【完結】シドニアの「R」   作:クリス

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前の話の続きです。


参騎目 下

 

ササキ達は艦長から簡単に話を聞いているらしく今日はただの顔合わせで終わるはずだったそうだ。しかし彼女曰く“どこかの馬鹿がふざけたことしたから機嫌が悪いのよ。例の機体が動くのを見たら直るかも”との事で俺は彼女に許してもらうべく機体を実際に動かす破目になってしまった。全く持って理不尽である。

 

ササキに急かされ仕方なくキャノピーのロックを解除した後、コンソールの電源を入れ自己診断プログラムを作動させた。何もしていないと思ったが念には念を入れて調べておくことにした。調べた結果本当に何もしていないことが分かったので、俺はコンソールを弄って動力に火を入れた。

 

慣れ親しんだはずのそれが、その時の俺にはまるで何年も乗っていなかったような錯覚をおぼえた。だがそれは唯の錯覚であるため俺はすぐに機体のシステムを弄るとアイドリングモードに切り替えた。

 

機体後部に載せられた3基のロケットブースター型ザイオンググラビティドライバが青い焔を放ち機体が重力に逆らって浮上しようとしたが、機体を吊り下げておくためのワイヤーが邪魔で浮かぶのを邪魔していたので俺は彼らに言ってワイヤーを外してもらうことにした。

 

ワイヤを外された機体はそのまま地面に落ちることなく浮かび続けその場で見ていた技術屋たちから歓声が上がった。どうやら重力制御などの技術は俺らの世界よりもかなり遅れていることが歓声でわかった。

 

しばらく浮遊したあともう一度彼らにワイヤーを仕掛けてもらい機体が吊るされたことを確認したのち機体の動力を切りコックピットから降りた。

 

コックピットから降りた俺を待ち構えていたのは予想通りササキだった。機体を動かしたら機嫌が直るといっていたのは本当のことだったらしく急に機嫌を直すと機体について質問攻めにしてきたのだ。俺はササキの質問に少しだけ答えて強引に打ち切った。そうでもしないと延々と続くきがしたからだ。ササキは不満そうにしていたが知ったことではない。

 

その後は3日後の飛行試験についてタンバさんとササキを交えて軽い打ち合わせを行った。試験の内容は最高速度および加速度の計測と運動性能の試験。そして武装の試験を行うそうだ。試験内容は別にどうでもいいが最高速度の計測は些か面倒である。

 

何故ならザイオング慣性制御装置が生み出す加速はR戦闘機を余裕で亜光速まで持っていくのでシドニアなんかあっという間に置き去りにしてしまうからだ。これでは計測のしようがない。

 

俺はそのことを正直に伝えると皆、信じられないといった顔で此方を見てきたがザイオング慣性制御装置の概要を簡単に伝えると納得はしていない様子だが理解はしてくれたようであった。結局、速度試験については可能な範囲で行うことで話しがついた。

 

試験について話し終えた俺は、タンバさんに衛人について簡単に教えてもらうことになった。ササキに聞かないのは怖いからである。

 

シドニアの主力兵器である衛人と呼ばれる人型兵器は基本的にヘイグス粒子と呼ばれる粒子で動いているそうでガウナと対等に戦う戦うために幾つもの武器で武装しているそうだ。俺はてっきり槍一本で戦っているのかと思っていたがそれは唯の思い込みだった。

 

武装は腕部に搭載された高速連射砲と誘導飛翔体そして頭部に搭載されたヘイグス粒子砲、、近接戦闘用の高速振動ブレードを搭載した中々の重武装の機体だった。だがここまで重武装でもガウナには傷を与えることが精一杯で完全に倒すにはやはりカビザシ(昨日の日記で書いたカビを装着した槍の事)で本体を突き刺す必要があるようだ。

 

現在シドニアで正式採用されている衛人は一八式衛人という名でトウア重工とはライバル関係にあるクナト開発が生産しているらしく今のトウア重工は後手に回っている状況だそうだ。これは完全に余談である。

 

その衛人にも不完全ではあるが慣性制御装置が組み込まれているらしく姿勢制御とGの軽減を行っている。彼ら曰くザイオング慣性制御装置が解析できたら衛人にも転用したいとのこと。

 

そう簡単に解析できるとは思っていないが一応協力することになっているので俺はコックピットから情報収集用のメモリーカードにR-100のデータをコピーしてササキ達に渡しておいた。ついでにずっと空気だったオチアイにも俺がガウナ(仮)と交戦した際の映像データを渡しておいた。俺の携帯電話を解析した彼らならきっと有用に使ってくれることであろう。

 

その時にR戦闘機とシドニアでは通信が繋がらないことにについて聞いてみたところコックピットにヘイグス通信機を増設してもらえることになった。なのでキャノピーのロックは解除しておけとササキに念を押された。本当はやりたくなかったがそうしないとまともに連絡が取れないので渋々承諾した。

 

通信の目処がついたところで解散することとなった。帰り際にササキに聞きたいことが山ほどあるからまた明日来いと言われたが正直行きたくない。でも来なかったら後が怖そうなので多分行くことになるだろう。いつの時代だって暴力には逆らえんのだ。

 

オチアイと一緒にトウア重工を出た時にはそとはもう夕暮れ時であった。その時は昼夜の差があることに驚いたが今になって考えてみれば当然のことで対して驚くことでもなかった。

 

トウア重工を後にした俺はオチアイに連れられて俺が住む場所まで案内された。俺が案内されたところは衛人の訓練生と操縦士が住む寮らしくちらほらと男女が出入りしていた。どうやらここが俺の当面の住処らしい。

 

部屋に入る際に新しい服と恐らく軍属の人間に支給されるであろう腕時計型の通信端末と携帯電話みたいな端末、そして一八式衛人の操作マニュアルを渡された。覚えろということなのだろうか?

 

あと、思い出したように封筒に入った20枚くらいの札を渡された。オチアイ曰く当面の生活資金だそうだ。それで必要な物を買いそろえろとのこと。俺が地理なんて知らないというとその携帯端末に地図が入っているから自分でなんとかしろと言われた。解せぬ。

 

食事についてはここの寮母が用意してくれるらしく言えば用意してくれるといっていた。既に彼女には連絡してあるからしばらくすれば俺に会いにくるらしい。

 

そこまで話すとオチアイと別れることになった。俺が試験までの2日間どうすればいいと聞くと自由にしてていいと返ってきた。そのあと続けて俺は色々噂になっているからあまり目立つようなことはしないほうがいいと忠告された。そのくらいのことは俺も心得ていたので承知したとだけ返し、今日案内してくれたお礼を言ってから本当に別れた。

 

その後、寮母の“ヒヤマ・ララァ”さん?と遭遇した。何故、疑問形なのには理由がある。彼女は熊だったのだ。これは何かの比喩表現だとか彼女が熊の恰好をしていたわけでもなく彼女が熊そのものだったのだ。意味がわからないが本当に熊なのでそう書くしかあるまい。

 

初めて出会ったときは驚いて尻もちをついてしまった。当然だろう、ドアを開けたら目の前に熊がいたら誰だって驚く。ヒヤマさんは俺が彼女の右腕の義手に驚いているのかと思って大丈夫だといっていた。俺はその時“そっちじゃねえ”と突っ込む気持ちを必死になって抑えた。

 

 

まあ、驚いたのはそこまでで後は彼女の親しみやすい雰囲気に絆されて最初の気持ちはどこかにいってしまった。俺はヒヤマさんと自己紹介をした後、ヒヤマさんが夕飯を作ってくれることになった。ヒヤマさんは熟練の手さばきであっという間に料理を作ってくれた。親子丼だった。ヒヤマさんは重力親子丼と言っていたが何か違うのだろうか?

 

食後は雑談をしながら寮の案内をしてくれた。その世話好きな後ろ姿に今は亡き母親を重ねてしまい泣きそうになったってしまったのはここだけの話である。彼女には隠したつもりだったが多分バレバレだったのだろう、何となくそう思う。

 

一通り設備を案内されたあと寝ることにした。明日からはヒヤマさんが食事を作ってくれるらしく腹が減ったら言ってくれとのとこだった。

 

多分ここにきて初めて心から安心することができたと思う。何が何だかわからない事態に遭遇して何とかここまでやってきたためかヒヤマさんの親切心を真に受けて疲れが一気にきてしまった。今日はもう何もしたくない……。日記もここくらいで終えよう。もう疲れた。

 

 

 

 

 




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