スバル初めてのおつかい   作:猫山知紀

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その11(スバル、ユーノ、少しアルフ)

「さて、じゃあ私はログを漁ってくるから、スバルはどうする? 私を手伝うかい? それともユーノと一緒に本を探すかい?」

 

無限書庫に着くなり、アルフはそう切り出した。

 

「大変なのはどっち?」

「そりゃ、本を探すほうだけど」

「じゃ、ユーノさんの方で」

 

本を探す『ぐらい』なら自分でもきっと力になれる。

手伝うならより大変な方を少しでも楽にしたいと思ったスバルはそう答えた。

 

「えっと、ユーノもそれでいいかい?」

「僕は別に構わないよ」

 

アルフは少し考える仕草を見せると耳を少し垂れさせながら、ユーノに確認をとったがユーノは当たり前のように肯定する。

 

「はぁ、スバル。 手伝うのは良いけどなるべく邪魔にならないようにね」

「え? うん」

 

スバルのやる気に水を差すわけにもいかず。

それがアルフができる最大限の忠告だった―――

 

分担が決まるとアルフは入り口から上へ、ユーノたちは下へと向かった。

無重力空間である無限書庫内ではウイングロードを使っても自由には動けないので、スバルはユーノに手を引いてもらっている。

ともすれば心の機微があっても良いようなシチュエーションではあるが、二人ともこういったことに全く抵抗がないのか表情は全く変わらなかった。

 

「―――大体この辺かな」

 

そう言うとユーノは下降のスピードを緩めた。

上を見上げると無限書庫の入り口付近にいた司書達が、とても小さく見えた。

数百mは降りてきただろうか、それでも無限書庫の底は見えない。

 

「じゃあ、始めようか。 ナカジマさんは検索とか、読書魔法を使ったことは?」

「えっと、ないです」

「そう、デバイスは持ってる?」

「はい、これです」

 

ユーノからデバイスの有無を聞かれるとスバルは首からかけていたマッハキャリバーをユーノに見せた。

 

「この子は外部から魔法を登録することはできる?」

「えっと……」

『I can do it.』

 

スバルはそこまで把握していなかったのか答えあぐねたが、マッハキャリバーが代わりに返答した。

 

「じゃあちょっと触らせてね、検索と読書の魔法を登録するから」

 

そういってユーノはマッハキャリバーを手のひらに載せると、緑の魔力光を放ち始めた。

 

『I learned. Registration was completed.』

 

数秒の後マッハキャリバーが応答する。

 

「これでマッハキャリバーから呼び出せると思うから、使ってみてね」

 

読書魔法とは文字通り、読書を行うための魔法である。

通常の本に記載されている文字を見て、解釈するというプロセスを省略し、脳に直接情報を送ることにより本を読むスピードを速めることができる

いわゆる速読に近いことを魔法による補助をもって行っている。

また、検索魔法は探したい単語を本の中から見つけるための魔法である。

コンピュータにおける検索をアナログな本に対して行うようなイメージである。

 

ユーノはマッハキャリバーに登録した2つの魔法について使い方を簡単に説明をすると、本日行う作業のことに話を移した。

 

「それじゃあ実際にやることを説明するね」

「はい、お願いします!!」

「今日やることは技術文書の検索です」

「さっき食堂で言ってたやつですね」

「そう、スカリエッティがガジェットを作成する際に使用した技術を特定するための文書を探す感じかな」

「でも、私そういう科学的なことはあんまり詳しくないんですけど……」

「大丈夫だよ。 年代とキーワードは、たぶんマリーさんがやってくれたんだと思うけど……かなり数を絞ってくれてるからそんなに難しくはないと思うよ」

「マリーさんって技術部のですか?」

 

聞き覚えのある名前にスバルは反応した。

マリーさんといえば戦闘機人としてのスバルの定期健診を行ってくれている人だ。

 

「そうだけど? スバルも知ってるの?」

「はい、昔からお世話になってます」

「そうなんだ、僕もだよ。 僕というよりなのはとレイジングハートがだけど」

「なのはさんとレイジングハートが?」

「うん、レイジングハートとバルディッシュにカートリッジシステムを入れてくれたのがマリーさんなんだよ」

「そういえば、闇の書事件のときにカートリッジシステムを導入したって」

 

スバルは先日シグナムやシャーリーに説明してもらったことを思い出した。

あの時見せてもらった映像にはヴィータとなのは、シグナムとフェイトが本気で戦う場面が記録されていた。

AAAランク以上の魔導師が全力で戦うのをスバルはあの時初めて目にした。

今の自分ではとても介入できない戦い、しかもその戦いの中心にいたのはわずか9歳の女の子である。

 

「そう、カートリッジシステムを使うことで魔力量を底上げできるんだけど、自分の限界を超える魔力だからやっぱり扱うのは難しいし、それであんなことになっちゃったから、僕としてはあんまり無理してほしくないんだけどね」

 

なのはが墜ちたときのことを思い出したのか、ユーノは少し悲しい目をした。

ユーノはなのはのことを信頼しているが、あの日以来心配は尽きない。

でも、ユーノにはなのはが空を飛ぶことをとめられないのだ。

ユーノ自身も空を飛ぶなのはを見るのが好きだから。

 

「大丈夫ですよ。 なのはさんに何かあったら、今度は私が助けますから。 なのはさんが無理しないで済むように、私が支えられるようになりますから」

 

『今はまだ』なのはと同じぐらいの実力者と戦うことになったら足止めにもならないだろう。

それでも六課での訓練で、確実に自分は成長しているという実感がスバルにはあった。

何か月後かはわからない、何年後かもしれない。

いつかはなのはの足手まといにならないように、いつかは敵の足止めがはできるように、そしていつかは肩を並べて戦えるように――

それがスバルが目指す自分の姿である。

 

「なのははきっと無茶するのをやめられないから、たぶん無理しちゃうから。 でも、ナカジマさんがそういってくれるなら少し安心できるかな」

「はい!! もっともっと強くなって絶対になのはさんを助けてみせます。 だからユーノさんは安心していてください」

「うん、ありがとう」

 

『ありがとう』そういったのは確かにユーノだったのに、スバルには何故かなのはからお礼を言われたように感じられた。

 

 

「ちょっと、話がそれちゃったね。 それで、文書の検索なんだけど探索ワードはこれね」

 

そういってユーノがスバルに紙を見せる。

どうやらスバルが持ってきた書類の一部のようだ。

スバルが見たことのない技術用語が羅列されている。

意味は分からなくとも、ここに書かれている単語が書かれている本を探せばいいとユーノは説明を加えた。

 

「で、本を探す場所なんだけど、マリーさんが結構絞ってくれたから、年代的に今僕達がいる場所から上に2mぐらいの範囲だね」

「上に2mですか?」

「そう、いま僕達がいる場所から上に2mの範囲でぐるりと一周。この範囲が大体の探索範囲だね」

「ぐるりと一周……」

 

そういわれ、スバルは自分の回りをぐるりと一周見てみるが、どう見ても数万冊はあるように見えた。

 

「えっと、これ今日中に終わるんですか?」

「終わるよ?」

 

ユーノはこともなげにそう答えた。

 

「えっと、じゃあ二人ともここからスタートして、僕は時計回り、ナカジマさんは半時計回りね」

 

そういってユーノは無限書庫の壁(本棚)を指差した。

同じ地点からスタートし、二人が再び出会った場所がゴールとなる。

 

「そこから順番に本を読んでいって、探索ワードに引っかかったものをどんどん拾っていってね。 目次だけ見て明らかに関係ないものとかはどんどん次にいっちゃっていいから」

「は、はい」

「じゃあ、僕も始めるから、何かあったら声を掛けてね」

 

そういうとユーノはスバルから少し距離をとり、魔法陣を展開し始めた。

ユーノの魔力光は柔らかい緑色をしていて、ユーノの人となりがよく表れていた。

スバルはの光景に思わず見とれそうになるが、すぐに自分のなすべきことを思い出す。

 

「えっと、とにかく本を読んでいって、探索ワードが見つかったものをとっておけば良いんだよね」

 

マッハキャリバーに確認するようにスバルが先ほどユーノが言った言葉を復唱する。

 

「さっき教えてもらった読書魔法と検索魔法を一緒に使う感じなのかな?」

『I think so.』

「じゃ、とりあえずまずは1冊やってみるね」

 

そういってスバルも資料の探索を始めるのだった。

 

 

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