投稿する暇がなかなか見つけられず、なんとか投稿できるようになりました……
「まずは、小手調べといきましょうか」
「ふん、そんな攻撃――」
ルーミアは私が右手で殴ろうとしているところをみて、妖力による暗闇をルーミアが中心になるように展開させ、避けようとしていた。しかし、今の私にその避け方は通用しない。
私はまるで解っていたかのように、殴ろうとしていた右手をルーミアが逃げる方向に軌道修正していた。そしてそのまま、ルーミアの顔面に直撃した――
「がっ!?」
「今の私には意味がありませんよ。今の私はルーミアの怒りそのものですからね」
ルーミアは殴られた影響で、展開していた闇が消えていた。
ルーミアはふらつきながらも、立て直してこちらに殺気を向けていた。
「……私と戦っているようなものなのか」
「その通りです。自分と戦う気持ちはどうですか? まぁ、私は聴かなくても解りますけどね」
「……気に食わないと思った」
「まぁ、そうですよね」
ルーミアの予想通りの反応に、私は苦笑していた。
私が使っている禁忌魔法である大罪魔法は、単に感情を奪うだけの魔法ではない。使用者である私の行動や言動、そして奪った力を自分のものに出来てしまう魔法だ。よって、ルーミアが私に気に食わないと思ったのは、同族嫌悪を感じていたからだ。もっと詳しく言えばドッペルゲンガーみたいなもので、正確には違うけども、私をドッペルゲンガーのように感じて同族嫌悪しているのだ。
私の場合は元の性格が残ってはいるので、ルーミアに対して同族嫌悪をしていなといえば嘘になるけども、ルーミアの同族嫌悪よりは平気だ。最も、よりによって奪ったものが怒りなので、同族嫌悪になりやすい可能性もあるのですけど。
「だから、貴様だけはこの場で喰い殺す!!」
「やれるものならやりなさい。あなたの力で倒してあげましょう」
余裕を見せるために、ルーミアを挑発したが、この時の私は大罪魔法を使ったことによる問題を気をつけていた。
禁忌魔法と言われているだけあって、大罪魔法は自分のみに危険が起こりやすい。過去には奪った感情に飲み込まれて、元々あった性格に戻れなくなったということや、悪魔を一時的に使役していた昔は悪魔に乗っ取られて、悪魔ごと封印されたことあったらしい。
だから、自分の心だけは強く持っている必要があり、そちらにも意識を向けないといけなかった。ルーミアの怒りの感情を飲み込んでから気づいたが、大妖怪と言われる程の妖怪だということを知り、しかも負の感情によって生まれた妖怪だとすれば、感情を飲み込むという方法は愚策だった。自分の感情が飲みのまれそうになり、その結果戦闘に集中出来ていなかった。
しかし、負の感情によって生まれた
ルーミアから怒りの感情を奪ったことによって、ルーミアが弱体化しているから、利点もあるのですけど。
だから私がこの場で勝利するには、短期決戦で終わらせる方法が最善だった――
「っ!!」
「ちっ!!」
私はルーミアが持つ妖力を再現させ、こいしが追いかけられている時に使っていた真っ黒な槍を生み出し、ルーミアへ投げた。
自らの能力を真似され、その威力はルーミアが一番知っているからこそ、ルーミアは避けるしかなかった。こいしが避けていたことからして、かなりの強度がなければ突破される程の威力があり、シュタールくらいの強度がなければ防御魔法が突破されるくらいの想像は余裕で浮かんだ。
だからこそ、ルーミアが避けることは想定内で、そもそも覚妖怪だということもあって、行動なんて読めてしまうのだから――
「ちっ、ならこちらも――」
「余裕なんて与えませんよ」
短期決戦と決めたからには、直ぐに決着するつもりでいた私は、ルーミアが行動させる前に、真っ黒な槍を投げた。ルーミアは余裕で避けたが、私がその方向に避けることは心を読んで想定済みだったので、避けた時にはもう一本の真っ黒な槍をルーミアが避けた方向に投げていた。
「なっ、ぐぅぅ!!」
さすがに避けられる筈もなく、ルーミアの脇腹辺りに槍が貫いた。心が読めても、正確な位置に投げるまでは読めないので、この程度の誤差は仕方ないことだった。これも想定内だし、次に私がする事は既に決まっていた。
「あなたは既に私の手のひら。続けるというのであれば、そのまま踊りつづけなさい」
「くっ!!」
私は幾度も真っ黒な槍を生み出しては、即座にルーミアへ投げ続けた。ルーミアが避けようとしていたらその方向に真っ黒な槍を投げ、ルーミアの体は次々に真っ黒な槍で受けた傷や増えていき、出血しているところも幾つか確認出来るほどだった。
「くっ……くそ……」
「まだ続けますか? 私は構いませんけど」
そろそろ諦めてくれないと、私としても大罪魔法の効果が切れる頃だったので、これ以上の戦闘は避けたいところだった。元々殺すつもりはなかったので、この辺りで諦めて欲しいところだった。
「……例え死ぬことになろうとも、私は諦めない!!」
「……解りました。ならお望み通りにしてあげましょう」
私は、これで真っ黒な槍を使える可能性が最後になりそうだったので、大量の真っ黒な槍を私の周辺に生み出した。魔法によって空中に浮かばせ、それらは全てルーミアが居る方向へ指していた。
大罪魔法の効果が切れそうなだけなので、妖力的には問題がなかったから、大量に生み出すことは可能というだけの話だ。さっきみたいに避ける方向が解ってから出現させていたら、先に大罪魔法の効果が切れて、使えなくなる可能性を考えれば最善の手だと私は思うし、なにより相手に脅威を与えられるから、一石二鳥だった。
「――自らの力に溺れて死ね」
そして私は、ルーミアに向けて真っ黒な槍をある程度の間隔を空けて放った――
しかしその槍全てが、ルーミアに直撃することはなかった。
なぜなら、突然空間に亀裂が入り、亀裂が開くとルーミアを飲み込んでいったからだ。ルーミアが居たところに真っ黒な槍が辿り着いたのは、開いた亀裂が消えてから数秒もしない間だった。その光景に驚いたが、ルーミアを逃がしたであろう妖怪に、私はすぐさま睨みつけた。
「……どういうつもりですか?」
「あの妖怪をこの場で亡くすのは惜しいと思ったからよ」
「私に嘘が通じると思っていますか?」
ルーミアを逃がした犯人である八雲紫の心を読み、本心を既に読み取っていた。はっきり言って、私が気に入らない答えで、博麗沙良が知れば怒るような内容なので、八雲紫は口で答えるつもりはないだろう内容だった。
――博麗霊幡が陰陽師として一人前として、ルーミアを最初の退治対象にしようとしていた。しかも八雲紫が考えていたのは封印などという穏便な方法ではなく、殺すという意味での退治対象として考えていた。
何が許せなかったかと言えば、ルーミアをその辺に居る虫や道具のようにしか見ていなかったことだ。要するに殺しても構わないというような考えで、妖怪としても見ていなかった。
「……心が読めるというものは、私にとって天敵のようね」
「それはこちらの台詞です。妖怪をこの周辺に集めるように影で操っているあなたが、妖怪を殺させることを躊躇わないなんてね」
「別に私は全ての妖怪を救おうとしてないわよ。利用できるものはとことん利用するのが私よ」
「戦闘前は偽善者と評価していましたけど、訂正します。あなたは唯の自己満足したい我が儘です」
八雲紫がこの周辺で何をしようとしているのか既に心を読んで知っていた。妖怪を此処に来るように促し、妖怪にとって苦のない世界を作ろうとしていること。勿論それでは人間が減っていく一方なので、抑止力として最強の陰陽師と言われている稻河神社の陰陽師によって均等を保とうとしていたこと。妖怪のためということであれば解らなくないけども、殺そうと思っている妖怪に対してなんとも思っていないのは許せなかった。
「別に我が儘で構わないわ。あなたがどう思おうが、私にとって関係ないことだもの」
「そうですね。私だって関係ないことです。だけど、人間だろうと妖怪だろうと利用するために、殺す行為だけは許せない」
「ちっ、弱みを握られているのは気に入らないわね。この場で殺してあげましょうか?」
「言っておいますけど、私はルーミア相手に本気を出していませんよ。ルーミアに使った大罪魔法は禁忌魔法ですけど、あんなの私が使用する禁忌魔法の中でも弱い部類ですから。魔法によっては、この周辺の人妖を一瞬で滅ぼすことだって出来ます。そんなことをすれば、あなたの目的は破綻しますね」
「どうやら本当に殺されたいようね」
八雲紫が私に対する殺気を隠さずに放ち、私も何時でも攻撃出来るように魔法を使う準備をしていた。
「おい紫!! 何がなんだか解らないが、どうしてこうなった!!」
「沙良には関係ないことよ。あの子は私に対して弱みを握られているのよ。そんな妖怪、今すぐ殺すべきだわ」
「唯の自己満足だろそれは!!
そこの妹も姉をなんとかしろよ!!」
博麗沙良はこいしにもこの状況をなんとかしてもらおうと頼んでいた。さっきからこいしは黙っていたようだけど、今の私にこいしを気にしている場合でなかったから、こいしの心を読む暇はなかった。
「……お姉ちゃんを止めてもいいけど、正直私も紫さんが思っていたことはさすがに許せないかな?」
「あら、だったら姉妹同時でも私は構わないわよ」
「大妖怪だか知らないですけど、こいしの力を借りずに私一人で十分です」
「言ってくれるわね……ならお望み通りにしてあげましょうか」
「二人とも一旦落ち着けよ!!」
一触即発な状況が変わらない様子を見て、博麗沙良は嘆いた。けど私は嘆かれたところで止めるつもりもなかったし、なにより八雲紫が気に入らないと思っていたので、八雲紫が止めなければ止めるつもりはなかった。
そんな状況を、一人の巫女か止めに入った――
「二人とも、喧嘩は駄目だよ!!」
博麗霊幡が、私と八雲紫の間に入ってきて、止めようとしたのだ。その行動は私と八雲紫を驚かせるような行為で、博麗霊幡が殺される可能性がある場所に自ら入ってきたことに驚いた。その結果、私と八雲紫は攻撃の構えを止めて、お互いに博麗霊幡へ顔を向けていた。
「気に入らないからって、喧嘩は良くないよ!! お父さんが昔、気に入らないとしても我慢しなければいけない事もあるって言ってたよ!!」
「れ、霊幡、そこは危ないから……」
「沙良叔母ちゃんは黙ってて!!」
「お、叔母ちゃん!?」
博麗沙良が博麗霊幡を移動させようとしたが、博麗霊幡から叔母ちゃんと言われて落ち込んでいた。沙良お母さんと言うように博麗沙良は博麗霊幡に言っていたようだが、博麗霊幡としてはどうやら沙良叔母ちゃんの呼び方がしっくりきているらしい。
そんなシリアスな空気をぶち壊されたものだから、私はさすがに戦う気がなくなり、笑みが浮かんでいた。戦う気がなくなったのは八雲紫も同じようで、ため息を吐きながら博麗沙良と博麗霊幡の様子を眺めていた。
「まぁ、子供に言われたら仕方ありませんね」
「あら、それを言ったら、あなたも子供に入るのでは?」
「こいしはそうですけど、私は精神年齢的に言えば大人ですよ。それと、妖怪ですから見た目で年齢を判断するのはどうなのでしょうか?」
「覚妖怪の存在は最近でしょう? だったら、見た目が年齢が通用すると思うけど。もしくは、生まれたてと考えたけど、ちゃんとした思考をしているから違えでしょう?」
「まぁ、そうですね」
八雲紫に言われた通り、覚妖怪という名はここ最近知られた妖怪だ。そう考えれたら私たちは見た目が年齢も思う人が多いですし、見た目より幼いと考える場合の方が納得できると解った。
「人間が妖怪になった後天的の場合ね。でも、あなたが使った魔法はこの世にないような魔法を使っていたことについてはやはり気になるわね」
「詳しく言えませんけど、精神年齢的に私は大人だという理由が関係していることだけは伝えておきます」
「……前世の記憶が残っていると考えたけど、そうだとしたら未来的な魔法を使えた理由が解決できませんし、未来から過去に転生するっていう例はない」
意外と鋭いところを突いてくると私は思ったが、この様子だと答えに辿り着くことはないだろうと思った。けどそれよりも私は、死んだら転生するという仕組みがあることに驚いていましたけど。
「……まぁ、いいわ。それで、こらからあなたたち姉妹はどうするのかしら」
「特に決まってないですけどとりあえずはこの周辺の里や山を回るつもりですよ。でも、私だけになりそうですけどね……」
八雲紫は私の言葉に首を傾げたが、私が見ている視線の方向が八雲紫に向いていなかったことに気づき、私が見ていた方向に首を向けた。そこには、こいしと博麗霊幡がいつの間にか仲良くしている光景が見え、それを見た八雲紫も私が言った意味を納得した。
「……なるほど。私たちが話している間に仲良くしていたのね」
「これからこいしは稻河神社に何度も来ると思いますが、覚妖怪だからといって嫌な顔はしないことをお願いできますか?」
「あなたなら無理とはっきり言えたけど、あの妹なら問題ないわ。それに妖怪だけど、霊幡の年齢に近い友達が増えたら、競争相手になるかもしれないし、霊幡の成長に繋がるかもしないから」
「ありがとうございます。こいし!!」
「ん? お姉ちゃん呼んだ?」
私がこいしの名前を呼ぶと、こいしは私に近づいてきた。そろそろ帰るのかなという寂しそうな表情をしていたが、私は微笑みを浮かべながら話した。
「私は先に行きますが、夕暮れになりましたら里の団子屋で待ち合わせましょう」
「え!? じゃあ、私はまだここに居ていいの!!」
「はい、新しい友達ともっと居たいでしょうから」
「ありがとうお姉ちゃん!!」
こいしは私にお礼を言うと、博麗霊幡――霊幡の所に戻っていき、会話を再開させていた。それから私は八雲紫と、落ち込みから復活して、先ほどからこいしと霊幡の様子を眺めていた博麗沙良へ、顔を向けた。
「それでは私は行きますね。多分こいしと違ってここに来ることは殆どないでしょうけど」
「解った。こいしが神社に遊びに来ている場合の面倒は私と紫が見るよ」
「そ、そうね。変わりに見てあげるわ」
「博麗沙良さん、ありがとうございます」
「沙良でいいよ」
「解りました」
「ちょっと!! どうして私にはお礼がないのよ!!」
「その前にお礼したから別にいいでしょう?」
「やっぱり、あなたは気に入らないわ」
私も八雲紫と気が合わないと思っていたので、何も言わなかった。
そして私はこいしを置いて、稻河神社を後にするのだった――