スバル初めてのおつかい   作:猫山知紀

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その6(アルフ、エイミィ)

スバルとクロノが無限書庫に向かっているのと同時刻。

本局の医療局で一人の女性と一人の少女がこれからやることについて相談していた。

 

「さーって健康診断も終わったしこの後はどうしようか、ねアルフ」

 

この日、エイミィは毎年恒例の健康診断に来ていた。

現在双子の育児のため長期休暇中であるが、エイミィは管理局に籍をおいている。

管理局という組織に属している以上、毎年の健康診断は義務となっておりエイミィも地球ではなく管理局で受けることになっていた。

 

「終わったんならエイミィは帰るんじゃないのかい?」

「いやいやアルフ。 そいつぁもったいないってなもんじゃないかい? せっかく久しぶりに本局に来たのにさ、直帰なんてつまんないでしょ」

 

『何を言っているんだいこの子は?』という感じでエイミィが応える。

 

「でも、エイミィは今は長期休暇中だし、へんなところウロチョロすると怒られるかもよ」

「大丈夫だって、知り合いがいるところにしか行かないから。 それにね、今日はクロノ君が帰ってるかも知れないしさ。 うろうろしてたら会えるかもしれないじゃん」

「あぁ、そういえばそろそろ戻る予定だったっけ? 今回のは結構長かったよね。 やっぱりクロノが長期航行で会えないのは寂しい?」

「うーん、まぁ、そうだねぇ。 でも通信では結構話してるし、そうでもないのかなぁ。 そういうアルフこそフェイトちゃんとあんまり会ってないよね」

「フェイトも、もうしっかりした大人だしね。 会いたいときには会えるし、この間も海鳴で会えたし、それにチビたちの世話とかエイミィやお義母さんと家のことするのも楽しいよ」

 

お互い、夫とご主人に長い間直接会っていない身である。

傷を舐め合うというわけではないが、エイミィとアルフは互いの寂しさを分かちあうような関係だった。

 

「そっか、ありがとね。アルフ」

「なぁに、気にすることじゃないさ」

 

少し照れた表情を浮かべてアルフはエイミィの感謝にそう答えた。

実際海鳴での生活はフェイトやクロノがいなくても、なかなかに賑やかなものである。

まだまだ手のかかる双子に、育児を手伝ってくれているリンディ。

近所には、なのはの実家である翠屋もあり話相手にも困らない。

寂しさを感じるのは夜寝る前のふとした時間など、ごく短時間だけだった。

 

「アルフは無限書庫に行くんだよね」

「そうだよ、私も最近こっちには来てなかったから、久しぶりにユーノの手伝いしようかなって」

「ユーノ君ちゃんと健康的な生活送ってるのかなぁ?」

「あんまり期待はできないねぇ。 ユーノは他の人に迷惑かけるのは嫌がるくせに、自分のことには結構無頓着だからね」

 

アルフは海鳴でハラオウン家の家事をする傍ら、無限書庫の手伝いも良くやっていた。

ユーノには言っていないが、これはユーノの生活チェックも兼ねている。

以前はなのはやフェイトたちも本局によく来ていたので、分担で様子を見に来る感じだったのだが彼女達が機動六課の所属となってからは様子を見にこれる頻度が減ってしまったので、今はその役割をアルフが一人で請け負っている。

 

「エイミィはクロノのところに行くんだろ。 それならここで別れるかい?」

「いやー、今日帰ってくるかもとしか聞いてないから、もう戻ってるのかわかんないんだよねぇ。 だから私も無限書庫に行こうかな。 ユーノ君にはこの間海鳴で会えなかったし」

「あぁ、確かにあの時ユーノはいなかったねぇ。 代わりに六課の新人がいたんだっけか」

「そうそう、エリオ、キャロ、スバルに、ティアナって言ってたね」

「あの4人、なのはの訓練で苦労してんだろうなぁ」

「なのはちゃんの訓練は厳しいからね。 でもその分強くなれるよ」

「でも、エリオとキャロはまだちっちゃいからな、ちょっと心配だ」

「その辺もなのはちゃんならちゃんと考えてるでしょ。 大丈夫だよ」

「でもなのはやフェイトはあの年頃ですでに闇の書とかと戦ってたし、普通の感覚がわかってないかも」

 

9歳時点ですでにAAAランクだったなのはやフェイトが『普通』の感覚を持っているのかという部分にアルフは不安を覚える。

 

そもそもあの二人は訓練校のような正規の教育機関で、魔法に関する教育を受けた経験が極端に少ない。

フェイトはプレシアの使い魔であったリニスによる指導が主であったし、なのはに至ってはそもそも魔法が一般的でない管理外世界出身である。

それに加え彼女の魔法スキルはユーノと出会い、魔法を知った直後からのほぼ実戦による叩き上げである。

基礎を知ることも重要ということから二人で訓練校にも通ったが、通常であれば卒業まで2年間必要なところを3ヶ月の短期プログラムという特別なカリキュラムを組んでもらって卒業した。

 

そんな二人がいわゆる普通の感覚を持っているかと問われると、疑問が湧いてくるのも当然というものである。

エイミィも思うところがあったのかにわかに不安を覚えた。

 

「確かにそれはあるかも。 心配なら無限書庫に寄った後、機動六課にもいってみようか。 お義母さんにはちょっと遅くなるって伝えればいいし」

「そうだね、そうしよっか。 ってあれ? クロノ?」

 

無限書庫へ行った後に機動六課によることが決まり、いざ行かんと歩き出そうとしたところで、アルフの目が少し遠くを歩くクロノを捕らえた。

T字路の突き当りを横切っただけのクロノの姿は、壁に阻まれすぐに見えなくなってしまったが、その真っ黒なバリアジャケット姿は間違いなくクロノ本人だった。

 

「ん?クロノ君が通ったの?」

 

エイミィがアルフの見ていた方を見やりながら聞き返した。

 

「うん、なんか女の子と歩いてた」

「なんだって?」

 

聞き捨てならない、とエイミィがアルフに向き直る。

 

「だから、女の子と―――」

「まさかクロノ君浮気!! アタシには今日帰るかもとか言っといて、本当はもっと早く帰ってきてて実は浮気してたってこと!!」

「いやまさか」

「だって女の子と歩いてたんでしょ」

「まぁそうだけど。 仕事関係じゃないかい」

「そんなっ!! 仕事と私どっちが大事なの!!」

「いや、なんか意味違うし。 それに今日浮気するならエイミィには明日帰るって言うんじゃないかな」

 

浮気をする心理はわからないが、もし浮気をするならばわざわざ鉢合わせするような日程を教えるわけがない。

バレないように嘘の日程を教えるだろうとアルフがもっともなことを言う。

 

「ま、そうだよね。 わかってるよん。 クロノ君が浮気なんかできる性格じゃないってこともね」

「なんだかんだ言って、結局は信頼してるんだね」

「まぁねん。 さて、つけるよ。 アルフ」

 

信頼しているということを肯定した直後に、信頼しているとは到底思えない提案が続いた。

 

「信頼してるんじゃなかったのかい」

「なぁに、妻として、じゃなく人としての好奇心だよ。 クロノ君が私のいないときにどんな話をしてるのか気になるじゃない」

「あんまり気が進まないなぁ」

「ほら行くよアルフ」

「あぁ、はいはい」

 

元来の楽しいこと好きの性格もあり、こういう時のエイミィはノリノリである。

それに対してフェイトと契約した影響か、根が真面目なアルフは仕方ないなぁと渋々付いていった。

 

 

 

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