【完結】シドニアの「R」   作:クリス

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3日前から風邪をひいてしまい更新が遅れてしまいました。すいません。

今回は6千文字と少し長めです。それでは十九話をどうぞ。


拾九騎目

 

 

 

 

 

Ω月⇔日

 

 

どこまでも続く広い宇宙

 

常闇に光る無限の星々

 

そこを駆け抜けるは52騎の若き騎士と一人の異邦人

 

立ち向かうはガウナ

 

護るはシドニア

 

負ければ我らに明日はない

 

恐れを知らずに立ち向かおう

 

振り返らずに、どこまでも、どこまでも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 無理無理、全然駄目だ。書いていて寒気がしてきた。やっぱり俺には文学的才能ってやつはないと見て間違いないだろうな。まあ、そんな些細なことは置いておいて現在俺は、自動航行で進むR-100のコックピットで日記を書いている。視界の先には52機掌位で進む衛人隊。向かう先は当然ガウナだ。本当なら日記など書いている余裕などないのだが、これが遺書になるのかもしれないのだ。ちょっとくらいいいだろう。

 

全長、シドニアの20倍。体積、8000倍。毎度の如く唐突に現れたガウナは今までのものとはスケールが違っていた。内包した本体の数は200以上。しかも内部に小惑星まで抱き込んでやがる。こちらにぶつけるきなのだろう。

 

ここまでされれば鈍い俺でも分かる。奴らは俺達を確実に殺す気でいるのだ。勿論、俺達だってタダで殺されてやるつもりはない。“対惑星誘導飛翔体”こいつをガウナが抱え込んだ小惑星に当ててやるのだ。そして俺達の任務は、こいつが命中する前にガウナの数を減らして迎撃能力を奪うこと。はっきり言って死ねと言っているようなものだ。しかし、それしか手段がない。今は形振り構っている暇などないのだ。

 

あの、掌位の中には正規操縦士になったばかりのイザナ君もいる。初陣でこんな無理難題を押し付けられるなんて運がないというしかない。イザナ君が配属された第一小隊にナガテ君やサマリ達がいるのがせめてもの救いか。

 

俺に与えられた任務は波動砲を装備した4機の衛人隊を率いての遊撃だ。まさか、俺が僚機を率いることになるとは思いもしなかったが経験がないわけではない。それに、その4機はアカイ達だ。こいつらとは最初の戦闘からここに来るまでずっと一緒だったんだ。まあ、なんとかなるだろう。

 

何とかなるとは書いたが生きて帰れるかは正直よく分からないのが本音だ。今回の戦闘、恐らく“アイツ”も来るだろう。これはただの勘でしかないが得てしてこういう時の勘はよくあたると相場が決まっている。

 

と、そんなことを書いているうちにあと少しで作戦宙域に突入する。今更、悩んだところでもう無意味だ。あとは目の前の任務に集中するだけ。後のことは後で考えればいい。俺は生きて帰る。ここの飯は美味いんだ。まだまだ食い足りない。

 

 

 

 

 

▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△

 

 

 

 

 

全てが終わった今、続きを書くとしよう。

 

 

 作戦宙域に到達した俺達はガウナと対峙した。事前に映像で見ていたが、実物はそんな生易しいものではなかった。それは動く星だった。比喩でもなんでもなく本当に星が動いていたのだ。

 

その、余りにも非現実的な光景に衛人隊の面々も驚きを隠せないでいたが、俺達にそんなことに構掛けている時間はなかった。何故なら後ろから惑星すら破壊するミサイルが刻一刻と近づいてきているのだ。

 

交戦を開始した衛人隊は第一小隊と第二小隊に別れた。第一小隊が敵の迎撃能力の無力化。第二小隊が後部にある敵の推進力を生み出している連結型ガウナの撃破である。俺達波動砲部隊はユハタちゃんの命令によりR-100が第二小隊に随伴。アカイ班が第一小隊に随伴することになった。

 

 まずは、サマリ率いる第一小隊について記すとしよう。その場にいなかったので詳細に記すことは出来ないが、これから書くことは概ね間違ってはいないだろう。

 

第二小隊と別れた彼らは惑星の周回軌道に乗りながら目につくガウナを片っ端から排除して回った。中でも波動砲を装備したアカイ班は鬼人の様な戦い振りを見せていた。波動砲のチャージのタイミングをずらすことにより絶え間なく放たれる波動砲はラグナロックのハイパー波動砲を連想させる。

 

アカイ達の波動砲と第一小隊の弾体加速装置によりここまでは上手くいっていたといえるだろう。その風向きが変わったのは第一小隊の衛人が一機撃墜された時である。彼を撃墜した攻撃はエナで作られたヘイグス粒子砲によるものであった。爆発反応装甲は装備していたがヘイグス粒子砲に耐えられる代物ではない。そう、ここでは全くの無意味だったのだ。

 

ガウナは自分たちの周りを飛ぶ目障りな敵を撃ち落とすためにヘイグス粒子砲による迎撃を始めたのだ。ガウナの猛烈な歓迎に一機また一機と撃破されていく第一小隊。第一小隊とアカイ班も応戦するが絶え間なく向かってくる攻撃に攻撃のチャンスを掴めないでいた。

 

 

 時を同じくして連結型ガウナ後部の推進源へと到達した俺と第二小隊は波動砲と弾体加速装置による攻撃を開始した。一応、レールキャノンにもガウナ本体貫通弾は装填されていたのだが、弾体加速装置以上の射程はないので撃つことはできなかった。

 

だが、俺にはもう波動砲を出し渋る理由が存在しない。ここぞとばかりに撃ちまくってやった。24機の弾体加速装置とギガ波動砲の斉射によって推進源のガウナは瞬く間に数を減らす。弾体加速装置がガウナを射抜き、ギガ波動砲が抉り取る。まさに蹂躙といっていい光景だった。

 

俺達の優勢に見えた直後、ガウナの推進源が見慣れた青白い閃光と共に消失した。第二小隊が唖然とする俺は悟った。IFFには地球連合軍のシグナル。そして尚も増大する波動エネルギー反応。そう、“アイツ”が現れたのだ。

 

アイツは波動砲のチャージを終えるとこちらに機首を向ける。前回のアイツとの戦闘データから何をするのか理解している衛人隊は直ちに散開。初弾を危なく回避したが、ふざけたことにアイツは波動砲を連射してきたのだ。想定外の事態に気を取られた衛人が数機撃墜される。

 

俺がお返しに波動砲発射するがアイツはこれを難なく回避。俺のことなど眼中にないかのように衛人隊を狙い始めた。アイツは弱い獲物から狙うことにしたのだ。俺がひたすらアイツの背後を取ろうと躍起になるが、アイツは前回よりも更に洗練された機動で悉く回避、そして波動砲の乱射。アイツが波動砲を撃つ度に一機、また一機と撃破されてしまう。

 

僅か1分たらずで24機いた第二小隊は半数まで数を減らしてしまい、壊滅状態だった。このままでは全滅すると判断した俺は、第二小隊の隊長に生き残りを連れて第一小隊と合流しろと伝えた。

 

最初は戸惑っていた小隊長だったが、俺の必死の呼びかけと自分たちの状況を理解して残った隊員を引き連れて第一小隊の下へと向かってくれた。離脱する第二小隊を追撃しようとアイツも行こうとしたが、俺がそれを阻止するようにレールキャノンで威嚇射撃することにより何とか矛先を俺に向けさせることが出来た。

 

波動砲の連射をギリギリのところで回避しつつ俺も負けじと波動砲を撃つのだが、速度の速いR戦闘機どうしのドッグファイトだ。そう簡単に当たるわけもなく俺はアイツは拮抗状態に陥っていた。

 

そんな時、畳み掛けるように厄介な奴が現れた。始まりは逃げたはずの第二小隊の信号が次々と消失していったことから始まる。最悪なことに逃げた第二小隊を待ち伏せしていたと言わんばかりにベニスズメが襲撃。最悪に事態に対応できなかった第二小隊は次々と撃破されてしまい、第二小隊は全滅してしまった。

 

 場面を第一小隊に移そう。ガウナのヘイグス粒子砲による弾幕の前に身動きが取れなかった第一小隊は、このままでは埒が明かないと判断し、弾幕が薄い惑星表面へと降下を開始した。しかし、極度の緊張や慣れない重力下での戦闘ということもあり数機が表面に激突し墜落してしまった。この時点で第一小隊は24機中6を失っていた。しかも、彼等の下には第二小隊を全滅させたベニスズメが向かっていたのだ。戦況は最悪といって良かった。

 

 視点を俺に戻そう。ベニスズメにより第二小隊が全滅させられた俺は直ぐにでも奴を殺してやりたかったがアイツとの壮絶なドッグファイトの最中でベニスズメの下に向かう余裕がなかったのだ。そして厄介なことに第一小隊のガウナ本体貫通弾の残弾数はガウナの迎撃能力を奪うには足りなかったのだ。

 

正に八方ふさがり。時間は足りない、兵士も足りない、武器も足りない、なのに敵はまだまだ健在。どうすることもできなかった。そんな崖っぷちの状況で俺はある賭けを思いついたのだ。俺はそれを確かめるためにアイツから全力で逃げながらユハタちゃんにガウナの内部が空洞が多いかどうか確かめた。俺の問の意図にすぐさま気が付いたユハタちゃんは一度は反対したが、それしか方法がないのを悟ったのか許可をくれた。

 

俺がやったのはガウナ表面にギガ波動砲で穴を開けて内部に突入。そのまま主本体を直接撃破することだったのだ。これはアイツが衛人よりもガウナを優先して攻撃する癖に可能性に賭けて行われたことだった。

 

通信で俺達のやり取りを聞いていた俺の知り合い達は口々に無茶だと言ったが、敵中枢の直接攻撃はR戦闘機の十八番である。俺は一言大丈夫とだけ言って通信を遮断した。あれこれ言われるのが嫌だったのだ。

 

俺は機体性能に物を言わせた急加速でアイツと距離をとりながらコンソールを弄りあるもののリミッターを解除した。俺が解除したリミッターは波動砲の出力である。今までの波動砲は安全のためリミッターを設けていたのだ。リミッターを解除し、アイツの猛攻撃を回避しながら俺は波動砲のチャージを始める。アイツの波動砲やミサイル、レールキャノンを何とか回避しつつチャージを終えた波動砲をガウナの表面に向かって解き放った。

 

フルチャージしたギガ波動砲の二倍近い出力で放たれた波動エネルギーは半径2キロ程エナを抉る取り内部への侵入を可能にした。波動砲はオーバーヒートして暫く使用不能になったが心配するほどのダメージは受けなかった。そしてできた穴に俺はそのまま突入。俺を追ってアイツも内部に突入したのであった。

 

 

 視点をまた第一小隊に移そう。とは言ってもR-100のレーダーのログから推測しただけなのでどれだけ正確かは分からんがな。

 

俺とアイツが内部に突入した後、本体を破壊していないため穴は直ぐに閉じられてしまった。何もすることができない第一小隊は向かってくるベニスズメの迎撃に向かったのだろう。恐らくナガテ君を中心にして撃破に当たったのだと思われる。その証拠にナガテ君特有の凄まじい動きをレーダーが捉えていたのだ。途中で、波動砲を発射した痕跡が幾つもあったのでアカイ達も積極的攻撃していた筈だ。

 

それに加えて生き残ったナガテ君を除く19機の衛人隊による包囲網によって徐々に追い詰められていったベニスズメ。多分、そこで波動砲が掠ったのだろう。大きく速度を落とした所をナガテ君が急接近したところでベニスズメの反応がロストしたので、恐らくはパイルバンカーをベニスズメにぶちかましたのだ。もしかしたら弾体加速装置を零距離で撃ったのかもしれないがわざわざそんなことする筈がない。きっとパイルバンカーを使ったのだ。

 

でもベニスズメって中にホシジロ型のエナが乗ってるんだよなぁ。ホシジロちゃんに極太の杭を打ち込むナガテ君……。これ以上は下ネタになりそうだからやめておこう。

 

 

 時を少し遡り、視点を俺に戻そう。内部に突入した俺はそのまま本体のある場所目掛けて機体を加速させていた。不思議なことにアイツは俺に対する攻撃をピタリとやめ俺と同じ場所に向かっていのだ。俺の賭けは当たったのだ。

 

途中、エナの壁が俺達の行く手を遮ったが、冷却が終わった俺のギガ波動砲とアイツの波動砲の同時攻撃の前にはただの紙切れ同然だった。今の今まで殺しあっていたアイツと共闘するのは奇妙な気分であったが、文句を言う暇はなかった。

 

そして最後の壁をぶち破った俺達の前に主本体が現れた。ヘイグス粒子の妖しい光を放つ巨大なそれを視認すると俺達は波動砲のチャージを開始。俺のギガ波動砲。そしてアイツの波動砲のフルチャージ攻撃だ。ほぼ同時に発射された波動エネルギーは主本体を跡形もなく蒸発させ本体を失ったエナは急速に分解を始めていった。

 

この時点で対惑星誘導飛翔体の着弾までの時間は2分を切っていた。俺は機首を反転させ全速離脱を開始。着弾ギリギリで脱出することに成功。そのまま安全圏に到達したかったのだが、そこでアイツが攻撃を仕掛けてきたのだ。

 

アイツの攻撃を躱しながらレーダーを見れば対惑星誘導飛翔体は着弾し惑星を木っ端微塵に粉砕し既に衛人隊は離脱を開始していた。本音を言えばこのまま戻りたかったがそれは出来ない相談であった。アイツがシドニアに牙を向かないわけがないのだ。

 

第二ラウンドの始まりであった。俺はアイツをシドニアと生き残りの衛人隊から引き離すためにシドニアとは反対方向に機体を加速させた。やがて十分引き離したことを確認した俺はアイツとの一騎打ちを始めた。その時既に帰還限界線を越えていたのだろう。一瞬だけ通信を入れようとしたが全く繋がらなくなっていた。

 

 

ほんの数分だったのかもしれない。あるいは数時間だったのかもしれない。俺とアイツは時間の感覚がなくなるまで戦い続けた。なんせ相手はバイドとの戦争を終わらせた英雄だ。時間の感覚が残るような生半可な集中では堕とされていただろう。

 

そんな永遠とも感じられた戦いであったが、終わりは呆気ないものであった。コックピットにレールキャノンを喰らい波動砲を一発耐えそれでも尚俺に対する攻撃を止めないアイツであったが突然、機体後部の推進機関から爆発を起こしたのだ。

 

爆発を起こした部位は俺が前回の戦闘で俺がミサイルを喰らわせたザイオンググラビティドライバであった。傷口が開いたとでも言うべきか。大きくバランスを崩したアイツに俺はレールキャノンで機体が確実に航行不能になるまで破壊した。ジェネレータまで完膚なきまで破壊され動くことが出来なくなったアイツは数分間、狂ったように残った全ての武装を撃ち続けると突然死んだように動かなくなったのであった。かくして、亡霊は今度こそ眠りについたのである。

 

何とかアイツに勝った俺であるが波動砲こそ喰らわなかったもののミサイルを一つ、レールキャノンを数十発貰ってしまい、戦闘が終わった途端にザイオング慣性制御装置が完全にダウンしてしまった。まあ、寧ろよくぞここまで持ちこたえてくれたと思うべきだろう。

 

 

 

 そして現在に至るのである。コンピュータの診断によればナノマシンで修復できる範囲を超えているため修復しても途中で自壊する可能性が極めて高いそうだ。レーダーや機体のシステム自体はまだ健在だが肝心のザイオング慣性制御装置がお釈迦になってしまっては帰還も叶わない。一応、救難信号は飛ばしているが助けに来てくれるかは微妙なところである。

 

結局のところ俺は異邦人だ。もう波動砲もザイオング慣性制御装置もシドニアで作ることができる。俺の価値はもう殆どないと言っていだろう。このまま厄介払いで見捨てられる可能性も高い。俺だったらそうするだろう。

 

奇しくも、俺が初めて日記を書いた時と同じ状況に思わず笑ってしまう。ナガテ君やイザナ君は無事だろうか?ホノカちゃん達のことも気になる。サマリとかはきっと怒っているんだろうな。もしかしたら殴られるかもしれん。まあ、どうでもいいか。

 

ここまで書いて俺は煙草を吸おうとしたのだが今日に限って部屋に忘れてきてしまった。畜生、本当に運が悪いな。くそったれめ、もういい疲れた。寝てしまう。なんかもう全部どうでもよくなってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういえば、R-100のプラモデルまだ買ってなかったな。もう発売日はとっくに過ぎてる。あれ、地味に楽しみにしてたんだよ。やっぱどうでもよくないな。死ぬのはまだ先の話だ。最後が神頼みってのは癪だがまあ、たまにはいいんじゃないだろうか?今日はとてつもなく疲れてるから寝てしまおう。

 

 

 

 

 




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