魔法使いは覚り妖怪となっていた   作:アリヤ

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第二話 魔法と覚と妹と②

 洞窟の中で一晩過ごし、私は目を覚ました。隣にはこいしが私の肩に寄りかかりながら寝ている姿があり、可愛い寝顔であったために私はこいしが起きるまでこのままで居てあげようと思った。

 他人を気使うことなんて、こいしが初めてかもしれない――そんなことを考えていた私だが、こいしの姿を見て違和感を覚え……というより違和感しかなかった。それもそうだ。顔は変わっていないが、髪は黄緑に近い色に変化していて、胸元に眼らしきものが見つかったからだ。

 もしかしてと思って私は自分の胸元を見た。色違いであるが、やはりこいしと同じ眼らしきものが存在していた。

 どうして私たちにこのようなものが付いているのかと、私は考え始めた。しかし、私は昨日の疲れが完全に取れたわけではなく、さらに言えば寝起きしたばかりだったため、思考がうまく回っていなかった。

 とりあえず思いつく限りで考えていると、こいしが目を覚ました――

 

「ん……あれ、ここは……」

「あ、こいし起きたのね」

 

 寝起き姿のこいしも可愛い、と思っていたが、それは内心に抑え込んでおいた。

 

「……? あ、お姉ちゃんおはよう」

「おはよう、こいし」

「……そっか、ここで一晩過ごしたんだった」

「……そうね」

 

 ……今、こいしがここで過ごした経緯が読めたような気がしたが、私は気にもしなかった。

 兎に角、こいしも起きたことだしこれからのことを考えなければならない。こいしの髪や私たちの眼のことを考えると、普通に村などで歩いていたらあまりにも目立ってしまう。私の魔法を使えば他者からの認識を、普通の村人だと認識させることは出来なくない。しかし私以外の人間に対して、認識を変更させることはかなりの集中力が必要で、逃げ回っている時に私とこいしの認識を変更しなかった理由でもある。このままこの洞窟で過ごすわけにもいかないし……

 

「……お姉ちゃん」

「……どうしたのこいし」

 

 そこまで考えていたところ、こいしから声を掛けられた。その顔はあまりにも輝いていて、その輝きで私を見ていた。何かあったのだろうかと私は呑気に考えていたが、次にこいしから発せられた言葉私に衝撃を与える物だった――

 

「ま、魔法でどういう物なの!!」

「……えっ」

 

 想定もしていなかった言葉を聴いて、私は素っ頓狂な顔をしていただろう。何故こいしが魔法を知っているのか解らなかったし、私が教えたわけでもない。西洋では別だが、この時代の日本に魔法のことを知っている人間がいるとは思えなかった。兎に角私は、こいしがどうして魔法を知った経緯を確認する事にした。

 

「……こいし、どうして魔法のことを?」

「えっとね、さっきからお姉ちゃんが考えている事が読めるようになったの!! だから、お姉ちゃんが考えていることは全て私に筒抜けなの!!」

 

 ここに来て、ようやく私たちの姿が変わった理由を理解した。しかし、私も確認したかったので、私はこいしで試させて貰うことにした。

 

「こいし、一つ確認してもよろしいですか?」

「なに?」

「頭の中で何か考えて貰いますか? 何でもいいので」

「わかった!!」

 

 やはりこいしを見ていると和む――と思いながらも、私はこいしが考えていることを呼んでみることにした。

 

《髪が紫色っぽくなっちゃったお姉ちゃんもいいな……》

「……私の髪もこいしと一緒で色が変わっているのですか」

「お、お姉ちゃんも私の考えていることを読めるの!? というか、私の髪の色も変わっているの!?」

 

 驚きながらも喜んでいたこいしは思わず飛び跳ねていた。自分と一緒だということに喜んでいたのでしょうが、これで私も心を読めることが解り、私とこいしが人間でなくなったと理解してしまった。

 そしてそれが、私たちの両親が仕事としていた職業が原因で、妖怪――詳しく言えばさとり妖怪になってしまったと――

 魔法は自分が出来ると思い込めば出来ると言ったが、実は魔法が使える事を魔法の存在を知らない他人に教えてはいけない、もしくは魔法という話題をあまり出さないようにと一族の間で言われていた。自分の常識は他人の非常識というように、他人からすれば魔法なんて使えないという常識があるからだ。個人の常識より、多数の常識が優先されてしまい、魔法が使えなくなってしまう。私が転生前までは、人との付き合いがあまりなかった理由の一つであった。

 私とこいしがさとり妖怪になってしまった理由も、他者からの常識によるものだ。両親がしていた仕事から心を読める一族だと他人が勘違いし、その思い込みによって私とこいしがさとり妖怪になってしまったのだと。多分だが、私とこいしの両親もさとり妖怪となってしまっているだろう。

 それにしても、私自身がさとり妖怪の一人だったということに驚きだが。

 

「……お姉ちゃん?」

「あ、どうかしたの?」

「お姉ちゃんがなにか考えている――」

 

 途中でこいしの言葉が止まったが、多分私の心を読んだのだろうと想像ついた。こいしに対して隠しごとが出来ないのは辛いですが、さとり妖怪になってしまった以上はどうしようもないと思った。

 先ほど、私は両親が原因で心が読めるさとり妖怪になってしまったと脳内で結論つけてしまった。こいしもさとり妖怪なため、私の心を読んで知ってしまったのだろう。

 

「……そっか、お姉ちゃんと私が心を読めるようになったのは……」

「……そのまえにこいし、私の思っていたことが正しいと思うの?」

「……うん。だって、前にお姉ちゃんが宙に浮いているところをこっそり見ていたから。あれが魔法なの?」

 

 こいしは私に問いかけてきたが、そんなことよりもこいしに見られていたということに衝撃的だった。両親が仕事で居ないとき、こいしに見られていないことを確認しながら魔法の練習をしていたのに、まさか今の今までこいしに見られていたなんて思いもしなかった。というか、恥ずかしすぎて穴の中に入りたかった。洞窟という穴の中に居ますが。

 

「えぇ、宙に浮くのも魔法です。ちなみに、こいしも頑張れば使えますよ」

「本当に!?」

「はい、魔法というのは……って顔が近いです!! 今から教えますから少し離れてください!!」

 

 自分にも使えると知ったこいしは、私に教えてという、期待しているかのような顔で私にお願いしてきた。この時代のことを考えてみれば、こいしが興味持つことであろうし、私がこいしのように魔法が本当に存在すると知ったら使いたいだろうと思う。

 その後、こいしはなんとか私から少しだけ離れてくれたが、期待しているかのような顔は変わらなかった。それに、こいしには魔法を覚えてもらわないと、この状況を打破出来ませんからね。

 

「まず魔法というのは、自分が使えると思い込まなければなりません」

「思い込むだけいいの?」

「はい、そして魔法を使う場合でも、自分が使いたいと思った魔法を想像すれば簡単に使えますよ」

 

 まぁ、この方法は転生前である私たちの一族が昔に編み出した方法らしいです。今の時代だと、術式や魔導書を使わなければ魔法を使えないと思い込んでいるし、長年魔法というものについて研究してきた私たち一族だからこそ、想像するだけで魔法が使えるという結論に至ったようです。魔法というより鉛から金へと変化させるような錬金術に近いのかもしれません。能力者っぽいとも思われるかもしれないが、ある一つの物を極めたものを能力者と私たち一族は決めていたましたし、原点を辿れば魔法を研究した結果だからこそ、そのような環境にいた私も魔法と言い切れます。

 

「お姉ちゃん」

「こいし、出来ました……か?」

 

 こいしから声を掛けられて、私はこいしが居た方向へ顔を向けるが、そこには誰も居なかった。それから辺りを探しましたが、こいしの姿はどこにもなく、見つかりませんでした。

 

「こいし? 一体どこに居るのですか?」

「ここだよ」

「わっ!?」

 

 突然抱きつかれたような感覚を感じ、私の後ろに居ると解ったが、私の体を見て違和感を覚えた。というより、違和感しかなかった。

 確かに今、何者かに抱きつかれている。多分こいしだろうと思えるが、何故私がこいしと断言せずに何者かと言った理由は、抱きつかれている感覚はある筈なのに、私の体を見ても腕が見つからないからだ。そして後ろを振り向いてもこいしらしき姿はどこにもなく、そこでようやくこいしが何をしたのか理解できたが、抱きつかれている感覚は未だに違和感しかなかった。

 

「こ、こいし。透明になっていることは、解りましたから離れてください……」

「透明? 私は私の認識を無くしているだけだよ? とりあえず魔法を解くね」

 

 こいしがそう言うと、先ほどまで見えなかったこいしの腕が、私の目で認識出来るようになった。そして背中にはこいしの姿も認識出来るようになり、こいしの顔は笑みを浮かべていた。

 透明になっていると私は思いましたが、まさか認識阻害魔法を使ってくるとは思いませんでした。普通、最初に使う魔法は火や水を操るとか、良くて私が最初に言った透明になって驚かすようなことをしてくると思っていたが、まさかいきなり認識を阻害させる魔法を使ってくるとは誰が予想できたでしょうか。当てが外れるに決まっていますし、私自身解りませんでした。

 

「……こいし、どうして最初にその魔法を使おうと思ったのですか?」

「うーんとね。さっきお姉ちゃんが魔法の練習をこっそり見ていたって言ったよね? あの時からお姉ちゃんに気づかれずに目の前で練習しているところを見たいなと思っていたから」

「……要するに、自分がしたかったことが他人に気づかれないようにする方法だったと」

「うん!! だってお姉ちゃんが魔法の練習しているところを見ているの楽しかったんだもん!! 失敗して転んでいたりしているところを見たり……」

「そ、そんなところまで見ていたのですか!?」

 

 私が想像していたことと違いすぎて驚きながらも、恥ずかしくて死にたいと思ってしまうほどだった。密かに努力や練習をしているところを、身近な友達や家族に見られていたなんて知ったら、誰だって恥ずかしくなるだろう。

 とはいえ、魔法の練習をする際に気づかれないようにするような魔法が使えた筈なのに、多分見られていないから大丈夫だろうと思い込んだ結果だ。私の失態かと言えばその通りで、注意を怠っていた私が一番悪かった。結果的に言えばこいしに説明をする手間も省け、簡単に魔法を取得することが出来たことから、私が恥ずかしい思いをするということ以外の問題が、逆に無くなったと言えるが。

 ちなみにこのときこいしは、私が恥ずかしそうな顔をしているときに、私の前に来て恥ずかし

そうな顔を見ていたが、恥ずかしくて私は気にしていられなかった――

 

「兎に角、こいしが魔法を使えることは解りました。というより、普通の人は使えないと思っている筈なのに、よく使えましたね」

「だって、お姉ちゃんが使っていたのを見ていたんだよ?魔法というものが存在すると知っていたし、お姉ちゃんが私にも使えると言われてやってみたら出来ただけだよ」

 

 こいしの言葉を聴いて納得した。要するにこいしは子供らしい無邪気なところが残っているからこそ、何も疑わずに魔法が使えると思ったのだろう。こいしくらいの年齢ならば、他人に対して疑ったりするような年齢であるはずだが、そもそもこいしは私以外の子供と遊ぶことはしなかった。というより、両親の仕事からして他の親からは変に思われていた事の方が正しいのかもしれない。その結果が現在に至ると考えれば、こいしに無邪気さが残っている理由に納得が出来た。

 兎に角、ここまで好都合に進んでいると後が怖かったが、こいしに他の魔法を数日で出来る限りのことは教えなければならないので、私はさっさとこいしに魔法を教えることにした。

 

「それではこいし、他の魔法について教えますよ」

「うん、お願いします。お姉ちゃん」

 

 こうして、私による魔法の練習が始まる――と、このときの私は思っていました。

 

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