【完結】シドニアの「R」   作:クリス

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シドニアで一番かわいいのはツムギ

異論は認める。


七騎目

 

 

 

 

◇月¶日

 

 

 朝、起きて身体をほぐした後、ヒヤマさんに作ってもらった朝食を食べる。米の生活にもすっかり慣れ好物となったほどだ。元々、食にこだわらない性格だったのも原因だろう。

 

朝食を食べ終えた後は、トウア重工に呼び出されたり、衛人との合同訓練を行う。仕事がない暇な日は仮象訓練装置で訓練したり街を探索したりといった具合だ。

 

ここに来てから今日でちょうど一カ月。俺の生活を簡単にまとめると大体こんな感じだ。今まで毎日日記を書いているのに今更振り返る必要もないと思うが、今日はここに来て一カ月という節目の日。今一度、自分の状況を整理するのも必要なことだろう。

 

 

特殊技術開発戦闘補佐官に任命された俺であるが、実際にやることと言えば大してない。要は暇なのだ。R戦闘機の解析もトウア重工の主導で行っているので俺はたまに呼ばれて解説するだけだ。

 

トウア重工の方ではザイオング慣性制御装置の解析が完了したらしく、既に試作品を設計する段階に入っているという。いくらなんでも早すぎると思ったが、ササキ曰く“恐ろしく分かりやすい”そうだ。素人の俺にはさっぱり理解できないがササキ達には違うものが見えているらしい。

 

“まるでこれを見本に作りなさい。とでも言うかのような機体“ササキはそんなことも言っていた。R-100カーテンコールは技術継承を目的としたR戦闘機だ。次元を超えた異界の箱舟でも、その存在意義を全うしているということなのだろう。

 

しかし、解析したといっても技術系統が根本から違う技術だ。試作品を作るらしいが、まだまだ時間がかかるという。時間がかかるだけで作れてしまうあたり彼らの技術力の高さが窺い知れるというものだ。それとも、そう作ったTEAM R-TYPEのことを褒めるべきなのだろうか?

 

以前、彼らに頼んでいたレールキャノンとミサイルの弾薬の生産が完了した。レールキャノンの高硬度重金属弾は今まで使っていた弾と寸分違わぬ物ができた。ミサイル―ここでいう誘導飛翔体については大幅に搭載数を減らすことになったが、何とか搭載できるようになった。翼の下に1機づつ搭載されたミサイルには未だに慣れないが、あって困るものでもないし些細なことだ。

 

唯一つ、意味がわからなかったことはR-100の翼に衛人用の高速振動ブレードが搭載されていたことだ。戦闘機で接近戦でもしろというのだろうか?最初は文句でも言ってやろうと思ったのだがパイルバンカーを搭載したR戦闘機が正式採用されている俺たちが言えたことではなかった。

 

 

 ササキに頼まれていた新装備のアイデアの件について。ササキには何でもいいからと言われていたので文字通り手当たり次第にアイデアを書いて送ってみたが、一つを残して全部却下された。俺の予想では全部却下されると思っていたのだが、一つだけ彼女の琴線に触れるものがあったらしい。

 

爆発反応装甲。それが今回検討されることになったアイデアである。形は旧世紀の戦車用追加装甲を参考にした。

 

これは俺が昔、味方のR戦闘機がバイドの触手に捕まった時に波動砲を発射し、その衝撃で触手を破壊して脱出していたことから思いついたのだが、思いのほかこれがうけたようで、対ガウナ用爆発反応装甲として、検討されることになった。まずは仮象訓練装置でシミュレートしてから考えるそうだ。

 

その他、R-9Eミッドナイトアイのような早期警戒機のアイデアもあったのだが、シドニアが既にAWACS(早期警戒管制機)のような機能を持っているので没になった。

 

アイデアを出すという約束ではあるが、ガウナとの戦闘は基本的に迎撃戦である。それに対するバイドとの主な戦闘は殲滅戦だ。戦術と運用方法に違いがありすぎて参考になることはあまりないと思われる。

 

 

トウア重工の話はそれまでにして今度は衛人との訓練のことについて書こう。と言っても今日のことなのだが。今日は月に一度の大合同訓練だったようで、俺にも召集の指令がとどいた。

 

情報統制が少し緩まり、俺がシドニアの外から来た程度の情報は公開されているようだが、彼らからすれば、俺はいきなり現れた見たこともない機体を操る正体不明の異邦人である。サマリ達などは、よくしてくれるが周囲の目は相変わらず厳しい。

 

肝心の訓練の内容は掌位や陣形構築の訓練などを行った。何十機もの衛人がヘイグス粒子の青い光を放ちながら輪になって飛んでいく姿は美しかったが、当の俺はというと、ただそれを見ているだけだった。

 

俺を訓練に参加させることで操縦士の俺に対する警戒心を薄める意図があったのかどうかは知らないが、もう少し俺にも役目を与えてほしいものだ。

 

あまりにも暇すぎてヘルメットを脱いで煙草を吸っていた俺を通信機越しに見ていたサマリに怒られたのはどうでもいいことである。

 

訓練の最後に俺のR-100と試しに掌位することになったのだが、元々そんな運用方法は想定していない機体である。サマリの搭乗する衛人がR-100の両端を掴む形で掌位したのだが、R-100の推力が大きすぎたのか、掌位の組み方が甘かったのか、はたまた土台無理な話だったのか、飛んでいる最中に空中分解してしまった。

 

幸い怪我などはなかったものの、ここは宇宙、何が起きるか分からない危険な場所である。少し反省する必要がありそうだ。

 

訓練のあと謝りにいったのだが、サマリ達には握手を一度もしていなかったからお互い様だと言われた。何でも一度も触れ合ったことのない操縦士どうしが掌位すると必ず失敗するというジンクスがあるのだそうだ。

 

いつもなら、そんな風説信じないのだが、掌位に失敗してしまったのは紛れもない事実だ。あながち嘘でもないのかもしれない。

 

そんなこんなで、サマリ達に流されるまま握手することになった。失敗した後でやっても意味ないんじゃねと思ったが、彼女たちの厚意を無碍にするわけにもいかず、黙っていることにした。

 

その後、サマリ達に飲みに行くから一緒に来ないかと聞かれたが、とりあえず断っておいた。そこまで仲良くする気がなかったのもあるが、よそ者の俺に気を使って彼女たちの楽しみを台無しにするのも良くないと思ったのだ。

 

自分でも不愛想なのは分かっているが、どうにも自分がよそ者だという感覚が抜けないせいもあり、つい関わるのを避けてしまう俺なのであった。

 

 

そんなことを考えたためか、少し感傷的な気持ちになっていた俺は、そんな気持ちを払拭するために一人で飲みに行くことにした。

 

店の名前は“ねぎくじら”俺が散歩している時に偶然見つけた店で、日本式のバー、いわゆる居酒屋と呼ばれるような飲み屋だ。

 

店名の意味はわからないが料理と酒は美味かったので何度か利用していたのだ。俺はそこで酒をやりつつ料理を楽しんでいた。

 

俺がそんな風に過ごしていると思わぬ来店者達が現れた。サマリ達であった。どうやら彼女達もここの常連だったようで、今日彼女たちに誘われた店はここだったのだ。

 

俺は何とか顔を隠してやり過ごそうとしたのだが、何分狭い店内である。当然すぐにばれて、彼女たちと相席することになってしまった。しかも、その時の俺の行動が余りにも滑稽だったようでツルウチには思い切りからかわれてしまい恥ずかしかった。

 

何度か酒を飲み交わしている間に彼女たちも酔いが回ってきたのか口が軽くなったようで、少し文句を言われてしまった。

 

“よそよそしい“彼らが俺に言った文句だ。必要以上に関わらないようにしていたことが仇になったようだ。軍に所属している人たちは誰彼構わず敬語で接していたのも、よそよそしさに拍車を掛けていたようで、もう少し何とかならんのかと言われた。

 

東洋人は童顔にみえるというし、間違って年上を呼び捨てにしないための処世術だったのだが、結果としては不満を抱かれてしまった。

 

とりあえず呼び捨てにすることで、彼らには納得してもらった。彼らとしては、既に同じ仲間なのによそよそしい俺が気に入らなかったようだ。

 

 

その後は、酔ったツルウチがサマリに抱き着いてサマリに殴られたりして一悶着あったがなんだかんだ言って楽しかった。まあ、こういうのもたまにはありなんじゃないだろうか?

 

ただし、ガウナ風ロールキャベツ。てめぇはだめだ。

 

 

 

 

 

◇月Γ日

 

 

 今日は、訓練校で仮象訓練をしにいった。あの一件から俺は、訓練校に行く数を減らしているが、一応、仕事でもあるため週に2回ほど行くようにしている。仕事といっても実質遊びと化しているのはここだけの話である。

 

シナトセくんやホノカちゃん達とはあれからもたまに会い、今やちょっとした知り合い程度の間柄になっている。

 

例の一件の当事者でもあるシナトセくんや噂を聞きつけたホノカちゃん達にも俺の謎の操縦技術について何度か問いただされたが、俺は似たようなゲームで慣れていたからというあながち嘘でもない理由ではぐらかしておいた。

 

別に真実を話してもよかったのだが、これ以上目立つのは避けたかった俺はその嘘を貫き通した。まあ、そんなやり取りを続けているうちに諦めてくれたのか、俺の真意を汲み取ってくれたのか知らないが、そのことについては聞かれなくなった。

 

 

あの一件以降、俺は仮象訓練装置を使うのを人がいない時間帯に絞っている。しかし、どこで嗅ぎ付けたのか知らないが俺の居る時間に合わせて何名かの訓練生が俺の訓練を見に来るようになってしまった。

 

というか訓練生でもない俺が仮象訓練装置を使うのはいいことなのだろうか?そう思った俺は偶然授業を教えていたセイイさんに聞いてみた。

 

セイイさんも俺の仕事を知っているようで訓練生の邪魔にならなければ使っていいとの許しがきた。むしろいい刺激になるからもっとやっていいとまで言われた。司令補のお墨付きだ。これからは心置きなく仮象訓練装置を使うことができるだろう。

 

あの日以来、クナトくんには、あからさまに敵意を向けられる。全く持って面倒である。もしかしなくても自業自得なのでどうにかしなければと思っているが、どうすればいいのか全く見当がつかない。クナトくんに直接謝っても嫌味にしか聞こえないだろうし困ったものである。

 

そういう面倒なこともあったが知り合いも一人増えた。名は“ホシジロ・シズカ”、クナトくんに不審者扱いされたとき、彼と一緒にいた子である。

 

あからさまに敵意を向けるクナトくんのことを謝っていたが、彼女には全く非がないので謝らなくていいと思う。むしろ俺が謝るべきだろうに。

 

 

自己紹介くらいしかしていないが、とても礼儀正しくていい子なのは俺にもわかった。あんな子も戦場に出でることになるのかと思うと、本当に虫唾が走る。

 

仕方ないのかもしれない。理由だって幾らでもあるのだろう。だからといって、それが子供を戦場に出すことを正当化する理由にはならない。

 

とはいえ、それは俺の感情の問題であって、俺にとっての常識は彼らにとっての非常識なのだろう。俺一人の価値観を彼らに当てはめるのは正しい行いではない。常識なんてものは立場や状況で幾らでも変化するもであり、どれが正しいなんて決めつけることは誰にもできやしないのだ。

 

そうはいったもののやっぱり子供が戦うのは嫌だな。ガウナなんて絶滅してしまえばいいのに。

 

 

 

 

 

◇月Щ日

 

 

 

 

 

     どうしてこうなった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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