魔法使いは覚り妖怪となっていた   作:アリヤ

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第一話から第四話までのサブタイトルを変更しました。

前回の続きが多かったので、この方にした方が解りやすいと思いまして


第五話 里と教師と不老不死と②

「っ!? そんなっ……」

 

 こいしは、自分の両親が火炙りの刑にさせられたことを聴いて、膝から落ちていった。信じたくないが、藤原さんが言っていたことは覚妖怪故に嘘をついていないと知ってしまう。

 とはいえ、藤原さんが聴いた話は他人から聴いた情報の範囲で、本当かどうかなんて現段階では解らない。しかし、たとえ噂だったとしても、火の無い所に煙は立たぬと言いますので、嘘だとしても両親の内一人が殺されたという可能性は高いだろう。こいしは藤原さんの話を信じたくないと思っているようだが、諦めているところは感じられた。兎に角、今の私に出来ることは、こいしを慰めてしまうことしか出来なかった。

 

「……やっぱり、一度落ち着かせてから聴いた方が良かったか?」

「……いえ、私たちは覚妖怪ですから、落ち着かせる前に知ってしまうので」

「そうか。まぁ、伝えたのは私だから、一緒にいてあげるよ」

「ありがとうございます」

「別に構わないよ。でもまぁ、妖怪を慰めるなんて昔の私なら考えられないことだけどね」

 

 藤原さんは突然過去を思い出したかのように遠い目をしていた。私は、藤原さんの過去を読んでしまったので、なぜそんな遠い目をしているのか解ってしまうが、そこについて話しかけるのは野暮なので、何も言わないことにした。それよりも、こいしを落ち着かせることの方が最優先だったので、気にしている場合ではなかったというのがありましたけど。

 

「……こいし、落ち着きました?」

「うん……ありがとう、お姉ちゃん」

 

 それから数分して、こいしはようやく落ち着きを取り戻したようで、自分で立ち上がっていた。藤原さんもこいしが落ち着いたのを見て安心したのか、安堵の息を吐き、その後私たちにあることを確認しようと話しかけてきた。

 

「それで、二人はどうするんだい?」

「多分、まだ私たちを追ってきているでしょうから、もう少しこの町に滞在したら出て行きましょうかと……」

「……ならここに居た方がいい。里を見ていて解ったと思うが、ここはなぜか妖怪の溜まり場になっている。私が言うことではないが、人間にとっては良くないところだが、妖怪にとっては住みやすい」

「なるほど。大勢いるこの町ならば、逆に紛れることが出来ると」

「そういうことだ。その代わりに陰陽師も多数いるが、基本的に人間に被害を与えなければお咎めがない。そういう決まりがここにはあるからな」

 

 藤原さんの話を聴いて、確かにこの場所は私たちにとって生活しやすい場所なのかもしれないと私は考えた。旅を続けて危険が迫っている中で生きていくことと、安全がある程度確保されていることを比べるとたら、断然後者を選んだ方が良かった。

 実は、何年も掛けて欧州に向かうというちょっとした野望が私にはありましたが、かなりの危険が伴いますし、半分以上冗談に近かったので、こいしの安全と比較したら断然こいしの安全を取りたかった。この時代の魔導書を読んでみたかったという気持ちはあったが、この日本からは流石に遠すぎだった。

 兎に角私の結論は決まり、後はこいしに聴くだけだったが、こいしの方へ顔を向けると、先ほどの悲しそうな顔をせずに、私に対して笑みを浮かべてきたので、何となくだが私の心を読んだのだろうと思い、こいしからも了承得られたと思い、藤原さんに私たちの結論を述べることにした。

 

「藤原さん、私たちはここで暮らしたいと思います」

「そうか。それで、住む場所とかどうするつもりだ?」

「その辺は決まっていませんが、現在は宿に泊まっています。それに、妖怪ですから最悪野宿でも構わないと思っていますので。人間らしさは捨てられていないですけどね」

「まぁ、妖怪でも人間と同じように、睡眠や食事を取る妖怪もいるよ。その辺については詳しくないが……」

 

 どうやら、寝ている間や普通の食事をしている間に、妖怪退治として攻撃した過去があると、藤原さんの心を読んで知ることができた。心を読むだけでは感情というものが解りにくいので、今度時間があった際に藤原さんの過去を聴いてみようと私は考えた。もちろん嫌な過去の話を除いてですが。

 

「さて、それでは私たちはこれで――」

「妹紅!! ようやく見つけたぞ!!」

 

 私たちが藤原さんと離れようとしたところ、藤原さんの名前を誰かが呼ぶような声が聞こえてきた。

 私とこいしには関わりなさそうな感じだったが、この森林の中で誰かが来たとなると思わず気になってしまい、私は声が聞こえた方向へ振り向いた。そこには青い服を着ていて、私やこいし、藤原さんと違って膨らんだ胸を持っていた銀髪の女性がこちらに近づいてきていた。

 

「あっ、待ち合わせしていたこと忘れてた……」

 

 藤原さんは突然何かを思い出したかのように声を出していた。そういえば私も藤原さんと最初会ったときに、藤原さんが甘味処で上白沢慧音という人と待ち合わせしていたようだったことを、心読んで知っていたことを思い出した。こいしがいつも共にいるおかげで数多の記憶を覚え続けていることが多くなっていき、忘れることはないが記憶を取り出すことが難しくなっていきます。例えるならば、パソコンでいうファイルは存在するのに、そこにたどり着くまでのフォルダーが多すぎて、検索するのに時間が掛かっている状態でしょうか。

 私がいた時代は検索するのに一秒も掛かることはなかったし、ネットワークにしてもサイトへ繋ぐ速度が遅いだけで苦情になる時代だったが。というより、機械に限らず科学技術が進化していく度に、何もかもが数秒で終わるように技術が進化していったので、何に対しても自然と急がせたりするような時代で、そんな時代で生きていたと今思うと恐ろしい時代だと思った。間接的に見るようになったから、私は気づいたようなものですが。

 

 

 ――閑話休題

 

 

「妹紅!! 待ち合わせしておいて、どうして破ったっ!!」

「いや、実はさっきまで甘味処に居たんだけどさ――」

「そんな言い訳が通用すると思っているのかっ!!」

「いや、だから――」

「藤原さんが言ったことは間違いではないですよ」

 

 このままだと勘違いしそうな雰囲気だったので、私は二人の会話に割り込むような形で上白沢さんに話した。その声を聴いてか、上白沢さんはようやく私とこいしの存在に気づき、何かを察したようだった。もちろん、察した内容は覚妖怪による力によって読めていましたが。

 

「……なるほど、妹紅はついに幼い子供を誘拐するようになったか」

「ちげーよ!! さっき甘味処で会って、人気がないようなこの場所を選んで話していただけだっ!!」

「その話というのは、一緒に暮らさないかということではないのか?」

「だから、そういう理由で連れてきたわけじゃねぇ!!」

「ま、冗談だ」

「冗談かよっ!!」

 

 そんな藤原さんと上白沢さんの会話を聴いていた私とこいしは思わずお互いの顔を見て、くすりと笑った。私とこいしは心が読めるので、上白沢さんの言っていることが冗談だと知っていたから、藤原さんが弄られているのを見て面白かったからだ。

 私たちが笑っている光景に藤原さんと上白沢さんは気づき、藤原さんは恥ずかしくて顔を赤く染めていた。

 

「……慧音の話し方は冗談に聞こえないんだよ」

「だが、この子たちは気づいていたぞ?」

「この子たちは例外だよ……」

「例外? まぁ、よく解らないが自己紹介しよう」

「……そういえば私の名前は言ったが、二人の名前は聴いていなかったな」

「どうして妹紅の名前は言ったのに、二人の名前は聴いていなかった?」

「それもいろいろと事情があるんだよ。すぐに解るさ」

「……先ほどから意味深げに言ってくるが今は気にしないことにしよう」

 

 先ほどから藤原さんの言っていることが理解できていない上白沢さんは疑問が浮かんでいた。そんなやり取りを見ていた私は思わず苦笑が浮かんでいたが、上白沢さんは一旦切り替えて自己紹介を始めた。

 

「私の名前は上白沢慧音だ。こう見えて寺子屋で教師をしている」

「……言わなくても問題ないと思うが、一応自分の口から言っておこうか。藤原妹紅だ」

「古明地さとりと申します。それで、妹の――」

「古明地こいしだよ!!」

「さとりにこいしか……」

 

 全員が自己紹介する形となったが、上白沢さんは私とこいしの名前を聴いて、何故か頷いていて、どうやら私たちの名前を良い名前だと思っていて頷いていたようだった。

 

「ところで妹紅、先ほどの件は冗談として、本当にこんな森林の中に三人で居たのは何故だ?」

「私としては、どうしてこの場所に居ると気づいたのかということが気になるが」

「甘味処に行ってみたら、店主が妹紅の行き先を聴いたからだ。二人の少女を連れてな」

「だが、私がここに居ると思わなかった筈だ」

「たしかにそうだが、妹紅が連れて行く所なんてある程度解るさ。というより、人とあまり関わろうとしない妹紅が甘味処で会った女の子二人を連れて行くなんて、人気のない所で話があったからと言っているものだ」

「酷い言われようだな。否定しないが……」

 

 藤原さんは自身の『体質』的に人と関われないということは心を読んで私は知っていた。上白沢さんも直すように促しているわけでもなく、人となるべく関わらないようにしている藤原さんが、私たちを連れてこんな森林の中に連れてきたことを考えると、何かしら理由があってのことだと思ったようだ。

 藤原さんは右手で頭を掻きながらも、上白沢さんに私たちのことを説明した。

 

「とりあえず説明するがそのまえに、あんたら――古明地姉妹は慧音が聴きたいことを最初から解っていただろ?」

「えぇ、上白沢さんが最初に藤原さんを弄った辺りが冗談だということもですが」

「その話を掘り返すな。あと、さっきから藤原さんっていう呼び方で呼ばれるのはむず痒いから、妹紅で構わないよ」

「なら私も慧音で構わないよ。それで、私が聴きたいことが解ると言うことを、この子たちは最初から解っていたということか」

「そういうこと。古明地姉妹は妖怪さ。それも、ついこの前火炙りの刑された妖怪が居ただろう?」

「たしか覚妖怪だったな……ん?」

 

 藤原さん――妹紅さんの説明をしている途中で、上白沢さん――慧音さんは何かが結びついたようだった。どうやら、覚妖怪がどういうものなのかということは、既に知っているようで、それが妹紅から私たちの説明をしていた内容と一致していないかと気づいたようだ。

 

「……もしかして古明地姉妹は覚妖怪だということか?」

「そういうことだ。それであっているよな?」

「はい。ちなみに、その火炙りの刑で処された覚妖怪は両親という可能性が高いです」

「……あぁ。しかし、火炙りの刑で処された覚妖怪が両親だと解るのだ?」

「覚妖怪の起源が私たちの両親だからです。ついこの前まで普通の人間でしたから――」

 

 正確には、普通の人間という括りに入るかと言えば、私は入らないでしょう。こいしは普通の人間だったと断言できますが、私の場合は魔法を使え、未来から転生してきた存在ですからね。

 

「人間から妖怪にだとっ!?」

「その通りです」

「……妖怪になったのに、よく冷静にいられるな」

「最初に疑問に思うところはそこですかっ!?」

 

 このとき慧音さんの心が読めていたので、慧音さんら驚きつつも聴きたいことが増えてしまい、動揺していたようで最初に言ってきた疑問が私に対することだった。流石にその疑問が最初にくると考えてなかったので、私は逆に驚かされる形になってしまった。

 確かに、慧音さんが疑問に思う一つだと言えるが、それは覚妖怪とあまり関係ない疑問に近いし、それ以前にその疑問の答え方を私は全く考えてなかった。また、その疑問は妹紅さんも気になっていたようで、私の返答に多少だが気になっていたようだ。

 兎に角、正直に答えるのは良くないと思った私は、咄嗟に思いついた答え方で返答する事にした。

 

「さ、覚妖怪になって以降、両親とはすぐに離れたので、こいしのためにと思いまして……」

「それにしてもかなり冷静のような気が……」

「……あまり話したくないので、次の疑問をお願いしてもよろしいですか」

「……まぁ、話したくないなら構わないし、覚妖怪に対する疑問ではなかったな」

 

 これ以上この疑問で話されたくないので、無理やりだが次の疑問に変えるようにした。

 ちなみにこの時のこいしだが、話に飽きたようで、先ほどから近くにいた蝶と戯れているが、わたしが無理やり話を変えたところを心で読まれていたので、笑い堪えているような感じだった。何も言ってこなかっただけ良かったですが。

 

「とりあえず次の疑問だが――」

 

 それ以降は特に何事もなかったかのように、疑問とそれに対する返答を繰り返すだけで、終わった頃には夕方になっていた――

 

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