現在の速度は凡そ30km/h、敵の偵察小隊を突破し五式中戦車、フラッグであるクロムウェル、四号突撃砲三両の縦隊形の横に三式砲戦車が合流する。この時点で敵小隊との距離は100m、当てるには十分だ。
「キャバルリ、部隊前方に出て蛇行しろ。スナイパー、イエガーは10m間隔でコマンディングオフィサーを中心に楔隊形をとれ...栄、砲搭を後方へ旋回」
『『『『了解!』』』』
私が指示すると各車が動き配置に着き、五式中戦車も砲搭が後ろに向く。
「各車徹甲弾装填」
皐が75mm砲弾を装填トレーに置き、装置を作動させる。装置が動作し、主砲弾を装填した。
敵の様子を見ると、敵は転輪がやられた車両以外の三両は車体を此方へ向けようとしている途中で、転輪がやられた車両は砲搭を此方に旋回させている。逃走する此方の背後を狙い撃つつもりだろう....
「だが、そうはいかんよ.....スナイパー、イエガー!準備はいいか?」
『いつでもいけるであります!』
『準備万端!』
呼び掛けた車両からそれぞれの答えが返ってくる。
「よし...敵の奴等に目にもの魅せてやれ!」
そこで一旦言葉を切り、息を吸い込んだ。そして無線に叫ぶ。
「revolve!!」
その合図と共に三式砲戦車と四号突撃砲が片側の履帯を固定させる。物凄い勢いで二両の履帯が地面を抉り、車体の向きを強引に変える。信地旋回の応用(?)だ。
アンツィオ高校の秘技であり大洗の三突の秘技でもあるCV33ターン...別名ナポリターン。試合前日にパスタとアレで強引に教えてもらったものだ。
まぁ向こうも「これならP40を修理してもおつりがくるぞー!」と大喜びしていたから大丈夫だろう...
M4達の砲搭は此方を指向中...奴等に一発かませるチャンスだ。
「撃ち方始めぇ!」
五式中戦車の53口径75mm戦車砲、三式砲戦車の38.4口径75mm戦車砲、四号突撃砲の75mm Stuk 40 L/48がそれぞれ一斉に火を吹く。轟音、そして空気を切り裂き徹甲弾が敵に向かって飛翔する。
一瞬後、三発の砲弾の内一発が転輪が故障したM4の背面に命中、行動不能にする。残りに二発は見当違いの所に着弾する。
「よし、イエガーとスナイパーは車体の向きを戻せ。全速力でずらかるぞ!」
四号突撃砲と三式砲戦車が先ほどと同じ動きをして車体の向きを戻す。それと同時にエンジンをフル回転させ速度を上げる。敵が反撃に砲を撃ってきたが全て後方に落ちるか横を通り抜けていった。
「このまま前進し、敵フラッグの捜索を....なっ!?」
通信機に向かって次の作戦の行動を指示していると、突然三式砲戦車の車体後面が炎上し、固定戦闘室上面から白旗が飛び出す。
「スナイパー、怪我人は!」
すかさず安全確認を行う。
『全員無事であります!それと隊長殿、チャーフィーに注意を...』
そこまでいいかけた瞬間、五式中戦車の側面を砲弾が掠めた。
風圧で髪が舞い上がる。それと同時に口角がつり上がる、また悪い癖だ。
チャーフィーはそのまま速度を上げて五式を追い抜こうとする。
「栄、チャーフィーの動きを砲搭を旋回させてゆっくり追いかけろ。京、副砲を何時でも撃てる状態にしろ。」
「おっけー、でも当てるのはちょっと難しいかなー、近すぎてー」
「了解、こいつで仕留めるんだな?」
栄が砲搭を旋回させ、京が副砲に砲弾を装填する。
砲塔を後方に向けると、チャーフィーは逃れるように動き、側面に着く。栄は砲塔はすぐさま向きを変え、撃つ。しかし向こうはかなりの手練れのようで、それをかわして五式中戦車の前に出た。
「かかったな!撃て!」
その瞬間、37mm副砲が火を吹く。砲口から飛び出した砲弾は、そのままチャーフィーの後面を貫く。
『三次学園、M24チャーフィー、走行不能!』
「よしっ....このまま逃げ切るぞ....なっ!?」
突然目の前の森から四式軽戦車が現れた。そしてそのまま私の五式中戦車に衝突し、行動不能になった。
「か、会長!大丈夫ですか!?」
『だ、大丈夫だよー...それよりこっから先は行かないほうがいいかも...』
会長に何故か聞こうとした、が、その理由はすぐにわかった。目の前からシャーマンが四両...いや五両此方に迫ってきていた。
「くっ...イエガー!キャバルリの後方を守れ!私達は前方を....ぐっ!?」
そこまでいいかけた瞬間に目の前のシャーマンが発砲、砲弾が五式に突き刺さる。狙いの甘い弾は弾いたが、五式の装甲は薄い。そう時間もたたずにすぐ白旗が飛び出した。
クロムウェルの後方を守っていた四突も白旗が上がる。クロムウェルはその場から逃げ出そうとするが、逃げ道を塞がれてしまって身動きが取れないでいた。
ああ...終わった、負けた....そう思った瞬間、試合終了の合図が鳴り響いた。
『三次学園フラッグ車、走行不能!白山学園の勝利!』
「ホワァアアアアアアアイ!?」
三次学園の隊長らしき人物が絶叫した。他のメンバーもなんでだ?という顔をしている。私達のチームメンバーもだ。そのなかで私は一人
「間に合ったか...」
と呟いた。
試合会場の東側。
そこに位置する河を内田纏が車長を務めるの特三式内火艇ことセーラーは航行していた。何故河なのかというと河の両側は丘になっており、遠くからでは見えないからである。
河を航行して二時間ほどたっただろうか、味方が撃破されたという報告がどんどん入ってくる。
「内田ちゃん...そろそろ不味いんじゃないかなー...」
通信手がそう言う。
「そうだね....そろそろ河を出て稜線越えるよ」
セーラーは河岸にあがり坂を登り始める。
「近くにフラッグ車がいればいいけど....」
セーラーが丘の頂点に差し掛かった、丘の頂点に達し、そのまま平野に出て走り始める....そのはずが、ガンッと何かにぶつかったような音がした。そして、バキンッと、それが折れるような音がした。
何事かと思いキューポラから顔を出すと、三式内火艇が乗り掛かったせいで主砲が折れてしまった三次学園のフラッグ車のM3軽戦車が白旗をあげていた。
かくして私達は日英杯第一回戦を突破したのである。
うわあああああああ雑だぁあああああああ!
という訳で二ヶ月振りの更新です。
新しいネタは思い付くのに試合を終わらせられない、無理やり終わらせてる....ってなってしまった今回です。
ご容赦くださいまし。