仮面ライダー龍騎 ~EPISODE Kanon~ 作:龍騎鯖威武
竜也は直ちに、仮面ライダーではない者を、避難させる。
「あゆ、みんな、安全な所に隠れて!あれが真司さんの言っていた、金色のライダーだとしたら…」
「わかったよ。みんな、早く逃げよう!」
あゆは残りの者たちを避難させる。
「変身!」
竜也、祐一、舞、潤、久瀬、サトル、ミツルの7人は仮面ライダーに変身する。
7対1の状況であるにもかかわらず、オーディンは全く動揺を見せない。
「おまえが諸悪の根源だな!」
ライアはオーディンに向かって叫ぶ。
「心外だな。私は悪業を行った覚えは無い」
「ごちゃごちゃ言うな!」
「待って、潤!」
龍騎の制止を無視して、エビルウィップを振りかざしたライアは、オーディンに攻撃を仕掛ける。
それと同時に、何処かの時計塔の鐘が鳴り響く。
「愚かな」
「うおりゃあ!」
バチィン!
電撃を纏ったエビルウィップは、ポツリと呟いたオーディンにぶつかる…筈だった。
「な…!?」
だが、オーディンは目の前から姿を消す。残っていたのは、金色の羽のみ。
そして直後に、ライアの後ろに姿を現した。
「北川、後ろだ!」
「えっ…」
ズガアアアアァ!
「ぐああああああぁ!」
インペラーは、ライアに指示を送るが、それよりも先に、オーディンはゆっくりとした動作で、ライアに向かって腕をぶつける。
たったそれだけで、ライアは数十メートル吹き飛ばされ、その先の壁に激突する。鎧も、あちこち砕けていた。
「くっ!」
その光景に恐怖を感じたゾルダは、オーディンに向かってマグナバイザーを連射する。
しかし、同じようにオーディンは姿を消し、ゾルダの背後に現れる。
「久瀬先輩!」
ナイトとファムは、ゾルダを救うべく、背後のオーディンに向かう。
ズガアアアアァ!
「うわあああああぁ!」
しかし間に合わず、先ほどと変わらぬ動作で腕をぶつけ、ゾルダは吹き飛ぶ。
「寄るな」
ドガアアアアアァ!
「うあああああ!」「あああああぁ!」
そして、走ってきたファムとナイトを、同様にあしらう。
「くそ…いくぞ、サトル!」「うん!」
タイガとインペラーは、同時にオーディンに向かって地面を蹴る。
だが、今度は姿を消すことはせず、右手をゆっくりと翳す。
ゴオオオオオ!
「ぐおおおおああぁ!」「わああああああぁ!」
すると2人は、凄まじい衝撃を感じ、やはり吹き飛ばされた。
この時間は1分にも満たない。それだけで一気に追いつめられた。
「みんなしっかりして!」
龍騎は、倒れ伏した仲間たちに走り寄る。
「命が大事だろう?ならば、私と戦おうなどと考えるな」
「なら、どうして現れた!どうしてみんなを傷付ける!?」
龍騎は質問と同時に、オーディンに攻撃を仕掛ける。
しかし、その拳はオーディンに当たることはない。彼が居た空間を通り抜けるのみ。
近くの壁に背を付け、死角を取られないようにするが、今度は目の前にオーディンが現れる。
「っ…!?」
咄嗟に避けようとするが、オーディンは、龍騎を逃すことはなかった。
「私に刃向うからだ」
ズザザザザザァ!
「うぐああああああぁ!」
辺りの金色の羽が龍騎に触れる度、鎧が切り裂かれ、小規模の爆発が何度も起こる
「ぐぅっ…がはぁっ!ぐあぁ…」
龍騎の仮面の下から真っ赤な血が滴り落ちる。恐らく、吐血してしまったようだ。
「竜也くんっ!竜也くんっ!」
「ぐぅっ…!あぁ…」
あゆは見ていられず、龍騎のもとに駆け寄り、彼の名を呼びながら揺するが、彼は苦しそうにもがくのみ。今まで、あゆが戦地に近づけば、どんなに傷ついていても、彼女の身を案じていた竜也。しかし、今回は彼女に身を案じることはない。苦痛が彼の感覚を支配していたからだ。自分が無力であることを、あゆは改めて強く感じた。
圧倒的過ぎる…。まるで歯が立たない。これが、金色のライダーとの差なのか?このままでは…
負ける。
「提案だ。私と共に戦え…!」
オーディンの言葉に一同は唖然とした。
「…説明が必要だな。私はモンスターの殆どを操作できるが、全てでは無い。シアゴーストやゲルニュート、ガルドサンダー等だけだ。オマエ達が戦ってきた、ソロスパイダーといったモンスターは、秩序なく暴れているのみ。オマエ達には、それを倒し続けて貰いたい」
倒れ伏していたナイトはオーディンに怒鳴る。
「おれたちは、言われなくても戦っている!」
「もう一つ。この世界で悪と言われる人間の始末だ」
「え…」
「問題無いだろう?なにも、罪も無い人間を殺せなどとは言っていない。…とは言え、オマエ達は心の有る者。人を殺すことに躊躇することは分かる。猶予を与えよう。明日の、この時間まで待つ。良き返事を待っているぞ」
そう言って、オーディンは銀色のオーロラと共に、姿を消した。
次の日。
まだ、オーディンとの約束の時間まで余裕はある。竜也の家に昨日の一同が集まった。
あちこちに血が滲んだ絆創膏や湿布を張り付けている祐一たち。
竜也は、オーディンによる攻撃の傷が深く、自分の部屋で、あゆに介抱されているため、この場にはいない。
「どうする…?」
久瀬が言っていることはもちろん、オーディンの提案を受け入れるかどうかだ。
「モンスターを倒せっていうのは構わない。だが、人間を殺すことは納得できないな」
尤もな意見のミツル。彼には、真琴が離れないようにしがみついていた。
「でも、断ったらどうなるか位、分かるだろ。今回ばかりは、竜也でも敵わない。おれたちが負けたら、やつの思う壷になるんだぞ」
祐一の言葉で、全員が俯いた。
正直、この場にいる誰もが、竜也が居れば、そして7人全員が力を合わせれば、何とかなるという気持ちが心の何処かにあった。しかし、それは昨日で崩れ去った。オーディンのたった一撃で、全員が倒れたのだから。
「でも、受け入れれば、それこそオーディンの思い通りになっちゃうよ…」
「でも、悪い人間だけって…正しいんじゃ…」
ポツリとつぶやくサトルに、頭を抱えて悩む潤。
悔しそうに、両手の拳を握りしめる舞。
「どうすれば…」
その近くで、香里、栞、佐祐理、名雪が円を描いて座っている。
「何もできないことって、こんなにも、もどかしいものなのね」
「竜也さんたちが、あんなに傷ついてるのに…」
香里と栞も、無力であるが故の悔しさを噛みしめている。
「じゃあ、今のわたしたちに何かできることって…ないのかな?」
「みなさんの怪我の応急処置くらいしか、わたしたちには…」
名雪の言葉に、今、自分の思いつく最高の考えを言う佐祐理。
「それだけでも…良いと思う」
「竜也くん!まだ起きちゃダメだよ!」
そこへ、体中に包帯を巻いた竜也と、彼を支えるあゆがやってきた。
「誰にだって…できることに限りがある。戦えるおれたちが異常なだけ。みんなが無力だなんて全然…思わない。みんなが応援してくれたり、助けてくれることが…おれたちにとって何よりも力になるから…」
他の人の言葉なら納得がいかなかったかもしれない。だが、つらい過去を背負い、長い間戦ってきた竜也の言葉だから、肯定できた。
「祐一、舞さん、潤、久瀬さん、サトル、ミツル。確かに…今の状態じゃオーディンに勝てないかも…しれない。でもさ、何のために…特訓してきたの?こういった困難に立ち向かえるように…するからこそだよね?だから、オーディンの要求は受け入れない。…命を奪ってる時点で…それは正しいなんて言えない!」
それだけ言うと、竜也は床に膝を着いた。
一同は、竜也に身を案じ、駆け寄る。
「でも…今回ばかりは、一緒に戦えないや…。これから先の戦いで…みんなに迷惑かけたくないから…。肝心なところで…本当にごめん…」
「気にすんなよ。おれたちも結構休んだりして、迷惑かけたからな」
潤は竜也に肩を貸し、何とか立たせる。
「それも借りを返すうちの一つだ。任せておけ」
「ミツル…」
ミツルが微笑んで言うと、真琴も嬉しそうに笑った。
「わたしも、今回は行く…」
「おれたちの特訓の成果、今こそ見せる時だな」
舞と祐一も決意を新たに立ち上がった。
「僕もだ。これは自分の決断だからな」
「僕も。なゆちゃんや、みんなが好きだから」
久瀬とサトルは意志のこもった瞳で言う。
6人は、一斉に家を飛び出した。
昨日の採石場に着くと、そこには既にオーディンが高台で佇んでいた。
「答えは決まったか?」
「あぁ、決まったぜ」
オーディンの問いに、祐一たちはカードデッキを翳すという形で反応した。
「それが答えのようだな…」
オーディンは感情がないように呟く。
「変身っ!」
姿を変えたナイト、ファム、ライア、ゾルダ、タイガ、インペラー。
正直なところ、勝てる気がしなかった。昨日は惨敗だったうえに、今は一人、しかも最も頼りになる竜也が居ない。だが、逃げる訳にはいかない。竜也との約束だからだ。
オーディンは、仮面の奥で少しだけ表情を変える。だが、それがどういった表情かは分からない。
「私は、一人の妹を想う人間によって生みだされてから、長い間、意志を持たずに戦ってきた。だが、その人間が消えたと同時に、私は自由意志を手に入れた。そして、私が生まれた世界が消えてから、この世界に渡った」
オーディンの言葉にナイトは疑問を感じる。
「おまえが生まれた世界って…」
「私は、この世界の住人ではない。別の『龍騎の世界』で生み出された存在」
「別の『龍騎の世界』…?」
「平行世界というものだ。ここは、また別の『龍騎の世界』。この世界に渡ることができた理由は分からん。だが、この世界での私の役割は見つけられた。この世界を、真の平和へと導くことだ」
ライアは、憤りを感じた。
「だから、悪と言われる人間を殺すっていうのか!?」
「それこそが、平和への扉を開く鍵だ」
「言ってくれるな。王蛇のような、どうしようもない悪人を仲間にして、おれたちを殺そうとしておきながら…」
インペラーもオーディンに反論する。
「最初は本当に心のある者は、私に賛同するはずはない。だが、すでに私以外は王蛇のみ…。明らかに戦力不足だ。オマエ達を取り込まない限り」
「でもな…やっぱりアンタには賛同できないな」
「たとえ、どんなに悪い人でも、生きる権利はある…」
ゾルダとファムは、改めてオーディンの言葉を強く否定する。
「それに、なゆちゃんやみんなが悲しむ…」
「そして、命を奪ってる時点で、おまえは正しくない!」
オーディンは、鼻で笑う。
「やはり、ある程度、想像できた答えだったな。龍騎の入れ知恵だろう。まぁいい、これで心置きなく、オマエ達を消せる」
オーディンは組んでいた両腕を広げるが…
「…だが、今はその時ではない。奴らがこの世界に来る。それが済んでからだな」
そう言って、銀色のオーロラと共に姿を消した。
「覚えておくが良い。本当の敵は私ではない。いずれこの世界に悪魔が来る。全てを破壊する存在…ディケイド。それが本当の敵だ」
この言葉を残して。
竜也の家に戻ってきた祐一たち。
「大丈夫だった!?」
すぐさま駆け寄るあゆ。香里や佐祐理たちもそれに続く。
「あぁ、平気だった。何もせずにあいつは帰って行った」
ミツルは、説明する。
「ミツルぅ~…!」
真琴がミツルの声を聴いて、彼に飛びついた。彼女は少し泣いていた。よほど心配だったのだろう。ミツルは真琴の頭を撫でる。
「心配かけたな、真琴」
「サトちゃん…」
「大丈夫だよ。なゆちゃんが好きでいてくれるし、僕もなゆちゃんが好きだから。まだ負けられないよ」
名雪に対して優しく答えるサトル。
「久瀬さん、無事で何よりです」
佐祐理は穏やかに微笑んで言う。
「あ、あぁ…ありがとうございます…」
少しだけ、頬を赤くする久瀬。彼にはもう一つ戦う意味ができたようだ。
「北川君、これからもわたしたちを守ってくれる…?」
「あったりまえだ!おまえはおれの大切な彼女だからな!」
いつになく、不安そうに問う香里に自信ありげに答える潤。
いつもは、否定の言葉を言ったり、肘打ちで突っ込むが、今日は嬉しそうに微笑む香里。やはり、彼女も潤が好きなのだろう。
「舞、これからはおまえも…」
「もう少しだけ戦わせて。黙って見てるなんてできない。…それから休むから」
舞は祐一に懇願した。
「…ったく。もう少しだけだぞ」
祐一の言葉に、少しだけ頬を緩ませる舞。
6人は、この日常を守るためにも負けられないことを改めて誓う。
そして、一つだけ気になっている言葉。
ディケイド…。
いったい何者なのか?
オーディンは、ある人物と出会っていた。
「よく使ってくれてるようで、何よりだ」
その人物は、オーロラを眺めながら満足そうに言う。
「鳴滝か…。一つだけだが、条件は守った。龍騎達をディケイドと敵対するように誘導した。信じるかどうかは別だがな」
「それだけでも十分だ。ディケイドがここに来たなら、必ず倒してくれ」
「破壊するのならな…」
オーディンは、そう答えて去った。
鳴滝は、拳を握りしめる。
「いまだ旅を続け、破壊の影響を作り出す。おのれディケイド…!だが覚えておけ。ここが貴様の旅の終着点だ…!」
続く…。
次回!
龍騎の世界か…。
あれ、ここって百花屋じゃ…?
おれたちはいろんな世界を旅しているんだよ。
きっと、竜也君たちを助けることが、この世界での、士君の役割です。
さてと、お宝はどこかな?
あれが…ディケイド!?
第23話 「世界を旅する者」
全てを破壊し、全てを繋げ…!
キャスト
龍崎竜也=仮面ライダー龍騎
月宮あゆ
相沢祐一=仮面ライダーナイト
川澄舞=仮面ライダーファム
北川潤=仮面ライダーライア
美坂香里
美坂栞
久瀬シュウイチ=仮面ライダーゾルダ
倉田佐祐理
水瀬名雪
沢渡真琴
虎水サトル=仮面ライダータイガ
斎藤ミツル=仮面ライダーインペラー
鳴滝
仮面ライダーオーディン