【完結】シドニアの「R」   作:クリス

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いまいちクロス要素を出せなくて悩んでいる男 作者です。それでは十話をどうぞ


拾騎目

▽月Л日

 

 

 ナガテくんが訓練生になった。俺は止めるべき筈だったのにどうしてこんなことになってしまったのだろうか?あの仮面おばさん何を考えてやがる。

 

今日はシナトセ君と一緒にナガテ君を地上に連れていった。地上に出る際、俺があげた食料をどうするか考えようとしたのだが、実際にナガテ君にに聞いたら何と既に全部食べてしまっていたそうだ。一人の人間が三週間は食っていける量をあげたはずだったのに僅か1週間で平らげるとは思いもしなかった。これが若さというやつなのだろうか?

 

食料の問題が解決したので遂にナガテ君を地上に連れ出すことになった。ナガテ君は仮象訓練装置の市街地戦モードで見たことがあったようであまり驚かなかったが、生で見たのは初めてだったようで田舎から都会に出てきたお上りさんの様にあちこちを見まわしていてここに来たばかりの俺を思い出した。

 

ナガテ君を地上で暮らせるようにするために警察やら病院やらに行くことになったのだが、このとき俺は、自分の詰めの甘さを実感した。何とかなるだろうと思っていたが全然場所が分からなかったのだ。シナトセ君がいなかったら確実に面倒なことになっていただろう。彼には感謝しなければならないな。

 

そのシナトセ君と言えばナガテ君を目的の場所に連れながら彼と会話に花を咲かせているようであった。当の俺はと言うと二人の後ろに引っ付いているだけであった。初めは病院に行き彼に健康診断を受けさせた。念のために行った検査だったが、特に異常は見当たらず健康そのもで安心した。

 

ナガテ君が健康診断を受けている間、シナトセ君に何故そこまで彼に構うのか聞かれた。確かに、食料をあげる必要もなかった。それこそ警察に連絡するだけでよかった筈だ。俺はその時初めてその選択肢に気が付いた。

 

俺が“何でだろうな”と答えるとシナトセ君は一瞬きょとんとした顔をしてその後笑った。少し笑ったあと彼に“やっぱり変な人だね”と言われてしまった。いつの間にやら敬語はなくなっていた。ついでに名前で呼んでいいと言われたのでこれからはイザナ君と呼ぶことにする。理由はわからないが彼の俺に対する何かが変わったのだろう。

 

病院を後にした俺たちはその足で警察署に行った。俺が事情を説明し身元引受人になる予定だったのだ。そこからだ、全てが狂ったのは。

 

俺が署内の受付に事情を説明しているとある人物がやってきた。そうオチアイである。彼はやってくるなりナガテ君の身元引受人の代理とか言ってナガテ君をどこかに連れてってしまったのだ。当然俺は止めようとしたのだが隣にいたイザナ君に阻止されてしまい止めることは出来なかった。

 

受付の人もイザナ君もオチアイを見るなり敬礼していたので多分それなりの位にいる男なのだろう。割りとどうでもいいが。

 

 

 オチアイのナガテ君誘拐事件のせいで当初の目的を果たせなくなった俺たちは、意気消沈のまま寮にもどることにした。俺たちがナガテ君が戻ってきたらどうするか考えていると、当の本人がひょっこり戻ってきた。

 

ナガテ君に言われたことを要約すると彼の保護者はコバヤシになりナガテ君は操縦士訓練生になるとのことであった。コバヤシとナガテ君になんの繋がりがあるのか、何故彼の操縦技術のことを知っているのか、疑問は尽きないが、そんなことよりショックだったのは彼が兵士になることだった。

 

イザナ君はその目でナガテ君の卓越した技術を目の当たりにしているから納得しているようであったが、俺は友人が戦場に出ることになるなど嫌だった。

 

苦言を呈する俺をイザナ君は不思議そうな目で見ていたがそんなの当たり前だ。俺はバイドとの戦いで数えきれない程の人間と死に別れた。バイド化した味方を殺したことだって何度もある。戦略上見殺しにするしかなかったことだって幾らでもある。

 

イザナ君は凄いことだなんて言っていたがとんでもない。俺は反戦主義者ではないが友人が俺と同じような目に合うのは許容できない。ガウナとバイドは違う存在だが本質的には同じ、殺し殺されでしかないのだ。

 

当然俺は反対したが時すでに遅し。ナガテ君は明日から訓練校に編入することになってしまった。なってしまったものは仕方がないと思いたいが納得できないものは納得できない。俺は、何とか感情を隠そうと努力したが顔に出ていたようでどうしたのかと聞かれてしまった。俺は二人の制止を振り切り逃げるように部屋に戻った。これじゃあ、どっちが子供か分からないな。

 

俺が部屋でふて腐れているとナガテ君が訪ねてきた。操縦士のことについてだった。俺とナガテ君は色々話たが結局俺が折れることになった。というかあんな決然とした顔で言われてしまったら折れざるを得ないというものだ。本当にどっちが大人か分からないな。あの顔ができるナガテ君にならきっと辛いことも乗り越えられることだろう。

 

ただし、ナガテ君。どうしようもない辛い事や嫌なことがあったらいつでも辞めていいんだ。君はまだ誰かに甘えてもいい歳だということを忘れないでほしい。こんな日記なんかに書いても口に出さなきゃ意味ないか。

 

一応和解をした後、ナガテ君に誘われてイザナ君を交えて三人で一緒に飯を食った。ヒヤマさんに作ってもらった料理は相変わらず重力が名前に付いていたがもうそんなことはもうどうでもよくなっていた。

 

 

 

 

 

▽月Λ日

 

 

 いつものようにトウア重工に呼び出された。理由は前見せてもらった爆発反応装甲の件についてだった。前回の仮象訓練装置の結果を提出したところ正式に採用されることになったようで実際に試作品を作ることになったそうだ。

 

今回呼ばれたのは爆発反応装甲の改良型を作ったので俺にテストしろとのことであった。改良型の名の通り装甲は大幅に軽量化され何も装備しないときと殆ど変わらないまでになった。それでいて尚、攻撃に対する反応も良くなっているので驚きだ。

 

テストしたのは俺だけじゃないらしく他にも数名呼んで試させたそうだ。その彼らの感想も良好だったというのでこれを基に作ることになったらしい。

 

次は実際に作成した試作品を本物の衛人に装備して実動データを取るそうだ。反応装甲そのものは簡単に作れるのだそうだが、大量生産するのは試作品のデータを取ってからだという。

 

本題が終わったので俺はザイオング慣性制御装置の進捗について聞いてみた。ササキによれば、仕組みも解ったし必要な資材もわかっているが、何分シドニアの技術とはまるで違うためまだまだ時間はかかるという。

 

それもそうだ。作り方が分かっただけでそう簡単に作れる筈がない。彼らのやっていることは言うなれば自動車を作るのに作る道具から作り始めているようなものなのだ。衛人が物理法則に逆らって動くのは、まだ当分先の話なのだろう。

 

ザイオング慣性制御装置の話が終わった後、ササキにサイバーコネクト技術について聞かれた。なんでも俺が渡したデータの中のR-13Aケルベロスに興味を惹かれたらしい。俺は専門的なことは知らないので概要だけ説明した。

 

ササキは興味深そうに聞いていたが衛人の操作システムに採用でもする気なのだろうか?でも、衛人の動作は既にかなり人間に近いしそこまで操作性を高める必要性はないと思うんだ。手術だってしなければならないし。

 

ついでにバイド漬けのセクシーダイナマイトⅡについて話してやったらササキにドン引きされた。そらそうだ。誰が好き好んでバイド漬けになりたがるって話だ。しかも素っ裸でな。

 

帰り際にササキに爆発反応装甲のレポートを提出しろと言われた。全くもって面倒である。

 

 

 寮に帰ったら既にナガテ君が帰っていた。一緒にイザナ君も一緒にいた。どうやら俺のことを待っていたらしい。別に俺のことなんて気にかけなくていいのに。律儀な子達である。

 

ナガテ君たちと食事をしながら彼らに訓練校でのことを聞かされた。その時ナガテ君が悔しそうにしていたのが印象に残っている。何でもイザナ君に案内されて仮象訓練装置を使ったのだが、結果は惨敗。謎の編入生として期待されていた分、他の訓練生に落胆されてしまったようだ。

 

それもそのはず。なんせ彼は今まで一七式の仮象訓練装置しか使ったことがないのだ。一七式は100年も昔の機体だ。当然今の一八式とはインターフェイスからスペックまでまるで異なる。そうなってしまうのも当然だったと言えるがそれを言うのは可愛そうだったので黙っておいた。

 

イザナ君は彼の凄さを知っているので慰めていたようだがナガテ君にはあまり効果はなかったようだ。しきりに“一七式なら負けなかったのに”と言うナガテ君に年相応のものを感じて微笑ましかった。

 

その後も学校のことについて話された。何でもホシジロちゃんとも知り合いになったようだ。ホシジロのことを話すナガテ君のことをイザナ君が面白くなさそうな顔で見ていたのが印象に残っている。まあ、誰でも自分の友達が違う人のことばかり話していたら面白くないのは当然だろう。

 

でもまあナガテ君に新しい友達ができて安心した。この分なら訓練校でも大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

▽月Α日

 

 

 ナガテ君が訓練校に編入して1週間が経過した。今日は俺も仮象訓練装置を使いに行くつもりだったので時間は違うが学校までいった。

 

ナガテ君はあれから一八式の操縦に少しづつ慣れているようで順調に記録を伸ばしているようである。この調子でいけば一七式と同じ様に動かすことも夢ではないだろう。

 

 

俺も仕事の一環で訓練装置を使っているので、ある程度訓練した後装置から出るのだが、その時偶然通りすがったホノカちゃんに何時からいたのと聞かれ正直に話したら何故かドン引きされた。どうしてだろう。たかが昨日の夜から今朝の9時まで訓練装置に入っていただけなのに。不思議なもんである。

 

その後、これまた偶然であったナガテ君と一緒に歩きながら話していたら突然セイイさんに呼び止められた。どうやら俺たち二人とも安全帯をつけ忘れていたようである。その時百年前の重力停止がなんたら言っていたが俺たちは今一ことの重大性を理解できていなかった。

 

そんなナガテ君に呆れたのかセイイさんは安全帯について一から学ぶ必要があるとかの理由でナガテ君に手摺の安全点検を命じた。とばっちりで俺まで点検するように言われてしまった。誠に遺憾である。

 

そんなこんなで手分けして点検したのだが、途中ナガテ君が間違って女子更衣室に入ってしまいホノカちゃんにぶん殴られる事件が発生した。その時悲鳴を聞いて駆け付けた俺もお前もかと言わんかりにホノカちゃんに袋叩きにされた。解せぬ。

 

 

鼻の絆創膏を見てイザナ君が何があったのと聞いてきたが俺たちは全力でそれを隠し通した。理由が余りにもアレだったからである。帰りに一七式が展示されている場所に行ったら何故か一七式が無くなっていた。どういうことなのだろうか?

 

 夕飯を一緒に食べている際にナガテ君と一緒にいたイザナ君に愚痴られたことなのだが、何でも“ヤマノ・エイコ”という訓練生が露骨にナガテ君のことを敵視してくるようで困っているとのことであった。俺自身は彼女のことを何も知らないのでよく分からないが、大方試験もなしに編入してきたナガテ君のことを妬んでいるのだろう。

 

そういう奴はどこにでもいるから気にするだけ無駄と彼らに言ったがイザナ君はあまり納得していないようであった。そもそもナガテ君は食うことに夢中になって聞いていなかった。彼らしいと言えば彼らしいだろう。

 

部屋に戻ると封筒が届いていた。差出人はトウア重工で中身は爆発反応装甲の設計図と写真だった。試作品が完成したからアイデアを提供した俺に見せたかったのだろう。俺に見せても何の意味もないと思うんだがな。

 

今日はここまでにしてもう寝よう。明日はすることもないしガウナだってそういきなりは来ないだろう。何も問題はない。

 

 

 

 

 

 




シドニアの騎士の時間経過が分かりづらくて難儀しています。今後おかしな点がでるやもしれませんがその時は伝えて下さると嬉しいです。

主人公の影響で訓練校入りが少し早まりました。そして露骨なフラグェ…

誤字脱字、その他おかしな点がございましたら報告して下さると嬉しいです。
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