仮面ライダー龍騎 ~EPISODE Kanon~   作:龍騎鯖威武

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第七章 夢の記憶
第32話 「夢」


楽しかったクリスマスパーティーが終わり、竜也たちは自分たちの家へと帰り着いていた。

 

竜也は部屋の椅子に座って、ベッドを見つめていた。

ベッドでは、静かに寝息を立てているあゆ。

実は寝る前…。

 

「ね、ねぇ、竜也くん…」

「なに?」

「その…今日はボクが寝るまで、一緒にいてくれないかな?」

「えっ!?ど、どどど、どおして…!?だって…えぇっ!?」

あゆが顔をまっかにして言った言葉に、竜也はかなりうろたえる。

もちろん、年頃の男女が同じ部屋で寝るとなると、いろいろと問題がある。竜也にだって、それは分かっていた。

「だって、夜に一人で寝るの怖いもん…」

あゆは俯きつつ、ちらちらと竜也を見て言う。

変なことを考えていた竜也は、自分が恥ずかしく感じた。

「あ、そういうことか…。でも、今までは平気だったのに、どうして?」

「ううん、平気なんかじゃなかったよ…。今まで何度も何度も、このことを言おうかって考えてたんだよ。うぐぅ…でも…その…恥ずかしくって…。それに、竜也くんが嫌がったりしたら…。やっぱり、だめ?」

「良いんじゃないのか?」

ミツルが突如、会話に入る。

「おまえらは、2人でいればいい。おれは真琴と寝る。いつも4人バラバラなのは、距離がある。野郎同士で寝るのは御免だが…」

「あうっ…!」

隣で聞いていた真琴は、嬉しそうにミツルに飛びつく。

「こいつもそのほうが良いらしい。おまえらも、たまには良いだろ」

ちなみに、竜也の家は小さいが、4人ずつ部屋がある。今までバラバラだったのは、竜也が男女共に寝るのはあまり良いことではないし、それぞれのプライバシーを尊重した考えゆえである。

「そう…だね。あゆ、夜が怖かったら、そう言ってくれれば良いのに。おれは嫌がったりしない。おれなんかでよければ、一緒にいるよ?」

「うん、ありがと…」

 

というわけだ。

「…竜也…くん…」

「あゆ…?」

あゆが不意に呼ぶので、そちらを向くが未だに寝たままである。どうやら寝言らしい。

「…う…ん…」

寝返りを打ち、あらためて気持ちよさそうな表情で寝ているあゆを、竜也はこれ以上無いほど愛おしく感じた。

(いつか、戦いが終わって…。こんな時間が、ずっと過ごせるようになったら…)

城戸真司から託されたものとは言え、仮面ライダー龍騎として戦う日々は、モンスターを完全に倒し、オーディンの野望を食い止め、いつか完全に終止符を打ちたいと考えている。そして、ここにいるあゆと、ずっと静かに暮らしていきたい。

それは竜也が願う、他人のためではない、たった一つの自分に対する願望なのかもしれない。

ふと、あゆの頭をそっと撫でる。

柔らかくて細長い髪の感触をほんの少しだけ感じた。

(もしあゆが認めてくれるなら…大好きな君と一緒に…)

 

 

ィィン…

 

「!?」

一瞬だが、今モンスターの接近音がした。しかし、それらしきものは見当たらない。

気のせいかと思い、ふと床に目をやると…。

 

…自分の影がない。

 

ほんの少ししか明かりをつけていないため、確かに部屋は薄暗いが、隣のあゆには確かに影がある。

だが、自分には全くない。

「どこに…!?」

妙な焦りを感じ、辺りを見回す。

すると、見つけた。扉に張り付くように自分の影があった。

ゆっくりと近づき、手を伸ばす。

すると・・・。

 

ガシッ!

 

「うわぁっ!?」

影の中から真っ黒な腕が現れ、竜也を自らの影の中に引きずり込んだ。

 

「ん…くっ…。ここは…?」

竜也が目を覚ますと、そこは辺り一面、雪に覆われた真夜中の土地。開けた雪化粧をした平地の真ん中に大きな切り株がある。

なぜか懐かしい…。竜也はそう感じた。

「どうなってる・・・?」

状況を把握しようと立ち上がるとき、違和感を感じた。

手を見ると、身体は真紅に染まっていた。

いつも変身している、龍騎のスーツだ。

さらに、目の前には…。

 

「龍…騎…?」

 

そう、龍騎が立っていた。

だがその色は、本来の姿である龍騎の炎のような真紅ではなく、まるで闇を髣髴とさせるような漆黒。

「…ッ!!」

黒い龍騎は、龍騎に向かって襲い掛かる。

ガッ!

「ぐあっ!」

突然の攻撃に対応できずに、龍騎は吹き飛ばされる。

「まて、おまえは誰だ!?」

「…」

黒い龍騎は答えない。ただ黙って、龍騎に襲い掛かる。

ドガッ!

「うあっ!く、くそっ!」

龍騎は拳を振るうが、黒い龍騎には当たらない。紙一重で避けている。明らかに戦いを熟知した戦闘スタイルだ。

「答えろ、おまえは誰なんだ!?」

「…」

<ADVENT>

やはり黒い龍騎は答えず、アドベントカードを黒いドラグバイザーにベントインする。その音声は、龍騎たちのものとは異なり、地獄から這ってくるような、くぐもった低い声。

「グオオオオオオオオオォ!」

現れたのは、黒く染まったドラグレッダー。龍騎に向かって、今にも襲い掛かろうとしている。

「それならこっちも!」

<ADVENT>

「ガアアアアアアアアアァ!」

真紅のドラグレッダーと漆黒のドラグレッダーがぶつかり合う。

ゴオオオオオオオォ!ドゴォ!ズバッ!ガブッ!

炎を吐き、尾で叩き、爪で切り裂き、噛み付く。

だが、その攻撃の全てを黒いドラグレッダーが上回っていた。

その間も戦い続ける、龍騎たち。

「はあっ!だあっ!でぇっ!」「…」

龍騎の攻撃は全て避けられた。

まるで、自分のことのように次の手が読まれている。

ドガアアアアァ!

「ガアアアァ・・・!」

「ドラグレッダー!?」

ドラグレッダーは体力の限界が来たのか、力なく地面に倒れる。

それを好機と見たか、黒いドラグレッダーは龍騎に向かって急接近する。

「グオオオオオオオォ!」

ドガアアァ!

「ぐああああああああああぁ!」

龍騎は強烈な体当たりを受け、切り株に叩きつけられた。

「がはっ・・・うぁ・・・」

意識が朦朧としている・・・。

薄れゆく意識の中で、黒い龍騎は龍騎に近づき、拳を握り締めながら、くぐもった低い声でこう言った。

 

「思い出せ・・・。全てを・・・!」

 

そして意識が途切れる瞬間、黒い龍騎の握り締めた拳が、龍騎の視界一杯に広がった・・・。

 

 

 

 

 

「っ!?はぁっ・・・!はぁっ・・・!」

目を覚ますと、そこは先ほどの部屋。隣には、先ほどから変わらないように静かに寝息を立てているあゆがいる。

「夢…だったのか」

今まで、竜也は悪夢を見たことが無かった。

というのも、ここに戻ってくる前から、ずっと同じ夢を見続けているからだ。

 

幼いころの自分が、あゆと出会った日の夢。

 

この街に戻ってきた理由の一つでもあった。

だが、先ほどの夢は今まで見ていたものではなかった。

そして、あの黒い龍騎が言っていた…。

 

「思い出せ…。全てを…!」

 

まるで、自分の失くした全てを知っているかのような言葉。

そこから導き出される結論。

「あの夢の中にいた…あいつは、おれの記憶を知ってるのか…?」

そして、やってくる睡魔。

先ほどの悪夢の戦いは、現実と感じるほどリアルだった。

疲労も苦痛も。

残った疲労感と睡魔に任せて、竜也は目を閉じた。

 

 

 

夢…。

 

夢の中にいる…。

 

いつもと同じ…

 

ずっとずっと同じ風景の繰り返し…。

 

ゆっくりとまどろみに揺られながら…

 

ただひとつのことだけを願う…。

 

目を閉じて…

 

次に目を開けたとき…

 

別の風景が…

 

見えますようにと…。

 

 

その夢は、今まで見ていた夢の続きだった。

「あゆ~!」

「…」

このころのあゆは、今とは想像も出来ないほど暗かった。

たった一人の肉親である母親が、この世から居なくなってしまった。そのことが、あゆの心を冷たい氷の中に閉ざしていた。

「ごめんね、ちょっと遅刻しちゃった。でもよかったよ。僕との約束を守って、またここにきてくれて」

「…」

「そういえば、下の名前しか聞いていなかったね。苗字は?」

初めて出会ったあゆは泣きじゃくっており、名前を聞いても「あゆ」としか答えなかった。

だが…

「…月宮あゆ」

「月宮あゆだね。あらためて言うよ、僕は龍崎竜也」

竜也は7年前、自分の一人称は「僕」だった。16歳の半ばまで続いていたが、ある事をきっかけに「おれ」となった。

それはまた別の機会に話すとしよう。

手を差し出すが、あゆは手を後ろに隠したまま全く動こうとしない。

すると…。

 

くぅ~…

 

「う、うぐぅ…」

音が聞こえ、あゆが顔を真っ赤にしておなかを押さえる。

つまり…。

「おなかが減ったんだ。じゃあ、今日も行ってみる?たい焼き屋さん」

竜也が笑って聞くと、少しだけ頷く。

「いこう!」

それに味を占めた竜也は、あゆの手をとってたい焼き屋まで走った。

 

2人でベンチに座って、たい焼きをほおばる。

もちろん、このたい焼きは竜也の自腹だ。

「おいしい?」

「…きのうと味が違う…」

あゆは驚いて、たい焼きを見つめる。

「それは、きのうのあゆが泣いていたからだよ。涙はしょっぱいから。泣かないで食べたほうが、甘くておいしいでしょ?」

「…うん」

すこしだけ、真一文字だった口が、少しだけ上がる。

「あ、わらった!初めてわらってくれた!やったぁ!」

竜也は、あゆがほんの少しだけ笑ってくれたことに、これ以上ないほど喜んだ。

「…やさしいね、竜也くん」

「え…?」

「ずっと、泣いてばかりだったボクを、ずっとなぐさめてくれたもん」

心を少しずつ開いてゆく。一生懸命自分のことを気にかけている少年が、少女の心の氷を少しずつ溶かしていった。

「泣いてる子をほっとくなんて、僕にはできないな。あゆ、わらったほうが良いよ。そのほうが、ずっとかわいいから!」

「そ、そうかな…」

「そうだよ!わらったあゆ、僕は大好き!」

 

それから、どれくらいの時間遊んでいただろうか…。

そろそろ夕方になり、夜も近くなってくる。

「それじゃあね。あゆ!」

「あ、まって…!」

あゆは、走り去っていこうとした竜也を引き止める。

「どうしたの?」

「またあした、あそんでくれる?」

不安そうな面持ちであゆは尋ねる。

しかし、竜也は対照的に太陽のような笑顔で笑って、小指を差し出す。

「ゆびきり。約束したら、僕は守るよ?」

「…うん!」

あゆは、自分の小指を竜也の小指に絡める

「「指きった!」」

「じゃあ、またあした!」

 

そして、夜は明けてゆく…。

 

 

 

 

「竜也君、あゆちゃん!」「おい、いつまで寝ている!?」

朝、目が覚めると、ミツルとサトルが竜也に大急ぎで報告した。

「ど、どうしたの?」

「これをみろ」

ミツルが新聞を見せる。

 

「仮面ライダーは正義の味方!?」

 

記事には、今までの龍騎たちの活動を主に、モンスターと戦い、人々を救い続けていることなどが詳細に記されていた。

もっとも、その正体などについては皆無だったが。

「香川さんたちが何とかしてくれたんだ…」

「よかったよ…ほんとによかった…」

もちろん、人の反応はすぐに変わるものではないが、これなら竜也らが悪人扱いされることは、少しずつ減ってゆくだろう。

 

潤の怪我は、ほぼ完治しており、今日中には退院できるようだ。仮面ライダーであるが故の自己治癒力の高さと、彼の気力がここまで早めたのだろう。

「早く…復活しないと…」

ポケットには、竜也から再び返されたブランクになったライアのカードデッキ。

彼曰く、この状態では本来の仮面ライダーライアの能力の3分の1も発揮できないらしい。

「…?」

ふと、デッキの中のアドベントカードを1枚引く。

そこには「CONTRACT」と記されていた。

「たしか…モンスターと契約するためのカードだっけか?」

このカードをモンスターに翳すことで、そのモンスターと契約することが出来る。それを行って、初めて仮面ライダーの本当の力を発揮することが出来るのだ。

ただ、契約した場合、そのモンスターに他のモンスターの魂を喰らわせなければならないのだが。

本来、契約のカードは一人のライダーにつき1枚だけなのだが、このカードは以前、竜也が城戸真司から万が一のことに備えて渡されたものであった。

なお、出所は不明である。

ライアのデッキがブランクとなったとき、持っていた竜也がこのデッキに入れたらしい。

「エビルダイバーが居ない今、新しいモンスターと契約するほうが、復帰は早いよな」

思い立ったら、即行動。

潤は退院を待たず、病院を飛び出した。

 

キィィン…キィィン…

 

飛び出して間もなく、潤の前にモンスターが現れた。

「ちょうどいいタイミングだな、ガルドサンダー!」

そこにいたのは、オーディン直属のモンスター最後の生き残りであるガルドサンダー。

「おまえの力が必要だ。契約してくれ!」

そう言って、コントラクトのカードを翳す。

「クワアアアァ!」

ガルドサンダーは契約のカードに飛び掛ってくる。

その瞬間、辺りは光に包まれる。

 

そして何も無い空間に切り替わり、自然と潤の姿は仮面ライダーであった。

しかし、ライアであった鮮やかな紅色ではなく、くすんだ灰色を基調とした「ブランク態」である。

その身体はオレンジとレッドを混合した鮮やかな色に変わり、所々の形状も変化していく。

左手に在った召還機「ライドバイザー」も形状変化し、ガルドサンダーの翼を模した「ガルドバイザー」に変化する。

最後にオーディンほど雄々しくないが、鳳凰のレリーフが刻まれる。

「ここからが…本番だ!」

今ここに、仮面ライダーライアは復活した。

いや、生まれ変わったのだ。

 

「仮面ライダーブライ」へと…。

 

祐一と舞と久瀬は話をしている。

「竜也が言ってたよな。サバイブ」

無言で頷く舞。

久瀬が、新たに話し始める。

「オーディンの話だと6枚。その内、3枚はオーディン、2枚は城戸真司さんが、最後の1枚は行方不明…」

「…見つかるの?」

舞が悩むのも当然だ。

サバイブのカードをオーディンから奪うことはまず不可能。最後の1枚も探す手段はオーディンの方がいくらでもあるはず。可能性は0%ではないのだが、こちらで見つけるのは、難しいだろう。

とすると…。

「龍崎君が言っていた真司さん。その人を探すのが、一番安全且つ確実な手段だろう?」

「…でも城戸真司さんは、どこにいるかわからない」

「だから探すんだろ?真司さんが、オーディンに渡すことは多分ありえないしな。見つかって、サバイブカードを渡してもらえたら、勝機は上がる」

 

城戸真司…。

 

彼を探すことが、今出来る祐一達のサバイブの入手方法では、一番不可能に近い手段であることを、彼らはまだ知らない。

 

 

 

続く…。

 

 

 

 

 

次回!

 

                       真司さんを知っているんですか!?

 

だが、おまえ達は会えない

 

                       こんなやり方は間違ってます!

 

そんな…まさか…

 

                       お教えしましょう、この世界の真実を…

 

 

 

 

 

 

第33話「世界を守る者達」

 

 






キャスト

龍崎竜也=仮面ライダー龍騎

月宮あゆ

相沢祐一=仮面ライダーナイト
川澄舞=仮面ライダーファム

北川潤=仮面ライダーライア/仮面ライダーブライ
久瀬シュウイチ=仮面ライダーゾルダ

沢渡真琴
虎水サトル=仮面ライダータイガ
斉藤ミツル=仮面ライダーインペラー

???=黒い仮面ライダー龍騎
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