魔法少女リリカルなのは~Amantes Amentes~ 改訂版 作:鏡圭一改め鏡正
メルクリウスが神を殺してから2年が経った。
その後、メルクリウスはすぐにラインハルトを消滅しようとしたが、すでにラインハルトは正史通りに暗殺されていた。
この世界の理は第五天・マルグリットの理と同じ『輪廻転生』であることをメルクリウスは理解し始めていた。
メルクリウスは自ら転生者が宿ったラインハルトを殺そうとした主な理由には、メルクリウス自身の怒りもあるが、転生者も輪廻転生の理の中にいる可能性があるからだ。
もし転生者が輪廻転生しても歪んだ思考が変わらなかった場合、『輪廻転生』の理が第六天・波洵の様に壊されてしまう可能性がある。
メルクリウスはこの世界がマルグリットの様に優しく全てを包み込むようなこの輪廻転生の理を守ろうと思っていた。
それはメルクリウスが体を乗っ取ってしまった『メルクリウス』にできる唯一の贖罪であると思ったからだ。
そしてメルクリウスは転生者の因子を見つけ、その因子を二度と波洵の様な事が起こらないよう徹底的に消滅した。
そのついでに第六天・波洵の因子も消滅させた。
メルクリウスは波洵に対し『メルクリウス』の記憶を引き継いでいるからなのか、波洵という存在を憎悪し、その因子を消滅させたことで『メルクリウス』の願いを叶えたともいえる。
さらに、女神である夜天の書の管制人格の呪いを解く方法を探しにミッドチルダと呼ばれる世界に転移した。
目的は、ミッドチルダの中で最も大きな組織であり次元警察の様な行為を行っている『時空管理局』の無限書庫と呼ばれる、過去の資料や異世界に存在した魔法技術の遺産『ロストロギア』に関する情報を保管している所にメルクリウスは存在を最大限に殺し、『夜天の書』について調べることだった。
そして夜天の書を調べた結果、現在の夜天の書はバグによって本来の機能が壊れ、『闇の書』と呼ばれる存在になっており、次元世界を破壊する最悪の書と成り果ててしまった。
他に何か情報はないかと無限書庫の他に夜天の書に関する経緯を調べていると、驚くべき事実が発覚した。
それは、夜天の書を改悪した存在がその当時の管理局の高官だったことだ。
その管理局の高官は出世が目的で夜天の書を改造していたが、ロストロギアを改良する知識がその高官にある筈が無く、次第に改悪され、現在の闇の書になってしまった。 ……というのが事の真相だった。
その高官は闇の書の暴走を止めるために自らの身を捨てての名誉ある殉職という経歴になっているが、もはや自業自得としかいいようがない程に酷かった。
この情報は、もしメルクリウスが女性を救い出せても、女性が管理局にいいように利用されてしまいそうな時の取引の証拠として時空間を切り開いて保存した。
ミッドチルダからベルリンに戻ってきたメルクリウスは戦争中で殺気立っている町を平然とした顔で歩いていると、
「なあ、少しいいか? 道を聞きたいんだけど」
突然道を尋ねられたメルクリウスは声のした方向を向くと、そこには黒髪のどこか凛々しい雰囲気の青年がいた。
青年の名前はロートス・ライヒハート。ドイツで死刑執行者を多く輩出した名家であるライヒハート家出身だ。
しかし、首切り役人であるライヒハート家を継ぎたくないからか、ライヒハート家から出て、古代遺産継承局という場所に就職することが決まり、古代遺産継承局に向かっていたが、古代遺産継承局の場所が分からなくなり迷っていた。
「構わないが。どこに行きたいのかね?」
「古代遺産継承局ってところだ。今日からそこで働くことになったんだけど、道に迷ったんだ。悪いけど案内いてくれないか?」
青年は困ったような表情で理由を言った。普段なら忙しいと言って断るメルクリウスだが、この時は何故か目の前にいる男に対し興味を持っていた。
「分かった。では着いてくるといい」
メルクリウスは胡散臭さ全開の笑みをロートスに向かってすると、ロートスは苦笑いしていた。
「あんた……よく胡散臭いって言われてるんじゃないか? なんか友達がいなそうな感じがするし」
「余計なお世話だ。早く着いてこないと置いて行くが、それでかまわないのならそこにずっといたまえ」
メルクリウスが笑顔でロートスを脅すと、ロートスは慌てた表情でメルクリウスに着いて行った。
しばらくお互いに無言が続く中、古代遺産継承局に向かって歩いていると、
「君は死者蘇生という物をどう思っているかね?(ただの気紛れで質問したが、私を失望させてくれるなよ?)」
メルクリウスは突然ロートスに対し死者蘇生について聞いた。メルクリウスは軽い気持ちでロートスに質問をしていたが、心の中で面白い回答を期待していた。
ロートスは暫く考えてから自分の考えをメルクリウスに話し始めた。
「……死者蘇生っていうのは死んだ人を蘇らせることだよな? だとしたら。精一杯生きて死んだ人が蘇るってことだ。それは満足して死んだ人を冒涜しているし、そして何より蘇った奴は化け物と同じ存在だ。この世に存在してはいけない」
「ほう。……それで?」
メルクリウスは突然歩みを止め、笑顔に変わったが、内心ではかなり驚いていた。目の前にいる青年の考え方がツァラトゥストラこと藤井蓮の考え方と同じだからだ。
青年の考え方を中世のキリスト教徒が聞いたら青年を異端者と見なすだろう。何故なら処刑された後に、蘇ったとされるイエス・キリストのことを否定しているのと同じことだからだ。
「俺達は永遠になれない刹那だ。どれだけ憧れて求めても死者蘇生なんて幻にすぎない。もちろん俺だって死にたくないし、永遠をずっと味わいたいさ。だけど、俺達はいつか死ぬ。だから俺達は今を懸命に生きている。後悔を残したくないからな。……これは俺の考えで誰かに強要させるってわけじゃないからあんまり気にしないでくれ」
ロートスの答えに、メルクリウスは求めていた答えだからかこの世界にきてから初めて思い切り笑っていた。
「(素晴らしい。素晴らしい答えだ。まるで我が愚息のツァラトゥストラのようだ。そんな考えを持っている人物などこの時代には一人しかいない)あなたの名前をお聞かせ願おうか?」
「ライヒハート。ロートス・ライヒハート。首切り人だよ。落ちこぼれだけどな。……あんたは?」
「カール・エルンスト・クラフト。唯の占い師だよ」
メルクリウスは『メルクリウス』の記憶にロートス・ライヒハートの顔を覚えていないことから目の前にいる青年をロートスだと気付いていなかった。
メルクリウスが■■■■だった頃にやったことがあるゲームの中で登場するロートスは藤井蓮と顔が瓜二つだが、ゲームに出ている彼の顔と本来のロートスの顔は違っている。藤井蓮の容姿は中性的な美少年で、ロートスは■■■■がいた時代のハリウッド俳優の様な青年だった。
「ロートス・ライヒハートよ。貴方に敬意を表して刹那殿と呼ばせて頂きたい」
「やめてくれ。そんな大層な存在じゃないよ俺は」
「いいや。貴方は私の数少ない友人になったのだ。さあ行こうではないか我が友よ!(獣殿。貴方がいなくなったことで貴方との歌劇が出来なくなり何か物足りなくなったが。代わりに私は新たな友を得ることが出来た。早く貴方と逢えることを楽しみにしているよ。)」
メルクリウスはこの世に存在しないラインハルトのことを考えながら、新しくできたこの世界での友人であるロートスに未知を感じ、未知を感じた喜びで上機嫌になり再び古代遺産継承局に向かって歩き始めた。
突然のメルクリウスの態度の変化に少し呆れていたロートスは溜息をつきながらメルクリウスに着いて行った。