仮面ライダー龍騎 ~EPISODE Kanon~ 作:龍騎鯖威武
第13話 「死刑宣告者」
次の日の夜。
舞は魔物を退治するべく、愛用の剣とファムのカードデッキを持って、校舎に来ていた。
祐一と佐祐理も来ていたが舞の弁当の準備をしているためここにはいない。
彼女は魔物の出現に備え、それを待ちながら、2人のことも待っているのだ。
「来た・・・!」
舞がつぶやくと、何もない空虚に向かって走り出し、剣を振るう。
「はあっ!」
ザァン!
確かな手ごたえがあった。倒すことは出来たらしい。
「この感じ・・・」
竜也たちと初めて会ったときに取り逃がした魔物のようだった。
あの後の所在が分からなかったので、ここで倒せたのは一安心だった。
だが・・・
「くっ・・・!」
突然、舞は床に膝をつき、足を庇うように手を添える。
痛みはなかったが、足の力が抜けるような感覚に襲われる。
黒いソックスを少し下ろすと、膝下から爛れたような跡があった。
先程の戦いの中では怪我をした覚えはないし、こんな症状はまず無い筈だ。
「どうして・・・」
「舞!」
祐一の声を聞いた舞はすぐさまソックスを元に戻し、何とか立ち上がる。
程なく、祐一と佐祐理が廊下から見えてきた。
佐祐理は昨日の和解後、舞のサポートをおこなうことを決意し、彼女なりに出来ることをはじめたのだ。
「祐一・・・佐祐理・・・」
「魔物さんが出てきたの?」
舞は頷く。
「舞・・・ずっと聞きたかったが、魔物って一体何なんだ・・・?」
祐一は疑問を舞にぶつけた。
実は祐一は夜の学校で、偶然舞と遭遇したことを機に彼女に協力するようになったため、舞が何のためにどうして魔物と対峙するかは知らなかった。
「わたしにも分からない。ただ・・・祐一を狙ってる」
「おれを・・・?」
「祐一と会うようになってから、魔物が頻繁に現れるようになった」
これが、舞の知っている全てのことだった。
ふと思い出したように、魔物の気配を探るが、どうやらいないらしい。
「今日はもう出てこないと思う・・・」
「そうか・・・じゃあ帰ろうか、舞。教えてくれて、ありがとな。佐祐理さん、あとはよろしくお願いします」
「あはは~、わかりました」
佐祐理と舞は共に帰り、祐一は一人で帰ることにした。
次の日。
今日は日曜日。学生達は全員休みである。
「おはようございます」
「おはようございます、祐一さん。今日は早いんですね」
学校でもないのに、早く起きた祐一。家主の秋子は彼の挨拶を穏やかに返す。
彼女は挨拶をしながら、身支度を整えつつあった。
どうやら、仕事に行くようである。
「えぇ、少し。秋子さんはお仕事ですか?」
「えぇ、今日は少し忙しくて・・・」
(そういえば、秋子さんってどんな仕事してるんだ?)
「じゃあ、いってきます。名雪にも伝えて置いてくださいね」
「は、はぁ・・・」
一つだけ聞きたいことがあったのだが、その質問に答える間もなく、秋子は家から出て行った。
「おはよぉ~・・・ゆういち~」
起きたばかりだからか、眠たそうな名雪が現れた。
彼女に聞いたら分かるかもしれない。
「名雪、秋子さんってどんな仕事してるんだ?」
「うにゅ、仕事?う~ん・・・く~」
「寝るな!」
聞いたのは間違いだった。
ちなみに名雪も知らないらしい・・・。
と、言うわけで・・・
「あの・・・なんで、おれとあゆが・・・?」
「こまけぇことはいいんだよ。おまえら、どうせ暇だろ?」
「暇だけど、尾行って言うのはちょっと・・・」
「でも、探偵みたいで面白そうだよっ!」
半ば遠慮がちな竜也とウキウキ気分のあゆを引き連れて、祐一は秋子の職場を見つけることにした。
「とにかく行くぞ」
「祐一、どこいったの~?」
一方の名雪は眠気がさめたようで、外に出ていつの間にか消えた祐一を探してみることにした。
と、少し離れた場所から2人の少年が立っていた。彼らは、名雪をじっと見つめている。
名雪はその少年の1人に見覚えがあった。
「あ・・・!サトちゃん!」
昔よく遊んだ友達、虎水サトルだった。
「久しぶりだね~。わたしの名前、覚えてる?」
「・・・」
無言のサトル。彼の反応に、名雪は少し悲しくなる。
「覚えて・・・ないの?」
「覚えてるよ、なゆちゃん」
表情を変えないまま、答えるサトル。名雪は安堵する。
「よかった~、覚えててくれて。今までどうしてたの?」
「どうでもいいよね?」
急に冷たい言葉で言い放つサトル。
「だって僕がいなくなってから、今、会うまで僕のこと思い出さなかったよね?」
「え・・・」
「おまえが水瀬名雪らしいな」
一人黙り込んでいた少年が突然、会話に割り込む。どう見ても友好的な様子ではなかった。
「おれはサトルの友人、斉藤ミツル。なぜ、こいつがこうなったか分かるか?」
「どういうこと・・・?」
「分からないのか?こいつはおまえに友情以上の感情を持っていた・・・以前はな。だが、おまえはサトルの感情に気付かなかった。それは仕方がなかっただろう。こいつが軟弱だったからな」
「うそ・・・!」
名雪は突然の事実に戸惑うが、ミツルは構わず続ける。
「サトルは家族から虐待を受け、その心の闇をおまえに癒してもらおうとした。だが、おまえは平然とサトルを見捨てた。ちがうか?」
「そんなことない・・・わたし、サトちゃんを見捨ててなんか・・・」
彼女の言い分は真実だった。
だが、2人は聞く耳を持たない。
「口でなら、何とでも言えるよね、なゆちゃん。僕は君とお別れをちゃんと言って、過去と決別するためにここに来たんだよ」
「サトちゃん・・・」
「バイバイ、なゆちゃん。もう二度と会わないよ」
そう言い捨て、2人の少年は去った。
離れた後、サトルはミツルに
「ありがとね、ミツル君」
「構わん。だが、おれも一つやらなきゃならないことがある」
「申し訳ありません、秋子さん・・・」
「本当にすいません。出来心で・・・」
「ごめんなさい・・・」
「大丈夫ですよ。でも、それならそうと早く言ってくれれば良かったのに」
その頃祐一達御一行は、あっさりと秋子に見つかってしまった。
彼らの行いを秋子は簡単に許し、これまたあっさりと自分の職業を明かした。
「わたしは、ここで働いてますよ」
彼女についてきた先は、情報配信社「WATASHIジャーナル」。
ここの情報雑誌は祐一達も読む機会が多く、もともと大手企業が無いこの街では特に大きな会社かもしれない。立派に構える会社の前に竜也は見とれていた。
「すごいですねぇ・・・」
「よかったら、見ていきますか?」
「うん、みてみたいよ!」
秋子の誘いに一人、はしゃぐあゆ。
しかし祐一は
「仕事に不都合だったりしませんか?おれや竜也どころか、このうぐぅがいたら・・・」
「うぐぅじゃないもん!」
「祐一、ひどいな・・・」
祐一の悪口に抗議するあゆと竜也。
「構いませんよ。ここはもともと人が少ないので、来客は大歓迎です」
編集社内。
入ると、すぐに応接室へ通された。
「水瀬編集長、おはようございます。おや?君たちは・・・」
応接室に壮年の男が入ってきて、秋子に挨拶をした。
竜也を見て、一瞬顔をしかめたように見えたが、4人は気にしなかった。
「編集長って・・・秋子さん、編集長なんですか?」
「えぇ。おはようございます鎌田さん。この子達は、わたしの甥とそのお友達です。突然ですが、今日は見学をと思いまして・・・」
祐一の言葉に軽く返事をした秋子は、鎌田に上手く説明した。
これで、3人は何のお咎めもないだろう。もともと、秋子についてきたが。
「そうでしたか。いや、失礼。副編集長の鎌田です」
「相沢祐一です」
「龍崎竜也です。よろしくお願いします!」
「月宮あゆです!」
それぞれ挨拶をした。
「そういえば、編集長。今日はあの情報が・・・」
「また新たに・・・ですか。みなさん、ちょっと待っててくださいね」
そういい残し、秋子は鎌田と共に応接室から出て行った。
ふと、祐一が呟く
「秋子さんの表情からして・・・ライダーのことかもな」
「どうして分かるの?」
「ここは、情報配信社。あれだけドンパチやってたら、仮面ライダーのことだって正体は分からずとも、必ず耳に入ってくるはずだ。それに秋子さんは、基本的に怪物といった類は多分、好きじゃないだろ。ここまで考えれば・・・」
「祐一くん、すごい・・・」
祐一の見事な推理に、あゆは尊敬の念を抱く。
キィィン・・・キィィン・・・
突如、モンスターの気配。反応音からして近い。
「あゆ、ここにいて。秋子さんにはうまく伝えといてね。祐一、いくよ!」
「ああ!」
モンスターはなんと社内にいた。その数は2体。
一体はワイルドボーダーとよく似た形状の鮫型モンスターと、両腕に刀を持った細身の鮫型モンスターだった。
「アビスハンマーにアビスラッシャー・・・まさか、仮面ライダーアビスがこの近くに!?」
「マジかよ!?」
「とりあえず、倒すよ!」
2人はデッキをかざす。
「「変身っ!」」
姿を変えた龍騎とナイトは、モンスターへと駆け出す。
しかし
「え・・・どこに行ってんだ?」
2体のモンスターは龍騎たちを無視して、廊下を走り去った。
今までになかった例。龍騎が唖然としていると
「おい竜也!あのモンスター、秋子さんのところに向かったぞ!」
「うそ!?」
2人は急いでモンスターのあとを追った。
アビスハンマーがドアを破ろうとしたそのとき、
「させない!でりゃあっ!」
ガッ!
龍騎が必死に取り押さえ、近くの窓を開け、そこから放り投げた。
「祐一、アビスラッシャーも何とか外に出して!あいつはおれが何とかする!」
「あぁ、任せろ!」
龍騎はアビスハンマーのあとを追い、窓から飛び降りる。
ナイトも龍騎に続き、窓からアビスラッシャーを放り出し、その窓から飛び降りる。
その頃、編集室で鎌田の様子が変わった。
秋子に気づかれないように笑う。
突然
「編集長。取材に行ってきます」
「え・・・このことを放っていくんですか?」
「その件と関係があることです・・・では」
モンスターとの戦いは外での第2ラウンド。
さすがに、契約モンスターであるためか強い。
「シャアアアア!」
バシャアアァ!
「うわっ!」「ぐっ!」
アビスラッシャーの口部から大量の水が高速噴射され、龍騎とナイトの動きを封じ込める。
そして
ズダダダ!
「「ぐあっ!」」
背後からの突然の攻撃を受けた。背中には大量の水。どうやら、高圧の水流弾らしい。
そこにはナイトは見慣れない仮面ライダーがいた。様子から味方ではないらしい。
「すみませんね、お2人とも」
「何だおまえ!?」
「おまえは・・・仮面ライダーアビス!?」
龍騎は見覚えがあった。城戸真司と別れたときに襲撃された仮面ライダーの1人だった。
アビスは龍騎を見やると、興味深そうに
「ほほう。やはり城戸真司ではありませんか。あのときくっついていた少年、龍崎竜也君ですね?」
「そうだ。おれは真司さんから、龍騎を受け継いだ・・・。そして、おまえ達の横暴を食い止めるための仲間も見つけられた!今度こそ、おまえ達を止めて見せる!」
龍騎の言葉を聞き、アビスは嘲笑するように口走った。
「ということは、あの場では取り逃がしてしまいましたが、どうやら城戸真司は死んでしまったようですね」
「違う!!」
アビスの言葉に龍騎は声を荒げた。はじめて聞く怒声であった。
普段、怒るイメージのない竜也とのギャップゆえか、ナイトは驚く。
「真司さんは死んでなんかいない!今もどこかで戦ってる!」
「それをどうやって証明するんです?」
「いままで真司さんは、どんな事があってもあきらめなかった。それに、おれが人を守り続けていればまたいつか会えるって約束したんだ。それが証拠だ!」
龍騎・・・いや竜也は、城戸真司に対しての信頼が強かった。ナイトは城戸真司という人物がどれほど凄い人物だったのかを改めて実感した。
「くだらない。そんな確証のないもの・・・信じないほうが良いですよ!」
アビスはそれを鼻で笑い、左腕の召還機「アビスバイザー」にアドベントカードをベントインした。
<STRIKE VENT>
「ヌンッ!」
アビスはアビスラッシャーの頭部を模した武器「アビスクロー」を構えると、アビスハンマーとアビスラッシャーと共に、龍騎とナイトに襲い掛かる。
ザアアアアァ!
「ぐっ・・・うあああああ!」「ぐあああああぁ!」
アビスクローをドラグクローのように突き出し、高圧な水流弾「アビスマッシュ」を発動する。
龍騎たちは何とか持ちこたえようとするが、龍騎は炎を主体として戦うライダー。水主体のアビスの攻撃にはめっぽう弱いのだ。ナイトはもともと防御力に特化していない故に、アビスの攻撃には耐えられず、両者とも吹き飛ばされた。
そこへ
「そいつはおれの獲物だぁ!」
アビスに凄まじい怒りの叫びを上げ、2人の少年が乱入した。
龍騎にはそのうち、1人の少年に見覚えがあった。
「・・・ミツル?」
「危ないですよ?死にたくなければ退きなさい!」
アビスは一般人にも容赦はない。アビスセイバーを振り上げて、ミツルに振り下ろす。
「ミツル、危ない!」
しかし、
「おれの獲物といっただろうが!」
ミツルはなんと、アビスクローを蹴り上げる。
さすがに、ライダーが武器を落とすことはなかったが、アビスはひるんだ。
「君は・・・!?」
「あなたと同じ存在だよ」
アビスの言葉にサトルが答え、2人は懐からあるものを取り出してかざす。
「・・・カードデッキ!?」
「「変身っ!」」
腰に現れた白銀のベルトにデッキを装填すると、その姿は仮面ライダーに変わっていた。どちらも体中が動物を模した、いかにも荒々しい姿だった。
「インペラーとタイガ・・・!?」
「仮面ライダー・・・!?」
「うおおおおぉ!」
「仮面ライダーインペラー」は雄叫びを上げ、アビスに駆け出した。
今までのライダーとは群を抜いたスピード。一瞬で、アビスとの距離を縮める。
「いえああああああぁ!」
ガガガガガガッ!
「グゥッ、ウガッ、ガアッ!」
アビスに凄まじいスピードで蹴りを加えるインペラー。猛攻の前に、アビスは成す術がなかった。
そして「仮面ライダータイガ」はアビスラッシャーたちに、巨大な斧型の召還機「デストバイザー」を振り下ろす。
「ああああぁ!」
ガァン!
「グギャアアアア!」
アビスラッシャーたちは堪らず、地面に叩きつけられた。
「おのれ・・・貴様らのことなど報告になかったぞ・・・!」
ザアアン!
アビスは毒づき、アビスバイザーで津波を起こす。
津波が消えた後はアビスの姿は消えていた。
龍騎はインペラーに駆け寄る。さっき、自分達を助けてくれたところから、味方と判断する。
「ミツル、久しぶり!」
「・・・」
「こいつ、誰だ?」
「斉藤ミツル。真司さんと会う少し前に暮らしてた孤児院で友達だったんだよ!」
龍騎の言葉に納得し、もう一人のライダー、タイガに目をやる。
「もう一人は・・・?」
「えっと・・・ミツルの新しい友達?」
「そういったところかな。虎水サトルだよ」
龍騎は昔の友との再会を喜ぶ、インペラーは黙り込んでいたがそんなことはお構いなしだった。
「まさか仮面ライダーだったなんて思わなかった・・・もしかして、おれ達と一緒に戦ってくれるの?」
正直、友人が仮面ライダーであることは喜ばしいことではないのだが、彼らが一緒に戦ってくれるとなると、とても心強い。
だが、その期待はあっさりと崩れ去った。
「せいっ!」
ガッ!
「ぐあっ!?」
「竜也!」
突然、至近距離からのインペラーの攻撃。
「やっと会えたな・・・竜也ぁ!」
「僕達は、君を倒すんだよ?君たちの味方なんて馬鹿馬鹿しい」
「ここでおれは、過去と完全に決別する!」
インペラーは龍騎を倒すべく、強靭な右足で攻撃を仕掛けた。
続く
次回!
サトちゃん、どうして・・・
英雄になるんだ。そうすれば、みんなが僕のことを・・・
おまえも忘れたようだな、おれを見捨てたことを!
人を守りたくて仮面ライダーになったのに・・・
君の手の内、見せてもらいますよ・・・
第14話「怒りの闘士」
キャスト
龍崎竜也=仮面ライダー龍騎
月宮あゆ
相沢祐一仮面ライダーナイト
川澄舞=仮面ライダーファム
倉田佐祐理
水瀬名雪
虎水サトル=仮面ライダータイガ
斉藤ミツル=仮面ライダーインペラー
水瀬秋子
鎌田マサト=仮面ライダーアビス