「うー、この魔法使うのちょっと難しいかもー」
作業開始から10分ほどが経った。
この間処理できた本は10冊と少し、ひょっとして魔法を使わずに自分で読んだ方が速いんじゃないかと思うぐらいである。
「私の使い方が下手なのかな? なんか頭の中に本の内容が直接入ってくるのが慣れないよ」
独り言なのか、マッハキャリバーに語り掛けているのか、愚痴がこぼれる。
それでも、魔法を使わないよりは数倍の効率にはなっているはずなのだが、数万冊というゴールの前に自分の進捗は10分で約10冊。
作業に慣れれば、もっとスピードは上がるだろうが、このままでは不眠不休で20日ほどかかってしまう。
「ユーノさん今日中に終わるって言ってたけど、どうやったら終わるの~?」
先ほどのユーノの発言を思い出し、絶対あり得ないとスバルは思った。
そしてユーノの方ははどれぐらい進んでいるのか―――
「嘘……」
嘘でなければ、その光景は何かの冗談だった。
ユーノは魔法陣を展開しながらその中央で座禅を組み、周りでは本がばらばらとページを捲られながら舞っていた。
その数20は下らない。
ユーノの周りを巡るほとんどの本は元の本棚へ戻っていくが、希に本棚には戻らず一箇所にまとめられていく本があった。
おそらくそれが検索に引っかかった本なのだろう。
スバルがボーっと見ている間にもユーノの作業はものすごい速さで進んでいく。
そのスピードはスバルの比ではなく、スバルはさっきアルフが気まずそうに『邪魔にならないように』といった意味を理解した。
確かにこの速さなら、数時間もあれば探索作業が終了しそうだ。
その中でスバルの実施した分はどれほどになるだろう。
きっと作業を一番速く進める方法はスバルが手伝うことではなく、ユーノの邪魔をしないことなのだ。
「ナカジマさん、どうかした?」
スバルが見とれていると、ユーノの周りの本がその動きを止めた。
作業をしながらでも周りの状況を確認できているのか、スバルが自分の方をずっと見ていることに気がついたようだ。
「あの、えっと、なんでもないんです。 ただ、すごいなって見とれちゃって……」
「すごい?」
『何が?』とでも言いたげにユーノが首をかしげた。
「あの、ユーノさんの魔法の使い方がすごくて、ものすごい速さで作業やっていくので、私アルフを手伝ってきたほうがよかったのかなって……」
ユーノとの速さの違いを見せ付けられ、スバルは自分が邪魔になるだけなんじゃないかと思い始めていた。
「アルフの作業を手伝いにいきたいの?」
「いえ、そうじゃなくって、私作業遅いし、邪魔になってないですか?」
微妙にずれたユーノの返答に対して、スバルは自分がここにいたら邪魔ではないのかと、はっきりとユーノに問いかけた。
「ナカジマさんの作業が遅いのなんて当たり前じゃない?」
「うぐっ」
ばっさりと切り捨てられスバルがダメージを受ける。
「でも、ナカジマさんは六課のフォワードになれるぐらい強いんだよね。 それは初めから強かったの?」
「いえ、訓練校でいっぱい訓練して、今でもなのはさんやヴィータ副隊長に鍛えてもらってます」
「そうだよね、ここでの作業も一緒だよ。 僕はナカジマさんがそうやって訓練している間にここで探索の訓練をしていた。 だからここでの探索はナカジマさんより僕の方が速い。 でもナカジマさんは戦いにおいては僕より強い。 ほら、当たり前のことでしょ?」
それを聞いてスバルは自分が強くなるためにかなりの時間をかけていることに思い当たった。
そしてそれはここでの探索も同じなのだ。
作業する前、手伝うと申し出たときに、本探し『ぐらい』なら自分でも協力できると思い上がったことが恥ずかしかった。
「それとも、探索の仕事なんてきっと楽勝だとか思ってた?」
「……ごめんなさい、少し思いました。」
図星を言われ、スバルは正直に謝罪を口にした。
「あはは、正直だねナカジマさんは。 そんなわけだから今日は自分の作業の進みとかは気にしないで、無限書庫の一日体験とでも思ってくれれば良いよ。 協力を申し出てくれたナカジマさんの気持ちはありがたいし、それに検索魔法や読書魔法に慣れておくと、六課での書類仕事も少しは楽になるかもよ?」
「はい、スバル・ナカジマ、微力ながらがんばって作業させていただきます」
「うん、じゃあ、作業を再開しようか」
「はい!!」
先ほどまでしぼんでいたスバルのやる気は、この短い会話ですっかりと回復していた。