「これに今日のデータが入ってるから、はやてに渡してね」
夕食を食べ終えた3人は本局の臨時ポートの前に来ていた。
ポートの端末を確認すると、クロノが宣言したとおり、確かに転送許可がおりていた。
スバルの仕事はあとはこれで帰るだけである。
「なのはの訓練大変だと思うけど、頑張ってね」
「はい、ユーノさんも無限書庫のお仕事大変だと思いますけど、頑張ってください。 あと、ちゃんと寝てくださいね」
今日、食堂で寝ていたユーノの姿を思い出したのか、六課隊長達の共通の心配事をスバルも抱えることになっていた。
本人はあまり気づいていないが……。
「今日は私が見張ってるから大丈夫だぞ」
隊長達から頼まれている以上、ユーノに何かあってはアルフの沽券にかかわる。
特にフェイトから頼まれていることが『ユーノの管理は私がしなければ』というアルフの自負となっている。
ユーノにとって今夜は『眠れない夜』ならぬ『眠らざるを得ない夜』になる。
「今度時間ができたら六課にお邪魔するよ。 なのは達にもしばらく会ってないからね」
「是非来てください。 お待ちしてます」
「スバル準備はいいかい?」
ユーノとの挨拶を終えたところでアルフから声がかかる。
「うん。 アルフも、今日はありがとね」
「なぁに、いいってことさ。 じゃ、転送開始するぞ」
アルフのその声とともに転送ポートが強く光を発する。
「ユーノさん、アルフ、今日は本当にありがとうございました」
ユーノとアルフの前から姿が消えるまで、スバルはずっとお辞儀をしていた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
六課の隊舎入り口、その目の前が明るく輝いた。
光が失われると、スバルは隊舎の前に立っていた。
「本当に一瞬で着いた」
スバルは転送魔法を使用して移動したことがない。
頭ではわかっていても、行きに数時間掛けた道を一瞬で戻ってくるとなんとなく実感がわかない。
念のためマッハキャリバーで時間を確認すると、本局で転送ポートに入った時間から1分と経過しておらず確かに一瞬で移動したことを実感する。
「一瞬で帰ってこれたのはいいけど、もう8時過ぎだし、八神部隊長まだいるかな?」
せっかく本日中に作業が終わったのだから、本日中にはやてに結果を持っていきたいという思いがあった。
六課の勤務は交代制ではあるが、スバルたち新人やバックヤードの人間はほぼ規則通りに動いているため、通常であればすでに寮に戻っている時間であるが、隊長たちはあまりその規則に縛られていないようで、よく遅い時間まで残っているようだった。
スバルは直接寮には行かず、報告のため六課の隊舎にはやてがいるかを確認することにした。
「あ、電気ついてる。」
スバルが隊長室の前まで来ると、まだ電気がついてるのが確認できた。
コンコンッ
「はい、あいてるよ」
スバルがノックすると、中からはやての声が聞こえた。
思った通りこの時間まで残って仕事をしていたようだ。
本日中に結果を渡せることに少し喜びながらも、隊長達の負担の大きさを少し心配する。
「失礼します」
「あ、スバル。 お帰り、ずいぶん遅かったなぁ」
「す、すみません」
「別に怒ってへんよ。 本局で迷子になったかなぁってちょっと心配しとったけど、それでユーノ君には会えた?」
「はい、それでこれが探索結果のデータです」
「結果……って、ひょっとしてユーノ君、今日探索やってくれたん?」
「はい、それで、私もあんまり役に立てなかったんですけど、ちょっと手伝ってきまして。 それで、遅くなりました」
「そっか、ありがとな、スバルも。 それにしてもユーノ君、また無理してるんとちゃうやろか。 うちとしては助かるけど、体壊さんか心配やな」
「確かに私が会ったときにも、食堂で寝てましたね。 でも、今日はアルフが無理やりにでも休ませていると思うんで大丈夫だと思います」
「なら、それに期待するしかないなぁ。 ユーノ君にも困ったもんや。 スバルもお疲れ様、ユーノ君に届けたら直帰でいいって言うたけど結局こんな時間になってしもて、ほんまごめんやなぁ」
「いえ、ユーノさんのお手伝いは私が無理言ってやらせてもらったので」
「そうなん? どうやった無限書庫のお仕事は、いい経験になったんちゃうか?」
「はい、ユーノさんや無限書庫の仕事の大変さを身をもって体験できました」
本日4時間以上にも及ぶ作業をした経験からスバルは胸を張ってそう答えた。
前線で戦う自分以外、六課のバックヤード陣や本日訪れた無限書庫の職員たち。
表立って称賛されない彼らの苦労を体験できたことは改めて感謝の念を抱くきっかけになった。
前線で自分が思い切り戦えるのは彼らのおかげなのだと――
「うん、ええことやな、今日はゆっくり休み」
「はい、お疲れ様です。 では、失礼しました」
「ありがとうな」
はやてへの報告を終え、スバルは本日の終着点であり、相方の待つ寮へと向かった――
「ただいまー、ティア」
スバルがティアナとの相部屋の扉を開けると、ティアナは机に向かってなにやら作業をしていた。
どうやらクロスミラージュのメンテナンスをしているようだ。
「おかえりー、ってずいぶん遅かったわね。 やっぱり迷った?」
こちらを振り向かずにティアナが返答する。
「やっぱり?」
「あんた、ユーノさんの所属聞いていかなかったでしょ」
「あー、うん。 でもでもおかげで、いろんな人に会えたんだよ」
「いろんな人って誰よ」
「えっとねー、レティ提督に、クロノ提督と奥さんのエイミィさん、それとフェイトさんの使い魔のアルフ、あとあと書類を届けに行ったユーノさん本人ね」
スバルが着替えながら、指折り数え、本日出会った人を読み上げる。
「提督二人って……、何がどうなったらそんな人と会うのよ」
作業が一区切りついたのか、ティアナがスバルに改めて顔を向け、スバルの聞き捨てならない台詞を追求する。
「本局で迷ってたらレティ提督に捕まってー。 そうそう、レティ提督ってグリフィスさんのお母さんなんだよー、そっくりなのー。 それでレティ提督に不審人物だーって言われてたところをクロノ提督に助けてもらって、私が無限書庫の場所がわからないっていうと道案内までしてくれて、あ、無限書庫って言うのはユーノさんがいるところね。 で、無限書庫まで行く途中に―――ってどうしたのティア?」
スバルは今日本局であったことを思い出しながら楽しげに話していた。
しかし、それに伴いティアナの顔は険しくなっていく。
着替え終わってティアナの方に向き直ったスバルは、なぜそんな顔をしてるのかと訊ねるが、先ほどの自分の台詞に、黙っておこうと決めていたことが含まれていたことにハッと気づいた。
「提督に道案内させた! あんた何やってんのよ!! ほんっと信じらんない!!!」
いいながらティアナはスバルの頭をグリグリと押さえつける。
「うーごめんー、私も遠慮したんだけど、クロノ提督が気にしなくていいって言ってくれたんだよー」
「うっさいバカスバル、それに何? 不審人物で捕まったって、どういうことなのよ――」
ティアナにベッドに押さえつけられながら、スバルの夜は更けていった。
――翌日、友人の書類仕事が少し速くなったことを不思議に思うティアナだった。
これで終わりになります。
最後までご覧くださった方ありがとうございました。
少しでも楽しんでいただけていれば幸いです。