四号突撃砲の車体が大きく揺れる。
「な…なんだ!?」
ペリスコープから後方を確認すると、三式砲戦車が300メートル程後方に見えた。その砲口からは煙があがっている。
「後方に三式砲戦車だ!信地旋回!!」
車内無線に叫びながら、操縦手である赤麻浅葱の背中を蹴る。
「わかってる!そんな急かすな!!」
浅葱が操縦桿を操作すると、車体が揺れ旋回を始めた……と思ったら急に動かなくなってしまった。
「ん、動かない!?」
「履帯がやられてるぞ!」
四突の履帯は先ほどの三式砲戦車の砲撃で破壊されてしまったみたいだ。
履帯がやられたのでは後方にいる三式砲戦車に攻撃することができない。これは非常にまずい状況だ。
「くっそぉ回る砲塔が欲しい!!」
綾野が悔しそうに叫ぶ。
「四号突撃砲は三号突撃砲と同じようにアンブッシュが得意だが、包囲戦となると弱いからな」
「ここは潔く諦めよう…な?」
紀子が冷静な分析をし、浅葱がさわやかな笑顔で諦めるように言ってきた。
「な?じゃないわぁあああああああああああああああああ!!」
その叫びを最後に私たちの四号突撃砲は三式砲戦車の砲撃をまともに喰らい、煙と白旗を上げ行動不能になった。
「あっちゃー…四突、やられちゃってるねぇ」
四式軽戦車を操縦する私の後ろで、会長が呑気にそんなことを言う。
「あっちゃーじゃありませんよ!こっちもやられそうなんですよ!」
先程から私たちの乗る四式軽戦車はクロムウェルMk.Ⅳに追い回されていた。
四式とクロムウェルでは最大速度の差は23km/hとクロムウェルの方が速いが、こっちは年季が違う。
なんせ私、大河望は小学生のころからこうした戦車を乗り回しているのだ。昨日始めたやつなんかより年季が違う……はずなんだが。
「大河ー、横につかれたよー」
クロムウェルの操縦手…自動車部の香坂彩芽とかいったか。最初こそついてくるのがやっとという感じだったが、たった数分で操縦に完全に慣れたようで、普通に私たちに追いついて並走してくるほどになった。
「くるよぉ……今!」
会長の合図と同時に速度を緩め、クロムウェルの後方に下がる。次の瞬間、クロムウェルの主砲から放たれた75mm砲弾が、風を切り唸りをあげて四式軽戦車の目の前を通過する。
「くっ…それにしても……あの砲手も中々の腕ですね!」
「だねぇ、行進間射撃であそこまで正確に撃てるとは......ねっ!」
会長がこちらも負けじと主砲を放つ。だがクロムウェルはそこそこ装甲が厚いうえに、こいつはスペースドアーマーを装着している。ただでさえ貫通力の低い四式軽戦車の57mm戦車砲では、貫通させることなんぞできるはずがない。装甲に傷をつけるか、へこませるのが関の山だ。
『会長!敵をこちらに誘導することって可能ですか?』
そこで隊長から無線が入る。
「おー、峰山くんらがこの子ら撃破してくれんの?」
どうやら私たちが敵を隊長…峰山の前まで誘導して撃破する作戦らしい。たしかにクロムウェルの装甲も側面なら75mmで貫通できるだろう。多分。
『はい!』
「おっけー!まっかせな………って……あー、ごめん無理っぽい」
次の瞬間、私達が乗る四式軽戦車は真横からの砲撃で吹っ飛んだ。
『よし、計画道理ね』
クロムウェルの車長、渋谷先輩から無線が飛ぶ。
「はい!次は五式中戦車でありますね!」
『ええ、私達が敵を引き付けるから、よろしくね』
「了解であります!」
私達三式砲戦車はクロムウェルと別れ、横転して白旗をあげた四式軽戦車を横目に、狙撃地点へと向かう。五式中戦車…隊長たちが丘の上にいるということは既に把握済みだ。
「よぉし!いざ203高地へ!」
「でも相手はロシアじゃなくて日本戦車ですよ?」
同級の砲手がそう言ってくる。
「じゃあなんでありますか?」
「んー、わからん!考えてもしょうがない!」
同じく同級の装填手が言った。
「そうでありますね!なんでもいいであります!」
「「車長!友軍が戦闘に入りました!」」
操縦手と通信士が同時に報告をする。この二人は幼い頃から一緒だったようで、非常に仲がよく息もぴったりで、よく同時に同じことを言う。
私がその報告を聞いて車長ハッチから身を乗り出し状況を確認した時には、既にクロムウェルは黒煙を吹いて白旗を上げていた。
「くっそぉ!やられたぁ!!」
操縦手の香坂彩芽(こうさかあやめ)が頭を抱えて叫ぶと、行動不能になったクロムウェルの車内に声が響く。
「まっさかこっちがドリフトをかますことを読んでたとは…」
香坂と同じく自動車部の通信士の八代萩乃(やしろはぎの)が項垂れる。
「やっぱ経験の差かねぇ…?」
私と同じく射撃部である柊朱里(ひいらぎあかり)が言う。
「ま…あとは三式砲戦車に期待ね…って、あの娘ら突っ込んでない?」
見ると三式砲戦車が五式中戦車のいる丘に全速力で突っ込んでいくのが見えた。なんか無線から「ばんざぁぁぁぁああああああああああい!!」とか「お国のためにぃ!」とか「仇はとるぞぉおお!!」って聞こえる。正直怖い。
そして呆気無く75mm砲の餌食になった。
練習試合終了後、私たちが練習試合で唯一生き残った五式中戦車で回収車両を先導しながら演習場から学校のグラウンドへと戻ると、そこには大勢の生徒と大きなモニターがあった。戦車道の試合で使うようなやつより一回り小さいやつだ。
そのモニターには先程まで私たちが練習試合をおこなっていた演習場が写し出されており、公式戦で見るような画面構成だった。私たちの練習試合を観戦していたのだろうか...?
そう考えていると、こちらに気がついた大勢の生徒が、拍手で私たちを迎えてくる。これには流石に怯んだ。
「な、なにこれ....皐、わかる?」
「聞かれてもわかんないよ...いったいなにこれ...」
聞いてみたが、情報通の皐も知らないらしい。
「すごいな、高校の生徒全員はいそうだな」
「おおいですねぇ」
京さんと昌子さんがそんな感想を言う。もしかして二人はこういうの慣れてるのか?
「あれ、学園長じゃない?」
栄さんが指を指す。その方向を見てみるとそこには一人の背の高い壮年と思われる男性が立っていた。
後ろに流したオールバック風の頭は金髪で目が青く、顔は堀が深くて鼻も高い。いかにも英国出身デースといったような感じだった。この男性が白山学園の学園長だ。
すると学園長がこちらに歩み寄ってきて「キミが新しい隊長さんデスカ?」と私に問い掛けてきた。私が「はい」と答えるといきなり学園長が、
「excellent!」
と言って、いきなり抱きついてきた。
「えっ?うえぇぇぇえええええええええ!?」
思わず変な叫びかたをしてしまった。やっばい学園長結構イケメンじゃ!?ていうか変な噂たちそうなんでやめてください!!
「おっと、sorry」
私の心中を察したのか、離してそう詫びてきた。
「つい興奮してしまいましてね、素晴らしい試合だったもので」
「そんな、素晴らしいだなんて...」
あれは練習試合だったし、私自身上手い指示が出せなかった。やはり一年もやっていないと勘が鈍る。
「そんなことありません、とてもよかったデスヨ。これなら今度の大会も大丈夫そうデスネ」
学園長はそう誉めてくれ...え?大会??
「あの、大会って...?」
そんな話は聞いてない。ふりかえると、皆も知らないって顔を......会長と副会長が忘れてたという顔をしていた。
「まだしてないンデスカ?おーい、会長サン?」
そう学園長が呼ぶと、会長がすっ飛んできた。
「すまない皆、すっかり言うのを忘れてたが......私たちは来月に行われる戦車道の大会に出場することになってる」 いきなり会長がそんなことを言い出した。
「えっと、大会ってまだこのチームには早いのでは?」
「そうですよー、皆まだ始めたばかりですよ?」
皆口々にそんなこと言う。私も同意件だ、このチームじゃ大会どころか他校との練習試合でも負けそうだ。
「まーまー、これはもう決まっちゃったことだからさ!それにちまちま練習するより先輩方の胸を借りるつもりでいこう!じゃー解散!!」
会長がそう強引に締めくくった。
そんなこんなで私たちは、いきなり戦車道の大会に出場することになってしまった。
新キャラが一気に出てきました。
大変ごちゃごちゃしておりますが、そこは何卒よしなにに......
ご感想、ご指摘がありましたらよろしくお願いいたします。
ご指摘をうけ、大幅な変更を行いました。
乗員全ての名前をだすのは五式中戦車と四式軽戦車、クロムウェル、四号突撃砲に絞ることにしました。