魔法使いは覚り妖怪となっていた   作:アリヤ

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第一話 魔法と覚と妹と①

 あれから十五年くらいが経ち、この世界がどこで誰なのかということが把握することができた。

 まず、私の名前はさとり。苗字はなく……いや、正確には苗字が一応存在するらしいが、公に使えるわけではなかった。

 また、苗字のことも含めると、この世界がいつの時代なのかある程度把握することができた。場所は甲府で、江戸時代中期以降だということは理解できた。なぜ場所が甲府で、江戸時代中期以降だと解ったかといえば、大名が統治しているわけではなく、江戸幕府の直轄地だったということだ。甲府勤番によって管理され、甲府勤番が存在した時期が江戸時代中期から幕末までの時期だということを知っていたからだ。

 まさか大昔に転生するとは思っていなかったが、ある程度日本史には詳しかったこともあったおかけでいつの時代か把握でき、初めて日本史を覚えていて良かったと思えたくらいだ。

 そしてもう一つ自分にとって助かった点があった。数年前まで赤ん坊だったこともあって調べたのはつい最近だが、魔法が使えるという点は一番助かっていた。いや、正確には魔法が使えることはたとえ転生などをしたところでできる事は知っていたが、確認することができなかっただけで、親が近くに居ない時を見計らってようやく確認できたというわけだ。

 どうして魔法が使えると知っていたかと言えば簡単で、江戸時代に転生する前から魔法を使えたからとしか言えないだろう。実のところを言ってしまうと、魔法というものは使えるという常識を持っていれば実は使えたりするのだ。元々転生する前の私の一族は代々魔法が使え、両親が魔法を使っていた影響もあって、魔法が存在するという常識を持ったことがきっかけだ。

 しかし科学が発展し、科学的根拠がなければ非常識と扱われてしまうため、多くの人間が魔法や超能力というものを使うことができなくなかった。また、魔法や超能力という存在が知っていても、自分が使えないと思ってしまうだけで、魔法や超能力を使えないという常識ができてしまうからだ。もし、99%魔法が使えると思い込んでも、1%魔法が使えないと思ってしまうだけで非常識として扱われてしまう。実際に私の一族の中でも魔法に対して疑問視した人間は魔法を使うことができなかった過去がある。そのことから一族の間では、『他人の常識を信じず、自分だけの常識を信じろ』という言葉が生まれるほど、精神的影響が大きいというわけだ。だからこそ私は転生したところで魔法が使えるとは理解していたし、魔法が使えないとは思ったことがなかった。

 これらのことをふまえて、もし過去にタイムスリップや転生などをしたら、私は一つだけ確認したいことがあった。妖怪というものは本当に存在したかということだ。

 魔法や超能力に限らず、妖怪という存在が居るという常識を沢山の人間が持っていたら、妖怪という存在が生まれるだろうと思っていた。特に江戸時代より昔であれば、妖怪が存在しているという常識を持っていた人間は多いだろうし、もしかしたら本当に妖怪が存在していたのかもしれないと思っていた。過去に転生してから一番調べてみたいことであったで、成人したら探索してみたいと考えていた。

 ただ、一つだけ気になることがある。他者の常識によって、人間から妖怪になった者も存在するのではないかという疑問だ。

 例を挙げると吸血鬼が考えられるだろう。吸血鬼という言葉が生まれたのは病気が原因ではないかと考える人もいて、ポリフィリン症という病気が吸血鬼という言葉を生み出したのではないかと言われている。ポリフィリン症という病気については細かく知らないが、別名ヴァンパイア病と言われ太陽光に当たることができず、そのこともあって夜を好むようになるらしい。また、先天性であると、顔が青白くなり、歯茎が痩せ細くなることで歯が牙のように見えてしまうことから、吸血鬼という言葉が生み出されたのではないかと転生する前の現在では考えられていた。

 そのことからして、妖怪が存在するのであれば人間から妖怪になった者も存在してもおかしくはない。早く妖怪に会ってみたいと思うが、妖怪に会えるとしても何年後になるだろうし、迂闊に近づけば殺されることの方が考えられた。手っ取り早い方法はあるが、自分自身が妖怪にならないといけないし、何よりどのようにして妖怪になれるのか解らなかった。

 そもそも、妖怪について詳しいわけではないし、有名どころである吸血鬼や鬼などのようなことしか知らない。元々妖怪に興味があったわけではないし、単に魔法が使える方法からして妖怪にもその方法で生まれるのではないかと思ったからだ。その実証することが転生する前では証明のしようがないし、他人に話したところで嘲笑われるだけ……いや、あの二人なら逆に興味もちそうか。

 あまり魔法のことを知られたくなくて関わりを持たなかったが、何かしら試せたのかもしれないと思うとちょっと後悔。いや、それでも私はあの二人と関わらなかっただろう。他の生徒達から不気味に思われていたというのに、近づこうとは思わない。私にも友達がいた訳だし、近づこうとすれば友達が気味悪がられて離れていっただろうし。

 ……そういえば、転生したことはいいが、私の存在はどうなっているのだろうか。死んでしまったのだろうかもしれないし、もしかしたら意識が二つに分裂していつも通りに過ごしているのかもしれない。けどそんなことを今の私が確認できる訳ではないし、調べようも無いのだが。

 ……話が大幅に脱線しているな。閑話休題。

 とにかく私は、ある程度の時代や家族関係というものを把握する事ができた。家族構成は母と父。そして二つ下の妹であるこいしの四人家族だということだ。親の仕事内容は、相手の悩み事を読み取って解決するという、江戸時代にあるような仕事ではないことだ。

 とまぁ、転生したわりには親の職業以外は普通の家庭だった。よく二次創作にあるような別世界に転生するというわけでもなく、過去に戻って過去の一般人に転生したようだ。この先も大きな事件も起こらず、平穏に暮らしていくのだろうとこの時の私は思っていた――

 

 

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「こいし、大丈夫?」

「うん……お母さんとお父さん、大丈夫かな?」

 

 現在、私とこいしは森の中を逃げ回っていて、何人かの武士に追われていた。

 理由を言ってしまうと、両親が行っていた仕事が原因で、やはり心を読まれるようなことは、この時代の人間からしてみれば気味悪く思われ、私たち家族は妖怪ではないかと噂されていった。その結果、武士に私たち家族を殺すように依頼したのだろう。この時代を考えれば当然の結果なのかもしれないが、今はそんな事を考えている場合ではないし、兎に角逃げ続けないといけないと私は思った。

 

「……きっと大丈夫よ。また、いつものように暮らせるから」

 

 その言葉は、こいしを落ち着かせるための詭弁でしかなかった。私たちの親は私とこいしを守るために、自らを犠牲にして武士たちを私たちに向かわせないように仕向けたのだ。私も生きていることを信じたいが、かなりの人数が居たことを記憶しているし、逃げ切れるとは思えなかった。

 

「こいし、まだ走れそうです?」

「うん、どうしてこんなことになっちゃったのかな……」

「…………」

 

 こいしの言うとおり、どうしてこうなってしまったのでしょうか。私は転生する前から何事もなく、平穏に暮らしていきたいという考えないため、何故何もしていないのに逃げなければいのかと思っていた。

 いや、理由なんて本当は知っている。だけどそれを両親のせいということにはしたくなく、そもそもこの時代が悪いと考えれば納得する事ができた。私が居た現代(未来)であれば、心理学という学科があるくらいで、科学が進んだ中でも意外と人気があった。心を読む機械も存在したが、自分の力のみで他人の行動を読み取りたいと思う人は多かった。

 こいしはどのように思っているのか知らないが、少なくても私は両親のせいとは思わない。時代が悪かった、たったそれだけだから――

 

「……ちゃん、おねぇちゃんっ!!」

「……あ、考え事してました。それで、どうしたの?」

「もう!! それで、あそこ見て」

 

 こいしが指を差した方向へ向くと、かなり遠くに、三人くらいの武士が見えました。かなり遠くで、刀がなんとか判断出来ることから、何とか武士だと判断出来るくらいの、距離が離れています。こいし、よく気づきましたね。

 ただ、叫ぶのはまずかったと思いました。かなり遠い距離ではあるが、ここは木々が生い茂る中だ。多少声が聞こえただけで武士たちは警戒しないとは思えないし、案の定刀の柄を手で掴んで構え始めていました。こいしの声が聞こえたのでしょうけども、兎に角この状況を打破することを最優先で考えました。

 

「……こいし、今は動かないで」

「う、うん。どうするの?」

「私たちから離れてくれることを祈りましょう。今走って逃げたら気付かれますから」

「うん……ごめんね。大きな声出しちゃって」

 

 どうやらこいしは自分のせいでこのような状況になってしまったことに後悔しているようだった。

 そんなこいしの顔を見て、私はこいしの頭を撫でました。こいしは驚いた顔をしましたが、私は気にせずに話します。

 

「既にやってしまったことを言っても仕方ありません」

「……うん」

「だから、次から気をつければ良いのです。反省する事でそれを次に繋げたなら必ず誉められるような行為を自然と出来ますよ」

 

 私は武士が居る方向から視線が見えない方向に隠れ、こいしを抱きしめながらにこの場を何とかなるように祈りました。

 転生する前の私からしてみれば驚く行為を私はしていた。私が一人っ子だった事が関係しているかもしれないが、そもそも私は他人を気にかけるような行為は病気した時くらいしかしたことがない。友達関係もある程度いれば良いと考えていたタイプで、趣味や日常会話などのような、他愛ない内容以上に首を突っ込んだ事がなく、その日常会話ですら相槌打っていた事が多いくらいだ。

 しかし転生してからというものの、こいしのことをよく気にかけるようになっていました。私にとってあり得ないことで、教えるなんていう行為自体、自分自身が想像することが出来なかった。けどこいしを見ていると、なんと言いますか、見捨てられなく危うい存在だと思えてしまうのです。

 どうしてその様に思えるのかと言ってしまえば勘としか言えないですが、精神的影響を受けやすいように見えてしまいます。ある意味、私とは正反対であるからこそなのかは解らないが、見捨てられないのかもしれませんね。こいしの為なら何だってする覚悟はあるくらいです。

 

「……こいし、大丈夫?」

「うん……お姉ちゃんは?」

「私も大丈夫ですよ」

 

 この場が何とかならないのならば、最悪魔法でどうにかしようと考えてはいますが、それでは尚の事不気味に思われてしまう。だからこそ気づかれないで通り過ぎる事を私は祈った。

 しかし草木を踏む音からして、だんだんと私たちがいる方向へ近づいてきている事には気づいていた。このまま近づいてきたら、見つかってしまうのは当然だろうが、まだなにもしない方が良いと考え、兎に角怯え始めていたこいしを落ち着かせるために抱きしめる力を強めていた。

 そいて何事も起こらずに、足音が近づき、こうなったら魔法で処理しようと考えていたその時だった――

 

「こっちに怪しき者がおるぞ!!」

「妖怪か!? 今すぐ向かおう!!」

 

 突然遠くから別の武士の声が聞こえ、私たちに迫ってきていた武士たちは急いでこの場から離れていく足音が聞こえてきた。

 足跡が完全に聞こえなくなった事を確認したあと、私は抱きしめていたこいしを放し、こいしを立ち上がらせた。

 

「……なんかあったのかな?」

「解らないですが、兎に角今のうちです。隠れられる所に移動しましょう」

 

 その後、私たちは何事となく洞窟を見つける事が出来、途中で見つけた木の実などを拾ってその日は何とか生き延びる事が出来ました。

 しかしその翌日、私とこいしは起きて早々に驚く事になるとは、この時の私たちは知る由もなかった――

 




書いてて気づいたけど、覚り妖怪の時代背景を調べたら、江戸時代という最近なことだったため、余り話が広げられないことに気付く。
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