というわけで13話をどうぞ
▽月\日
ガウナ騒動はすっかり鳴りを潜め街はいつも通りに戻ったと言えるだろう。悪く言えば緊張感が足りないとも言える。100年前、シドニアに僅か2体のガウナの侵入を許したせいでシドニアは全人口の99%を喪失したという。ここの歴史を知るために本屋で買った歴史書に書いてあった。
そんな凄惨な過去があったというのにここの住人は呑気なものである。なんてたって非武装主義者とかいうちょっとアレな人達が何万人もいるんだからな。
今日街を歩いていたら変な爺さんにからまれた。ガウナなんぞ現れていない。そう嘯く爺さんは俺にしつこく付き纏って来たので面倒だから生返事で聞いていたら何を勘違いしたのか俺が爺さんの言い分に共感していると思ったようで名刺を渡された。要らんわ。
彼らは目の前にガウナが現れても同じことを言い続けるのだろうか?ああいう奴らに限って軍が来たらもっと早く来いとかほざきやがるんだよなあ。
そういえば地球にも似たような利権団体がいたな。まあ、その利権団体は突発的な局地的災害に見舞われて施設ごと全滅したようだが。ちょうどその時期に災害波動砲を装備したR戦闘機が開発されていたが無関係だと思いたい。関係ないったら関係ないのである。
▽月Ζ日
ホノカちゃんに臭いと言われた。今日はたまたま仮象訓練装置を使いに行った。俺は訓練校に行くまでの道で煙草を一本吸ってきたのだが、それが臭ったようだ。
人体光合成を行うシドニア人は食事を殆どとらないため体臭がかなり少ない。何しろ毎日食事するナガテ君の発するごく普通の体臭が気になるくらい体臭がしないのだ。
そんな僅かな臭いにさえ敏感な彼らからしたらヤニの臭いなんて想像を絶する悪臭なのだろう。だからといってホノカちゃん。俺に消臭剤をかけるのは違うと思うんだ。
あと一つ些細なことではあるが面倒なことがあった。俺が訓練校で有名人になっていたのだ。
彼らは校内からリアルタイムで戦闘を見ていたのだ。当然そこに俺が混ざっているのも知っている。以前から俺のことを知っている訓練生はそれなりにいたが今回の件でその数がもっと増えてしまった。
どうやら彼らの目には俺がガウナを倒した英雄の一人に見えているようだった。だからだろうか。俺が校内に入るとあっという間に囲まれてしまった。今日は何とか逃げ出すことができたがあれはもう勘弁願いたいものだ。慕われるのは嫌いだ。死なれたら辛くなる。
彼も近い内に正規操縦士になるのだろう。そう思うと嫌になってくる。本当にそう思うが今は戦いの時だ。余計な感傷は戦場に不要だ。
帰りにナガテ君と一緒にいたホシジロちゃんに出会い彼らの提案で一緒に仮象訓練装置で模擬戦をすることになった。結果は5勝5敗の引き分け。我ながらあのナガテ君相手によくやったと思うが彼はまだ一八式に余り慣れていないのだ。これでは純粋に勝てたとはいい難いだろう。尤も俺がRに乗っていたら20機相手でも勝てると思うがな。
▽月×日
トウア重工に行ったらR-100にヘイグス粒子砲が搭載されていた。意味がわからない。なんだか俺の機体が彼らの恰好の遊び道具になっている気がしてならない。ササキによれば威力は弱いがその分衛人に搭載されているものより連射が利くそうだ。しかも不要になったらパージできるという。要は外付けのガンポッドみたいなもんだろう。
ガンポッドで思い出したことなのだがR-9DVシリーズというR戦闘機がある。光子バルカンを装備したR戦闘機でその瞬間火力は凄まじいものだ。実際にバイドに向かって光子バルカンの掃射していたのを見たことがあるが何というか所謂“ミンチよりひでえ”状態になっていた。どれくらい酷いかったというとバイドを見慣れた俺ですら着弾点を見て吐き気を覚えたくらいだ。
確かに一部の軍人から残酷なのではないかと言われるのも分かる気がする。バイド相手に残酷もくそもあるかと思わなくもないが、あれを見てしまうとその意見に頷きそうになってしまう。
この案は意外といけるかもしれない。光子バルカンならぬヘイグスバルカン。シドニア風に言うなら“高速連射型回転式ヘイグス粒子砲”だろうか?もう少し具体的に考えたらササキに提出してみよう。
☆月Ж日
部屋に荷物が届いていた。箱を開けると何とかなり前に没収されたままだった拳銃とナイフが入っていた。本当に今更だな。
ホルスターは没収されていなかったので、それを服のベルトに通そうとしたが安全帯が邪魔で無理だった。仕方ないのでバックサイドホルスターの様にすることで何とか拳銃を吊るすことができた。
俺が持っている拳銃は軍の支給品ではなく自前のものだ。R戦闘機乗りはもしもの時、バイド化する前に自決するために拳銃なり毒薬なりを持ち込むのが暗黙のルールになっている。俺は自分の最期を飾る銃が軍が支給した味気ない拳銃じゃ嫌だったので自分の拳銃を持ち込んでいたのだ。
こいつは200年以上前に設計された大型のマグナム拳銃のレプリカで自分のお気に入りだ。今までは存在を忘れていたがこれからはいつも腰につけていたいと思う。
そんなこんなで腰に銃を吊るして街を歩いていたら警官に捕まって厳重注意を受けた。俺が軍属じゃなかったら逮捕されていたかもしれん。衛人操縦士のパイロットスーツに刀が差してあったからいいと思ったんだけどなあ……。
夕飯の時にナガテ君とイザナ君にそのことを言ったら“なにやってんだコイツ”みたいな目で見られた。解せぬ。
☆月☩日
光子バルカンについて具体的な案を纏めてトウア重工に送っておいた。恐らく近日中には呼び出しがかかるだろう。面倒だな。
あれからナガテ君への風当たりはかなり弱くなった。ヤマノや自惚れでなければ俺のお蔭でもあるのだろう。ガウナを倒した英雄様が贔屓しているんだ。ちょっかいを出して大やけどはしたくないのだろう。
今日はちょっと困ったことがあった。アカイ達が俺に教えを乞いに来たのだ。確かに俺はあの時こいつらを何度も助けたが教えを乞われる程の腕前は持っちゃいない。
俺はそう言ったのだがアカイ達は退かなかったので結局俺が折れることになった。とはいえ彼らはあの戦闘で醜態を晒したが一応はエリートだ。衛人の操縦は完璧だったので俺は動き方などを中心に見ることにした。
やはりというか彼等は個々の動きこそ良かったものの集団での連携に少し粗がみられた。俺はその辺の動きを長年培ってきた知識で指導したのだが、俺は少し気分がよくなってきてしまい昔みた古典戦争映画の軍曹の口調を真似て徹底的にしごいたら案の定アカイ達にドン引きされた。
まあその甲斐あってアカイ達の動きは、見違えるように良くなった。これならシドニア最強を名乗っても文句は言われないだろう。しかしこれでもナガテ君の方が個人での戦闘能力で比べるならば上と言わざるを得ないがな。
一通り終わったあと、アカイ達に礼を言われたがその顔は明らかに引き攣っていた。正直やりすぎたと自分でも反省している。本当に申し訳ない。
☆月Ω日
昨日送ったアイデアの件でトウア重工に呼び出された。俺の考えたバルカンのアイデアは奇跡的にお眼鏡に適ったようで作ってみると言われた。まずは検討からじゃないのかと思ったが俺の考えた爆発反応装甲の評価のお蔭で予算が増えたそうだ。
しかも既存の兵器を弄るだけなのでそこまで苦労しないらしく試作品なら1週間もあれば作れると言われた。流石にそれは早すぎるだろう。恐らくは冗談だと思われる。でもR-100に容易くシドニアの兵器を対応させた彼らの技術力を考えるとあながち嘘でもないのかもしれない。
トウア重工からの帰りに俺がナガテ君と出会った切欠になった街の探索で見つけたプラモデル屋に行ってみることにした。
店内は俺の予想を遥かに上回る窮屈さでプラモデルの箱が天井近くまで積み上げられていた。店主は俺のことをテレビで知っていたらしくシドニアを守ってくれたお礼とかで道具をおまけしてくれた。いい人だな。
そこでちょっと驚いたのはプラモデルのポスターの新製品のラインナップに俺のR-100カーテンコールが載っていたことだ。店主はもうすぐ発売されるとか言ってたが俺はこんなの聞いていない。一体どこの会社が作りやがったんだと思い会社の名前を見てみたらトウア重工だった。なんでさ。
そんなこともあったが無事に一八式のプラモデルを購入し帰ろうと思ったところで偶然ユハタちゃんとばったり遭遇した。何でもユハタちゃんの趣味はプラモデル制作なんだとか。女の子なのに珍しいな。
俺は彼女にお勧めを訊いたのだが彼女の反応が凄かった。あれよあれよという間に俺の手にプラモデルが山積みになり結局全部買うことになってしまった。ユハタちゃんの反応は昔Team R-typeの研究員にバイドについて質問した時と殆ど同じ反応だった。要はオタクと言うわけだ。あの腐れ開発班とユハタちゃんを比べるのは余りにも失礼かもしれんがな。
その後は当然の如くナガテ君の話になった。その時は困ったことに助けを呼ぶのは無理だったので俺は彼女の気が済むまで彼の話をさせられることになった。でもユハタちゃんが楽しそうだったからいいか。
☆月Κ日
バルカンの件についてだが本当に1週間で試作品を作りやがった。トウア重工すげえ。今回作られたこれは“支援用高速連射型ヘイグス粒子砲”という名で衛人のヘイグス粒子砲を細長くして5つに束ねたような形状をしていた。こいつは毎分4000発でヘイグス粒子をぶっ放すことができるらしくカビザシを装備した衛人の支援のために使われるかもしれないそうだ。
俺が試しに仮象訓練装置で使ってみたのだがこいつの発射ボタンを押した途端、凄まじい速度でヘイグス粒子が放たれてガウナが一瞬にして本体だけになった。凄まじい威力だったがこれだけではガウナを倒せない。故に支援用なのだろう。
強力な兵器だったが欠点もある。弾がすぐに切れるのだ。発射装置は衛人とは独立しているので弾が切れたらその場で破棄する方針のようだ。ちょっと勿体ない気もするが機動性を確保するにはそうするしかないのだろう。
ササキにはよく思いついたなと言われた。1000年後の世界にはガトリングガンの発想が残っていないのだろう。高速連射砲はあるのにな。思うにシドニアはカビザシに重きを置きすぎて他の兵装のことをおざなりにしている節がある。
ぶっちゃけ衛人はエナの破壊に専念してカビザシにワイヤーとブースターでもつけて飛ばせばいいのではないだろうか?アンカーフォースを見て思いついただけなので実際はもっと様々な制約があるのだろうが近接オンリーはリスクが大きすぎると思う。
寮に帰った後はユハタちゃんに大量に買わされたプラモデルの制作を行った。これがなかなか面白い。ユハタちゃんがはまるのも分かる気がする。
プラモデルを作りながら煙草を吸おうとしたら残りがあと数本しか残っていなかった。まだ新品の箱が一つあるが近い内に禁煙を覚悟した方がいいのかもしれない。面倒なことになったな。
実際こんな簡単に兵器開発できませんけど小説ってことで勘弁してください。
≫20機相手でも勝てる
ゲームでの活躍を見るに倍の40機相手でも勝てそうな気がする。
そして日記の日付に使う記号がだんだん足りなくなってきた……
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