腕を掴む。
「私は…ちはる、じゃない」
「え?」
驚いて動かない朧へ彼女は震える声で繰り返す。
「私は……じゃない………は……ちはる……じゃ……ない」
何度も同じ言葉を繰り返し続けてちはるはこと切れる。
「どうゆうこと!?ちはるじゃないって、じゃあ、貴方は誰なの?本当の…本物のちはるは!」
「これは…」
「嘘、ちはるちゃん!」
血まみれでこと切れているちはるの姿を見ているとゆっくりとひとりの女性が現れる。
「今日は良い月夜ね。こんな日は素敵な男と楽しい時間を送りたいわぁ」
ヤマトの表情が険しくなる。
ぞろぞろと複数の人間が現れた。誰もが特殊戦闘服を纏い、腕に仮面を抱えていた。
「用件はわかっているわね?ショッカーは裏切り者を許さない」
「二人とも、逃げろ!」
ヤマトが叫ぶとともに仮面を装着したショッカーライダーが襲い来る。
「残念だけど、そこの二人も逃すつもりはない」
トカゲを模したような仮面を装着した女性が右手のチェーンソーを構える。
ショッカーライダーの拳を受けてのけ反ったヤマトはぎりぎりとのところで腕を掴む。
顔の傍を高速で唸るチェーンソー。
押し返したところでショッカーライダーの蹴りを受ける。
「司令官!」
「どうしょう、援護とか」
気が付いたらショッカーライダーの何人かが迫りくる。
それをみたヤマトが体を起こしてタイフーンが現れた。
ショッカーライダーの蹴りを空中で躱しつつ、朧達の前に降り立つ。
「やぁぁぁぁ!」
叫びと共に繰り出された拳を受けて倒れるショッカーライダー。
「逃げるぞ!」
「後ろ!」
如月の言葉に振り返るとショッカーライダーの拳がさく裂する。
倒れそうになったところでチェーンソーが繰り出された。
ギリギリのところで躱しつつ、反撃に転じようとした時、空気が震える。
チェーンソーリザードも、ショッカーライダーも、仮面ライダーも、艦娘も、全員が同時にある方向を見た。
音を立ててゆっくりと現れるのはシャドームーン。
「ゴルゴムの邪魔をするものな何人たりとも逃しはしない。ショッカー、俺は貴様らも排除する」
サタンサーベルを構えて近づいてくるシャドームーン。
その姿を見てチェーンソーリザードは舌打ちしつつ、目の前の仮面ライダーを潰そうとする瞬間。彼の複眼に光が宿る。
信じられない力でチェーンソーを押し戻す。
それをみたショッカーライダーの胸部へ拳を叩きこみ、迫るチェーンソーを躱した。
何かを切断する音を聞きながらも仮面ライダーは朧と如月をわきに抱えて地面を蹴る。
全力の跳躍によって夜空を飛ぶようにしてその場から去った。
逃げた仮面ライダーを追おうとしたがシャドームーンを追い払うことが先と考えて残りの戦力もシャドームーンに差し向けた。
予想されていた人もいるでしょうが、THENEXTの話に入ります。
ただし、それぞれの視線という話になるのでNEXT本編みたいな細かい話は入れません。
ところどころ、独自な設定も入ります。
4~5話くらいで終わるかな?