仮面ライダー龍騎 ~EPISODE Kanon~ 作:龍騎鯖威武
第32話 「夢」
楽しかったクリスマスパーティーが終わり、竜也たちは自分たちの家へと帰り着いていた。
竜也は部屋の椅子に座って、ベッドを見つめていた。
ベッドでは、静かに寝息を立てているあゆ。
実は寝る前…。
「ね、ねぇ、竜也くん…」
「なに?」
「その…今日はボクが寝るまで、一緒にいてくれないかな?」
「えっ!?ど、どどど、どおして…!?だって…えぇっ!?」
あゆが顔をまっかにして言った言葉に、竜也はかなりうろたえる。
もちろん、年頃の男女が同じ部屋で寝るとなると、いろいろと問題がある。竜也にだって、それは分かっていた。
「だって、夜に一人で寝るの怖いもん…」
あゆは俯きつつ、ちらちらと竜也を見て言う。
変なことを考えていた竜也は、自分が恥ずかしく感じた。
「あ、そういうことか…。でも、今までは平気だったのに、どうして?」
「ううん、平気なんかじゃなかったよ…。今まで何度も何度も、このことを言おうかって考えてたんだよ。うぐぅ…でも…その…恥ずかしくって…。それに、竜也くんが嫌がったりしたら…。やっぱり、だめ?」
「良いんじゃないのか?」
ミツルが突如、会話に入る。
「おまえらは、2人でいればいい。おれは真琴と寝る。いつも4人バラバラなのは、距離がある。野郎同士で寝るのは御免だが…」
「あうっ…!」
隣で聞いていた真琴は、嬉しそうにミツルに飛びつく。
「こいつもそのほうが良いらしい。おまえらも、たまには良いだろ」
ちなみに、竜也の家は小さいが、4人ずつ部屋がある。今までバラバラだったのは、竜也が男女共に寝るのはあまり良いことではないし、それぞれのプライバシーを尊重した考えゆえである。
「そう…だね。あゆ、夜が怖かったら、そう言ってくれれば良いのに。おれは嫌がったりしない。おれなんかでよければ、一緒にいるよ?」
「うん、ありがと…」
というわけだ。
「…竜也…くん…」
「あゆ…?」
あゆが不意に呼ぶので、そちらを向くが未だに寝たままである。どうやら寝言らしい。
「…う…ん…」
寝返りを打ち、あらためて気持ちよさそうな表情で寝ているあゆを、竜也はこれ以上無いほど愛おしく感じた。
(いつか、戦いが終わって…。こんな時間が、ずっと過ごせるようになったら…)
城戸真司から託されたものとは言え、仮面ライダー龍騎として戦う日々は、モンスターを完全に倒し、オーディンの野望を食い止め、いつか完全に終止符を打ちたいと考えている。そして、ここにいるあゆと、ずっと静かに暮らしていきたい。
それは竜也が願う、他人のためではない、たった一つの自分に対する願望なのかもしれない。
ふと、あゆの頭をそっと撫でる。
柔らかくて細長い髪の感触をほんの少しだけ感じた。
(もしあゆが認めてくれるなら…大好きな君と一緒に…)
ィィン…
「!?」
一瞬だが、今モンスターの接近音がした。しかし、それらしきものは見当たらない。
気のせいかと思い、ふと床に目をやると…。
…自分の影がない。
ほんの少ししか明かりをつけていないため、確かに部屋は薄暗いが、隣のあゆには確かに影がある。
だが、自分には全くない。
「どこに…!?」
妙な焦りを感じ、辺りを見回す。
すると、見つけた。扉に張り付くように自分の影があった。
ゆっくりと近づき、手を伸ばす。
すると・・・。
ガシッ!
「うわぁっ!?」
影の中から真っ黒な腕が現れ、竜也を自らの影の中に引きずり込んだ。
「ん…くっ…。ここは…?」
竜也が目を覚ますと、そこは辺り一面、雪に覆われた真夜中の土地。開けた雪化粧をした平地の真ん中に大きな切り株がある。
なぜか懐かしい…。竜也はそう感じた。
「どうなってる・・・?」
状況を把握しようと立ち上がるとき、違和感を感じた。
手を見ると、身体は真紅に染まっていた。
いつも変身している、龍騎のスーツだ。
さらに、目の前には…。
「龍…騎…?」
そう、龍騎が立っていた。
だがその色は、本来の姿である龍騎の炎のような真紅ではなく、まるで闇を髣髴とさせるような漆黒。
「…ッ!!」
黒い龍騎は、龍騎に向かって襲い掛かる。
ガッ!
「ぐあっ!」
突然の攻撃に対応できずに、龍騎は吹き飛ばされる。
「まて、おまえは誰だ!?」
「…」
黒い龍騎は答えない。ただ黙って、龍騎に襲い掛かる。
ドガッ!
「うあっ!く、くそっ!」
龍騎は拳を振るうが、黒い龍騎には当たらない。紙一重で避けている。明らかに戦いを熟知した戦闘スタイルだ。
「答えろ、おまえは誰なんだ!?」
「…」
<ADVENT>
やはり黒い龍騎は答えず、アドベントカードを黒いドラグバイザーにベントインする。その音声は、龍騎たちのものとは異なり、地獄から這ってくるような、くぐもった低い声。
「グオオオオオオオオオォ!」
現れたのは、黒く染まったドラグレッダー。龍騎に向かって、今にも襲い掛かろうとしている。
「それならこっちも!」
<ADVENT>
「ガアアアアアアアアアァ!」
真紅のドラグレッダーと漆黒のドラグレッダーがぶつかり合う。
ゴオオオオオオオォ!ドゴォ!ズバッ!ガブッ!
炎を吐き、尾で叩き、爪で切り裂き、噛み付く。
だが、その攻撃の全てを黒いドラグレッダーが上回っていた。
その間も戦い続ける、龍騎たち。
「はあっ!だあっ!でぇっ!」「…」
龍騎の攻撃は全て避けられた。
まるで、自分のことのように次の手が読まれている。
ドガアアアアァ!
「ガアアアァ・・・!」
「ドラグレッダー!?」
ドラグレッダーは体力の限界が来たのか、力なく地面に倒れる。
それを好機と見たか、黒いドラグレッダーは龍騎に向かって急接近する。
「グオオオオオオオォ!」
ドガアアァ!
「ぐああああああああああぁ!」
龍騎は強烈な体当たりを受け、切り株に叩きつけられた。
「がはっ・・・うぁ・・・」
意識が朦朧としている・・・。
薄れゆく意識の中で、黒い龍騎は龍騎に近づき、拳を握り締めながら、くぐもった低い声でこう言った。
「思い出せ・・・。全てを・・・!」
そして意識が途切れる瞬間、黒い龍騎の握り締めた拳が、龍騎の視界一杯に広がった・・・。
「っ!?はぁっ・・・!はぁっ・・・!」
目を覚ますと、そこは先ほどの部屋。隣には、先ほどから変わらないように静かに寝息を立てているあゆがいる。
「夢…だったのか」
今まで、竜也は悪夢を見たことが無かった。
というのも、ここに戻ってくる前から、ずっと同じ夢を見続けているからだ。
幼いころの自分が、あゆと出会った日の夢。
この街に戻ってきた理由の一つでもあった。
だが、先ほどの夢は今まで見ていたものではなかった。
そして、あの黒い龍騎が言っていた…。
「思い出せ…。全てを…!」
まるで、自分の失くした全てを知っているかのような言葉。
そこから導き出される結論。
「あの夢の中にいた…あいつは、おれの記憶を知ってるのか…?」
そして、やってくる睡魔。
先ほどの悪夢の戦いは、現実と感じるほどリアルだった。
疲労も苦痛も。
残った疲労感と睡魔に任せて、竜也は目を閉じた。
夢…。
夢の中にいる…。
いつもと同じ…
ずっとずっと同じ風景の繰り返し…。
ゆっくりとまどろみに揺られながら…
ただひとつのことだけを願う…。
目を閉じて…
次に目を開けたとき…
別の風景が…
見えますようにと…。
その夢は、今まで見ていた夢の続きだった。
「あゆ~!」
「…」
このころのあゆは、今とは想像も出来ないほど暗かった。
たった一人の肉親である母親が、この世から居なくなってしまった。そのことが、あゆの心を冷たい氷の中に閉ざしていた。
「ごめんね、ちょっと遅刻しちゃった。でもよかったよ。僕との約束を守って、またここにきてくれて」
「…」
「そういえば、下の名前しか聞いていなかったね。苗字は?」
初めて出会ったあゆは泣きじゃくっており、名前を聞いても「あゆ」としか答えなかった。
だが…
「…月宮あゆ」
「月宮あゆだね。あらためて言うよ、僕は龍崎竜也」
竜也は7年前、自分の一人称は「僕」だった。16歳の半ばまで続いていたが、ある事をきっかけに「おれ」となった。
それはまた別の機会に話すとしよう。
手を差し出すが、あゆは手を後ろに隠したまま全く動こうとしない。
すると…。
くぅ~…
「う、うぐぅ…」
音が聞こえ、あゆが顔を真っ赤にしておなかを押さえる。
つまり…。
「おなかが減ったんだ。じゃあ、今日も行ってみる?たい焼き屋さん」
竜也が笑って聞くと、少しだけ頷く。
「いこう!」
それに味を占めた竜也は、あゆの手をとってたい焼き屋まで走った。
2人でベンチに座って、たい焼きをほおばる。
もちろん、このたい焼きは竜也の自腹だ。
「おいしい?」
「…きのうと味が違う…」
あゆは驚いて、たい焼きを見つめる。
「それは、きのうのあゆが泣いていたからだよ。涙はしょっぱいから。泣かないで食べたほうが、甘くておいしいでしょ?」
「…うん」
すこしだけ、真一文字だった口が、少しだけ上がる。
「あ、わらった!初めてわらってくれた!やったぁ!」
竜也は、あゆがほんの少しだけ笑ってくれたことに、これ以上ないほど喜んだ。
「…やさしいね、竜也くん」
「え…?」
「ずっと、泣いてばかりだったボクを、ずっとなぐさめてくれたもん」
心を少しずつ開いてゆく。一生懸命自分のことを気にかけている少年が、少女の心の氷を少しずつ溶かしていった。
「泣いてる子をほっとくなんて、僕にはできないな。あゆ、わらったほうが良いよ。そのほうが、ずっとかわいいから!」
「そ、そうかな…」
「そうだよ!わらったあゆ、僕は大好き!」
それから、どれくらいの時間遊んでいただろうか…。
そろそろ夕方になり、夜も近くなってくる。
「それじゃあね。あゆ!」
「あ、まって…!」
あゆは、走り去っていこうとした竜也を引き止める。
「どうしたの?」
「またあした、あそんでくれる?」
不安そうな面持ちであゆは尋ねる。
しかし、竜也は対照的に太陽のような笑顔で笑って、小指を差し出す。
「ゆびきり。約束したら、僕は守るよ?」
「…うん!」
あゆは、自分の小指を竜也の小指に絡める
「「指きった!」」
「じゃあ、またあした!」
そして、夜は明けてゆく…。
「竜也君、あゆちゃん!」「おい、いつまで寝ている!?」
朝、目が覚めると、ミツルとサトルが竜也に大急ぎで報告した。
「ど、どうしたの?」
「これをみろ」
ミツルが新聞を見せる。
「仮面ライダーは正義の味方!?」
記事には、今までの龍騎たちの活動を主に、モンスターと戦い、人々を救い続けていることなどが詳細に記されていた。
もっとも、その正体などについては皆無だったが。
「香川さんたちが何とかしてくれたんだ…」
「よかったよ…ほんとによかった…」
もちろん、人の反応はすぐに変わるものではないが、これなら竜也らが悪人扱いされることは、少しずつ減ってゆくだろう。
潤の怪我は、ほぼ完治しており、今日中には退院できるようだ。仮面ライダーであるが故の自己治癒力の高さと、彼の気力がここまで早めたのだろう。
「早く…復活しないと…」
ポケットには、竜也から再び返されたブランクになったライアのカードデッキ。
彼曰く、この状態では本来の仮面ライダーライアの能力の3分の1も発揮できないらしい。
「…?」
ふと、デッキの中のアドベントカードを1枚引く。
そこには「CONTRACT」と記されていた。
「たしか…モンスターと契約するためのカードだっけか?」
このカードをモンスターに翳すことで、そのモンスターと契約することが出来る。それを行って、初めて仮面ライダーの本当の力を発揮することが出来るのだ。
ただ、契約した場合、そのモンスターに他のモンスターの魂を喰らわせなければならないのだが。
本来、契約のカードは一人のライダーにつき1枚だけなのだが、このカードは以前、竜也が城戸真司から万が一のことに備えて渡されたものであった。
なお、出所は不明である。
ライアのデッキがブランクとなったとき、持っていた竜也がこのデッキに入れたらしい。
「エビルダイバーが居ない今、新しいモンスターと契約するほうが、復帰は早いよな」
思い立ったら、即行動。
潤は退院を待たず、病院を飛び出した。
キィィン…キィィン…
飛び出して間もなく、潤の前にモンスターが現れた。
「ちょうどいいタイミングだな、ガルドサンダー!」
そこにいたのは、オーディン直属のモンスター最後の生き残りであるガルドサンダー。
「おまえの力が必要だ。契約してくれ!」
そう言って、コントラクトのカードを翳す。
「クワアアアァ!」
ガルドサンダーは契約のカードに飛び掛ってくる。
その瞬間、辺りは光に包まれる。
そして何も無い空間に切り替わり、自然と潤の姿は仮面ライダーであった。
しかし、ライアであった鮮やかな紅色ではなく、くすんだ灰色を基調とした「ブランク態」である。
その身体はオレンジとレッドを混合した鮮やかな色に変わり、所々の形状も変化していく。
左手に在った召還機「ライドバイザー」も形状変化し、ガルドサンダーの翼を模した「ガルドバイザー」に変化する。
最後にオーディンほど雄々しくないが、鳳凰のレリーフが刻まれる。
「ここからが…本番だ!」
今ここに、仮面ライダーライアは復活した。
いや、生まれ変わったのだ。
「仮面ライダーブライ」へと…。
祐一と舞と久瀬は話をしている。
「竜也が言ってたよな。サバイブ」
無言で頷く舞。
久瀬が、新たに話し始める。
「オーディンの話だと6枚。その内、3枚はオーディン、2枚は城戸真司さんが、最後の1枚は行方不明…」
「…見つかるの?」
舞が悩むのも当然だ。
サバイブのカードをオーディンから奪うことはまず不可能。最後の1枚も探す手段はオーディンの方がいくらでもあるはず。可能性は0%ではないのだが、こちらで見つけるのは、難しいだろう。
とすると…。
「龍崎君が言っていた真司さん。その人を探すのが、一番安全且つ確実な手段だろう?」
「…でも城戸真司さんは、どこにいるかわからない」
「だから探すんだろ?真司さんが、オーディンに渡すことは多分ありえないしな。見つかって、サバイブカードを渡してもらえたら、勝機は上がる」
城戸真司…。
彼を探すことが、今出来る祐一達のサバイブの入手方法では、一番不可能に近い手段であることを、彼らはまだ知らない。
続く…。
次回!
真司さんを知っているんですか!?
だが、おまえ達は会えない
こんなやり方は間違ってます!
そんな…まさか…
お教えしましょう、この世界の真実を…
第33話「世界を守る者達」
キャスト
龍崎竜也=仮面ライダー龍騎
月宮あゆ
相沢祐一=仮面ライダーナイト
川澄舞=仮面ライダーファム
北川潤=仮面ライダーライア/仮面ライダーブライ
久瀬シュウイチ=仮面ライダーゾルダ
沢渡真琴
虎水サトル=仮面ライダータイガ
斉藤ミツル=仮面ライダーインペラー
???=黒い仮面ライダー龍騎