東方空闘犬 〜 黒歴史版   作:メビウスノカケラ

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第4話です。にとりのアジトに向かいます。


第4話「風」

アリス「今日はこれにておしまい。来週をお楽しみに」

(ペコリ)

 アリスが挨拶をすると同時に人形達がおじぎをする。

(((パチパチパチパチ)))

 人形劇を見ていた子どもたちが拍手をする。

(パチパチパチパチ)

 私もまじって拍手をする。アリスの魔法の凄さを魅せつけられた。一体一体の人形が全く別の動きをしているのだ。今日はお姫様をかけて闘う二人の騎士の戦いが題材だったようだが、それは見事だった。

 片方の人形が剣を振り下ろしたのをもう片方は盾で弾き返し反撃。それをまたかわして蹴りを入れる。それを後ろで見ているお姫様役の人形はその動きに怯えた動きをしっかりとこなす。的確な操作とそれぞれ別々の指示、あれを全部一人でやっていたのだと思うと、アリスは相当器用で頭の回転が速いということなのだろう。

アリス「ふぅ、どうだったかしら?」

 はしゃいで寄ってきた子どもたちが落ち着いたアリスがこちらに戻り、私やケーネ先生やにとりに感想を求める。

ドーラ「ええ、感動したわ。ほんと、まるで生きているみたい」

慧音「いつ見ても素晴らしいな!この子たちに素晴らしい劇を見せてくれたことを感謝する!」

にとり「お金が取れるレベルなのにもったいないなぁ。人形をあんなふうに動かせたら私の研究もはかどるだろうな~」

アリス「ありがとう、だけど、まだまだね。鍔競り合いの最中にお姫様を動かすときに、一瞬動きが固くなってしまったわ」

 あれだけの腕前なのにまだまだ未熟だと言う。正直、どこが悪かったのか私には全然わからない。

慧音「さて、そろそろお昼だ。アリス、ドーラ、にとりの分も用意しよう。昼食でも食べながらこの後の予定を話そうじゃないか」

 ケーネ先生が昼食を用意してくれているようだ。お言葉に甘えて食べさせてもらおう。お腹がすいた。

 私たちは先生の案内で近くの蕎麦屋に向かった。

 

第4話「風」

 

ドーラ「ごちそうさま!!」

 昼食を有りがたく頂いた。これが和食か。しかしあのの「ダシマキ」って卵料理・・・東洋のオムレツ!すごく美味しい!

アリス「・・・ドーラ?」

ドーラ「ん?・・・う」

 アリスがすごい剣幕でこちらを見ている。

ドーラ「な、何を怒ってるの?」

アリス「・・・食べ方が下品。女の子としてあるまじきことよ。回り見てみなさい、まだ皆食べてるでしょ。もっと静かにゆっくり食べなさい」

 どうやら、女の子らしさについてのことで怒っていたようだ。

慧音「まあまあ、確かにちょっとだらしない食べ方だったが、美味しかったからそうなっただけで許容範囲じゃ・・・」

アリス「・・・慧音先生。男の子ならまだしも、女の子がこんな食べ方しててもいいと思うの?」

慧音「う・・・うむ」

 アリスがケーネ先生を圧している。なんという迫力。

 そして、アリスはこちらに振り向き、私に言う。

アリス「・・・ドーラ、今度私とテーブルマナーを学びましょう。うってつけの場所があるの」

ドーラ「私は別に・・・」

アリス「・・・・・・」

ドーラ「うう・・・」

 こ、怖い。なんでこんなにも女の子らしさに執着する?

??「ズズ・・・それくらいにしてあげなよ」

 横の机の方から声が聞こえる。

アリス「・・・横から何かしら、藤原さん?」

 後ろでくくっていても腰よりも長く白い髪をしたリボンの少女が東洋のヌードル、ソバを食べながらこちらに話してきた。向かいには学生だろうか?メガネを掛けた紫の服を着た茶髪のおさげの少女が座っている。

慧音「妹紅」

妹紅「慧音も来たなら一言くらいこえかけて、ズル・・・もぐもぐ、くれたらいいのに」

慧音「いたのは気づいてたんだが、ご友人と話してたから・・・というか、食べながらしゃべるな!」

妹紅「・・・いつも言うけど、慧音って私にだけなんか厳しいとこあるよね~、ズルズル、なあ?菫子」

菫子「いや、知らないですよ・・・初対面だし」

慧音「それはお前のことを思って・・・」

 身内同士のやり取りが続いて何が何だかわからないが、仲がいいことは分かった。

妹紅「まあそれはさておき、人形使いさん?食事ってのは、ズズズ・・・ごっくん、おいしく食べるのが一番じゃあないのか?」

アリス「おいしく食べるためのテーブルマナーよ」

妹紅「そりゃ、ズズズズ・・・ふぅっ、ごちそうさま!そりゃ場所によってはそうだけどさぁ。ていうか、そもそもなんでこいつにそこまで?見かけない顔だが」

 モコーと呼ばれた少女は私にハシを指して言った。

アリス「・・・ん?そういえばそうね?」

ドーラ「え?」

 わからないのか!?

妹紅「おい、自分でもわからないのかよ」

アリス「あ、これは理由って言えるかわからないけど、この子せっかく綺麗なのにおしとやかさにかけてたからかしらね」

ドーラ「それって・・・」

にとり「私利私欲のためだね~」

 にとりがきゅうりの浅漬を食べながら口を挟む。

にとり「自分の理想のため、いいじゃないか。その気持ちは大事だよ、うん。あむっ、もぐもぐ」

アリス「そうよ。その気持ちがあるからこそ様々な偉業が成し遂げられるのよ、みんな。だからドーラ?おとなしく私にされるがままになさい」

ドーラ「・・・・・・」

 どうしようもないらしい。

妹紅「・・・ま、頑張れ。知らない人」

 モコーは面倒になって諦めてしまった。他のみんなもアリスを止められないと悟ったのか、食事に戻る。退路は絶たれてしまった。

菫子「幻想郷にも世知辛いとこはあるのねぇ」

 

妹紅「それじゃ慧音、またね~」

慧音「ああ、気をつけてな~ご友人も~」

菫子「ありがとうございます~」

 食事を終えた私たちは表に出る。これから私たちはにとりのアジトへ向かうのだが・・・

ドーラ「あの山まで行くのか・・・時間がかかりそう」

 人里から見える「妖怪の山」。結構距離がありそうだ。木々にも囲まれていて歩いて行くのは時間がかかるに違いない。

ドーラ「ヘリコプターでもあれば早いのだけど・・・」

(ガシッ)

ドーラ「え?」

 アリスが私の腰に手を回し、私の手を肩にかける。

(ガシッ)

ドーラ「え?え?」

 今度はケーネ先生が反対方向からアリスと同じようにする。

ドーラ「こ、これはどういう・・・」

アリス「時間はかからないわ」

ドーラ「え?なぜ?」

慧音「空を飛んで行くからだ」

ドーラ「何を言って・・・」

 生身の人間が飛べるはずが・・・と言おうとした時である。

(フワ・・・)

ドーラ「え・・・?」

 足が地面からゆっくりと離れる。ヘリコプターが地面から離れるように。

ドーラ「・・・えええええ!?!?」

 どんどんと高度が上がる。私は生身のまま宙に浮かんでいるのだ。

アリス「何を驚いてるのよ。あなただって空を飛んでいたんでしょう?」

ドーラ「いや、それは飛行機に乗っていたからであって・・・」

 生身の人が宙に浮くなんて・・・確かに夢みたいな話で、幻想郷じゃ当たり前なのかもしれないけど、やはり面食らう。

ドーラ「ていうか、ケーネ先生はどうして飛べるのよ!?人間じゃないの!?」

 そうだ。ケーネ先生はなんで飛べてるんだ?ただの教師じゃないのか?アリスはまあわかる。魔法使いだし、それくらい出来ても不思議じゃない。

慧音「ああ、実は私は人間じゃないんだ」

ドーラ「・・・うう、もう何が何やら」

 慣れるしか無い、そう思っていたが、この幻想郷に慣れるのにかなり時間が掛かりそうだ・・・

にとり「さてさて、お三方!」

 私が騒いでいると、バックパックから飛び出した大きなプロペラでにとりが下から追いかけてくる。

ドーラ「あ、あなたはそれで空を飛ぶのね・・・ん?」

 よく見たら大きなプロペラが1枚だけ。これじゃ身体が回転してしまうのでは・・・

にとり「いーや、これは補助みたいなもんかな?実はこれだけじゃ飛べないんだ。これを人間に見せつけて売りつけてやろうと思ったんだが、滑っちゃったからな~。まあ、かっこいいからいいけど」

ドーラ「そ、そうなのね・・・」

 科学までが現実離れしている。もう訳がわからない。

 だが、考えなおしてみるとそう悪くない。私の自由に飛べないとはいえまた空をとべるんだ。・・・なんだか楽しくなってきた。

にとり「それじゃあ、私達のアジトまで案内させてもらうよ!ちゃんとついてきてくれよ!」

アリス「それじゃ、ドーラは私たちの肩を離しちゃダメよ。あなたは飛べないから、落ちたら一巻の終わりだからね」

慧音「しっかり捕まっていろよ」

ドーラ「・・・了解!」

 私たちは空を飛び、にとりのアジトまで向かっていく。心地よい風を全身で浴びながら、山の方角に飛行した。

?「あれは・・・面白いものを見つけてしまったわね・・・!」

(パシャリ!)

 

慧音「そういや、ドーラは博麗神社にはまだ行ってないのか?」

 移動の最中、先生に話を振られる。

アリス「いいえ、行ってないわ」

ドーラ「ジンジャー?生姜か?」

慧音「いや、違う。神社というのはだな・・・」

アリス「・・・先生、後で私から説明しておくから」

慧音「む・・・まあ、簡単に言うと、博麗神社というのはこの幻想郷全体の管理を担う場所の1つだ。そこにいる博麗の巫女に頼めば外の世界に帰れる」

ドーラ「か、帰れるのか!?」

慧音「ああ。神かくしにあった外来人はいつもそれで帰っている」

アリス「けど、ドーラの場合、なんだかよくわからないところが多いから」

ドーラ「え?」

慧音「どういうことだ?」

アリス「まず、ドーラは幻想郷に来る前は生死の境目をさまよっていたこと」

慧音「・・・つまり、魂だけが幻想入りしてきた状態ということか」

ドーラ「私が死んでしまったということ!?」

アリス「可能性よ。こうやって肉体はあるわけだし、魂だけというのは少しおかしい気もするんだけどね」

 確かに、この体は間違いなくここにある。魂だけというのはおかしい。

アリス「あとは、幻想入りしてきた時に衣服を身に着けていなかったこと、外国人らしいけどなぜか日本語が読めていること(ちょっと変だけど)、それから彼女の所持物がこの幻想郷に存在していることかしらね」

慧音「なるほど。普通に幻想入りしてきたなら衣服も着てるだろうし、言語もその人が使えるものだけだし、所持品が別に幻想入りしてるっていうのもおかしな話だしな」

ドーラ「そ、そうなんだ・・・」

 つまりだ、私は今、保護観察処分を受けているような状態なわけだ。

アリス「それに、人外だと判断されて、霊夢にぎゃあぎゃあ言われるのも面倒だしね。まあ、私には完全に人間に見えるけど」

慧音「私にも人間に見える。妖気とか魔力とかは全く感じられないしな」

ドーラ「何が何やら・・・」

 ヨーキだとか魔力だとかレームだとかよくわからない単語に頭がぐるぐるしてくる。

アリス「とにかく、博麗神社に行くのは色々分かってからにしましょう。それまで先生がドーラの居場所を作ってくれると頼もしいのだけれど・・・」

慧音「わかった。なら、私があとで手配しておこう」

ドーラ「・・・何から何まで、ほんとに恩に着る」

にとり「よし、みんなここで下りてくれ」

 話をしている間ににとりが着いたと指示をしてくる。私たちは流れ出る滝の横に降り立った。

 

 にとりはどうやら私のF-16を見つけ、それを見世物に私の機体の研究資金を集金しようとしていたそうだ。あの時先生と口論していたのは『外の世界の技術を解明!』というでたらめなキャッチフレーズでチラシを配っていた際に、「外に興味を持って危ないことをする子供が出たらどうするんだ!」と、テラコヤで門前払いにされかかっていた最中だったようだ。外っていうのは私のいた現実世界のこと。

 そして、にとりは私が来たから予定を変更。研究せずとも私に機体の構造を聞けばいいと判断したようだ。今、私は滝の裏の洞窟を抜け、河童のアジトに保管されているかつての愛機の前に立っている。

ドーラ「・・・本当に私の機体みたいね」

 水色の迷彩、機首と垂直尾翼にペイントされたツバメのマーク・・・間違いなく私、ドーラ・ウェッジショットの、「スワロー1」の機体だ。

にとり「まさかこんなデカブツ、しかもかなり新しい物が落ちてるなんてね~運ぶのに苦労したよ」

慧音「・・・外の世界にはこんなものがあるのだな」

アリス「これがドーラが乗っていたという戦闘機って乗り物ね」

 みんな思い思いの感想を言う。だが私はあんまり聞かずに機首から機体の周りを時計回りに見て回る。

ドーラ「・・・にとり、梯子か脚立か何か無い?」

にとり「ああ、梯子ならそこにあるよ。待ってて」

 一通り見終わって、にとりから受け取った梯子で機首に登り、機体のキャノピー(コックピットの風防)を開ける。

(ウィーーン)

にとり「え!?そこ開けたのか!?自動なのか!?」

 にとりの興奮する声が聞こえるが、気にせずにコックピットに座る。そして、計器や電子機器を確認する。

 ・・・すごい。どこも悪いところが見られない。それどころか、今すぐにでも飛行が可能な状態だ。・・・滑走路があればの話ではあるけど。

にとり「ねえ、あんたえーっと・・・ドーラだっけ?」

 にとりが梯子を登って私に顔を近づける。

ドーラ「え、ええ。そうだけど」

にとり「これ動くの?どうやって動かすの?私ら河童の技術でも全然わっからなくてさぁ!!」

 アジトに来るまでのにとりの目を思い出す。・・・こんなにイキイキしていたかな?かなり興奮しているようだ。

にとり「私が思うにはこのフォルムは外の人間が空を飛ぶための機械なんだと思うんだけど、やっぱり変形とかするのか??」

ドーラ「いや、変形はしないけど・・・飛べる状態ではある」

にとり「ホントか!?なら飛ぼう!!今すぐに!!」

(フンスフンスーッ)

 にとりが更に顔を寄せる。鼻息が荒い。

ドーラ「あ、その、飛べる状態ではあるけども・・・加速するための滑走路がないと・・・」

 私は少し引き気味に説明する。

にとり「滑走路??こう、フワーッって浮けるんじゃないの??」

ドーラ「そうだな・・・まず飛行機は・・・」

にとり「ふむふむ・・・」

 飛行機が飛ぶ仕組みについて簡単に説明する。

慧音「あいつらは何を話しているんだ?」

アリス「先生、多分私達が聞いてもわからないことよ」

 飛行機は翼から発生する揚力(上に上がる力)が重力に打ち勝つために空気を利用する。その揚力は空気や風が強く翼に当たることによって発生するため、飛ぶためにはものすごい加速が必要なのである。確かそうだったはず。

ドーラ「だから、飛行機を加速させるために、長くて整備された滑走路が必要なの」

にとり「なんだ、それじゃあこれは飛べないじゃあないか。幻想郷じゃ使用不可の機械、あのスマートフォンとかと同じだね」

 その話をするとにとりのテンションが明らかに落ち込んだ。

ドーラ「VTOL(垂直離着陸機)とかSTOL(短距離離着陸機)なら短い距離でも飛べるのだけれどね」

にとり「この機体はそうなのか?」

ドーラ「いいや、残念ながら違うわ。そういう計画もあったみたいだけれどね」

にとり「うーん、改良するにも、これは私達の技術じゃどうにもならんだろうしな・・・ん?」

ドーラ「??」

にとり「いや、ちょっといいことを思いついたんだ。でもなぁ・・・」

 どうやら、飛ばせるアイデアを思いついたみたいだ。だが、何かためらっている。

ドーラ「どうかした・・・」

 どうかしたの?と聞こうとしたその時だった。

(パシャリ!)

ドーラ「!」

 カメラのフラッシュであろう閃光に私は驚く。私はあたりを見回す。

ドーラ「な、何!?」

?「へ~外の人間はこんなものに乗って空を飛ぶのね~」

 アリスとケーネ先生の後ろからコツコツと足音が聞こえる。

にとり「あ、やばい・・・」

 にとりは何かまずそうな顔をしている。

ドーラ「どうしたの?」

にとり「つけられていたみたいだ。この場所はあいつらに知られたくなかった」

 にとりは面倒くさいと、顔をしかめている。

ドーラ「あいつら?」

にとり「ドーラ、あんまり余計なことはしゃべらないでくれよ。私が対応するから。あれはね、私達河童の上司の『天狗』だ」

ドーラ「て、天狗は上司なのね」

 あの黒髪の女性はまたしても人外なのだという。しかし、にとりは続ける。

にとり「だけど、上司であるよりもたちが悪いのがあいつら烏天狗。あいつ・・・射命丸文は『パパラッチ』だ」

 パパラッチ。つまり、記者か。

文「~♪」

 小気味よく鼻歌を歌っている。ネタができた嬉しさからだろうか。

文「こんにちは、にとりさん!毎度おなじみ、清く正しい射命丸です!」

 アヤという烏天狗は梯子の下から笑顔でにとりに挨拶をする。にとりは仕方がない、という表情で梯子を降りていく。

 私はとりあえず、コックピットのシートにもたれかかった。思い出す。この機体とこなした数々の任務、死んでいった仲間達、巨大レールガン・・・。

 しかし、なぜこの機体は今ここにあるのか?なぜ無事なのだろうか?そして私はいったい?それが不思議で仕方ない。・・・それを暴くのが幻想郷での私の最初の目的となりそうだ、と思いを巡らせていた。

 

 ・・・ああ、もう一度飛びたいなぁ。

 

第4話・完




今回、射命丸文が出てきましたが、彼女は私が東方Projectで最も好きなキャラクター、いわゆる嫁キャラです。とはいっても過度なえこひいきはしませんがね。
はてさて、文の登場で今後どう展開していくのか、といったところです。
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