艦娘と改造人間   作:断空我

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43.Version3

翌日、抜け出したことをガミガミと叢雲に説教を受けながらもヤマトは朧と共にある場所へ向かっていた。

 

如月は遠征任務に組み込まれてしまったため、今回はいない。

 

サイクロンに乗ってヤマトと朧が向かうのはちはるの兄の場所。

 

「ちはるに兄がいたんだ。年は離れているって…確か、名前はかざみしろうって」

 

「その名前、覚えがあるな…確か…一か月くらいまえだったか?」

 

ヤマトの記憶にかざみしろうという名前が引っかかる。

 

一か月ほど前、あるIT企業の会社から社員全員が姿を消すという事件が起こった。

 

直前まで生活していたような痕跡があったことから現代の神隠しとまでいわれたほどの騒動。

 

それからしばらくして社長が見つかった。けれど、彼は何も語らず別荘でひっそりと暮らしている。

 

「確か、青葉の記事でみたな」

 

「その人に聞けばちはるのこと、何かわかるかもしれないの」

 

「そうだな…いってみよう」

 

サイクロンを走らせてヤマトと朧は大きな別荘に到着する。

 

「さすが…大企業の社長か」

 

「ダメだ。インターホン押しても反応しない」

 

「留守なのかもな。朧、一度、出直してっておい!?」

 

朧はあろうことかシャッターが半開きになっている所から別荘の中に入ってしまう。

 

慌ててヤマトは後を追いかける。

 

薄暗い室内、一人が住むには大きすぎる空間、奥へずんずん進む朧の腕を掴む。

 

「おい、さすがに不法侵入」

 

二人は部屋の奥で何か作業をしている男を見つける。

 

彼はワインを手に何かをしていた。

 

「あ、すいません。勝手に」

 

「静かにしてくれたまえ」

 

男が声を出す。

 

手の中にあるワインと何かの道具。

「みてわからないかな?今、ワインのデキャンタージュをしているんだ」

 

作業中だから話しかけるなという男に対して朧が前に出る。

 

「貴方が風見志郎ですよね?ちはるのことで話が」

 

ガタン!と音を立てて一人の女性が現れる。

 

ヤマトが朧を庇うように前へ立つ。

 

「ここは私が」

 

「……任せるよ」

 

風見志郎はワインに集中している。

 

女性はにこりと微笑む。

 

「また会えたな。お前と会うことを楽しみにしていた。この前は不完全燃焼だったからな」

 

仮面を装着してチェーンソーリザードが武器を構える。

 

繰り出される拳を受け止めたが外へ投げ飛ばされた。

 

地面へ落ちようとした時、手をついて反転。

 

仮面ライダーへ変身すると至る所からショッカーライダーが現れる。

 

繰り出される拳などをはじき返していたが数の暴力に逆らえず翻弄されていく。

 

殴られ、別荘の入口まで押し返されたところで風見志郎が立っている。

 

彼はグラスに注がれているワインを見て残念そうな表情を浮かべていた。

 

「私は悲しい…このワインはまだ熟れていなかった」

 

「は?何を」

 

殺意を感じて腕をクロスさせる。

 

ワイングラスが派手な音を立てて地面に落ちていく。

 

放たれた拳を受けてのけ反った仮面ライダーの前、風見志郎の腹部にベルトが現れる。

 

二つの車輪が高速で音を立てて特殊強化服を纏う。

 

ベルトには“Version3”と記されている。

 

仮面を被り、風見志郎は変身した。

 

「おいおい、まじかよ」

 

ヤマトは驚きつつ、迫りくるショッカーライダーを薙ぎ払う。

 

「はぁぁぁぁやぁああああああああああああああ!」

 

チェーンソーを振り上げて襲い掛かるチェーンソーリザードの攻撃を躱して腹部に一撃を放ちつつ、前へ踏み込む。

 

一発、二発と何度も拳を叩きこもうとした時、横からショッカーライダーが割り込んでくる。

 

「邪魔、なんだよ!」

 

迫ってきたショッカーライダーの顔を拳で叩きつぶす。

 

離れていたショッカーライダーが腕から爆弾手裏剣を投擲する。

 

足元で爆発する手裏剣にのけ反りながら仮面ライダーはサイクロンに跨って走り出す。

 

それをみた、ショッカーライダーもバイクに乗って後を追う。

 

戦いの様子を観察している風見志郎へ朧は叫ぶ。

 

「ちはるのお兄ちゃんじゃないの!?こんなところで何しているの!」

 

ちらりと朧をみながらも風見志郎も仮面ライダーの後を追う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイクロンで疾走していた仮面ライダーだったが先回りしていたチェーンソーリザードの攻撃を受けてバイクから放り出されてしまう。

 

起き上がった所で後ろからバイクのエンジン音が響く。

 

仮面ライダーが振り返った瞬間、バイクに乗ったホッパーV3のバイク、ハリケーンのタイヤが体にぶつかる。

 

「グァッ!」

 

膝をついて動きを止めたところでハリケーンを反転させてホッパーV3が接近する。

 

ダメージが大きく躱すことも拳を放つことすらできず吹き飛ばされ、地面に巨大なクレーターを作ってしまう。

 

仮面ライダーをゆっくりと包囲していく。

 

起き上がれない仮面ライダー。

 

危うい状況の中、彼の耳はバイクのエンジン音を捉える。

 

「あれは……」

 

轟音を上げて突っ込んでくるのは二台のバイク。

 

派手にドリフトしながらやってくるバイクはショッカーライダーを薙ぎ払いながら仮面ライダーの所へやってくる。

 

BLACKと2号の姿を見てチェーンソーリザードとショッカーライダーが迫った。

 

「トゥア!」

 

「ウォリャ!」

 

拳と蹴りを受けてショッカーライダーが薙ぎ払われる。

 

倒れている仮面ライダーを左右から二人が抱えて走る。1号をサイクロン2号の後ろへのせて走り出す。

 

追撃しようとするショッカーライダーの前でBLACKがベルトへ両手を構えた。

 

「キングストーンフラッシュ!」

 

ベルトから放たれた輝きに全員の視界が奪われる。

 

その間にBLACKもロードセクターに乗り込み、戦場を去った。

 

逃げ去る彼らの背中をホッパーV3は見つめ続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

裏切り者の追撃を任せた風見志郎は別荘のシャワーを浴びていた。

 

「あれが裏切り者」

 

数年前にショッカーを裏切り数多くの計画と改造人間を倒してきたホッパー。

 

ホッパー1、本郷猛改め、立花ヤマト。

 

ショッカーにゴルゴムの情報を与えることを条件として改造手術を受けたホッパータイプ02。水瀬隼人。

 

裏切り者を処刑せよ。

 

正式に風見へ下された命令。

 

あの二人を倒せば、私の渇きを満たせるかもしれない。

 

影を含んだ笑みを浮かべた風見だが、ある声を聴いて動きを止める。

 

テレビから流れているのは最愛の妹の歌。

 

風見ちはる。

 

年の離れた妹で風見志郎にとって大切な宝。

 

友達という少女の言葉が頭をよぎった。

 

「ちはる…まさか、お前も」

 

風見の中で嫌な想像がむくむくと形になってくる。

 

服を着て、机に置いてある腕時計を手に外へ出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイドル事務所を出た風見志郎の前に立花ヤマト達が現れる。

 

風見はぽつりと呟く。

 

「あれはちはるじゃなかった」

 

Chiharu、風見ちはる。顔や声は同じだというのにまるで違う。

 

兄として風見志郎は違うと断言できる。何よりと彼は一瞬、ポケットの中にある腕時計へ視線を向けた。

 

「どういうことなんだ、あれは、ちはるに何があったんだ」

 

風見志郎はヤマトと共にいる朧と如月へ訊ねる。

 

二人は顔を合わせてからゆっくりと話し始めた。

 

「少し前の事…よ」

 

如月と朧は定期的にちはると連絡をしていた。

 

仕事や周りの事を話し合い、時間が取れればヤマトに許可をもらって外出もしている。そんなある日の事だ。夜にちはるから連絡が来た。

 

泣きながら謝罪するちはるの電話だった。

 

「ごめんね…ごめんね、朧ちゃん、如月ちゃん、私…もう、ダメ」

 

その言葉を残してちはると連絡がとれなくなる。

 

「何度も私達はメールや電話をしてみた。けれど、ちはるちゃんから連絡は来なかった。けれど」

 

「テレビにちはるが出ている。何かがおかしいって、朧達は思ったの」

 

「……まさか」

 

「その様子からして何か知っているようだな」

 

ヤマトの言葉に風見は鋭い視線を向ける。

 

「………あれは偉大なるショッカーの実験だった」

 

「実験?」

 

「ナノロボットだよ。細菌サイズのロボットで気づかれないうちに肉体を改造する細菌兵器、ショッカーはそれを作り上げた」

 

その実験先として風見志郎の会社が選ばれた。

 

ナノロボットによって選ばれた人間として風見志郎はショッカーの兵士となる。

 

「ナノロボットに改造された人間にリジェクシヨンは起きない。さらにいえば、従来の改造人間よりも倍の力を誇る…つまり」

 

――古いんだよ。キミは。

 

言葉と共に繰り出された一撃を受けてヤマトは近くの柱に叩きつけられる。

 

「この力があれば、私の飢えが満たされる。会社をトップにしても社長になっても私は満たされてなかった。だが、この力でお前達を叩き潰せば」

 

「……何よ、それ」

 

風見志郎の言葉にぶるぶると体を震わせて如月が叫ぶ。

 

「貴方はちはるちゃんの事を何もわかっていない!あの子は自分の力でアイドルになったわ。でも、貴方はなに?自分で何一つ掴んでいないじゃない!貴方は空っぽだわ」

 

如月の言葉に風見志郎は何も返さずに去っていく。

 

体中についているコンクリートの破片を払っているヤマトの元へ南光太郎が駆け寄る。

 

「ヤマト、大丈夫?」

 

「あぁ、けれど…すごい一撃だった」

 

受け止めた両腕のしびれが抜けない。

 

「ナノロボットによる改造…」

 

「ある意味、次世代改造人間ってことだな」

 

ギリリと拳を作る。

 

どうしょうもない怒りがヤマトの中に浮き上がった。

 

「(ナノロボットだと…どこまで人を苦しめれば気が済むんだよ!!)」

 

艦娘達に悟られないようにしながらヤマト達は一度、鎮守府へ戻ることとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、きりきり吐いてもらおうかしら」

 

鎮守府へ戻ったヤマトは叢雲を含めた艦娘達に捉えられ食堂に集められていた。

 

「おい、何のつもりだ?」

 

「いやー、北上さんもこういうことはしたくないんだけどさ。流石に気になるよ」

 

「ヤマト、隠し事はよくないよ」

 

遊撃部隊穏健派の北上や時雨が積極的にヤマトへ問いかける。

 

ここで頼りになるのは大井だが、北上に懐柔されているらしく目が「話せ」と語っていた。

 

陸奥は離れて傍観している。こういう場合に頼りになるのは残念なことに瑞鶴なのだが他の艦娘によって鎖で雁字搦めに拘束されており天龍がしゃべらせないよう監視している。

 

「おいおい、徹底しているな」

 

「当然よ、さて、ヤマト、何を隠しているのかお姉さんたちにも話してもらうわよ?」

 

「あんま…いい話じゃないぞ?」

 

ヤマトは少し考えてから今回の話をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水瀬隼人はごくごくとグラスに注がれている酒を飲んでいた。

 

頼んでいた二杯目の酒を飲もうとした時、横から手が伸びてグラスが奪われる。

 

「ほどほどにしてください!体に悪いです!」

 

「何を飲もうと俺の勝手だ。そもそも、ここは子供立ち入り禁止だ。どうやって入った」

 

「おじいさんにお願いしたら通してもらえました!」

 

雪風はそういうと入口に立っている老人へ頭を下げた。

 

老人はニコニコと微笑んでいる。

 

振り返る雪風は頬を膨らませて隼人を見る。

 

「これ以上は体に毒ですよ!」

 

雪風からグラスを奪おうとするが彼女は素早い動きで逃げる。流石は駆逐艦という所だろう。

 

隼人が呆れていたところで誰かが隣へ腰かける。

 

その際に雪風の手にあったグラスを隼人の前へ置く。

 

「ゆっくり味わうといい」

 

風見志郎がグラスを返す。

 

「最後の酒だ。ゆっくりと味わうといいさ」

 

「あ?なんだ、てめぇは」

 

「私は今機嫌がいい。お前達ほどの猛者を倒せばこの渇きも少しは潤うかもしれない」

 

雪風は風見の言葉で敵だと判断したのだろう。怯えるように隼人の背に隠れる。

 

対して、隼人はあきれた目をしながら呟く。

 

「……くだらない」

 

「なんだと?」

 

「お前は空っぽだよ。まったくもってつまらない。そんな奴の酒なんか受け取る気に慣れないな。行こう、雪風」

 

「は、はい」

 

隼人の背中にしがみついたまま立ち去ろうとしたところで携帯が鳴り出す。

 

懐から取り出して眺めてから佇んでいる風見志郎へ問いかける。

 

「俺の知り合いがChiharuとかいうアイドルを保護したらしい。どうする?来るか」

 

「…なんだと」

 

風見は驚きつつ、ついていくことを了承した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鎮守府の食堂、そこに如月をはじめとする駆逐艦、遊撃部隊、立花ヤマト、南光太郎。そしてアイドルのChiharu。

 

少しして水瀬隼人と雪風、風見志郎が現れる。

 

「さぁ、話して。ちはるちゃんに何があったのか」

 

如月は無断で鎮守府を抜け出し、アイドルのChiharuを見張っていたそうだ。そしたら撮影所から逃げるように出てきた彼女を助ける条件として何があったのか真実を話す約束をとりつけたらしい。

 

Chiharuはゆっくりと話し始める。

 

「ちょっと悪戯するつもりだった」

 

二人のアイドルがChiharuに嫉妬していた。

 

後からやってきたのに社長や周りに重宝されて、人気を総取りしている。

 

自分たちも努力をしているのに気に食わない。そんな小さな嫉妬からケガでもしてしまえと二人は後ろからChiharuを突き飛ばした。

 

階段を転がり落ちたChiharuはあろうことか制御盤に自らの顔を打ち付ける。派手な音とスパーク。

 

二人のアイドルが駆け寄ってChiharuの顔を見た時、彼女の顔は真っ黒になっていた。

 

「まさか、貴様!」

 

「殺してない!……あの後、治療の為に入院して…そしたら」

 

人づてに聞いた話だがChiharuの顔は元に戻らなかったらしい。

 

それどころか怪物のようなおぞましいものに変貌してしまい、病院の屋上から――飛び降りた。

 

それがアイドルChiharuの最後にならなかった。

 

社長はChiharuの死を隠ぺいして事件に関与した二人のアイドルを整形させて第二、第三のChiharuを生み出していく。

 

「何だよ、それ」

 

話を聞いていた天龍が顔を顰める。

 

同じ反応をしている艦娘も多く。中には顔が青い子もいる。

 

「人を、何だと思っているんだ!なんだと!」

 

「私は知らない!私は悪くない!ごめんなさい!ごめん!」

 

泣きじゃくるように彼女は部屋から出ていく。

 

しばらくして如月が地面へ座り込む。

 

「如月ちゃん!?」

 

「ごめんなさい…」

 

「無理もない。睦月、如月を休ませてやれ」

 

ヤマトの指示で如月を椅子へ座らせる。

 

愕然と風見志郎が膝をつく。

 

妹が死んでいた。

 

その死が隠ぺいされているという事。

 

何よりも。

 

「推測だが、お前の妹はナノロボットによる改造を受けていたんだろうな」

 

「…なんだと」

 

「遺体がどうなったかわからないが高圧電流を受けたことでナノロボットが暴走、故障して彼女の顔に影響を与えたんだろう」

 

ヤマトの言葉に風見の顔に悲しみが広がっていく。

 

彼はポケットから小さな時計を取り出す。

 

「……それは?」

 

朧が訊ねる。

 

「ちはるが送ってきたんだ…おそらく死ぬ前に」

 

如月と朧はおずおずと風見が差し出す時計に触れる。

 

その時、時計の針が勝手に動き出す。

 

「え!?」

 

回り続けた針はある時間を指すと動きを止める、そして割れた。

 

「これは……まさか、ちはる。お前は止めてほしいのか?」

 

「この時間がどうしたんだ?」

 

風見は震える声で伝える。

 

「この日にショッカーはナノロボットのカプセルを基地へ輸送して日本中に散布する計画だ」

 

「ま、待ってくれ!そんなことをしたら」

 

「適合しない大勢の人間は死ぬだろう」

 

 

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