魔法少女リリカルなのは~Amantes Amentes~ 改訂版 作:鏡圭一改め鏡正
蓮とラインハルトの戦闘が再開した頃、司狼とヴィルヘルムの戦いは司狼が苦戦を強いられていた。
「おいおい、自分で攻撃しないで杭で攻撃なんざ、『カズィクル・ベイ』の名も地に堕ちたな白髪野郎!」
司狼はヴィルヘルムに挑発するが、ヴィルヘルムは余裕そうな表情で聞き流していた。
「まあ、そんなに慌てるなよな。この力を使うのに慣れてなくてよ。……んじゃあ、コイツはどうだぁ!?」
次の瞬間、司狼の周りに無数の杭が現れ、司狼に向かって発射された。向かってくる杭の数に司狼は驚きを隠せなかったが、驚異的な反射神経と勘で避け、デザートイーグルで相殺していくが、暫くすると、少しずつ司狼の体に杭が掠り始め、ダメージが蓄積されていく。
「ぐっ! 野郎! ……っ!?(何だこの感覚は? まるで俺の中にある魔力が吸い出されるようなだるい感じがしやがる)」
司狼は体内の異常の正体に近づいていたが、それを顔に出さずに余裕そうな笑みを浮かべ、お返しとばかりにヴィルヘルムにデザートイーグルの一撃をお見舞いする。
「どうよ、体内の力が吸われる気分はよぉ? ……まあ、オレに一撃喰らわせたことだけは褒めてやるよクソガキ」
「にしては、全然効いてなさそうだなおい(だったら今以上に火力を上げれば良いわけだが、白髪野郎の話を聞いてると空気の中に含まれている魔力まで吸収してる可能性があるわけだ)」
司狼はヴィルヘルムの能力についての推測をしながら、無数に放たれてくる魔力を吸わんとする杭を勘で避けながら魔力の弾で弾き返していたが、弾いた魔弾の魔力は杭に吸収されてしまっていた。
「(正直、成功するか分からねえが、やるしかねぇか)」
この瞬間、司狼は無意識の内に司狼の父親であるジューダスが出演していた映画『PARADISE LOST』の能力を魔法でアレンジできるのではないかと思い、咄嗟の発想で練習なしで行うことになった。
『イザヘル・アヴォン・アヴォタブ・エルアドナイ・ヴェハタット・イモー・アルティマフ』
『アクセス――我がシン』
『暴食のクウィンテセンス。肉を食み骨を溶かし、霊の一片までも爛れ落として陵辱せしめよ』
『死に濡れろ――――
司狼が放った魔弾は散弾銃の弾の様に無数に弾けて杭に当たると、杭は魔力を吸収することなく、腐敗していき、酸のように溶けてしまった。
この魔弾は使用者の技量不足で人間を簡単に腐敗させることが可能な危険性がある魔法だが司狼という天才によって放たれた魔弾は誰も腐敗させないように腐敗の調整を可能としている。
ゆえに、魔力を吸収する前に強力な腐敗によって杭を腐敗させることでヴィルヘルムの攻撃を一つ封じることに成功した。だが、ヴィルヘルムは不利な状況にもかかわらず
「面白れぇ。最高だぜテメェ! オレが望んだ戦いってのはよ、こういう魂が昂るタイマンなんだよ!」
「……はぁ? 誰がテメェとサシでやり合うって言ったよ?」
司狼の言葉に違和感を覚えたヴィルヘルムは一瞬唖然としてしまった。次の瞬間、ヴィルヘルムは何かに縛られるような感覚に襲われ、身動きが取れなくなっていた。
「あぁ? なんだこりぁ? (……鎖? ってことは誰か他にいやがるな)」
「やっと引っ掛かりやがったな白スケ! もう出てきてもいいぜユーノ」
次の瞬間、フェレットに化けていたユーノは人間の姿に戻り、ヴィルヘルムの攻撃に警戒しながら魔法陣を展開していた。
「嬉しそうに笑ってる場合じゃないよ司狼! あの人僕の魔法を吸収して動こうとしてるよ!」
「だろうな。アイツの体のいろんな所から杭が出てやがる。人間やめやがったなアイツ」
司狼はヴィルヘルムの状態にドン引きしていると、ユーノの魔法が破壊され、自由になったヴィルヘルムは鋭い眼光で司狼たちを睨みつけると、笑みを浮べ始めた。
「テメェらの話しを聞いてると、どうやら今オレが使っている力は魔法ってわけだ。テメェら、まさか今のがオレの全力だって勘違いしてんのか? だとしたら、お前ら相当おめでてぇな」
「「っ!?」」
「オラァ! 行くぜ!!」
ヴィルヘルムの鋭い眼光と増大した魔力を前に司狼とユーノは一瞬ではあるが、隙を生んでしまった。ヴィルヘルムはその隙を逃すことなく、司狼に向かって掌に生えた杭で目で見えないほどの早い攻撃を放つ。
「くっ! (あの白髪野郎。速さが増してやがる! しかも、あの杭をまともに喰らったら間違いなく今日は魔力が使えなくなる) ……オラァ!」
ヴィルヘルムの一撃を司狼は咄嗟にデザートイーグルで受け流し、全力でヴィルヘルムの体を蹴ると、ヴィルヘルムは2~3m位吹き飛んだが空中で体勢を戻して地面に着地する。
「……今更だけどよ、ラインハルトの忠犬なお前がどうしてあんな痴女みてぇな魔導師に従ってんだよ? まさか、ロリコンでも拗らせたのかよ?」
司狼の問いに一瞬本気の殺意が湧いたヴィルヘルムだったが、余裕そうな表情に変わる。
「んなわけねぇだろうが! ……テメェを吸い殺すのは後だ。オラァ!!」
ヴィルヘルムが突然後ろを振り向いて無数の杭を放つと、魔力によって投影された無数の剣に当たり、その魔力がヴィルヘルムに吸収されていく。
「貴様! 俺の邪魔をするとは覚悟はできてるんだろうな!」
赤いマントを羽織った少年、遠坂業は前回騙まし討ちをした司狼に仕返しをしようと不意打ちをしたが、それがヴィルヘルムによって邪魔されたことに苛立ちを表面に出していた。
「おい、ヴィルヘルム。一時共闘と行こうじゃねぇか! 正直、気にいらねぇんだよ。他人の力に酔ってる野郎はよ!」
「ああいいぜぇ。他の野郎にオレの獲物は盗られたくねぇからなぁ。 おい! ユーノって野郎! テメェはサポートだ。足手まどいになるなよなぁ!?」
「分かったよ。だけど、僕が倒してもかまわないんだよね?」
ヴィルヘルムの挑発にユーノが挑発で返すと、ヴィルヘルムは狂気を含む笑みを浮かべ、テンションが上がっているのを感じた。
「はっ! 上等だ。途中でくたばんじゃねぇぞ!」
ヴィルヘルムがそう言ったと同時に、苛烈な戦闘が業の投影魔術によって開始された。
蓮とラインハルトの戦いも激しさを増していた。蓮にとっての幸運はハイドリヒのワルキューレとエインフェリアの装備が近代兵器ではないことだった。
蓮の『創造』は自己時間加速。つまり、蓮の視点ではラインハルトの創りだしたワルキューレたちの行動や攻撃が停滞しているように見えるため、ワルキューレたちの攻撃は当たらず、その数を半分以上減らすことに成功した。
だが、ラインハルトには蓮の『創造』の能力が通用せず、徐々に蓮の速度に適応していた。
「さすがだツァラトゥストラ。私のレギオンが太刀打ちできないようだ。だが、私の『覇道』で卿の世界を塗り潰すまでのこと。……潰れてくれるなよ?」
「誰が潰れるかよ! テメェの都合を勝手に押しつけんじゃねぇ!!」
ラインハルトと蓮の魔力が今まで以上に高まり、この一撃で決着が着くかと思われたその時、射出された複数の武器に気づき、両者はその場から離れる。
「ふむ、これは魔剣か」
ラインハルトは魔剣を握り潰して後ろを振り向くと、そこには金色の鎧を着た天王寺竜馬がイラついた表情をしながらラインハルトと蓮を見る。
「『固有結界』か。貴様らが嫁たちのいるこの地で暴れる雑種共か?」
雑種という言葉に蓮は意味が分からないからか、特に反応は無かったが、ラインハルトは自身を雑種と呼ぶ竜馬が珍しい人間だからか、興味深そうな笑みを浮かべる。
「ほう、私の世界に入ってくるか。まずは卿の力を見せて貰おうか」
ラインハルトがそう言った瞬間、エインフェリアたちが無数の矢を放ち、必中の槍を投げる。竜馬はその光景を鼻で笑った。
その瞬間、無数の波紋が竜馬の周りにでき始め、魔槍と魔剣などを無数に放出しエインフェリアの攻撃を相殺した。
竜馬が使っている異能は
本来ならばギルガメッシュしか使うことができない異能なのだが、どういう訳か竜馬が使うことができている。
「ふん。その程度か? 雑種の分際で我の宝具に似た武器を使うか……だが、貴様の使う槍。我が宝物庫に入れるに相応しい。我によこせ」
「卿は私にばかり意識を向けているようだが……」
その時だった。竜馬の目の前に無数の衝撃波が襲い掛かる。が、しかし、竜馬はうっとうしそうな表情で衝撃波を避けた。
「誰だ? 我の会話を邪魔する痴れ者は!? 恥を知れ!」
「おい。なに勝手に俺の
竜馬は声の聞こえる方向に『王の財宝』の武器を放とうとした瞬間、四方八方から斬撃を一瞬で喰らい、黄金の鎧が砕け散った。
「殺すぞ」
蓮の殺気と共に眼に宿っているカドゥケウスを見てしまった竜馬は目の前にいる蓮とラインハルトが何者なのかに気づいてしまう。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
竜馬は蓮たちを化け物を見る目で見て怯えながら逃げて行った。
「ツァラトゥストラを疎かにしすぎだ……と言おうとしたが、興が削がれた。ツァラトゥストラ、卿との戦いは次回まで預けよう。私はフェイトの元に向かう」
「っ! おい! 待てよ!! ……どうなってるんだ一体?」
蓮は突然乱入してきた竜馬について考えていたが、司狼たちのことを思い出し、『創造』を発動したまま司狼の元に飛んで行った。