◇月У日
昨日は、とんでもない事態に遭遇したせいで日記を書く余裕がなかった。現在、俺は縦横無尽に入り組んだ地下のどこかの通路に座って日記を書いている。どうしてこうなったって?俺が聞きたいよ……。このフレーズ前にも書いたな。
俺がどうしてこんなところで日記を書いているのを説明するには昨日に遡る必要がある。俺は日課にしている街の探索がある程度の成果を上げたのでより長距離の探索に乗り出すことにしたのだ。
今までの経験から迷うことは必然だったので、俺は5日分の食料と道具を装備し、いつ如何なる時に迷って帰れなくなっても大丈夫であるために完全装備で街に乗り出したのだ。
リスクを冒しただけはあって得られるものは大きかった。いかにもと言った趣のプラモデル屋や銭湯。その他さまざまな興味を惹かれる建物を発見することができた。
ただ、やはりというかなんというか、どこに行っても俺は悪い意味で有名人なようでジロジロ見られてしまうのであった。有名税といってしまえばそれまでだが、あることないこと噂されるのはいい気分ではない。
これはシナトセくんから聞いたことなのだが、宇宙人の噂は一人歩きしているようで今では、“未知の毒ガスで攻撃する”とか“シドニアを一撃で破壊することができる”とか“シドニアを征服するために街を調査している”など、微妙に合ってる噂が流れているようだ。
どれも都市伝説程度の噂なので、大して信じられていないと彼は言っていたが、街の住人の反応を見るに首を傾げざるを得ない。というか毒ガスってなんだよ毒ガスっていくらなんでもそれはねーわ。
話を戻そう。そんなこんなで街を探索していると偶然、3人のホノカちゃん達(書いていて意味わかんねえな)とバッタリ遭遇した。彼女たちは登山者のような格好の俺を見て“何してんの?”と凄く変な人を見るような目で聞いてきた。
どうやら彼女達の俺の評価は変人で定着していたようである。俺は街の反応にイラついていたので“俺は街の探索をしなければならないのだ!邪魔しないでくれたまえ!”とだけ言うと大股で彼女達から離れていった。その時ホノカちゃん達の視線が絶対零度まで下がったことを俺は決して忘れはしないだろう。
そんなこともあったが、街の探索の方は思いの外順調に進んでいたので、俺は街の下に向かって足を進めるのであった。思えばここで引き返すなりしておけばこんな事態にならずにすんだのだろう。
原因は今でもハッキリしない。油断していたのだろうか?それとも運命の悪戯だったのだろうか?はたまた呪われていたのだろうか?
俺は街を探索していたら、いつの間にか地下に迷い込んでいた……。
いや、意味がわからない。本当に意味がわからない。なんで街を歩いていたら地下に迷い込んでいるんだよ。何をどう考えても過程と結果が結びつかねーよ。
なんで!?なんで歩いてただけなのに地下に入り込んでんの!?なんで地下に入り込んでんの!?ねぇ?なんで?なんでなの?意味わかんないよ?誰か教えてよ!?
(字が汚くて読めない)
落ち着いた。落ち着いたので改めて状況を整理しよう。俺は街を歩いていたら地下で遭難した。自分で書いていて全く意味がわからない。街と地下になんの関係があるというのだろうか?もはや、ここまでくると呪われているのではないか心配になる。俺が今まで殺したバイドの怨念が俺を呪ったとでもいうのだろうか?ないな。
これが昨日この身に起こった出来事である。明らかに遭難したと分かった俺は昨日歩き回って何とか脱出しようとしたのだが、結局余計に迷うだけであった。
頼みの綱の携帯も繋がらなかった。本当にどうしようもないので俺は持ってきた食料を食べ夜を過ごすことにした。その際、暖を取るために、そこいらで転がっていたコードや元が何だったのかわからない廃材を燃やして暖をとったのだが、それが臭いのなんので大変な目にあった。
今日は改めて脱出するために上を目指したのだが、結局知らない場所にでるだけで、地上に戻ることはできなかった。
残された食料は後3日分。それまでに何とかして脱出しなければならない。本当になんでこんなことになってしまったのか全く理解ができない。もう日記を書く気力すら残っていない。体力の温存のためにも、今日はここで寝てしまおう。
◇月Λ日
結論から書こう。俺は助かった。今、俺はとある人物の住んでいる地下の一室でこの日記を書いている。
地下遭難3日目。今日も散々歩き回ったが結局出口を見つけられなかった俺は、精根つき果てて煙草を吸っていた。俺が煙草を吸っていると通路の奥から足音が聞こえてきた。しばらくすると、その足音の主が俺の前までやってきた。足音の主は俺に酷く驚いていたようだが、俺が事情を説明すると自分の住んでいる場所まで連れてってくれることになった。
“タニカゼ・ナガテ”くん。彼が俺を遭難から助けてくれた命の恩人である。俺の煙草の臭いが気になって探してみたところ俺を発見したらしい。
ナガテ(呼び捨てでいいと言われた)くんは物心ついた時から地下で“じいさん”と呼ばれる人物と二人暮らしをしていたのだが、その彼も亡くなってしまい今は一人で地下に暮らしているそうだ。
何故、地下で暮らしているのか。“じいさん”とやらが何者なのか、ナガテくんは何も知らないようだった。ただ、一つわかっているのはナガテくんがじいさんに衛人の操縦を叩きこまれたことくらいである。
正直“じいさん”とやらが何者なのかはどうでもいい。何か犯罪でも起こして地下に逃げたのか、のっぴきならぬ事情があったのかもしれない。だが、子供一人残して勝手に死ぬのは無責任というものではないだろうか?
俺はそう思ったが、“じいさん”のことを話すナガテくんが余りにも彼のことが好きだというような表情だったので黙っていることにした。
“じいさん”彼がそう呼んでいた男は奥の一室でミイラになって死んでいた。彼が何者だったのかは分からないが、そのまま放置しておくのは忍びなかったため、ナガテくんに手伝ってもらい簡単な墓を作ることにした。
ここは地下。土なんて物は当然存在しないため、かなりみすぼらしい出来になってしまったが、それでもナガテくんは喜んでくれていた。
すぐにでも帰りたかったが、今日はもう遅いので明日道案内してもらう約束をし、今日はナガテくんの部屋に泊まることになった。その際、お礼に残っていた食料を全てあげたところ、とても喜ばれた。
何でも“じいさん”が死んでから食料の備蓄が少なくなっていたため、かなり節約して暮らしていたそうだ。知れば知るほど無責任な人物だと思わざるを得ない。
そのせいもあってか、全部重力麺だったというのに彼には凄い喜ばれてしまった。俺に作り方を聞いたナガテくんは早速、重力麺を食べて、その味に感激していた。よっぽど腹が減っていたみたいである。
しかし、彼を育てていた“じいさん”とやらは一体、何者だったのだろうか?子供まで連れて逃げるなんて余程の事情があったに違いない。となるとナガテくんも何か特別な秘密でもあるのだろうか?
そんなことを書いてみたものの、久しぶりに腹が膨れて、満足そうに眠っている彼の顔をみていると、そんな些細なことはどうでもよくなってくる。明日ナガテくんに一緒に地上に来ないか聞いてみよう。
◇月≧日
昨日、ナガテくんに約束してもらったとおり出口まで案内してくれることになった。その際、一緒に地上に行かないか?と提案したが、“じいさん”に禁止されていることを理由に断られてしまった。だいたいそんなことだろうと思っていたので今日は諦めたが、いつかナガテくんを地上に引きずりだしてやる。
“多分……、ここから出られると思います”そうナガテくんに案内された梯子の前で俺たちは別れることになった。ナガテくんは少し寂しそうな表情をしていたが、俺がまた明日来ると言ったら笑顔になってくれた。うん、やっぱりいい子だな。
彼に案内された梯子を上ると、そこは精米工場だった。いきなり地面から現れた俺に作業員が詰め寄ったが、俺はここぞとばかりに身分証と“特補”のバッチを見せつけ極秘調査できたとそれっぽい嘘をついて誤魔化しておいた。
ついでに明日も調査のためやってくると言っておいたので、またここから会いに行くことが出来るだろう。
精米工場を後にし3日振りの街に戻った俺は喜びの余り、思いっきり叫んでしまった。当然、まわりの人には引かれた。
その後、ダッシュで寮に戻った俺は、まずヒヤマさんに会いに行くことにした。3日も音沙汰無しだった俺のことをヒヤマさんは凄く心配していたようで、説教されてしまった。1時間ほど説教した後、3日間何をしていたのか聞かれ、俺はナガテくんのことを隠して遭難していたことを伝えた。
俺のとんでもなく下らない理由を聞いたヒヤマさんは一瞬呆けたような顔をして、すぐに深い溜息とともに呆れられてしまった。そして“あまり心配かけさせないでちょうだい”とだけ言って説教は終わりとなった。
確かに、3日も連絡を寄越さずにいたのはかなり不味かったといえるだろう。次からは事前に連絡を入れることにすると決心した俺なのであった。
ヒヤマさんの説教が終わった後、俺はナガテくんに届けるための食料を買い込みにいくことにした。
米や日持ちする食料を大量に買い込み寮に帰る途中、シナトセくんに遭遇した。彼は俺を見つけると“3日もどこにいってたの?”と少し心配した顔で尋ねてきた。何でも俺が行方知れずの間にヒヤマさんが知り合いのシナトセくんとホノカちゃん達に見かけたら教えてくれと頼んでいそうである。
俺が遭難したことを伝えるとシナトセくんは彼は盛大に脱力した後、怒った様な呆れたような感じで帰っていってしまった。どうやら知らず知らずのうちに迷惑をかけてしまっていたようである。
シナトセくんが去った後、同じ様な感じで2人のホノカちゃん達にも出会い同じことを聞かれた。顔のせいで見分けが付かなかったが雰囲気からして俺を殴ったレンちゃんとエンちゃんだと思われる。
彼女たちにも同じ説明をすると、なんだか納得したような顔つきで去っていった。俺ならやりかねないとでも思ったのだろうか?
その後、大荷物の俺を見たヒヤマさんが何事か聞いてきたが、適当に誤魔化しておいた。ナガテくんのことは当分、秘密にしておきたかったからだ。もしかしたら、大犯罪者の子供だったりする可能性も捨てきれない今、彼のことは伏せておく方が得策だろう。
明日はナガテくんにお礼も兼ねて会いに行くのだ。今日はこの辺にしてもう寝よう。
主人公は斎藤ヒロキのことをボロクソに叩いてますが、事情を知らない人間から見たらそう思われても仕方がないでしょう。
”未知の毒ガス”煙草のこと。”シドニアを一撃で破壊”ギガ波動砲。”征服のために街を調査”迷って徘徊しているせい。以上が噂の真相です。
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