仮面ライダー龍騎 ~EPISODE Kanon~   作:龍騎鯖威武

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第19話 「雪の少女達」

王蛇は首を捻りながら快感に打ち震える。

彼は人を殺める感覚を、これ以上ない快感としてとらえているのだ。

そして、目の前にいる強敵に対しても、最高の悦楽を感じている。

「龍騎・・・。話によれば、オレたちと敵対するライダーで、ほぼ最強と見て良いそうだな」

「・・・」

龍騎は無言で聞いている。

はっきり言って、今すぐにでも殴りたい。

だが、一つの言葉が龍騎を踏み留める。

「たとえ正義でも、怒りに身を任せれば、そこで悪となり得ることもある」

城戸真司から教えてもらった言葉だ。

そして、不思議な感覚が、龍騎の気分を冷静にさせた。

これだけ残酷な行動を取った浅倉に対しての、怒りが少ない気がする。

まるで、悪に対する憎しみという感情が、異常なほど欠落した気分だ。

「そこのファムは、歯ごたえが無い。オマエなら楽しませてくれるよなぁ!?」

先手は王蛇だ。

龍騎に向かって全力で突進してくる。

「っ!?」

ガッ!

龍騎は王蛇の拳を両腕で防ぐ。

今までの戦いで、感じたことの無い衝撃だった。防御の体制をとっていたため、吹き飛ばされることは無かったが、それでも、踏ん張っている足が少しだけ後ろに下がった。

だが、龍騎も負けてはいられない。

「だあっ!」

ドガッ!

「ウオッ!?」

力一杯、王蛇を殴る。

突然のことゆえに、王蛇はまともに受け、地面を転がる。

「ハハァ!そう来ないとな!」

王蛇は立ち上がるや否や、喜びながら叫ぶ。

その姿に、ファムとゾルダは恐怖を感じた。

彼は痛みさえ、快楽に感じている。そんな相手と、どう戦うのか。

いくら、戦い慣れしている竜也=龍騎でも勝ち目が無い。

 

と、そのとき

「なんだ!?」

王蛇を銀色のオーロラが包み込む。

「緊急事態だ、来い」

銀色のオーロラから声が聞こえる。

まるで、頭に直接響いているようだった。

語りかけているのは王蛇に対してだが、龍騎たちにも、そう聞こえる。

その瞬間、オーロラは王蛇と共に消え去った。

「なんだったんだ・・・?」

あっけに取られていた龍騎だが、はっとしてファムとゾルダを見る。

ゾルダはガイとの戦いの傷が多少あるが、大事には至っていない。

問題はファムだ。王蛇との戦闘で深刻なダメージを負っている。

変身も解けていた。

「舞さん、大丈夫!?」「川澄さん!」

「うっ・・・く・・・」

舞は立ち上がることすらままならない。

「とりあえず、病院に!」「分かった!」

2人は変身を解除すると、舞を担いで、病院まで運ぶ。

その間、竜也はふと考えていた。

「あのときのリターンベントって一体・・・」

 

その姿を、近くの物陰で見つめる影。

タイガだ。

先程のリターンベントは彼が発動したものだった。

「わかんない。僕、何がしたいんだろう?英雄?」

彼は何かが崩れていた。

自分は、なぜ英雄になりたいのか?英雄になろうとした発端はなんだったのか?

英雄とは、どういうものなのか?

「わかんない・・・。わかんない、わかんない、わかんない!うわあああああああああああああああああああああああああああああ!」

衝動に駆られ、タイガは泣き叫んだ。

 

一週間が経った。

「おつかい、おつかい~」

あゆは、竜也に頼まれてお使いに出かけている。

夕飯の買出しだ。

当の竜也は、舞や祐一のお見舞いだ。

幸い、舞の怪我の回復は良好で、祐一はほとんど治っている。潤の怪我も癒え、今はライアとして戦うことが出来る。

おそらく、仮面ライダーとして戦ううちに、自己治癒能力も多少、向上したと竜也は推測した。自分もこれまでの戦いで、怪我が治るスピードが速くなったことを自覚していた。

鼻歌交じりに、買い物をしていたあゆの視界に、少し見慣れた少年がいた。

ミツルだ。彼はあゆに気づいていない。

あわてて隠れるあゆ。

 

ミツルは珍しく、街を歩き回っていた。

ここ最近、サトルが戻ってこない。何かあったのだろうか。

「探しました、斉藤ミツルさん」

突然、声を掛けられた。

振り向くと、そこには物静かな印象のある少女が立っている。

制服から言って、名雪の通っている高校の生徒らしい。

「はじめまして、天野美汐と言います」

「何のようだ?」

ミツルは睨みつけながら、聞く。

いつの間にか、人を睨むことが癖となってしまったらしい。

「真琴のことです」

「・・・!?」

真琴、という言葉に過敏に反応するミツル。

必死に平然を装う。

「彼女と一緒に暮らしていたことがありますね?」

「だからどうした?」

「あなたに伝言を預かっています」

美汐の発言に少しばかり期待した。

もしかしたら、自分を救ってくれるかもしれない。と

「がんばれ・・・だそうです」

だが、それは彼にとって期待外れだったようだ。たぶん、彼女の以前の知り合いだろう。

伝えたい言葉も嘘と予想する。

そんな言葉だけを伝えるはずが無い。

「ふざけているのか?二度とおれの前に姿を見せるな!」

「いいえ、真琴があなたに伝える言葉がある限り、わたしはあなたの前に姿を現します」

ぴしゃりと言い放つ美汐。

「彼女は、わたしのたった一人の友達ですから」

「消えろ!」

ミツルがそう叫ぶと、美汐はさっさと歩き去ってしまう。。

「ミツル・・・さん」

ふと、怯えたような声が聞こえる。

声のするほうにはあゆがいた。

「きさま・・・竜也の・・・」

またしても睨みつけるミツル。

「あ、あの・・・よかったらボクに、昔のこと教えてくれない?」

「何だと・・・?」

教えられる訳が無い。彼女はおそらく、竜也の大切な人だ。

自分の心の憎しみを曝せば、竜也の耳にも伝わる。

「だめ・・・?」

少し上目づかいになるあゆ。

その仕草が、真琴に似ているような気がした。

「・・・誰にも喋らないことを約束しろ」

「わかったよ」

今日は真琴のことで、調子を狂わされている。

ミツルは、自分自身にあきれながら、過去のことを話す。

 

おれが竜也と孤児院で共に暮らしていたことは知っているな?

それは5年前のことだ。

その3年後、突然、あいつが消え、おれは独りになった。

生活に嫌気がさして、おれは孤児院を脱走した。

辿り着いたのが、ものみの丘だ。この近くの山にある。

そこで、おれは不思議な少女と出会った。彼女はものみの丘にずっと住んでいた。

名前以外、何も覚えていない彼女にとって、唯一の居場所だったらしい。

 

「くそ・・・!どいつもこいつもおれを、厄介者扱いしやがって!」

「あなたも独りぼっち?」

草原の真ん中で倒れていたおれの前に現れた少女がそれだ。

明るいが、どこか、悲しそうな表情だった。

「誰だ、おまえ?」

「あたしといっしょだね」

「目障りだ、消えろ!」

「あう・・・」

おれは最初、彼女を邪険に扱っていた。

次の日もおれは、ものみの丘にいた。

「あはは・・・」

彼女は、おれにあらゆる手を使って、いたずらをした。

「・・・えい!」

「子供だましで、おれを欺けるか!」

バババババババ!

「あ~う~!」

「バカが・・・!」

花火を彼女に投げ返したりしたこともあったな。

邪魔だと感じていたから、返り討ちにしてやった。

何日も、何日も。

ある日。

「はい」

彼女は眠っていたおれに花の冠をかぶせた。

「きさま、良い加減に・・・!」

今までのこともあって、怒りが頂点に達したが・・・。

「あうぅ・・・」

上目づかいに、おれを見つめる。なぜか、怒りの心が和らいでいった。

「えぇい、勝手にしろ!」

「あはは、あたし真琴。沢渡真琴!」

「・・・だからなんだ?」

「名乗ってよ。あたしも教えたんだから!」

なぜか名乗った。

「・・・斉藤ミツル」

「じゃあ、よろしくね。ミツル!」

それから、真琴はおれに、いたずらを成功させて見せると意気込んでいた。

全て返り討ちにしてやったが。

 

「おい、メシにするぞ」「あう~っ!肉まんね!」

「全く…たまには自分の手で食べ物を手に入れたらどうだ?」

「い~の!ミツルがご飯持ってきてくれるから!」

彼女に、久しぶりに安らぎを感じた。

「おれがいなくなったらどうする?」

「着いていく!ミツルのお嫁さんになったら、ずっと一緒だもん!」

「…バカが」

「あうーっ!バカじゃないもんっ!真琴!」

彼女になら心を許せるかもしれない。そう思った。

ずっとおれに関わってくれたから。

 

だが・・・

「あうぅ・・・くるしい・・・」「しっかりしろ。いたずらを成功させるんだろ?」

しばらくして、彼女は高熱を出した。

「ほら、拾い物だが、良いものを持ってきた」

初めて、誰かに贈り物を渡した。

「あうぅ…鈴…」「そうだ。これならおまえがどこに行っても、見つけてやれる」

必死になって看病した。助かって欲しかったから・・・。

だが、どうすることも出来なかった。

 

「今日は晴れてるぞ・・・真琴」

初めて彼女の名前を呼んだ。そのことで、彼女と向き合っていける気がした。

ちゃんと向き合えば・・・もしかしたら・・・。

「・・・だれ?」

「真琴・・・!?」

「手が動かない・・・こわいよぉ・・・」

でも・・・おそかった。

 

彼女は次第に弱り、おれのことを忘れ、言葉を失い、最後には赤子のようになって…

「ほら…鈴で遊ぼう。チリンチリンって鳴らすんだよ…」

「あうぅ…」

子供のような笑みを浮かべながら…。

「良いぞ。今度はおれの番だ。…よし、次は真琴だ」

「あ…ぅ…」

ゆっくりと目を閉じて…

「真琴…お前の番だぞ?…真琴…?」

「…」

真琴はいなくなった。

「たのむよ・・・もう一度、顔を見せてくれ!今度こそ、ちゃんとおまえと向き合うから・・・」

 

「結局、おれはどこでも独りか・・・」

「憎いか?」

そこからだった。おれの復讐が始まったのは。

「憎しみを解き放て。その力を与えよう。今日からオマエは、仮面ライダーインペラーだ」

「憎しみ・・・?そうだ、憎い!おれを見捨てた竜也!厄介者扱いした奴ら!そして、おれを忘れて消えた真琴!復讐してやる!復讐だ!変身っ!」

おれは復讐の力を手に入れた。

 

「暫くして知った。彼女は人間じゃない。妖狐という、ものみの丘にいる狐だ。おれは結局、人外としか接する事ができなかった。いや…その人外にすら見放された。残されたのは同じ境遇の仮面ライダーだけ。話はここまでだ」

ミツルは横を見る。

あゆは泣いていた。

「悲しすぎるよ・・・。真琴ちゃんだって、ミツルさんのことが好きだったはずなのに」

「忘れられてしまえば、何の意味も無いんだよ。分かったら消えろ。おまえを見ていると真琴を思い出す・・・。このままじゃ、おれがおれでなくなる」

「きっと竜也くん、ミツルさんの事を信じてるよ。真琴ちゃんだって・・・」

「消えろといっただろ!」

あゆは、びくりと反応し、とぼとぼと離れていった。

残されたミツルはポケットから、あるものを取り出す。

 

真琴に贈った鈴だ。

 

歯を食いしばってそれを握り、空を見上げて呟く。

「なぁ、真琴・・・。おまえなら答えを知っているのか?」

ミツルの言葉は、復讐の対象であるはずの真琴に向けていた。だが、答えはない。彼女は自分の前から姿を消したのだから。自分を忘れてしまったのだから。

それに、一度回った歯車はもはや止められない。

復讐こそが、彼の生きる糧となってしまったのだから。

「もっと、非情にならなければ・・・」

 

同時刻。

浅倉は、オーロラの中で金色の影と対面していた。

「なぜ、ガイを葬った?」

「緊急事態ってのは、それか」

浅倉は嘲笑する。

「弱い奴から喰われる。分かってるだろ?」

「それがガイだと?」

「悪いか?」

浅倉の言葉を無感情に聞く金色の影。

「戦力が削れたのは、好ましくない。だが、それを越えて、仮面ライダー王蛇という戦力の追加は価値の有ることだ」

金色の影は、浅倉から受け取っていた、ガイのカードデッキからアドベントカードを引き抜く。それは、メタルゲラスと契約した証であるカードだった。

見る見るうちに、ガイのカードデッキのレリーフは消えてゆく。

「使え」

「弱い奴のカードがいるか?」

「貴様は、その弱い奴を喰らったと言ったな。喰らったのなら、その力を糧にしろ」

「なるほどな、悪くない」

浅倉は、メタルゲラスのカードを受け取る。

 

美汐は自分の家へと帰り着く。

彼女には両親が居ない。いるのは、たった一人の友達。

「ただいま、真琴」

家の中で「沢渡真琴」は美汐の顔を見るなり、ニコッと笑う。

「あうぅ・・・」

今の彼女は、言葉を発することも難しいらしい。

美汐はやさしく、真琴の頭をなでる。

「斉藤ミツルさんに、あなたの言葉を伝えましたよ」

「ミ・・・ツ・・・ル・・・」

すこし、声が弱々しかったが、はっきりとミツルという言葉を発する。

今の彼女が発することの出来る言葉はこれだけなのだ。

「真琴の気持ち、きっと届きます。もう一人だけ、助けが必要ですけれど・・・」

そういって、美汐は再び外に出て行く。

近くには竜也が歩いていた。

「舞さんも祐一も何とか大丈夫そうだったな」

2人の回復を竜也は素直に喜んでいた。戦力が戻るという考えは全く無い。

ただ、友達が元気になることが嬉しかった。

そこに美汐が声を掛ける。

「龍崎竜也さん」

「?」

竜也が振り向く。

「斉藤ミツルさんのお友達ですね?」

「そ、そうだけど・・・君は?」

「あなたにお話があります」

 

サトルは、街を徘徊している。まるで、抜け殻のようだ。

「サトちゃん」

名雪が、後ろから声を掛ける。

「・・・」

反応が無い。構わずに言葉を続ける。

「サトちゃんにとって、英雄ってなに?」

「英雄・・・?」

ようやく反応したサトル。歩みを止める。

「わかんなくなっちゃった。誰にも嫌われない、みんなから好かれる人のことだと思ってたのに・・・どうすれば英雄なの?」

「サトちゃん。わたし、あなたが英雄になる必要なんて無いと思うよ」

名雪の言葉に、サトルは目を見開く。

「それじゃ、ダメなんだ!そうでないと、僕はみんなから嫌われたままなんだ!だから・・・」

「ちがうよ」

名雪は後ろを向いていたサトルの正面に立ち、そっと抱きしめる。

「みんな、サトちゃんのことが好きだよ。あんなに、サトちゃんの事、大切にしてるお友達だっている。たとえ、みんなに嫌われても、わたしだけは、サトちゃんのことを好きで、あり続けるから」

名雪は、そっとサトルに顔を寄せ・・・

 

2人の唇が触れた。

 

「信じて・・・」

名雪はそう言い残すと、走り去った。

「なゆちゃん・・・」

 

 

 

続く・・・。

 

 

 

 

 

次回!

 

              人間はみんなライダーなんだよ!

 

おれは、どうすればいい・・・?

 

              邪魔を・・・するな!

 

英雄を捨てたら僕は・・・

 

              サトちゃん・・・

 

ミツ・・・ル・・・

 

              過去と決別する!

 

 

 

第20話 「決意」

 

 

 

 

 

 




キャスト

龍崎竜也=仮面ライダー龍騎

月宮あゆ

川澄舞=仮面ライダーファム
久瀬シュウイチ=仮面ライダーゾルダ

水瀬名雪
沢渡真琴
天野美汐
虎水サトル=仮面ライダータイガ
斉藤ミツル=仮面ライダーインペラー

浅倉タカシ=仮面ライダー王蛇

金色の影

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