艦娘と改造人間   作:断空我

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短編を一つ載せました。

艦これものです。


48.復讐の果て

『助けて…誰か助けて!』

 

『熱い、熱いよぉ…苦しいよぉ!』

 

『嫌だ。まだ、まだ、沈みたくないよぉ!』

 

薄暗い闇が支配する世界。

 

そこで彼女は目の前の光景を見せられていた。

 

必死に手を伸ばそうとするもカスミのように消えていく。

 

どれだけ掴もうとしても届かない。

 

声をからして叫んでも届かない。

 

彼女は誰も救えない。

 

愚かだというように大きな笑い声が暗闇に響いていく。

 

ねっとりとした嫌な声。

 

耳を塞いでも指の隙間から笑い声が響き続ける。

 

どこまでも、

 

どこに逃げても。

 

彼女が逃げたくないと足掻いても。

 

笑い声が続く。

 

まるで、復讐にもがく彼女をあざ笑うかのように。

 

終わりのない笑い声が続いていく。

 

正規空母加賀は深い闇の中へ落とされる。

 

「……夢ですか」

 

真夜中、加賀は目を覚ます。

 

全身が汗でぬれている。

 

むくりと体を起こす。

 

窓から月の光が伸びている。

 

加賀は月夜、夜が嫌いだ。

 

艦載機を飛ばせないし、役に立てない。

 

なにより。

 

「……シャワーでも浴びましょう」

 

布団から出た加賀は風呂桶を手にして外へ出る。

 

本来なら就寝時間中にシャワーを浴びることは許されない。しかし、提督である立花ヤマトの方針でシャワーの使用は認められていた。

 

部屋を出た加賀はシャワールームへ向かう。

 

時間が時間なので誰もいないだろうと加賀は扉を開けた。本来なら掛札をとって使用中であることをアピールする必要があった。艦娘なら赤い掛札、男なら青い掛札である。

 

「…え?」

 

「………」

 

扉の向こうに先客がいた。

 

シャワーを浴びた直後なのか腰にタオルを舞いた状態、ぽたぽたと髪から滴が零れていく。

 

服に隠れて見えなかったが引き締まった筋肉が目に入る。

 

相手は手を止めて加賀を見ていた。

 

加賀も声を出さずに相手を観察する。

 

しばらくして、光太郎の叫びが鎮守府内に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい。私が原因だわ」

 

「いや、僕が掛札をちゃんとしていなかったから悪いんだ」

 

「どっちも悪いわよ」

 

「そうだな」

 

執務室で正座している光太郎と加賀、寝間着の叢雲とヤマトはどこか疲れた様な表情をしていた。

 

それもそうだろう。突然の悲鳴に駆けつけてみれば半裸の光太郎と呆然としている加賀の姿。

 

これだけをみたらどちらが悪いのか判断がつかなかった。そこで執務室へ連れていき、事情を聴くことになったのだ。

 

「とにかく、二人は今後、気を付けること、それでこの話は終了だ。ふぁわぁ、叢雲。寝るぞ」

 

「そうね、私もおやすみなさい」

 

夜中に起こされたことで少し寝ぼけていたのだろう。叢雲はヤマトの手を握りながら執務室を後にした。

 

「えっと、ごめんね。加賀さん」

 

「先ほどもいったけれど、確認しなかった私に落ち度があるわ」

 

「でも」

 

「このままだと平行線ね。明日。食堂のご飯を貴方は私へおごる。今度、食堂の手伝いを私がするという事で終わりとしましよう」

 

光太郎ははにかんだ笑みを浮かべながら頷いた。

 

そういえば、と加賀は思い出す。

 

前にこの青年は自分の事を美人だといっていた。

 

「南光太郎、貴方に言っておきたいことがあります」

 

「はい?」

 

「私は美しくありません」

 

「へ?」

 

「艦娘は戦うための存在。そこに美しさなど不要よ」

 

「え、あの」

 

「それじゃ」

 

言いたいことを伝えた加賀は執務室を出る。

 

残された光太郎は呆然と彼女の背中を見ていた。

 

そんな二人のやり取りを遠くから眺めている者がいることに誰も気づかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャドームーンは目の前の大怪人ダロムへ問いかける。

 

「贄だと?」

 

「はい」

 

頭を下げて大怪人ダロムは頷く。

 

「創生王を決める戦いは近づいております。その余興として改造怪人と贄の戦いをご披露させたいと思います」

 

「好きにしろ」

 

「ありがとうございます。シャドームーン様を満足させるものをご用意させていただきます」

 

一礼してからダロムはニヤリと笑みを浮かべる。

 

後は奴をおびき寄せるのみ。

 

クックックッと不気味な笑みを浮かべてダロムは計画を実行に移す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

加賀の機嫌が悪い。

 

鎮守府内はその噂でもちきりだった。

 

噂を流したのは青葉と漣。

 

何でもヤマトの部屋へ突撃する計画を練っているといつもより機嫌の悪い加賀と遭遇してひどい目にあったらしい。

 

といってもある意味犯罪行為に手を出そうとしたら加賀から拳骨をもらっただけなのだが、それ以降、どうも加賀の機嫌が悪いという話が広まっていた。

 

食堂の激務に追われていた光太郎は皐月からその話を聞いて驚く。

 

「加賀さんの機嫌が悪い?」

 

「うん、よくわかんないけど、みんなが噂しているよ」

 

「どうしたんだろ」

 

「光太郎さんが何かしたんじゃないの~?」

 

「望月、箸を使え、犬みたいにがつがつ食うんじゃない」

 

「えー、だるいからいいじゃん」

 

「ダメだよ。望月ちゃん」

 

光太郎は苦笑しながら望月のメンドクさがりを正す。

 

んぁーと猫みたいな声を出す望月を横目に皐月が体を乗り出した。

 

「そういえば、この前、光太郎さんと何かあったって聞いたんだけど、それが原因じゃないかな?」

 

「え、そんなことは」

 

あの事件は既に折り合いがついている。

 

そのことで加賀の機嫌が悪くなることなどあり得ない。

 

何かあったのだろうか?

 

加賀の事が気になった光太郎は片付けを終えると食堂を出る。

 

「あ、光太郎さん、どこにいくの!?」

 

「加賀さんを探しに」

 

「えぇ~~、ボク達と遊んでくれないのぉ?」

 

「……んぁ、皐月、皐月ィ」

 

「何?望月。僕は光太郎さんと」

 

「さーつーきーちゃーん?」

 

聴こえた声に皐月の体が固まる。

 

今の声、間違いがなければ。

 

振り返った皐月が見たのは笑顔だけど、笑顔じゃない顔の足柄先生だった。

 

「あ、足柄さん」

 

「これから補習よぉ?いつまでいちゃいちゃしているのかしらぁ」

 

「い、イチャイチャなんてしてないよ!」

 

「黙らっしゃい!さ、いくわよ」

 

「ひーん!」

 

涙を浮かべる皐月の首根っこを掴んで食堂を出ていく足柄。

 

「ほら、加賀さん、探してきなよ」

 

望月の言葉で現実へ戻された光太郎はエプロンを置いて出ていく。

 

「大変だね~よし、暇だからバトルホッパーに相手でもしてもらおうっと~」

 

エプロンをきれいに折りたたんでから望月は部屋を後にする。

 

光太郎は鎮守府内を駆け回る。

 

しかし、加賀の姿が見つからない。

 

どこにいったのだろうか?

 

手当たり次第探すようにしていると遠征から戻ってきた第七駆逐隊のメンバーと遭遇する。

 

「あ、光太郎さん~」

 

「おや、黒の人ですね」

 

「漣ちゃん、それは違う」

 

「アンタ、普通に名前を呼びなさいよ」

 

「ごめん、加賀さんをみなかったかい?」

 

息をきらせながら訊ねてくる光太郎へ四人は首を振る。

 

「そういえば」

 

潮が思い出したように呟く。

 

「見間違いかもしれないですけど、加賀さんらしき人が外壁の方へいくのをみました」

 

「本当!?」

 

「こら、近い!」

 

ぐぃっと身を乗り出した光太郎を曙が押し戻す。

 

少し驚きながらも潮が頷いたのを確認して光太郎は走り去った。

 

「……なんだったんだろう?」

 

「さぁ」

 

「これは青葉さんに伝えたらお得!?」

 

「やめておいた方がいいと、思うよ」

 

この後、漣は青葉の元へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

加賀は何かに導かれるように鎮守府の外へ出ていく。

 

迷うことなく進む彼女の目に光はない。

 

人形のように、けれどまっすぐに目的地へ向かう。

 

誰も彼女へ声をかけようとしない。そもそも歩いている場所は人通りが少ないことで有名だった。

 

茂みをかき分けて彼女は薄暗い洞窟の中へ足を踏み入れる。

 

薄暗い闇の中で加賀の瞳に光が灯った。

 

「……ここは!?」

 

自分は部屋で休んでいたはず、と加賀は驚き、周囲を見渡そうとした。

 

瞬間、眩い光が彼女を照らす。

 

一時的に視界が奪われながらも、光が弱まったことで加賀はゆっくりと目を開ける。

 

そこは鉄格子で作られた闘技場だった。

 

暗闇からどしどしと音が響く。

 

咄嗟に加賀は艤装を展開して矢を放つ。

 

艦載機へ変えなかった矢が何かと衝突する。

 

暗闇で光る何かに気付いて横へ避ける。

 

飛来してきたものは針だった。

 

鋭い針。

 

突き刺されば相当な痛みが襲い来るだろう。

 

加賀は相手の攻撃を躱しつつ、矢筒から一本取り出す。

 

そして放った。

 

針の合間を縫うように向かった矢は相手の体に突き刺さった。

 

痛みと苦痛で地面をのたうち回っている。

 

しばらくして暗闇に慣れてきた目で相手の顔がわかった。

 

「……怪人」

 

ゴルゴムの改造怪人、トゲウオ怪人は体に刺さった矢を引き抜く。

 

抜いた個所から血が流れていくが怪人はそんなことをお構いなしに加賀を睨む。

 

「…生贄というわけ?」

 

答えが来るわけもないのに加賀は呟く。

 

「その通り」

 

檻の向こうから大怪人ダロムが現れた。

 

「光栄に思うがいい。貴様は創生王となるシャドームーン様のために贄となるのだ」

 

「ふざけないで、また、私から奪うというの?」

 

弓を握る手に力がこもった。

 

奪う。

 

ゴルゴムはまたも自分から何かを奪おうとしている。

 

その事実に加賀の怒りがふつふつと沸き起こっていた。

 

トゲウオ怪人が鱗の爆弾を投げようとした時、加賀の矢が腕を貫く。

 

爆弾がトゲウオ怪人の足元で起こる。

 

突然の事にダロムは目を見開く。

 

「これでも貴方達を倒すために鍛錬してきているの…そうそう後れを取ることはない」

 

「き、さまぁ!」

 

「面白い」

 

倒れているトゲウオ怪人に怒るダロム。

 

その中、小さな声が暗闇に響いた。

 

カチャンカチャンと金属のような音が鳴る。

 

檻がなくなり、銀色の飛蝗。

 

「しゃ、シャドームーン様!?どうして」

 

「中々に楽しめる余興だったぞ。ダロム…そこの艦娘、いや、正規空母加賀だったか?」

 

「覚えていたのね」

 

「当然だ。ほしいと思ったものだからな」

 

「私は物じゃない」

 

「いいや、物だ。貴様はゴルゴムの物なのだ」

 

「ふざけないで」

 

加賀が矢を取り出そうとした時、信じられない速度でシャドームーンのサタンサーベルが煌めく。

 

矢と弓を破壊する。

 

「正規空母というのは不便だな。他の艦娘と違い…砲台というものが存在しない。だが、こちらとしては楽に確保できる」

 

「ふざけないで、まだ、私は負けたわけじゃない」

 

「誇りが汚されぬ限り負けではないといいたいようだな。だが、そんなものは無駄になる」

 

シャドームーンの手が加賀を掴む。

 

反撃しようと足の艤装で攻撃しようとする。

 

予知していたシャドームーンはその足を掴み、艤装をはぎ取った。

 

「貴様!」

 

「良い」

 

激怒するダロムを制してシャドームーンは笑い声を漏らす。

 

「貴様はどのようにすれば私へ敗北を認めるのだろうな?」

 

「……貴方達がいなくなるまで負けはない」

 

「ならば、お前に勝利は来ない。ゴルゴムに敗北の終わりなどないのだから」

 

「いいや!そんなことはない!」

 

叫びが響いた。

 

「来たか……」

 

シャドームーンが振り返る。

 

暗闇からゆっくりと現れたのは仮面ライダーBLACK。

 

「闇が勝利することなどない。勝利するのは光…正義の光だ!」

 

「下らぬ。光が勝利?闇の恐ろしさを知らない者のいうセリフだ!」

 

加賀を捕えた手を離さずシャドームーンは言う。

 

「加賀さんを返せ!」

 

「ならば、取り返せばいい」

 

「物みたいな言い方をやめろ!」

 

「ならば、どうする?どうやって否定する」

 

ギリリと拳を握りながらBLACKは構える。

 

サタンサーベルを構えると同時に二人はぶつかりあう。

 

衝撃でダロムとトゲウオ怪人は吹き飛ぶ。

 

加賀はシャドームーンに腕を掴まれて逃げることができない。

 

「BLACK、今日で貴様の最後だ」

 

「シャドームーン、そんなことはさせない」

 

叫びと共にBLACKの拳が加賀を掴んでいる手を狙う。

 

攻撃を防ぐために手を放す。

 

回り込むようにBLACKが加賀の前へ立つ。

 

「加賀さん、大丈夫?」

 

「大丈夫、よ」

 

「離れていて、ここは」

 

BLACKは加賀を抱きしめる。

 

同時に光線が肩を直撃した。

 

「シャドームーン様!ここは私とトゲウオ怪人に任せてお下がりください」

 

ダロムが光線を続けてBLACKへ放つ。

 

加賀を守っているため、反撃することも避けることもできなかった。

 

「私なら、大丈夫だから、貴方は」

 

「ダメだ!」

 

「私は艦娘、傷つくことは慣れているわ」

 

「ダメなんだ!」

 

体中にダメージを受けながらBLACKは叫ぶ。

 

「傷つくことになれるなんてダメだ。加賀さんが傷つくくらいなら、僕が攻撃を受け止める!」

 

「何を、馬鹿なことを言っているの!?命を捨てるつもり!?私なんかの為に!?」

 

激怒する加賀。

 

BLACKはダロムの光線を受け続ける。そこにトゲウオ怪人のトゲと鱗爆弾が飛来する。

 

攻撃を受けながらも加賀を離さない。

 

「僕は、誰かが傷つくくらいならそのすべてを受け止める!」

 

「馬鹿なことをいわないで、そういって傷つくのを私に見せ続けるつもり!?ふざけないで、もう…」

 

BLACKの顔に水滴が落ちる。

 

顔を上げると加賀が泣いていた。

 

無表情か、怒っている以外みたことのない加賀が涙を流している。

 

ぽろぽろと涙を流しながら加賀は訴えた。

 

「これ以上、誰かがいなくなるところを私に見せないで」

 

強く、BLACKを、南光太郎を抱きしめ返して加賀は叫んだ。

 

彼女は仲間を守れなかった。

 

そのことが楔となり彼女の心を蝕んでいる。

 

だからこそ、他人が傷つくことを彼女は望まない。

 

誰かが傷つく、轟沈する所を見たくなかった。だから、加賀は一人でいることを望んだ。

 

誰かと関われば、悲しまなくてすむ。

 

独りでいれば、傷つく心配もない。

 

流れる涙が光太郎の、BLACKのベルトへ流れていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

--その時、不思議なことが起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光太郎の体に埋め込まれている太陽の石、キングストーンが強い輝きを放つ。

 

その輝きはBLACKの体を強化させて、ダロムの光線を弾き飛ばした。

 

「な、なんだ!?」

 

「わかったよ。加賀さん」

 

BLACKは立ち上がる。

 

その目の輝きは強い。

 

「キミの悲しみはわかった。だからこそ、僕は強くなる。そして、多くの艦娘や加賀さんが傷つかない為に…仮面ライダーとして僕は戦う。そして、もう、僕は、迷わない!!」

 

叫びと共にBLACKはベルトの前で拳を構える。

 

BLACKの意思へ応えるようにベルトの輝きが増す。

 

「おのれぇええええ!」

 

ダロムとトゲウオ怪人が攻撃を放とうとする。

 

「キングストーンフラッシュ!」

 

今までよりも威力を増したキングストーンフラッシュはあろうことか怪人たちの攻撃をはじき返した。

 

ダロムがのけ反った時、仮面ライダーBLACKは動く。

 

地面を蹴り、拳が光を放つ。

 

「ライダーパンチ!」

 

叫びと共に繰り出された一撃はダロムへ突き刺さる。

 

「む…ぐぅ!?」

 

ダロムがくぐもった声を上げながらもBLACKを殴る。

 

殴られたBLACKは壁に叩きつけられる瞬間、反転して壁を蹴った。

 

「ライダーキック!!」

 

眩い輝きと共に繰り出されたライダーキックはダロムの体を貫く。

 

呆然としているトゲウオ怪人の喉元、そこに矢が突き刺さる。

 

「私、がいることを忘れないで」

 

いつの間に接近したのか折れた矢でトゲウオ怪人へ攻撃していた。

 

 

トゲウオ怪人は口から血を吐きながら加賀へ手を伸ばす。

 

さらに加賀の手に矢が握られている。

 

反撃の間を許さずに別の矢が心臓部分に突き刺さった。

 

血を大量に浴びながらも加賀は攻撃の手を止めない。

 

トゲウオ怪人が鱗爆弾を取り出そうとした時、背後から仮面ライダーのライダーパンチがさく裂する。

 

光に包まれてトゲウオ怪人は消え去る。

 

薄暗い闇の中、血まみれの加賀とBLACKが佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「変な気分だわ」

 

最初に口を開いたのは加賀だった。

 

血まみれになった手を掲げるようにしながら、彼女は言う。

 

BLACKは何も言わない。

 

「おかしいわね…提督の、死んだ仲間達の無念を晴らしたはずなのに…憎い相手を倒しただけだというのに…」

 

ぶるぶると彼女の体が震えだす。

 

戦場で誰よりも一航戦の誇りを赤城と共に語っている加賀が。

 

冷静で、感情の起伏の少ない彼女が泣いていた。

 

ぽろぽろと目元を赤くして自らの体を抱きしめながら嗚咽を漏らす。

 

その姿はあまりに痛々しくて、道に捨てられた子犬や子猫のように小さな存在に思えた。

 

「加賀、さん」

 

光太郎は優しく、抱きしめる。

 

意識したわけじゃない。光太郎は今の彼女に伝えたかった。

 

「大丈夫」

 

優しく、彼女を包み込むようにして話す。

 

伝えたかった。

 

教えたかった。

 

加賀という不器用で、誰よりも傷つくことを恐れている少女へ。

 

「キミは一人じゃない。一人にならない。絶対に、僕が」

 

そこから先の言葉を加賀の耳元で囁く。

 

加賀は目を見開いて顔を上げる。

 

光太郎は優しく微笑む。

 

慌てて目をそらした。

 

「ずるいわ」

 

「………そう、かな?」

 

えぇ、といいながら加賀は立ち上がる。

 

「……ありがとう」

 

小さく呟かれた言葉は彼の耳に届くことはなかった。

 

 

 

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