※12月1日 文章の一部を修正、追加
○月Д日
朝、ヒヤマさんの朝食を食べ終えた時に腕時計型端末に連絡が入った。出撃指令とだけ表示されていたので、一瞬、何のことだか分らなかったが、すぐに理解したので俺はパイロットスーツに着替えた後、ヒヤマさんに教えてもらった幹線起動機関とかいう長ったらしい名前の直通エレベーターに乗って目的の場所に向かった。
エレベーターで目的地に着いたはいいが、そこから、ここに来てから何度も俺を窮地に陥れた憎い奴に遭遇した。まあ、ただの迷子である。
数十分迷った挙句、たまたま出会ったセイイさんに連れられてようやく目的の場所に辿り着くことができた。セイイさんには呆れられてしまったが、全くもってそのとおりなので明日からでもここの地理を頭に叩き込んでおこうと思う
セイイさんに連れられた俺はそこで今日の試験の監視を行うメンバーを紹介された。偶然か仕組まれたのかは知らないが俺の試験の監視任務を担当することになったメンバーは、俺が初めて遭遇したシドニア人であるサマリ達であった。
サマリ以外のメンバーも俺を救助した時に俺を囲んでいた衛人のパイロットだったらしく、俺のことは既に知っているらしかったが、俺はサマリ以外しらないので自己紹介することになった。
サマリ・イッタン、ツルウチ・コウイチ、トナミ(名前は何故か教えてくれなかった)の三名が俺の試験を見てくれることになった。サマリは既に知っていたが素顔を見たのは初めてだった。
サマリの相方っぽい感じのツルウチは典型的なムードメーカーといった人物で割と親しみやすそうな人物だった。トナミはあまりよくわからなかった。その時俺はもう一人はいないのかと尋ねたところ今日は非番だというらしく、結局会うことはできなかった。
自己紹介の後、セイイさんが司令補として作戦のブリーフィングを行った後、格納庫に向かうこととなった。格納庫にはいつの間にか移動されていたR-100が既に配備されており俺は他のパイロットに混じってコックピットに乗った。だが、そこでも俺は注目の的になってしまい、俺は逃げるように機体に乗り込みシートに置いたままだったヘルメットを被った。
そのあとは通信機から聞こえるオペレーターの指示に従い機体に火を入れた後、出撃準備が整ったことをオペレーターに伝えた。実際に出撃レーンに移動するのは機械が自動でやってくれたので俺がやったことといえば機体の武装をチェックしたことくらいであった。
その際カタパルトに対応できるのか疑問に思ったが、何故か何の支障もなく出撃レーンまで運ばれたのでササキかタンバさんがなんとかしてくれたのだろう。
3日ぶりの宇宙はいつもと何も変わらなかった。地球と何も変わらない環境の居住区にいたせいか感覚がおかしくなっていたがここは宇宙のど真ん中なのだと改めて認識した。シドニアが出航して1000年、当然地球をその目で見た者など一人も残っていないのだろう。彼らは、ここしか知らないのだ。人工の重力の上で生まれ閉じられた空を見上げながら死んでいく。俺は彼らの境遇に少しばかり同情の念を抱いた。
俺が出撃する前にサマリ達は出撃していたらしく俺は彼らに追いつくように機体の機首を向けた。割と安全運転で飛ばしたのでツルウチに“以外と遅いんだな”と軽口を言われた。まあ、その余裕もそこまでだったのは言うまでもない。
まず初めに飛行試験を行った。オペレーターの指示に従い、機体を急加速させ驚かせてやることにした。しばらく機体を加速させ続けるとセイイさんから今すぐ戻れとかなり焦った感じで言われてしまい仕方なく引き返した。
あとで分かったことだが、どうやら俺は帰還限界線という領域を越えようとしていたらしい。それを越えると衛人の推力ではシドニアに追いつけなくなるのだ。俺のR-100には関係ないことだが、前もって説明しなかった俺が悪い。
次は運動性の試験を行った。加速した段階でかなり驚かれていたが、当然俺は自重するはずもなく色々飛び回った。
具体的に書くと急加速したままの直角ターンや旋回半径が殆ど0のインメルマンターン。その他思いつく限りの変態機動を行ってサマリ達をドン引きさせてやった。ツルウチいたっては通信機の画面越しでもわかるくらい驚いていて愉快だった。
最後の武装試験。これもまた凄いことになった。どれくらい凄いかというと俺も驚くくらい凄かった。超高速電磁レールキャノンとミサイルの試射は別に大したことはなかったのだ。問題は最後の波動砲の試験に起こった。
R-100は2機目の究極互換機であるため当然現存する全ての兵器を搭載できる。そこには波動砲も含まれており、俺の機体に搭載されていたのは、第三次バイドミッション、サードライトニング作戦で英雄的な活躍をしたR-9/0ラグナロックの直系の後継機であるR-9/02ラグナロックⅡに搭載されているギガ波動砲だったのだ。
標的だった惑星にこいつを最大チャージして撃った時は大騒ぎになった。R-100から放たれたそれは小惑星に半径500メートルの風穴を開け、そのまま惑星を粉々に粉砕し、その後は大惨事。
衝撃波のせいで通信障害は発生するわ、司令部やサマリ達からは何をしたと凄まじい剣幕で問い詰められるわで、てんてこまい。俺自身も波動砲の凄まじい閃光に目をやられてしまった。
だが流石、軍人というべきか、すぐに冷静になると俺に正確な説明を求めてきた。俺が簡単に説明すると通信機の向こうから何とも言えない溜息が聞こえてきた。それもそうだろう。
なんせ衛人サイズの小型宇宙船から戦艦の主砲ですら霞むような威力の波動砲をぶっ放しやがったのだ。俺から見ても異常極まりない光景を彼らが見たら驚くにきまっている。
そんなこんなで試験は無事?終了し俺たちはシドニアに帰投した。コックピットから降りた際にサマリ達と出会ったが出撃前とは違い明らかに表情が引き攣っていた。まあ、変な雰囲気だったのはそこまでで、サマリからは“これからよろしく頼むぞ”とのこと。
これから一緒に戦うかもしれない人たちだったのでとりあえず仲良くしておくことにした。その後、格納庫にいたササキに捕まって波動砲について根掘り葉掘り喋らされたのは割とどうでもいいことである。
ちなみに今日の夕飯は重力天ぷらでした。ここまで徹底されると、もうどうでもよくなってくる。いったい重力が何をしたというのだろうか?
○月Ж日
コバヤシにいきなり呼び出された。話たいことがあるからこいとのこと。携帯に呼び出しがあって開いたらいきなりあの変な仮面が映って少しびびった。
あの仮面は心臓に悪いからやめてほしい。というか事前に連絡くらい入れようよ。まったく人使いの荒い艦長殿である。これからは心の中で仮面おばさんと呼ぶことにしよう。
艦長の下に旅立った俺を待ち受けていたのは、無慈悲なる迷子であった。昨日、散々迷惑をかけて、もう迷わないと誓ったのにまた迷ってしまった。軍にいたときは道に迷ったことなんてなかったのに……。一体何がいけないんだろうか?
そんな道に迷っていた俺を助けてくれたのは、ある一人の少年であった。親切な彼は道で頭を抱えている俺に声をかけてくれたのだ。
“シナトセ・イザナ”と名乗っていたっけ。俺が事情を話すと快く道案内をしてくれることになった。どうやら俺はエレベーターと真逆の方向に進んでいたらしく、俺がエレベーターに行きたいと伝えるとなんか残念な人を見るような目で見られてしまった。
道案内の途中、すこし雑談をしたのだが、どうやら初対面ではなかったらしい。なんでも一昨日すれ違ったとかなんとか。実際覚えていないのでわからないが何となく見かけたきがする。
彼は第628期の衛人操縦士訓練生で正規操縦士になるために勉強中とのこと。彼は現状に不満があるらしくガウナもいないのに操縦士になったって意味はないと愚痴っていた。
そう思うのも仕方がないのだろう。俺も昔似たようなことを考えていたことがあったのでとても共感できた。すかさず俺が“軍が暇なのは平和な証拠だ”と、したり顔で良いことを言ったつもりだったが、今考えると別に良いことでもなんでもなかった。
だが、そんなことも次に彼の口から放たれた言葉に比べれば非常に些細なことだった。その時の台詞を今でも良く覚えている。
“あの、もしかして噂の宇宙人ってあなたですか?”
思わず吹き出してしまった。完全な不意打ちだった。まさかそこまで噂が広まっているとは思わなかった。だいたい宇宙人ってなんだよ。もうちょっと洒落た名前にしてほしかった。
具体的には“アンノウン”とか“ヴィクティム”である。それは置いておいて。その時はなんとか誤魔化したがあれは確実に疑いの目で見ていた。きっと今は友達に言いふらしていることであろう。
そんなこんなでエレベーターまで到着したところで彼とは別れることになった。何だかんだ言ってもいい子であったのは言うまでない。
しかし、あんな女顔の少年なんて初めてみた。いるとこにはいるのだな。ただ、あの顔では女に間違えられそうで不便だなと思った。当然、コバヤシには文句を言われた。しかたないね。
コバヤシと話したことを掻い摘んで書くと、俺は“特殊技術開発戦闘補佐官”とかいう長いうえによくわからない役職を与えられることになった。コバヤシの説明を聞く限り要は便利屋らしい。
普段はトウア重工に協力して新兵器開発の手伝いをするが、ガウナが出現した際には戦ってもらうし訓練にも参加しなければならないとのこと。
開発についてはトウア重工が勝手にやるらしく俺は基本呼び出された時だけ出向すればいいらしい。波動砲についてはある科学者に任せるので何もしなくていいそうだ。しかし、波動砲については話すことを禁じられた。確かにあれは不味いのはわかる。
対価についてだが、正規操縦士クラスの待遇も与えてくれるらしい。しかし、あくまで待遇なだけで衛人には乗せてもらえないし出来ることも限られているようだ。
とはいえ毎月給料も支払われるので正に至れり尽くせりの待遇と言えるだろう。訓練も呼び出された時だけ行けばいいみたいなので、今までと比べたらかなり暇になることが予想できる。まあ遅めの休暇とでも思えば悪くないだろう。後はガウナが来ないことを祈るまでである。
寮に帰った時にヒヤマさんに言われたが、今日は週に一回の食事の日らしい。できる大人の俺は学生だらけの食堂に明らかに人種が違う英語訛の不審人物がいたら彼らも不安に思うだろうと思い、ヒヤマさんに無理言っておにぎりを作ってもらい部屋に籠った。
断じて学生だらけの場所にいたら自分が歳食ってることを再認識して憂鬱になりそうだとか声かけられたらどうすればいいかわからないとかそういうのではない。本当だよ?
誤字脱字、その他おかしな点がございましたら報告して下さると嬉しいです。あと、主人公は割と残念な性格をしています。