艦娘と改造人間   作:断空我

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終わりに向けての序章


49.ささやかなひと時

「そっか、そろそろバレンタインか」

 

今回の騒動のきっかけは光太郎がカレンダーを見たことがはじまりだった。

 

昼食の片づけが終わり何気なく呟いたのだ。

 

「バレンタイン?」

 

皐月が訊ねる。

 

「バレンタインってなに?」

 

「人間の行事だよ。二月十四日、その日は友人や知人にチョコレートを贈る日なんだ」

 

「チョコレートを?」

 

「そう」

 

「ボクたちもやったほうがいいかな?」

 

「やるかい?」

 

光太郎の言葉に皐月たちが頷く。

 

密かに駆逐艦達によるバレンタイン実行が決定した。

 

何故、駆逐艦だけなのか?

 

それは当然。

 

「このことは他の人達…さらにいえば、遊撃部隊のメンバーに知られるととんでもないことになりますからねぇ」

 

もくもくとチョコレートの作り方を検索している漣の言葉にうんうんと他の駆逐艦が頷く。

 

「曙、力入れ過ぎよ」

 

「え、そう?」

 

別の所では叢雲が曙や文月の面倒を見ていた。

 

「そうよ、流石吹雪ちゃんね」

 

「ありがとう、如月ちゃん」

 

「如月ちゃん、ここはこうでいいのかなぁ?」

 

「そうよ」

 

またまた別の所では如月が料理の指導をしていた。

 

叢雲と如月、あと光太郎がこの鎮守府に置いて一番料理が得意とするメンバーだ。

 

本来なら光太郎も監修する立場なのだが、艦娘達に追い出されてしまう。

 

自分達で頑張る!

 

その気持ちで駆逐艦は頑張っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、駆逐艦とは別に一人奮闘している艦娘がいた。

 

「さて、青葉さん」

 

薄暗い部屋、椅子に座らされている青葉へ大井は静かに尋ねた。

 

「食堂で艦娘達はなにをしているのかしら?」

 

「さ、さぁ、青葉は存じ上げません」

 

「嘘ね」

 

青葉の抵抗失敗、うそ発見器瑞鶴によりばれる。

 

「青葉は嘘をついているわ」

 

「そんなことはぁ」

 

「またまた嘘、ヤマトさん関係の事で瑞鶴を出し抜けると思ったら…」

 

大間違いだよ。

 

にこにこと笑顔で瑞鶴が青葉へ顔を近づける。

 

それだけのことで全身から冷や汗が止まらない。

 

今回の駆逐艦のみバレンタインはばれるわけにいかない。ばれれば最後、鎮守府内は混沌とした空気に包まれてしまう。

 

青葉はそれだけは避けるべく動いていた。

 

しかし、瑞鶴という強敵に青葉は勝てる気がしない。

 

立花ヤマト提督関連の事になると一切の油断隙を見せないこの正規空母へどのようにして勝てばいいのだろうか?

 

青葉は必死に対抗策を練り始める。

 

しかし、瑞鶴に勝つことはできず。青葉は全て白状する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、鎮守府から、日本から遠く離れた場所であるものが静かに動き始めていた。

 

ゆっくりと、けれど確実に向かっている。

 

巨大なソレは一定の速度で日本を目指していた。

 

その周りを護衛するように進むのは深海棲艦の艦隊たち。

 

護衛している深海棲艦のどれもがElite級、もしくはFlagship級ばかりだった。

 

その中心に一人の深海棲艦がいた。

 

この場合、一隻というのが正しいのだろう。しかし、その深海棲艦はあまりにも人間に近い姿をしている。

 

全身が白く、禍々しい艤装を纏っていることを除けばだが。

 

「ヨウヤク、ヨウヤクトキガキタワ」

 

彼女は頬に手を当てながら怪しく微笑む。

 

「マッテイテ、アナタヲテニイレルタメニ…スベテヲコワシテアゲル」

 

不気味な笑い声をあげながらその深海棲艦は笑い続ける。

 

その傍らには死神の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バレンタインかぁ、待ち遠しいね!」

 

叢雲は吹雪と共に鎮守府内を歩いていた。

 

いつもの業務が終わりこれから入浴するのだ。

 

「そう、ね」

 

「叢雲、ちゃん?どうしたの」

 

「好きとか恋って、何なんだろう」

 

叢雲の言葉に吹雪は歩みを止める。

 

「ど、どうしたの!?」

 

「少し前に、陸奥さんとアイツが一緒に話している所を見ていたの」

 

陸奥とヤマトの二人の関係はよくわからない。

 

昔からの付き合いという言葉で済めばそれで終わりだろう。だが、そうではないものがある。

 

直感めいたものだが、叢雲は感じていた。

 

勿論、陸奥、長門、ヤマトの関係は知っているのだ。知っているが果たしてあの二人の間に好きというものはなかったのだろうか?

 

内にたまっていた疑問を吹雪にぶつけた。

 

親友だからこそうちあけることができるものだった。

 

「…叢雲ちゃんは、どうしたい?」

 

彼女の心の中を聞いて吹雪は尋ねる。

 

「私は…アイツの事をもっと知りたいと思う。私はアイツの過去を人づてから、ここにきてからのアイツしか知らない…できるなら、アイツの口から全部聞きたいと思う」

 

「じゃあ、バレンタインの時に告白しようよ」

 

「こ、告白!?」

 

「そう!提督さんにチョコレートを渡して、それから二人っきりになってしっかり話し合おうよ。そうして、仲良くなっていこう?」

 

吹雪の提案に叢雲は少し頬を赤らめつつも頷くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「時は満ちた!!」

 

ゴルゴム神殿、そこに一人佇むシャドームーンは叫ぶ。

 

三大神官ならぬ三大怪人を失いながらも彼は揺るがない。

 

長い時間の末、待っていた時がようやく訪れたのだ。

 

シャドームーンは手の中にあるサタンサーベルを強く握る。

 

「ブラックサン、貴様を倒して俺は創生王となる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

南光太郎は予感していた。

 

決戦の時が迫っている。

 

ゴルゴムとの、シャドームーンとの最後の戦いが近づいている。

 

「信彦…」

 

自室で光太郎は呟く。

 

親友と戦えないと、今も心のどこかで思っている。

 

けれど、もう戻れないという事もわかっていた。

 

南光太郎にとって大切な家族であり親友の秋月信彦はもういない。

 

いるのはゴルゴムの世紀王にして、いずれ世界を滅ぼす魔王。

 

ここ最近、光太郎は夢を見る。

 

人が存在しない街。全ての希望が停止し闇が支配する大地。

 

その中心に君臨するローブを纏った魔王。

 

シャドームーンを生かしていればそれは現実になる。

 

キングストーンによる警告なのか、未来予知なのかはわからない。

 

仮面ライダーとして、

 

艦娘や人間を守るために戦う光太郎はこのヴィジョンを認めるわけにいかなかった。

 

机に立てかけている写真を見る。

 

「…信彦」

 

写真には光太郎の家族が映っている。

 

哀愁を漂わせながらも光太郎は決意を固めた。

 

 

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