スバル初めてのおつかい   作:猫山知紀

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その7(スバル、クロノ、エイミィ、アルフ)

「クロノ提督ってご結婚されているんですよね」

 

無限書庫に向かう中、スバルがそんなことを切り出した。

 

「あぁ、してるが。 どうして?」

「この間第97管理外世界の海鳴っていうところに行ったときに、クロノ提督の奥さんに会いましたよ」

「そういえば、うちの女性陣がそんなことを言っていたな。 ロストロギアを追っていたんだろ」

「そうです。 奥さん、なんだか可愛い人ですね」

「まぁ、ちょっと騒がしいところが玉に瑕なんだが」

「フェイト隊長とも仲がよさそうでした。 本当の姉妹って感じで」

「昔から面倒見が良かったからな、エイミィは。 今フェイトが明るく過ごせているのはなのはのおかげがというのが一番だろうがきっとエイミィの存在も大きい」

「それってひょっとして……」

 

私が聞いちゃってもいい話なのかな、とスバルは思うがクロノは話を続けた。

 

「ジュエルシード事件、あれはフェイトにとっては非常に辛い事件だったからな。 裁判でなのはとも長い間会えなかったし、そんなときにあの明るい性格のエイミィが近くにいたことは良かった思うよ。 僕じゃそうはいかないからね」

 

本人は自嘲気味にそう言うが、フェイトにとってクロノの存在も大きかったのは間違いない。

フェイトが現在執務官をしているのがその証拠である。

 

「そういう明るいところが好きになったんですか?」

「うっいや、まぁ、そうなのかな……って何を聞くんだ!!」

 

若干シリアスな話をしていたはずなのに突拍子もないことを聞かれ、クロノは慌ててツッコミ返す。

 

「六課には結婚している人がいないので、こういうこと聞ける人がいないんですよ。 それで他にはどんなところが好きなんですか?」

 

なんとなくそれっぽい理由をつけてはいるが、要するにただの好奇心である。

見た目はボーイッシュであってもスバルも女の子であった。

 

「まだ聞くのか?」

「そりゃー聞きますよ。 それでそれで、どんなところが好きなんですか?」

「あとは、そうだな。 さっき面倒見がいいといったが、それは僕に対してもだったから、かな」

「クロノ提督にも?」

「僕は昔から無愛想で、周りに言わせればあまり笑わない子供だったらしい。 そんなときに士官学校でエイミィに出会って、執務官とその補佐としてよく一緒にいるようになって。 少しは笑う子供になったそうだ」

「なんだか、随分と他人視点ですね」

「まぁなんだ、そうでもなきゃ話せん」

 

実際照れていて、他人視点になっているというのもあるが、この話はクロノを鍛え上げたグレアム元提督の使い魔二人組から聞かされた話でもある。

その二人から、クロノはエイミィに感謝するように言われていた。

その時にはなぜそんなことを言われたのかよくわかっていなかったが、大人になって振り返ってみると言われるまでもなくエイミィに対して感謝の念が浮かんでくるのは不思議なものである。

 

「じゃあじゃあ、結婚の決め手はなんですか? なんでこの人と結婚しようと思ったんですか?」

「もういいだろうこの話は」

「これが最後、これが最後ですからお願いします」

 

なぜそんなに必死なのかとクロノは疑問に思うが、これで最後ということでスバルの質問に答えることにした。

 

「はぁ、結婚の決め手か。 そうだなぁ、一緒にいて楽しいとか、落ち着くとかもあるが……」

 

そう言った所でちょっと考え込むようにして黙ってしまう。

そして少し経ってから何かに納得できたのか、クロノは言葉を続けた。

 

「純粋に好きなんだよエイミィのことが。 だから明確な決め手って言うのはない、かな」

 

言葉にするのはやはり恥ずかしいのか、少し顔を赤くしながらクロノは答えた。

 

「へぇ、なんか良いですねそういうのって」

 

聞きたいことが聞けたのに満足したのか、ご満悦といった表情を浮かべるスバルだったが突然その場で振り返って―――

 

「エイミィさんもそう思いますよね」

 

とその視線の先にいた人物にたずねた。

 

「エ、エイミィ何でここに!!」

 

いるはずのない人物を目の前にしてクロノが声をあげる。

 

「いやー、健康診断に来ててクロノ君の姿を見つけたから追いかけてきたんだけど……」

 

と言いながら顔を真っ赤にしたエイミィは少し気まずそうに、目を泳がせた。

 

『本当は尾行してたんだけどね……』と横にいたアルフは心の中で思う。

 

「いや、はは。さすがに照れるね。でも嬉しかったよクロノ君」

「エイミィ、今のは聞かなかったことに、っとそうだ! ちょっと執務室に急ぎの急用がって、うわっ!! すみません、あぁ、すみません」

 

恥ずかしさの限界を超えたのか、クロノは義妹に初めて『お兄ちゃん』と呼ばれた時と同じようなリアクションをしてその場を逃げ出した。

 

―――道行く人にぶつかりながら。

 

「あーちょっとクロノくーん!! ごめんねアルフ、とナカジマさんだよね。 私クロノ君追いかけるね」

「うん、いってらっしゃい。 また後で連絡するよ」

「すみませんなんか、私のせいで」

「気にしない、気にしない。 グッジョブだったよ、それじゃ」

 

そういってエイミィはクロノの後を追いかけていった。

 

「クロノ提督ってすっごい恥ずかしがり屋なんですね」

「そうなんだよ。 もう10年経つのにいまだにフェイトから『お兄ちゃん』って呼ばれることにも慣れてないみたいだし」

「あはは、ちょっと悪い事しちゃったかな」

「いいんじゃないかい、エイミィ嬉しそうだったし」

「そうかな、ならよかった」

 

やりすぎたかなと思ったスバルだったが、アルフからのその返事をうけてホッと息をついた。

 

 

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