スバル初めてのおつかい   作:猫山知紀

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その13(スバル、ユーノ、アルフ、クロノ)

 

「終わったーーー!!!」

 

作業開始から約4時間。

スバルの声が無限書庫に響き渡った。

 

「おつかれさま」

「おつかれー、スバル」

「ユーノさんと、アルフもお疲れ様でした」

 

作業を完了したスバルにユーノとアルフから労いの言葉がかかる。

最初は書庫内の検索ログを調査していたアルフだったが、早めに作業が終わったため途中からスバルたちの作業に合流していた。

 

「すっかり遅くなっちゃったね。 ナカジマさん夕食はどうする? よかったら作業を手伝ってくれたお礼に奢るよ?」

「えっ! 悪いですよ。 私ほとんど役に立ってなかったですし、それに協力だって私が勝手に言い出したことで」

「でも無限書庫の手伝いをしてくれたことには変わりないし、まぁ奢るといっても本局の食堂なんだけどね」

「でも、私すっごいたくさん食べますよ?」

「そうなの?」

「スバルの食事の量はすっごいぞー、エリオよりも食べるくらいだ」

 

アルフは以前スバルたちが海鳴に来た時のことを思い出した。

あの時はアリサのコテージの近くでバーベキューのようなことをやったのだが、そのときもエリオとスバルはとんでもない量の食事を食べていた。

 

「エリオより? それはすごいね。 でも、それくらいなら大丈夫だよ」

「ユーノさん、エリオのこと知ってるんですか?」

「うん、フェイトが保護責任者だからね。 写真をいっぱい見せてもらったし、何回か会ったこともあるよ。 そのときに食事をしてね、あの小さい体のどこに入るのかってびっくりしたよ」

「あはは、あれは確かにびっくりするかもですね。」

「うん、だからナカジマさんがあれぐらい食べても驚かないから、遠慮しないでね」

「わかりました。 じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」

「アルフも一緒に行くでしょ?」

「うん行く、私は肉が食いたい」

「いつものでしょ。 心配しなくてもアルフの分も奢るよ」

「ありがとう、ユーノ」

 

作業を終えた3人は無限書庫を後にして食堂へと向かった。

昼間ユーノが寝ていたあの食堂である。

大多数の人はすでに帰宅しているがこれから夜勤へと向かう人、長時間労働の休憩がてら夕食をとる人のために、食堂は夕食時間帯にも食事を提供している。

3人は適当な席を確保しそれぞれ普通の定食、普通の骨付き肉、普通の山盛りメニューを注文した。

 

「そういえば、ちょっと聞きたかったんですけど」

「うん? 何かな?」

 

食事中スバルが何か思い出したのかそう切り出した。

 

「『フェレットもどき』って何のことですか?」

 

その瞬間ユーノの時間は止まり、横ではアルフが『あちゃー』という顔をした。

 

「えっと、それは誰が言ってたのかな?」

 

努めて冷静に、ユーノがスバルに問い返す。

 

「クロノ提督です。 えっと、私がユーノさんの名前を出したら、『フェレットもどき』かって……、あの私何か失礼なことを?」

「あぁ、いやナカジマさんは気にしないでもいいよ。 そうか、クロノが……へぇ……」

 

気にしないでいいよ、と言ってはいるが明らかに顔が引きつっている。

常に穏やかな表情だったユーノがスバルに初めて見せる顔だった。

 

「ハラオウン提督は、他に何か変なこと言ってなかったかな?」

「え? えっと、あの、その……あ、そういえば、『なのはさんの使い魔』って話も……」

「へぇ、『なのはの使い魔』かぁ、本当どういう意味なんだろうねぇ……ちょっと待ってね、本人に聞いてみるから」

 

おどろおどろしい口調でそう言うと、ユーノは通信回線を開いた。

通信先は件のクロノである。

 

『ユーノか、一般回線で珍しいな。 何か用か?』

「こんばんは、クロノ・ハラオウン提督」

『ん? なんだ、その薄気味悪い笑顔は、っとそういえば昼間お前を探している女の子に会ったんだが……、あぁちゃんと合流できたのか、よかった』

 

画面の後ろにスバルの姿を見つけたクロノは胸を撫で下ろした。

 

『ナカジマさん、昼間はすまなかったね。 途中でいなくなってしまって、アルフがあの後の案内を引き継いだって言うのはエイミィから聞いたんだが……』

「いえ、私の方こそ、いろいろとすみませんでした」

『なに、気にしないでいいよ』

「―――挨拶中に済まないんだけどねぇ、クロノ。 さっきナカジマさんから変な話を聞いたんだよ」

 

スバルとクロノが話していたとこにユーノがゆらりと割り込む。

その顔には先ほどから青筋が浮かんだままだ。

 

『変な話? 何のことだ』

「―――『フェレットもどき』って何のことなのかなぁ?」

『あっ!! いや、その』

「僕には、何のことかよくわからなかったんだけど、君は知ってる?」

『は、はは、僕にも何のことやら』

 

普段あまり見ることのない、ユーノの顔にクロノはじわりと恐怖を感じた。

なお、画面の後ろの方ではスバルが両手を合わせ無言でごめんなさいと言っている。

 

「―――それから『なのはの使い魔』っていう言葉も出てきたらしいんだけど、なのはに使い魔はいないよねぇ?」

『いや、ちょっとまて! そっちを言ったのは僕じゃないぞ!!』

 

『フェレットもどき』といったのは確かに自分だが『なのはの使い魔』と言ったのは自分ではなくレティ提督であったことを瞬時に思い出し、クロノは反論する。

 

「そっちを言ったの『は』? じゃあ、『フェレットもどき』って言ったのはクロノ・ハラオウン提督なんですね?」

『うぐ、いや、すまん。 つい昔の癖が出た』

「はぁ、クロノからの依頼は今後無限書庫では一切受けないっていうことでいいのかな、これは」

 

ボロを出したクロノから謝罪の言葉がでて若干溜飲が下がったのか、内容は容赦なかったが、ユーノは落ち着いたいつもの口調に戻っていた。

 

『ちょっとまて! それはあまりにも厳しくないか?』

「そう? じゃあ、代わりにお願いを聞いてもらおうかな」

『お願い? なんだ』

「本局の臨時転送ポートの使用許可を出してくれない?」

『臨時の転送ポートを、何でまた……あぁ、そういうことか』

 

ユーノから特に理由の説明はなかったが、クロノはすぐにその意図を察した。

 

『本当はこういうのはダメなんだが、まぁ今回は目をつぶるか。 君達が食べ終わるまでには許可が降りるように手配しておく』

「ありがとう、クロノ」

『ふん、礼をいうなら最初からこういうことはするな。 今度の探索依頼、覚悟しておけよ。 じゃあな』

 

捨て台詞を残してクロノは回線を切った。

 

「すみません、私が変なこと聞いたせいでクロノ提督とあんなことになっちゃって……」

 

クロノとユーノの舌戦が終わったところで、スバルがおずおずと話しかけてきた。

 

「あぁ、いいよ。 いつものことだし、僕もクロノも全然気にしてないよ。 それに、いつもやられてばっかりだから、たまにはやり返さないとね」

 

この程度の口論など、なんでもないという風でユーノは気軽にそう答える。

 

「でも、転送ポートの許可ってこれからどっか行くんですか?」

「あぁ、使うのは僕じゃなくてナカジマさんだよ」

「へ? 私ですか?」

「うん、今からレールウェイ使って帰ったら10時過ぎちゃうでしょ、だから臨時の転送ポートを使っていいよ。 あれなら直接六課の隊舎まで飛べるから」

「え、でもあれって緊急時にしか使えないって」

「うん、本当はね。 でもまぁ今日は僕からのお礼っていうことで」

「お礼なんてそんな! 私、結局あんまり役に立てませんでしたし」

「そんなことないよ、ちゃんと手伝ってくれたし、それに……なのはを守ってくれるんでしょ」

「あ……」

「だから、お礼。 なのはのこと、よろしくね」

「はい、ありがとうございます!」

 

やさしく響くその声は、スバルの胸に刻み込まれた。

 

「フェイトのこともよろしくな」

 

ユーノの言葉にアルフが付け加える。

 

「うん、フォワードみんなで隊長たちを支えられるように頑張る!」

 

ユーノとアルフに今後を誓い、スバルはもっと強くなろうと決意を新たにするのだった。

 

 

 

「―――で、『フェレットもどき』って何なんですか?」

「帰ったら隊長達にでも聞いてみなよ」

 

先ほどうやむやになった質問に答えたのは、ユーノではなく苦笑い気味のアルフだった。

 

 

 

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