【完結】シドニアの「R」   作:クリス

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発投稿ですが生暖かい目で見守ってやってください


壱騎目

 

○月%日

 

 

 日記なんて普段まったく書かないが状況が状況だ、書くことにしよう。まあ、日記というよりは遺書といったほうが正解かもしれんがな…

 

 現在、俺はとある異層次元戦闘機のコックピットの中でこの日記を書いている。なんで、コックピットの中で日記を書いているかだって? 俺が聞きたいよそんなこと

 

 事の発端は数時間前に遡る。俺は新型の異層次元戦闘機の試験運用を行うためにテストパイロットとして機体を飛ばしていた。

 

 バイドとの戦争も終わったのに新型なんか開発してなにすんだろう?と思ったが命令だったので任務に赴くことにした。思えばあの時是が非でも断っておけばよかったと思うまでである。

 

 飛行試験と武装の試験を終え仕上げに異層次元への潜航テストを行っている最中、突如機体の目の前に異相次元断裂が発生。突然の事態に俺は回避する暇もなく断裂に飲み込まれ気を失った。

 

 目が覚めたのは約5時間後のことであった。目が覚めた俺はコンソールを弄って自機の座標を調べようとしたのだが何度やってもエラーを表示するだけで場所はわからずじまいであった。同じように星の位置も調べたが結果は似たようなものだった。

 

 どうやら俺は全く未知の空間に転移してしまったらしい。そのあと何回もコンソールを弄って調べてみたが何回やってもコンピューターは絶望的な結果を知らせるだけであった。

 

 最後の望みに救難信号を24時間おきに発信するように設定したが正直意味がないだろう。だが、何もせずに死ぬのもそれはそれで癪なのでやることにした。

 

 酸素は十分あるが問題は食料だ。コックピットに収納されている食料は1週間分、水は限界まで節約すれば2週間といったところだ。これが俺の寿命だと思うと涙が出てくる。まだ彼女だって作ったことないのに!!!

 

(字が汚くて読めない)

 

 

 

 

○月$日

 

 

 

 次元断裂に飲み込まれてから1週間が経過した。手持ちの食料は底をつき後は水だけで生きていくしかあるまい。

 

 俺は今こっそり機内に持ち込んだ煙草を燻らせながら日記を書いている。機体の酸素貯蔵量は限られているのに煙草を吸うなんて馬鹿げているがこうでもしないと死の恐怖と孤独で頭がどうにかなってしまいそうなのだ。

 

 日記に書くことも尽きたので今俺が乗っている機体について書くとでもしよう。この機体の名前はR-100カーテンコール Team R-typeが開発した二機目の究極互換機だ。1機目のR-99ラストダンサーがバイドとの死闘を繰り広げバイドを打倒したのはごく最近のできことである。本来ならそこでR戦闘機の開発は打ち切りになる筈だったのだが、なにを思ったのか次の機体を開発しやがったのだ。

 

 そして開発されたのがこのR-100カーテンコールだ。乗る前に開発班からやって来た技術者に説明を聞かされたが今一つピンとこなかった。技術継承がどうたらだとかキャノピーに分子レベルでなんとかとか言ってたがよく覚えていない。というかそんな機体に武装搭載させて飛ばすとか、どんな神経してるんだよマジで

 

 説明してた技術者も何か俺のこと実験動物見るみたいな目で見てきて気味悪かったし、試験管キャノピーとかいうキチガイじみた機体作るような連中だから、まともな奴なんて殆どいないんだろうな。噂ではもう最後にもう一機だけ開発してるとか聞いたけど今となってはわからずじまいである。

 

 フォースもビットも次元断裂に飲み込まれた後どこかにいってしまった。もしこれで救助されたら軍法会議待ったなしだな。救助されればの話だが…

 

 

 

 

○月#日

 

 

 

 ほんとびっくりした。いやマジで驚いた。何が起きたのか簡単に書くと謎の宇宙生物に襲われたのだ。

 

 漂流から8日目、朝(宇宙に朝なんてないが)コックピットのアラート音に叩き起こされ、レーダーを見ると距離は離れているが何かが高速で此方に接近してくるのわかった。最初はR戦闘機が俺を見つけてくれたのかと思ったが、どうにも様子が変だったのでもしやバイドの残党かとおもい慌ててザイオング慣性制御装置に火を入れ何が起きても対応できるように準備した。

 

 やがてその何かが可視範囲に入ったので機体のカメラで拡大してみたところ薄ピンク色のバイドのような何かだった。最初はバイドだと思ったがバイドの反応は全く検知されずかなり戸惑った。

 

 だが、明らかに敵意のある動き方だったので殺られる前に殺る精神で迎撃することにした。まずは超高速電磁レールキャノンの射程まで接近してヘッドオンでレールキャノンをお見舞いしてやった。

 

 数十発もの高硬度重金属弾を喰らったバイド擬きは外殻を派手にまき散らして吹き飛んだが、まだ生きているらしくどんどん外殻を回復させながら逆に触手で攻撃してきたのだ。

 

 奴の触手は速度も動きも殺意剥き出しで中々のものだったが、こちとら歴戦のR戦闘機乗りである。機首を反転させながら迫りくる触手を悉く回避しお返しに2ループチャージした波動砲を本体核と思わしき部位めがけてプレゼントしてやった。

 

 波動砲をもろに喰らったバイド擬きは塵も残さず蒸発した。さしものバイド擬きも人類の英知の結晶の前では手も足も出なかったようである。

 

 だが、一体あれは何だったのだろう?バイド以外の敵性生命体など初めて遭遇した。死にかけなのに分からないことが増えていく勘弁してほしい。

 

 今日は疲れたもう寝よう………。

 

 

 

 

○月&日

 

 

 なんか知らんが助かった。なんか知らんというのは俺もこの状況を把握できていないからだ。

 

 今は俺が収容された艦の営倉と思わしき部屋の中で日記を書いている。最初は軍が救助してくれたのかと思ったが、どうにも違うらしい。

 

 

 

 

“彼ら”がやって来たのはコックピットの時計が12時を指す時だった。何やら接近してくる反応があったので俺は昨日のバイド擬きがまた襲ってきたのかと思ったが、接近して来る物体から人間の生体反応が出ていたので様子をみることにした。

 

 やがて機体の目の前まで接近してきた物体は何もかもが奇妙だった。鋭角なフォルムの17メートルはあろう人型のロボットで編隊の組み方もロボットも見たことも聞いたこともなかった。

 

 俺はとりあえずレーザー通信で呼びかけたが一向に返事はかえってこないので仕方なしに機外にでることにした。向こうも同じことを考えていたらしく一機のロボットの胸のハッチから人が出てきた。

 

 パイロットどうしの短距離無線なら通じるらしく俺は共通言語で自分の所属と救助してくれたことに対する感謝の意を伝えた。

 

 だが、相手の反応は困惑であった。というか凄い驚いていた。しばらくすると別の言語で“何を言っているのか解らない”とかえってきた。思いっきり日本語だった。

 

 日本語なんて東アジアエリアの旧日本地域でしか使われていない言語だったので困惑したが、幸い俺の親父がそこ生まれだったので俺自身も話すことができた。もっとも、長い間喋っていなかったのでかなり訛っていたが

 

 言葉が通じたことに安堵し幾らか警戒心が弱まったようなのでお互いに情報交換をした。色々と話したが要約するとこうだった。

 

 ・自分は“サマリ”という者で救難信号を受信したので救助に来た

 ・今からシドニアという名の艦に戻るので此方の誘導に従って付いてきてほしい

 

 俺は願ってもないことだったので二つ返事で承諾し彼らについていくことにした。しかし、誘導するにしても通信が繋がらないのではどうしようもない。俺はサマリにそう伝えると彼女(声からして女だった)は一度コックピットに戻って俺に携帯電話のような端末を手渡してきた。彼女曰く近距離ならこれで通話できるということらしい

 

 彼女から端末を受け取ったのでお互いコックピットに戻り彼女らに付いていく形でシドニアという艦に行くことになった。

 

 シドニアに向かう途中、何度か質問したがどれも要領を得ない回答だった。というよりも此方の質問の意味を理解できていないという印象を受けた。話が噛み合っていない、何かお互いの常識に致命的な齟齬がある……。俺は背筋に薄ら寒いものを感じた。

 

 

 

 

 

 しばらく彼女らに付いていくと前方に“シドニア”と思われる艦が見えてきた。それは一言で表すならば“超巨大な白い柱”だった。というかそれしか表現しようがない形だった。艦のどこにも武装が見当たらなかったので戦闘艦ではないだろうが兎に角でかかった。前世紀の東アジアエリアのネットスラングで言い表すのなら「すごく…大きいです…」とでもいうのだろうか?

 

 コロニーならこれくらいの大きさはさして珍しくないが彼女に聞くかぎり推進力を持った歴とした宇宙航行船らしい。“ハシュセン”といっていたが日本語なんて随分久しぶりなので意味はわからなかった。文脈から察するにあの艦の艦種名だと思う。

 

 

 

 

 彼女の誘導に従いシドニアの格納庫らしき場所に機体を収容した俺はフルフェイスのマスクを被った警備兵らしき人達に囲まれ、持ち物を全て没収された後、検疫すると言われ謎の機械の中に裸で放り込まれた。機械の中で水が充満してきた時にはどうなることかと思ったが、ただの検査装置だったらしい。心臓に悪いからそういうのは事前に説明してほしいものだ。

 

 検疫の後はパイロットスーツと持ち物を返却された。当然の如く腰に差していた拳銃と多目的ナイフは抜かれていた。サマリに借りた端末もなくなっていたので恐らく持ち主に返却されたのだと思われる。

 

 そして日記の冒頭に戻るわけだ。部屋に入る前に警備兵に何か食べ物をくれないかと尋ねたら、“光合成はできないのか?“と尋ねられた。植物じゃあるまいし光合成なんて出来るわけがない。そう答えると警備兵は珍しいといった感じでオニギリと日本茶を持ってきてくれた。もしかしたらいい人なのかもしれない。だが調子にのって何回もおかわりを要求したのはまずかったと言えるだろう。

 

 

 何というか全てが異質だ。部屋に入れられる前に何人もの船員とすれ違ったが、誰もかれもが俺のことを宇宙人みたいな目で見てくるのも気になった。

 

 宇宙船乗りなら漂流者を拾うことなんて滅多にないが珍しいことではないはずだ。だというのに“まるで自分たち以外の人間なんて初めて見た”そんな顔をしていた。

 

 

 共通言語の通じないパイロット、噂にも聞いたことがない巨大な宇宙船、見たこともない人型兵器……。

 

 

 どうやら俺は何かとんでもない事態に遭遇してしまったようだ。情報を得ようにも軟禁されていては得られるものは何もない。煙草も没収されたようなので吸うこともできない。今できるのは没収されなかった日記を書いて状況を整理することだけだ……。

 

 だが、何はともあれ俺は助かった、どう足掻いても死ぬ運命だった男がだ。今日は衝撃的なことがありすぎて心身共に疲れ切っている。というか1週間近くクソ狭いコックピットの中で過ごしたのだ、疲れないわけがない。

 

 明日は明日の風が吹くというし、これからのことはこれからゆっくり考えるとして今日はもう寝てしまおう……。

 

 

 

 

 

 




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