キャラ崩壊ありと伝えておきます。
ショッカー襲撃から六日が経過した。
「…重たい」
朝日が差し込む中、立花ヤマトが意識を覚醒させる。
全身が鉛のように重たい。
前日、激しい運動をしたわけではない、その理由を知っているからこそヤマトは面倒だと呟きながら視線を下す。
そこにいたのはこの鎮守に所属する艦娘、特に駆逐艦、潮、漣、朧、睦月、皐月、文月と小さな駆逐艦メンバーだ。他にも駆逐艦は存在するのだがどういうわけか彼女達がベッドへ侵入していた。
その時、扉が乱暴に開いて一人の少女が現れる。
「朝よ!さっさと起きなさい!」
乱暴に扉を開けて入ってくるのは叢雲。しかし、現状を見て顔を引きつらせていた。
「動けん、なんとかしてくれ」
「はぁ…朝から、アンタ達はぁあああああああああああああああああああああ!」
叢雲の怒鳴り声が響いて鎮守府の朝は始まる。
それが今の鎮守府の現状だった。
「もう!」
「……」
艦娘達が集う食堂、少し騒がしかった。
駆逐艦達がおいしそうに食事を食べて、軽巡や重巡たちはある方向を眺めている。
それはヤマトと叢雲の二人。
叢雲はぷりぷり怒っていた。
対してヤマトは面倒そうな表情を浮かべているだけでもぐもぐと肉を食べている。
「朝から肉を食べて問題ないの?」
「ン…朝から運動させられたら腹が減って仕方がない」
「…悪かったわね」
顔を顰める叢雲に対してヤマトはどこ吹く風だ。
もぐもぐと食べている彼の傍で陸奥と時雨がやってくる。
「おはよう、ヤマト」
「ンぐ…」
「あ、食事中だったみたいだね。ごめん」
「ガハッ、気にするな。どうした?」
「実は急な任務が入って時雨がここをしばらく離れることになったの」
陸奥と時雨は正式な鎮守府所属というわけではない。
遊撃部隊としての仕事があるならそちらを優先する必要があった。
「そっか、無理はするなよ」
目線は合わせずにヤマトは言う。
「アンタ、その態度は」
「わかったよ。無茶はしない。絶対に僕はヤマトの所へ帰ってくるよ」
時雨は決意を込めた目でみる。
叢雲は少し驚いた表情をしていた。
「危なくなったら、助けにいってやるよ」
去ろうとした時雨の背中へヤマトは言葉を投げる。
驚いた顔をして振り返る時雨だが彼は食事へ夢中だった。
時雨は微笑みながら食堂を後にする。
「もっと優しい言葉かけてあげたらいいのに」
「そうしたら何か変わるか?俺は面倒なことはしない主義だ」
「もう、天邪鬼なんだから」
「それが俺だ」
ヤマトは食事を再開する。
これは少し罰する必要があるわねと陸奥は考えた。
だから、彼女が来ることは黙っておこう。
その時の反応が楽しみだと陸奥は悪魔みたいな笑みを浮かべた。
遠くから見ていた彼女達は冷や汗を流す。
「陸奥さーん、怖い」
「どうなるかなぁこれ」
提督代理という職業に就いているヤマトだが基本的に彼は何もしない。
提督業務を全く知らないからここの秘書艦である叢雲へまかせっきりにしていた。というより少し心を開いてくれた様子なのだが基本的に関与されることを嫌う。
アンタはかかわるな。
そういう叢雲の顔を思い出す。
勿論、ヤマトも何もしないプータロではない。提督業のすゝめというものを読んでいる。
それを読んだ後は愛機の整備だ。
「何をやっているんですか?」
バイクの整備をしてヘルメットを装着しようとしたところで独特な髪形をした艦娘がやってくる。
「えっと…」
「阿武隈です」
「ふーん、ンで、何をしているかって?バイクの整備だ」
「バイク?」
へぇーというように阿武隈がバイクを眺める。
赤と白のデザイン、興味深そうに彼女はみていた。
「乗ってみるか?」
「いいんですか!?」
「俺の後ろという条件だがなぁ」
「はい!」
目を輝かせる阿武隈を見てヤマトはまぁいいかと愛機サイクロンへ跨る。
一時間後。
「凄いです!こんなすごいなんて」
よくわからないが滅茶苦茶喜んでいた。
バイクに乗っている間にヤマトを襲った謝罪もされたがあんまり聞いていなかった。最後に「またのせてください!」という約束を取り付けられた。
それが終わるとヤマトは駆逐艦の希望で遊びに興じる。
本当なら断りたいところだが潮や文月の涙目へ勝てなかった。
「大和さーん!いきますよぉ」
「おーう」
やる気なさげのヤマトだが目だけは本気だった。
文月の蹴るサッカーボールをあっさりと受け止める。
普通の人間なら吹き飛ばされるがそこは改造人間。
ヤマトなら受け止めることも造作もない。
「…」
サッカーボールをみてヤマトは昔を思い出す。
――パス!
――よし、任せたぞ!
――決めろ!○○○!
「ヤマトさん?どうしました」
「あ、いや何でもない…えっと」
「皐月だよ。よろしくね」
「あぁ、よろしく」
「それよりどうしたの?」
「友達を思い出した。それだけさ」
「?」
首を傾げる皐月の頭をなでてボールでリフティングをする。
その途端、きゃーきゃー言いながら艦娘達が集まった。
その様子を遠くから見ている艦娘がいた。
「…なんか、複雑だぜ」
「何なのよ、アイツ」
「そうね」
執務室から外で遊んでいる駆逐艦とヤマトを見ているのは天龍、曙、叢雲である。
彼女達は人間を強いて言えば提督という存在を嫌悪していた。
だからこそ、ヤマトの存在に悩まされている。
「私達を助けたのに見返りを要求しない」
「それどころか私達の居場所を守ってくれた」
「ケッ、何か裏があるに決まっている……信じられるかよ」
完全に疑いきれない。それは彼女達が心優しい存在だと思えばいいのか。信じるべきか悩むというところだろう。
「そういえば、あのクソ人間のこと、調べたら変な資料見つけたんだけど」
「資料?」
「前のあの、クソ提督が持っていたものなんだけど」
曙が机へ資料を広げる。
それは仮面ライダーについてと書かれていた。
「仮面ライダー?」
「何だ、そりゃ?」
「仮面ライダー、都市伝説と称されているそれは素顔を仮面で隠しバイクで颯爽と現れて人を守る正義のヒーロー。一人だけと思いきや世界各国で存在を確認されているそうよ」
「正義のヒーロー、ハッ、そんな奴がいたら深海棲艦なんて圧倒できただろ」
つまりは都市伝説だと天龍は決めつける。
しかし、叢雲だけはその名前に驚く。
“仮面ライダー”
立花ヤマトの姿、あれが仮面ライダーなのではないか?と叢雲は漠然と思っていた。
あれを仮面ライダーというなら都市伝説は実在しているということだ。しかし、ヤマトは積極的に戦おうとしない。それどころか隠している節がある。
――化け物。
同じ人間へそう呼ばれていた時の彼は苦痛に歪めていた。
その姿を見た時から叢雲の中で変な気持ちが頭を上っていく。
「どうしたのよ」
「ううん、何でもないわ。不審な動きを見せたら即時、倒す。それだけよ」
「だな」
「(本当に、それでいいのかしら)」
叢雲はもう一度、外を見る。
サッカーをしているヤマトの姿は普通の人間そのものだった。
ぐうたらで面倒なことは嫌いで。どこにでもいるような人間。
怪物を殺している姿が想像できない。まるで。
そこで叢雲は思考を中断する。
何故ならこの鎮守府へやってくる艦娘がいる。その子を迎えよう。
意識を切り替えた叢雲。しかし、片隅ではヤマトの事を気にしていた。
「疲れた」
艦娘とはいえ見た目少女から幼女の相手はとても疲れる。
子供というのはどこまでも体力に溢れている。その気になれば夜まで遊び続けるだろう。
何より、こんな体だ。本気を出してうっかり――。
「あー、そこまで老けた覚えないんだけどなぁ」
思考を打ち破るように大きな声を上げた。
――馬鹿なことを考えるなと自分に言い聞かせる。
体を柔軟しながらヤマトは扉を開ける。
その瞬間、扉を閉めたい衝動に駆られた。
「おかえりなさい」
にこにこと笑顔を浮かべた人物がヤマトを出迎える。
「何で…お前が」
「あら、親友で恋人であり嫁であり妻でもある私が貴方の所へ来てはいけないのかしら?」
「あ、いや…」
「うふふふ、安心して、北上さんもすぐにやってくるから三人仲良くすぐに生活できるわ」
ヤマトはしばらくして。
「あ、用事があるから俺、少し外出を」
「そう?すぐに戻ってきてね。ご飯が冷めちゃうから」
「り、了解」
笑顔を浮かべた大井をみてから隣の部屋へ突撃した。
「陸奥ゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
「あら、女性の部屋へ入る時はノックしなきゃ」
「そんなことはどうでもいい!おい!なんで大井がここにいる!?アイツは遊撃部隊じゃ」
「時雨が任務で一時的に抜けたでしょ?その埋める人員をどうするかで話し合っていたら大井が立候補したの。北上も来るわよ」
「…マジ、か」
絶望的な表情になるヤマト。
「ところで」
陸奥はちらりと後ろを見た。
「部屋へ戻らなくていいの?」
「…あぁ……戻るわ」
幽霊のようにふらふらとおぼつかない足取りでヤマトは部屋へ向かう。
「やりすぎかもしれないけれど、ヤマトを癒せることができる数少ない仲間だもの。頼りにさせてもらうわよ?」
渋々ヤマトが部屋へ戻ると大井が笑顔で出迎える。
それだけのことなのに余計な疲労が蓄積されていた。
「おかえりなさい。用事は済んだの?」
「あぁ」
「夕飯にします?お風呂にします?それとも」
「食事!食事だなぁ!腹が減ったぁ」
「そう…」
大井は頷くとちゃぶ台へ置かれている食事へヤマトを誘導する。
「ところで、大井」
「どうしました」
「何で、裸の上にエプロンっていう格好している?」
普段纏っている制服ではなく大井は白いレースとフリルがついたエプロンを着ているのみ。下着の類はなかった。
「これ?外の人間の好みで知ったんだけど「裸エプロン」というものらしいわ。大好きな人間の前でする格好らしいですよ」
「へ、へぇ」
顔を引きつらせていると大井が覗きこんでくる。
ぺらんとエプロンがめくれて胸元や腹部がみえそうになってヤマトは目をそらす。
「どうしたの?食べないの?」
「い、いや、いただきまーす」
大井へ視線を向けないように注意していたヤマトは何を食べたのか分からなかった。
重雷装巡洋艦大井。彼女は時雨や陸奥同様、過去にヤマトと出会い助けられた存在であり彼の嫁を自称する艦娘の一人であり、ヤマトLOVEの一人である。
数少ないヤマトが逆らえない相手であり彼を理解する者だ。
彼女の存在が鎮守府へさらなる波乱を呼ぶことになるとこの時、誰も予想できなかった。
大井さんキャラ崩壊。
今の所シリアスブレイカーの一人です。
大和の愛機はサイクロン!勿論THEシリーズ仕様です。