高校生戦車道公式大会、日英杯
この大会の開催目的は、イギリスとの交流。戦車道を通じて海外との交流を深めるというのが目的で、イギリスからも戦車道チームがやってくる。
計十六チームが参加し、準決勝以降はイギリスで行われる。
参加チームは、英国側はチームは招待されたチームで日本側のチームも招待されたチームである。そして私たちの学園も毎年招待されているらしいのだが......
「今年こそはやられ役の汚名を返上するぞ!」
そう、大河副会長が戦車道チーム専用の教室の中心で叫んだ。先日の練習試合のお陰で私たちは学園長に大変気に入られたらしく、こうして私たち専用の部屋が与えられていた。
「あのー、やられ役ってどういうことですか...?」
一年生の内田さんが、手を挙げてそう質問する。
「よくぞ聞いてくれた、今から説明しよう」
そう言って、副会長が全員の前に出た。
「いいか?私たちの戦車道チームはこの一年、お前たちが来るまでたったの六人だった」
「そして去年やってた先輩も、たったの四人だったんだよねー」
そう市川会長が捕捉する。先輩世代も少なかったのか。
「そして戦車の所有台数は三両、毎年出場している日英杯では毎回初戦負け....峰山、どういうことかわかるな?」
副会長がいきなり私に会話を振ってきた。
「えっと、つまりたった三両...五式中戦車と四式軽戦車、四号突撃砲で三倍以上の相手に挑まされたあげく、毎回ぼろ負してきた...ということですか?」
私が冷静に分析すると副会長は、そうだ!といった感じでグットのハンドサインをしてきた。なんだかよくわかんない人だな......
「つまりだ、私たちは負けすぎたせいで、世間からやられ役のレッテルを張られているというわけだ。それで、今回の大会ではなんとしても勝ち、その汚名を返上したいのだ。そのためには厳しい特訓を...」
「まぁ勝つためにはまず仲間意識を高めないといけないからねー」
副会長が熱弁を始めようとしたところに会長がわってはいった。副会長はちょっとしょぼーんってなった。かわいい。
「それはもう十分あると…」
「識別名でも決めよっか!」
無視だ。
そう会長が私のほうを見て言ってきた。これは私に名付けろということだろうか......
「峰山くん考えてー」
やっぱりかー...やっぱり私に押し付けちゃうかー...
「えっと、私ネーミングセンスないですし....」
「いいじゃーん、別にかっこよくなくてもいいからさぁああー?」
会長は簡単には諦めてくれないようだ。
「無理ですって!」
「いいじゃーん、やってよぉお」
私が何度無理だと言っても聞いてくれない。そして、そのやりとりを五分ほど繰り返して、私がそろそろ泣き出しそうになったところに助け船が入った。
「ならば私たちが付けよう」
そう言って手を挙げたのはビショップチームだった。彼女たちは多少痛い娘の集まりだが...砲撃時に「鉄槌」とか「神の裁き」とか言ってるが、痛い娘なりにネーミングセンスはいいだろう。多分、きっと、恐らく...
「まぁ、私達の知っている英単語で付けさせてもらう」
お、これはちょっと嫌な予感が……まさかデバステーターとかターミネーターとか言わないよねぇ!?
「では...まず隊長車から順につけていこう...」
そうして、氷上さんがたちが識別名を考えはじめた
三分後
全車両の識別名が決まった。
まずは隊長車の五式中戦車が「コマンディング・オフィサー」、英語で隊長を意味する。
四式軽戦車は「スカウト」、斥候を意味する。
クロムウェルは「キャバルリ」、騎兵を意味する。
四号突撃砲は「イエガー」、猟兵の意味。
特三式内火艇は「セーラー」、これは水兵。
三式砲戦車は「スナイパー」、狙撃兵。
ビショップ自走砲は「アーティラリ」、砲兵。
T-29中戦車は「アサルト」、強襲の意味だ。
これは結構いいかもしれない。隊長車はそのままだが、四式軽戦車は確かに斥候的な役割をチームで担っているし、クロムウェルは偵察にも主力にも使える。四号突撃砲は待ち伏せが得意なところが狩人らしい。
特三式内火艇は水上を移動できるし、元は海軍の戦車で的を射ている。
三式砲戦車は用途は四号突撃砲と同じなため、似たような単語にしたらしいが、これも三式砲戦車らしい。
ビショップ自走砲はもろだ、主砲が砲兵部隊が使っていたものだからだ。
T-29は少し微妙だが、この中では一番の脚の速さを誇っているし、主砲も短砲身ながら76.5mmと強力なものだ。クロムウェルや四式軽戦車と組ませて強襲などもできるだろう。
「うん、けっこういいかんじじゃーん」
市川会長がそう誉める。
「じゃああとは...そういや峰山くんから話があったんだよね?」
「あ、はい」
「じゃあ、よろしくー」
そう言って会長が私に教室備え付けのモニターの前に出るようにすすめたので、モニターの前にたつ。つくづく思うけど、こんなにお金があるのになんで今まで戦車道の試合が勝てなかったんだろう。
それは置いといて、本題に入ることにする。
「先日行われた練習試合の内容ですが、四号突撃砲は三式砲戦車に後方からの砲撃で撃破されましたよね?」
「あ、あぁ…そうだな」
伊吹さんが頷いて肯定する。
「このチームは突撃砲や自走砲が多いです。今回は砲塔が無いという弱点を突かれ撃破されたのは四突だけでしたが、今後の試合で他の自走砲や突撃砲も後方を狙われる可能性があります」
突撃砲や自走砲は近距離での戦闘には向かない。ましてや包囲戦になると尚更だ。
突撃砲は装甲がそこそこ厚い傾斜装甲だが、ビショップは垂直装甲で装甲は厚いものの頼りない。しかも他と比べるとビショップの動きは遅いので機動戦には向かない。
「これらのことから基本戦術は開始地点から素早く移動し、素早く陣地を構築してからの防御戦がメインとなりますが…」
「それを敵が予測していた場合、また包囲される可能性がある…と?」
大河先輩の予測に、私は頷く。
「はい、そうなった場合は敵中を突破することになりますが、突破した場合後方からの追撃が脅威となります。それに毎回防御戦だと攻略法を練られるかもしれません」
戦車は後部装甲は薄いため、後方からの砲撃は脅威だ。
「そこで、対追撃として皆さんにはあの技を習得してもらおうかと」
「あの技?」
全員が同じような疑問を口にした。
「はい、特に自走砲や突撃砲の方々にです。これに関しては特別講師をお呼びしてるらしいのですが…」
「どーしたの?」
「いや、実は誰が来るかは知らなくて…会長が呼んだみたいだからさ」
皐の質問にそう答える。
「まー、そのことに関してはお楽しみってことで、ね!」
「では会長、格納庫の方に行きましょうか」
「そうだねー。じゃみんないこっかー!」
会長の仕切りで、私達は格納庫に向かった。
私達が格納庫に着くと、見慣れない格好をした三人がテーブルを囲んで雑談をしながらピザを食べていた。大きなツインテールの女性とボーイッシュな感じの女性、そして金髪の大人しそうな女性だ。
そのうちの一人……大きなツインテールの女性が私たちに気がついて立ち上がる。あれウィッグかな?
「やっときたか、客人をあんまり待たせるものじゃないぞ」
「いやーごめんごめん、あとでうなぎゼリーとうなぎパスタ用意するからさー」
会長が前に出て手を振りながらそんなことをいった。
「う…うなぎゼリーはちょっと…ってパスタ!?」
「やりましたねドゥーチェ!」
大きなツインテールの女性とボーイッシュな女性が興奮気味に話す。パスタ好きなんだなぁ。ていうかこの三人、見覚えがあるような…。
「なぁ志津、あの人達って…」
京さんが耳打ちをしてくる。
「ええ、恐らく……」
すると会長が大きなツインテールの女性にむかって。
「じゃあ自己紹介よろしくー!」
といった。するとその女性はわかったと言うようにうなずき、こちらを向いて声高々に名乗った。
「私がアンツィオ校の戦車道チーム隊長、ドゥーチェアンチョビだ!」
ピッツァです!