魔法少女リリカルなのは~Amantes Amentes~ 改訂版   作:鏡圭一改め鏡正

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第四話

 時は1944年。第二次世界大戦の状況が激化し、独ソ戦でスターリン率いるソビエト連邦に負けたドイツは次第に不利な状況に陥っていた。

 そんな中、メルクリウスはロートスとメルクリウスが憑依する前の『メルクリウス』が興味を持ち影の魔術を教えた魔女のアンナ・マリーア・シュヴェーゲリンと共に古代遺産継承局で働いていた。

 メルクリウスがロートスと共に古代遺産継承局に働くことになった時、メルクリウスはアンナと再会し、おかしな雰囲気になりつつあったが、ロートスのおかげですぐに雰囲気が良くなった。

 その後、普段ならプロポーション抜群な体で男を誘惑するはずのアンナが顔を赤くして緊張しながらロートスをデートに誘うという未知な行動をしていた。

 お互い両想いで初心な2人の恋路をメルクリウスがおもしろ可笑しく眺めているという誰が見ても穏やかな日々を3人は過ごしていた。

 そんなある日、ロートスが戦争に参加するとメルクリウスに言ったことから穏やかな日々が崩壊を向かえた。

 

 「刹那殿。正直に言うが、貴方は確実に戦死する。この戦争の状況を判断出来ないわけではあるまい。なぜ戦争に参加すると言うのかね?」

 

 ロートスはメルクリウスに理由を聞かれて最初は顔を赤くしたが、次第に真剣な表情になった。

 

 「アンナを守りたいんだよ。それに戦争に出ないで大切な物を失うよりも戦争に出て護るべき者の為に死んだ方がいい。それでもお前は止めるのかカール?」

 

 メルクリウスはロートスの言っていることは理解している。そしてメルクリウスが本気を出せばロートスとアンナを守ることができる。だが、ロートスの決意した目を見た瞬間、メルクリウスはロートスを止めるのを諦めた。その姿が藤井蓮の姿と重なったからだ。

 

 「いいや。私が止めようとしても止まらない。それがあなたの美点であり欠点なのだがね刹那殿。だが、アンナには告白しないのかね? そうでないと貴方は悔いを残すことになる」

 

 「いや。いいんだよ。それに戦争から生きて帰ってから告白した方が俺の柄じゃないけど結構カッコいいだろ?」

 

 ロートスは暫くして恥ずかしくなったのか、顔を赤くしていた。メルクリウスはこの時、ツァラトゥストラと同じ鈍感ではないと思い安心していた。

 

 「分かった。最後に私からの助言だが、その場から逃げてもそれは惨めな敗走ではない。このことを覚えておいてくれ。……ではまた逢えることを楽しみにしているよ刹那殿」

 

 「ああ。またなカール」

 

 ロートスはその翌日、戦争に参加することになった。メルクリウスはロートスが生きて古代遺産継承局に戻ってくるよう願っていた。

 だが半年後、メルクリウスの願いは叶わず、ロートス・ライヒハートが戦死したという軍からの手紙が古代遺産継承局に届いた。

 

 

 

 メルクリウスはロートスが戦死した戦場にいる。理由はロートスの魂を探す為だ。

 数多の魂がさまよっていたが、幸いロートスの魂は存在していた。

 メルクリウスがロートスの魂を時間軸から切り離し保存した次の瞬間、入れ違いで多くの魂が輪廻転生の理によって転生が始まり、消滅した。

 

 「(刹那殿には悪いが我が女神を救う為にツァラトゥストラ……藤井蓮として新生してもらう。これは死者蘇生ではないと刹那殿に理解してもらおうとは思わない。存分に私を恨むといい。だが、あなたには平和と幸せを掴んでもらいたいのだよ刹那殿)」

 

 メルクリウスは『メルクリウス』の頃では絶対に見せなかった悲しげな表情のまま戦場地跡から古代遺産継承局に転移した。

 

 

 

 メルクリウスは古代遺産継承局に戻り職員室に入ると、局長であるアンナはおらず1人しかいない状態で帰ろうとした瞬間、ソファーにアンナがいた。

 ソファーでアンナは泣いており、どうやら刹那殿が死んだことを聞いてショックを受けているらしい。

 

 「刹那殿が死んだことに悲しんでいるのかね? アンナ」

 

 「……メルクリウス。アンタはアイツを……ロートスをどうして止めてくれなかったのよ!?」

 

 アンナはメルクリウスの襟を掴み、まるで正直に話さなければ呪い殺す。恨みを宿した悪魔のように今のアンナの顔は酷かった。

 

 「アイツはバカで、鈍感で! 他の女の誘惑に弱いけど!! 誰よりも優しかったのよアイツは! どうしてアイツが戦場に行くのを止めなかったのよアンタは!?」

 

 「私には彼を止めることなど出来んよ。彼はアンナ……君を守る為に戦場に行ったのだからね」

 

 「えっ?」

 

 アンナは今の一言でメルクリウスの襟を離し、驚きの表情に変わった。

 

 「刹那殿は言っていたよ。帰ってきたらアンナに告白すると」

 

 メルクリウスの一言により、アンナは泣き崩れる。

 メルクリウスはアンナを落ち着かせようとしたその時だった、アンナは突然咳き込みだし手で口を押さえた。

 咳が止まったアンナが口から手を離すと、手には血がついており、さらに、顔を青白くなり血を吐いた瞬間、アンナは倒れた。

 メルクリウスはアンナが倒れた理由を『メルクリウス』の記憶の中から探ると、“魔女は200~300年しか生きられない”とあった。恐らくアンナに寿命が訪れたのだろうと察した。

 

 「どうやら寿命のようだなアンナ。幾ら魔女といえ、体の構成は人間と変わらんよ。残念だが不老不死にはなれんよ」

 

 「ええそうよ。どれだけ魔道を極めても生きていられるのは200~300年が限度よ。……でもロートスが私のことを好きでいてくれたことが聞けて満足だわ。アタシは何時でも死んでもいいって覚悟はもうできてるのよ」

 

 アンナはそう言って苦しげな笑みを浮かべていた。

 

 「メルクリウス。最初はアンタに救われた時はどうすればいいのか分からなかった。アンタに対して劣等感を感じたわ。……でも、ロートスに逢えたことにだけは感謝するわ」

 

 「アンナ。この際だから言うが、私は君を私がシナリオに描いた歌劇の脇役にしようと思ったのだよ。だが、もし刹那殿が生きていれば君と刹那殿を主演とした歌劇を作ろうと考えていたのだがね」

 

 「やっぱり最低ねアンタ。アタシを脇役にするなんて。せめてアタシをヒロインにしなさいよ」

 

 「安心したまえ。自覚はしているよ。(まったく、私の歌劇が狂ってからどうも私は『メルクリウス』とは微妙に変わってしまったらしい。以前の私はこのようなことをする性格ではなかったのだがね)」

 

 「ねぇメルクリウス。アタシが死んだ後ってどうなるの?」

 

 「この世の理は『輪廻転生』。死ねば魂は来世に導かれて転生する。前世の記憶と転生先については誰にも分からんがね」

 

 アンナはメルクリウスの話を聞いて、そう……と苦しそうに呟いた。

 

 「来世ではアイツの……ロートスの刹那の輝きになりたいわ……」

 

 アンナはそう言って目を閉じた。その姿は眠っているように安らかだった。

 メルクリウスはロートスとアンナとの穏やかな日々が崩壊したことで本格的に女神である夜天の書の管制人格を救い出す為の歌劇の準備を始めることにした。

 

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