キガツクト ワタシハ ショウセツヲ コウシンシテイタ……
☆月Ы日
ナガテ君の意識が回復した。医者にも3日間は意識が戻らないと言われていたというのに凄まじい回復力である。意識が戻ったナガテ君に俺は、なるべく彼にショックを与えないように事実を告げた。
俺と一緒にお見舞いに来ていたイザナ君はそのことについて誤魔化そうといていたが先延ばしにしても結局は知ることになる。なら先に教えておいた方が彼のためだろう。俺に事実を教えられたナガテ君は、最初信じられないといった様子だったが次第に記憶を思い出してきたのか頭を抱えて黙りこんだ。
しばらく黙り込んだナガテ君はやがて顔を上げると一人にしてくれと頼んできたので俺たちはそこで病室をあとにした。一人にしてくれと言う彼の顔が真っ青だったのを覚えている。
病室を後にしたあと俺はイザナ君にどうして真実を教えてしまったのかと問い詰めてきた。確かにあの場では嘘をついていれば彼の心に傷をつけることはなかっただろう。だがそれでいいのか?やがて本当のことを知ったときもっと深い傷を負わない保証がどこにある。
俺がそう伝えるとイザナ君は言い返そうとしてきたがやがて理解してくれたのか何も言わずに俺の下を去っていった。イザナ君が去っていったあと入れ違いでホノカちゃん達がナガテ君のお見舞いにきたが俺は事情を説明して帰ってもらうことにした。
ナガテ君は明日に退院できると医者に言われた。今度は戦闘記録を見せてちゃんと説明する必要があるだろう。酷な話だが彼には正規操縦士として何が起きたのか正確に知る義務があるのだ。こんなことを書いている自分に虫唾が走るが致し方ないのである。尤も言い訳でしかないがな。
☆月π日
ナガテ君が部屋に引きこもってしまった。きっと戦闘記録を見てショックで一人になりたいのだろう。
一人で戦闘記録を見に行かせてしまったのが悪かったのかもしれない。しかしいずれにせよナガテ君には一人になる時間が必要だ。彼にとっては初めての人の死。それも友達のだ。いや、もしかしたらそれ以上の感情を抱いていたのかもしれない。そんな人と最悪の別れ方をして平気な顔をしていられるのは俺みたいな死にぞこないだけだ。今はそっとしておいてやるのが一番だろう。
イザナ君は心配してナガテ君に会いたがっていたが俺はそれを止めた。今、ナガテ君を部屋から引きずりだした所でナガテ君の心の傷が癒えるわけがない。俺の考えに食堂にいたヒヤマさんも同意してくれたのが意外だった。
それでもイザナ君は心配していたが俺とヒヤマさんの説得で何とか了承してくれた。このままずっと部屋に閉じこもるというのなら話は別だが今日くらいは一人にしてやるべきだ。イザナ君にそういうと彼は明日も来ると言って一人去っていった。ナガテ君は本当に友人に恵まれていると思う。
しかし、いつも二人で食べていた夕飯を一人で食べるのは少し寂しいものだ。ナガテ君には早く立ち直ってもらいたいものである。割と下らない理由だがいつまでも重く考えていても仕方がない。泣いて喚いても敵は待ってくれないのだ。
☆月Ы日
昨日からナガテ君は一度も部屋から出ていない。ナガテ君は昨日から何も食べていないはずだ。光合成できるならともかく俺たちにはそれが出来ない。少し心配になってきた。一応、部屋の前におにぎりを置いておいたことを伝えたが結局食べてもらえなかった。
ナガテ君のことは心配だったがどうすることもできなかったので俺は気分転換するために外を歩いていくことにした。街の中を見ていると非武装主義者の集団が大規模なデモを行っていたのが記憶に残っている。
どこまでもふざけた連中である。何がカビザシを捨てればガウナに襲われることはないだ。人が死んでんだぞ。現実を直視できない愚かな連中だ。いつか手痛いしっぺ返しを食らうだろう。むしろ俺が食らわしてやりたい。カビザシを持っていないなら襲われないと彼らは主張していたが現に俺は襲われている。それが何よりもの証拠だ。
非武装主義者という不愉快なものを見てしまったが俺は引き続き散歩を続行することにした。俺もナガテ君の様に一人で考え事をしたかったのだ。そもそもガウナとはなんだ?今、俺たちが分かっていることはガウナが空間に存在するヘイグス粒子を食って無限に増殖できることとカビザシと波動砲以外の攻撃を受け付けないということだけだ。
波動砲については理解できる。あれバイドという波動としての性質を持つ存在を異層次元ごと破壊するための兵器だ。ガウナがカビザシ以外の攻撃を受け付けなかったとしても次元空間ごと破壊されてしまえば関係ない。
ガウナは例え本体のみになったとしてもヘイグス粒子があれば無限にエナを作り上げることができる。言うなれば食事に困らないというわけだ。人間を襲う必要性が感じられない。
これがバイドなら簡単に説明できる。何故ならバイドはそう作られたからだ。自分たち以外の全ての存在を破壊するように生み出された生命体。故に対話は不可能で俺たちは生き残るためにバイドを滅ぼすしかなかった。
バイドはそれで終わりだがガウナはどうだ?こいつらは何のために俺たちを襲う?意味を見いだせない行動ほど恐ろしいものはない。これは本屋で買った本に書いてあったことなのだがガウナは人間などを捕食した際にその人間の構造を模写することがあるそうだ。こんなところまでバイドに似ていると逆に笑えてくる。
もしかするとガウナもバイドと同じようにどこかの知的生命体によって創られた生命体なのかもしれない、そうなると合点がいく。
俺がそこまで考えたところで突然、頭に鋭い痛みを感じてよろめいた。その時の俺は石を頭に投げられたようである。石を投げた下手人は二人いて俺のせいで操縦士が死んだとかR-99は俺が連れてきたとかふざけたことを抜かしやがったので俺はそいつらに全力ダッシュで近づくと二人の首を両腕で絞めてやった。二人は最初なんかいっていたがやがて空気が吸えなくなり気絶した。ざまあみろ。
そのあと仮象訓練装置でも使って気分を紛らわそうと思い訓練校に行ったところユハタちゃんに捕まった。俺はどうやら頭から血を流していたようで彼女はびっくりしながら俺の腕を掴むと訓練校の保険室まで連行した。
俺がユハタちゃんに無理やり治療をされていると彼女はナガテ君のことについて心配そうに尋ねてきた。彼女は昨日から何度もナガテ君に電話を掛けていたが一向に繋がらず偶然会った俺に様子を教えてもらおうとしたのだ。
昨日から今朝までのナガテ君の様子を俺が教えると彼女はとても心配そうな顔をしていたのをよく覚えている。ナガテ君には彼のことを心配してくれる人が何人もいるのだ。きっとこれも彼の人柄のお蔭なのだろう。この時、気が変わった俺はユハタちゃんにナガテ君のことは任せろというと少し心配そうな顔をしていたが俺に頼みますといってくれた。
ユハタちゃんは肩の荷が少し降りたのか俺にとんでもない愚痴を言ってきた。何と彼女は明日からセイイさんに代わって司令補になることがコバヤシによって決まったのだ。前からここは実力主義だということには気が付いていたがまさかここまでとは思わなかった。
彼女はナガテ君や兄と一緒に戦いたかったのに司令補になってしまったことを愚痴っていた。兄よりもナガテ君の方が順序が上だという事実に少し笑ってしまった俺は悪くないと思いたい。
散々愚痴っていたものの司令補になることについては納得しているようで俺はただ彼女の愚痴につき合わされていただけだったようである。ホノカちゃんほどではないけどユハタちゃんも中々俺の扱いが軽いよね。
愚痴を言い終わったユハタちゃんと俺は明日からよろしくということでお互いに敬礼してから別れることにした。別れ際に俺が何故訓練校に来たのか訊かれたので仮象訓練装置を使いにきたと答えたら案の定呆れられた。そりゃあ、頭から血を流してるのに仮象訓練装置を使おうとする馬鹿なんて俺しかいないだろうけど地味に傷ついた。
ユハタちゃんのお蔭で気が変わった俺は寮に戻るとすぐさまナガテ君の下に向かった。案の定俺が呼びかけても一向に返事がなかったが俺は諦めず何度も呼びかけたが返事はなし。そこへ俺の声に気が付いてイザナ君とヒヤマさんがやって来たので俺はナガテ君を部屋から出すとだけ言い今度は扉をこじ開けようとしたがビクともしなかったので強硬手段に出ることにした。
俺は自室から拳銃を持ち出し扉の鍵を撃って壊そうとしたのだがイザナ君に全力で阻止されてしまい失敗。俺は食堂で正座させられ事情を説明させられた。事情を聞いたヒヤマさんは俺のやろうとしたことに協力してくれるらしく一緒に部屋まで向かうことになったのだが、この時、俺は寮母だから部屋の合鍵でも持っているのだろうと考えていたのだ。
しかし俺の予想は大きく外れた。ヒヤマさんは、ナガテ君の部屋の扉をその見た目通りの怪力でぶち破りやがったのだ。俺が銃で撃っても同じじゃねと思ってしまった俺は悪くないと思いたい。いやまあ銃を持ち出したのは不味いと思うけどね。
扉をぶち壊したヒヤマさんは後は俺に任したとだけ言うと食堂の方へ戻っていった。その後、唖然とするナガテ君の隣に座り色々と話しをした。結論から書くと彼は復活した。何が切欠だったのかはよく分からないが俺が“操縦士”という単語を口にしたのが切欠だったのかもしれない。会話が出来るようになったので俺達は改めて話をしたのであった。
俺が“操縦士を辞めても構わないんだぞ”と言ったがナガテ君は“絶対に辞めません”と言ってくれた。やはりナガテ君は俺の思った通り強い人間だった。しばらく話した後の彼の顔は初めて出会った頃とは段違いに良い顔をしていたと思う。
ナガテ君は復活したが彼は約二日間何も食べていなかったので食堂にいたイザナ君も誘って3人で一緒に夕飯を食べることにした。やはりナガテ君は食べ物を掻き込んでいる姿の方が似合っている。
その際、イザナ君とヒヤマさんに礼を言われたが例え俺がいなかったとしても彼等ならきっと今日か明日くらいにはナガテ君を復活させることが出来たと思う。ナガテ君は俺達が想像しているよりもずっと心が強いはずだ。俺がいなくても結果は同じだっただろう。
夕飯を食べてあと、二人でホシジロちゃんを殺したR-99について話した。アイツが俺の世界から来た存在だと知ってもナガテ君は俺のことを責めたりはしなかった。恨み言の一つや二つくらい言われると思ったので逆に驚いた。やっぱりナガテ君は本当にいい子だと思う。
その後、寝ることにしたのだがヒヤマさんがナガテ君の部屋のドアを壊してしまったので今日だけ俺の部屋に寝袋を敷いて一緒に寝ることになった。ナガテ君は寝る前に俺に出会う以前のことを少し話してくれた。
小さい頃からシドニアを守るためにずっと“じいさん”と特訓をしていたという。そしてそれがやっと叶ったというのにこんなところで立ち止まるわけにはいかないのだそうだ。R戦闘機に乗りたくて軍に入った俺とは比べるのも失礼なレベルである。
今日は色々あったが大体こんなもんである。ガウナやR-99のことなど分からないことだらけだが俺はまだ生きている。今まではいつ死んでもいいと思っていたが今日は死にたくない理由が出来た。俺は、まだナガテ君達を見守ってやりたい。オッサンが夢を持ったって悪くはないだろう?
日常回だとクロス要素を出すのが難しいですね。なんか無理やりRTYPE要素を捻じ込んだような気がしてならない。でも楽しいからいいか(おい
誤字脱字、その他おかしな点がございましたら報告して下さると嬉しいです。