仮面ライダー龍騎 ~EPISODE Kanon~ 作:龍騎鯖威武
ガッ!
M龍騎を攻撃するインペラーを、アギトSFが何とか押さえ込む。
その力は強力で、インペラーは必死に振りほどこうとするも、全く離れることはなかった。
「落ち着くんだミツル君!俺たちが必ず真琴ちゃんと竜也君を救う方法を見つける!だから…」
「それじゃ時間が無いんだろう!?真琴は絶対に守る!もう、あいつに苦しんで欲しくないんだ!もう、独りぼっちになることも嫌なんだよぉ!」
インペラーの声が上擦っているあたり、恐らく泣いているのだろう。ミツルが涙を流すことなど、M龍騎の中にいる竜也は孤児院で見たとき以来だった。
アギトSFはどうしようもない気持ちになり、一瞬だけ力が緩んでしまう。
その瞬間、インペラーはアギトSFの腕から抜け出し、M龍騎に再度、襲い掛かる。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉ!」
ドガァ!ガッ!
「ウアァ!お前っ…グアァ!落ち着けよ!(ミツル…)」
M龍騎は必死にインペラーの攻撃を防ごうとするが、かなり威力が高く、防御の体制で吹き飛ばされてしまう。
そのとき…
「(ぐあぁっ!頭が…!)お、おい坊主、どうした!?」
M龍騎の中にいる竜也の意識が頭痛を感じた。しかし、モモタロスは全く感じない。
そして竜也の意識の中に、あの声が語りかけてきた。
消エルノハ…アイツダ…!
「ウオオオオ!?」
さらに、モモタロスは竜也の体から弾き飛ばされた。憑依が解ける条件は、憑依した人間の肉体に強烈な衝撃を受けるか、憑依したイマジンが自発的に体から抜けるか、憑依した人間の意識が無理やりイマジンを追い出すことのみ。
しかし、最後の点は憑依される人間が時間の干渉を受けない「特異点」と言われる存在である場合のみ。竜也はそれに該当しない。
モモタロスの憑依が解けた理由も、上記のどれにも該当しない。
「はあっ!」
ガッ!
「…なに!?」
攻撃を防いだ龍騎は、インペラーを睨みつける。
「…っ!?」
それだけで、インペラーに強烈な悪寒が走った。
「…グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォ!!」
以前のように、龍騎は獣のような雄叫びをあげる。
ドガガガガッガガッガガ!!
「ぐあああああああぁ!?」
戦闘スタイルも滅茶苦茶になり、インペラーをボコボコに殴りつける。
タコ殴りとは、このことを言うのだろうか。
「やめて竜也くんっ!ミツルさんが死んじゃうよ!」「よせ、やめるんだ!」
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァ!」
あゆとアギトSFが龍騎を押さえつけるが、それでも暴れようと抵抗する龍騎。
「竜也っ!?」
そこにオーロラが現れ、中から祐一、舞、久瀬、佐祐理の4人がヒビキと野上良太郎と共に飛び出してきた。
目の前の状況を上手く飲み込めなかった。
そこには、ぐったりとしたインペラーと、雄叫びをあげながら暴れる龍騎、そしてそれを必死に止めるアギトSFとあゆ。
「あれって…」
野上良太郎は暴れる龍騎を見つめて、何かを考える。
「グワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァ!!」
「きゃあっ!」「あゆちゃん!?」
龍騎はあゆを振り払い、その拍子にあゆは地面に倒れる。
アギトSFが押さえつけているものの、下手をすれば龍騎は彼の手を抜けて、周りの人間に危害を加えるかもしれない。
「もうやめて!お願いだよっ!」
「ガアアアアァ…!?」
倒れても起き上がったあゆは、次に龍騎を強く抱きしめた。
突如、龍騎は急に大人しくなる。
「…あ、あゆ?何で、おれにくっついてるの?」
次に発した声は普段と変わらない、いつもの竜也が不思議そうに、そして優しそうに尋ねる声だった。
「戻ったの…?」「戻ったって、何が?」
龍騎は先程の記憶が全くないらしい。
「一体どうしたんだよ、おまえ?」「あんな龍崎君、見たことない…」
「え?…え?」
久瀬や祐一が信じられないといった表情で龍騎を見つめている。
状況が掴めず、混乱している龍騎。
「ぐぅ…」
頭を抱えながら、ゆっくりと起き上がるインペラー。その間に変身は解け、ミツルの姿へと戻った。
アギトSFと龍騎も、津上翔一と竜也の姿に戻る。
それを少し離れた場所で見ている青年。穏やかな表情が印象的だった。
ただ、今の表情は悲しさを強く物語っている。
竜也達から視線を外し、灰色の雪雲に染まった空を見上げて、こう呟く。
「今日の空…澱んでるなぁ…」
それから数時間後、名雪とサトルは水瀬家へと帰り着き、竜也を探すことも忘れ、名雪は部屋に閉じこもり、サトルはその部屋の前でじっとしていた。
「なゆちゃん…。僕、君の悲しみを受け止められないのかな…」
ドアの前で呟くサトル。返事はない。
部屋の中では、隅で座り込み、以前のサトルの様に、瞳から光が消え去った名雪がいる。
「…僕ね、君のことが大好きだよ、何よりも…。だから、なゆちゃんが二度と笑えなくなるなんて…嫌だ!だから僕は…竜也君を…消す」
サトルもそんなことが正しいとは微塵も思っていない。だが、それしか方法はないのだ。
ずっと、自分を想い、支えてくれた名雪。どうしても彼女が笑顔であり続けられるようにしたい。この世界を守りたい。
その想いが竜也を守ると言う想いより強かっただけの話だ。
水瀬家を飛び出したサトル。
「そんな…」
竜也は、祐一達から、自分自身がどんな暴挙に出たか、野上良太郎達から、剣崎一真達が物語の矯正を始め、それを止めて欲しいなら、自分を消すようミツル達に言い寄ってきたことを知らされた。
「おまえっ!竜也を消すことに賛成するのかよ!?」
祐一がミツルの胸倉を掴んで叫ぶ。
それを払い除けて、ミツルが言い返した。
「おまえに何が分かる!?やっと心から愛せる人に再会できたのに、それをもう一度失うかも知れない恐怖が、おまえに分かるのか!?」
「祐一っ!ミツルっ!」「やめてください!」
だが、竜也や佐祐理がそれを引き剥がす。
「ミツル。まず、おれはミツルにとんでもない事をしてしまった。ごめん…」
「…やめろ」
頭を下げる竜也。
彼が悪いわけじゃない。むしろ自分が悪い。ミツルにも、それくらいは分かっていた。
だが、真琴を守るためには…。
美汐が傍に寄り添っているが、息を荒げ、意識が無い真琴を見つめるミツル。
「ミツルさん、真琴ちゃんが大好きなのは分かるよ。でも、竜也くんを連れて行かないで…。お願いだから…」
あゆが、今にも泣きそうな顔で懇願する。
「じゃあ…真琴を見殺しにしろと言うのか!?」
「あなたは、竜也が消えても良いの?」
「良いわけない!でも、真琴を失うことも、おれには耐えられない…」
ミツルにも何が正解で、何が間違っているのかさえ分からない。舞の質問に対する返答も矛盾してしまう。
「おれのせいで…みんなの幸せが壊れていく…」
地面を見つめ、強く拳を握り締める。
「竜也くん…」
「最悪だね、おれ。人を守る存在になりたかったのに、どんどん離れていくよ…」
悲しくて仕方ない。
それなのに…。
涙が流せなかった。
「竜也っ!」
潤が走ってきた。
竜也は自然と悪い方向へと考えてしまうようになった。
「潤も、おれを…?」
「違う。おれには、さっぱりわかんねぇ!」
しかし、潤は必ずしもそうではなかった。彼もまた苦悩していた。
「香里や栞ちゃんの苦しんでる姿は見たくない!でもよ、おまえを消したら、あの2人は結局、責任を感じて苦しむし、おれ自身もおまえを消したくはない。どっちを選べばいいか、わからねぇ!」
「僕は選んだよ」
潤の言葉に答えるようにサトルが現れた。
「なゆちゃんが、笑えなくなるなんて、嫌なんだ。だから君を消すよ、竜也君」
淡々と話していたが、その表情は苦痛に歪んでいた。
「なんで全部、竜也君が悪いの!?」
あゆが強く言い放ち、周囲は静まり返った。
「どうして、みんな悩めるの…?…ボクは…ボクはっ!」
「仲間だからだよ」
津上翔一が彼女の肩に手を置いて言う。
「みんな、竜也君のことを心から大切な仲間と思うから、世界や自分の愛するものと天秤にかけられる位、大切なんだよ」
「…やはり、そのようだな」
深いため息と共に聞こえた声。主は剣崎一真だった。
竜也たちは身構えるが、今の剣崎一真に敵意は感じられなかった。
「時間をやる。明日までにもう一度、どうするか考えろ。尤も、俺達の要求を聞き入れない場合は、武力行使だがな」
そう言い捨てて、オーロラを呼び出す。
「だが俺は…いや俺達は、お前達が運命を自ら切り開くことを、どこかで期待しているかもしれない」
この言葉は、竜也達には聞こえないような小さい声だった。
「この話し合いに、僕らは参加できない」
「俺達は一旦離れる。お前達のことは、お前達自身で決めろよな」
そう言って、ヒビキ、津上翔一、野上良太郎は別のオーロラの中に消えた。
残ったのは、竜也、祐一、舞、潤、久瀬、サトル、ミツルの仮面ライダー達。
そして、あゆ、佐祐理、美汐、意識の無い真琴の4人。
「どうして、こうなったんだろう…」
ポツリと呟く竜也。
「安心しろ、他の奴がなんと言おうと、おれはおまえの味方だ」
「わたしも…」「佐祐理もです!」
祐一と舞、そして佐祐理は、竜也のことを心から守ろうと考えている。
「だが、あの剣崎一真さん達から、仮に守りきれたとしても結局、世界は崩壊するんじゃないのか…?」
久瀬はどちらに着けばいいのか分からず、右往左往しているようだ。
「だからってよ、竜也を消すことに賛成しろって言うのか?こいつが言ってたろ、おれ達を人殺しにしたくないって!こいつを消すどころか、こいつの思いも無駄にするつもりかよ!?」
気持ちをストレートにしかぶつけられない潤は、とりあえず自分の考えていることを口にする。だが、それは彼なりに、必死に考えた言葉であることは間違いない。
「でもこのままじゃ、世界は崩壊するし、秋子さんやなゆちゃん、真琴ちゃん、栞ちゃんが、取り返しのつかないことになる!君だって、香里ちゃんや栞ちゃんとの事で、迷ってるはずだよね!?」
「それに、おれもサトルも、竜也がおれ達をどれだけ大切にしているかくらい分かっている。…だがおれは、自分のエゴを通したい。真琴を…救いたい!」
一方のミツルとサトルは、どうしても、自分の大切な人を守ろうとしている。
もともと、彼らが今のようになれたのは、真琴や名雪の存在が大きかった。それゆえに、彼女達を守りたい気持ちが強いのだろう。
美汐やあゆは、彼らの辛さを知っているため、何も口に出来ず、ただ唇を強く噛むことしか出来なかった。
「…おれのことだから、おれ自身で決めたい。みんなは家に帰って。…もしかしたら、明日は敵になってるかもしれない。だから、ちゃんと仲間でいられるのは、今日が最後かもしれない」
竜也が言う。いつものような意志のはっきりした、それに強い口調ではなかった。
「ありがとう。今まで一緒に戦ってくれて」
歩き去った竜也。しかし、彼は家に戻ることは無いだろう。そこには、あゆ、ミツル、真琴が新たな居場所としているからだ。
駅前の公園。
「なゆちゃん。僕、また分からないよ。…昔と何も変わってないね。全然、前に進めていないよ…」
サトルは一人で呟いていた。
「…サトちゃん。雪、積もってるよ」
聞こえるはずの無い声と思ったが、そこには確かに名雪がいた。
「わたしね…」
竜也の家。
「肝心なところで、あんなに荒れるなんて…。格好がつかないな」
ベッドで横になっている真琴に語りかけるミツル。
「おまえの声、また聞きたいよ…。そうすれば…」
その言葉に呼応するかのように、うっすら目を明けた真琴。
「真琴っ…!?」
「あうぅ…」
真琴は儚げに微笑みながら、ミツルの頬をそっと撫でる。
そして小さかったが、はっきりと聞こえた。
「ミツルぅ…。あたし、ミツルを支えられる?」
栞の病室。
今は体調が幾分、安定しているため、一般病棟へ移されたらしい。
「香里…」
そこへやってきた潤。栞のベッドの横で、香里がずっと彼女の顔を見ている。
「…昔ね、栞が病気になったときに、もうすぐ死ぬかもって言われたの。この子を失う辛さから逃げるために、妹なんていないって振舞ってた。病気が治って、わたしはきっと嫌な姉になったと思ってた。でも栞は、そんなことお構いなしにわたしと接してくれた。…なのに…こんなときに限って…何もしてあげられない…」
香里は肩を震わせて、泣いていた。潤は、自分で決めてきた言葉を口にした。
「…おれ、香里にも栞ちゃんにも、何もしてやれなかった。でも、2人を大切にしてるつもりだ。だから、おまえの願いなら叶える。…どうする?」
祐一と舞。
「必死に悩んでるんだよな、あいつらも」
「優しいから…。だから、みんな悩んでる」
2人は、紅渡達が物語の矯正を行なったとき、影響の無かった者たちだ。
だからこそ、苦悩らしい苦悩はしていない。
それこそが苦悩なのだろう。
「祐一は…?」
久瀬と佐祐理
「やっぱり、悩んでしまうのですね?」
「はい…」
佐祐理の言葉には、悲しさがあった。といっても、久瀬を責めていた訳ではなく、仲間同士で争う虚しさを痛感していたからだ。
「佐祐理もです。みんなのまえでは竜也さんを守りたいって言ってましたけど、実際はどうすればいいか、分からないんです。…世界が崩壊すると言う話も、信じたくないのですけれど、もしそうなったらって…怖くて…」
そして、自分にやれることが見つからないことも、悲しさを強くさせていた。
久瀬は佐祐理に向かって、強く言った。
「…こんなときだからこそ、しっかりしないといけませんね。あなたが不安にならないように」
竜也は1人で、城戸真司が乗っていた橙色のスクーターを走らせていた。
このバイクが城戸真司のように、何をするべきか導いてくれるかもしれないと思っていた。
実際は、そのようなことは有り得ないのだが。
(このバイクに乗るのは、この街に来たとき以来だったな…)
何気なくそう考えていた。
自分の故郷である「雪の街」が良く見える高台にスクーターをとめ、そのすぐ近くに座った。
「…苦しいよね」
ふと声をかけられた。そこには、30代ほどの青年がいた。
先ほど、竜也達のことを遠くから見ていた者なのだが、それを竜也は知らない。
「あなたは…?」
「俺は2001の特技を持つ男、五代雄介。よろしく」
そう言って、自分の名刺を渡した「五代雄介」は、竜也の隣に座り込む。
名詞には、先ほどの「2001の特技を持つ男」という言葉と、五代雄介自身をイメージしたのか、キャラクターが「サムズアップ」をしたイラストも載せてある。
彼の名前に聞き覚えがあった。
ヒビキが言っていた「オリジナルの仮面ライダー」のリーダー。
「五代雄介さんって、…もしかして渡さんや、良太郎さんの仲間の?」
「そう。真司と一緒に、君を消さずに世界を救う方法をずっと探していたんだ。…まだ、見つかってないけどね」
申し訳なさそうに笑う五代雄介。なぜか竜也は、彼を見ていると心が落ち着く。
一方、五代雄介は急に表情が曇る。
「…話は戻るけどさ。竜也君達の事、全部じゃないけど見せてもらった」
「この世界は崩壊しつつある理由が、おれだなんて…。人を守るどころか、破壊者だなんて…。それに」
五代雄介の方を向いて、怯えるように言う竜也。
「かけがえのない友達を攻撃してしまったんです。そのことを全く覚えてなくて…。もしかしたら、おれには破壊者に相応しい本性があるのかって思うと…」
「それは君じゃない」
竜也の言葉を遮るように、五代雄介は断言した。
「俺達は物語に大きな干渉はできるけど、この世界の状態じゃ、そのことについての真実を話すことは出来ない。干渉とみなされ、その影響で世界が壊れるかもしれないからね。でも、その君の知らない君は、君の意志じゃない」
その言葉から察するに、竜也にはまだ彼らの話せない大きな謎があるようだ。
「…結局、君はどうありたいの?世界とか関係なく、君自身は」
優しく問いかける五代雄介によって、竜也は気がついた。
いままで、自分のことではなくて、周りの人や世界のことばかり考え、自分の意見は抑え付けてしまっていた。
「もっと、我侭になってもいいと思うな。だって、君はこんなにも人を思いやれるんだから。…ね!」
その言葉の後に、親指を立てて竜也の前に差し出した。「サムズアップ」だ。
この仕草には「許す」という意味がある。
五代雄介は、もっと自分中心に考えても良いよと、許しを出したのだろう。
そうでないと、竜也は他の人のことばかり、考えてしまうはずだから。
「…五代さん、おれは」
次の日の朝。
竜也は城戸真司のスクーターに乗って、昨日と同じ場所に訪れた。
「真司さん。もし見ているなら、おれに勇気を下さい」
スクーターから降りるとき、城戸真司に話しかけるように呟いた。
「決まりましたか…?」
紅渡がいつの間にか現れ、竜也に問いかけた。後ろには、剣崎一真、天道総司、乾巧がいる。
「おれ達も決めたぜ!」
「みんな…!?」「来ると思ったが、意外と早かったな…」
遠くから声が聞こえ、祐一、舞、潤、香里、久瀬、佐祐理、サトル、名雪、ミツル、真琴、美汐がやってきた。
そして、最後にあゆが現れ、竜也の隣に立つ。
「結構、悩んだが、おれたちは竜也と世界を守ることにした」「わたしは…彼にいろんなきっかけを貰った」
「おれと香里の願いも一致したぜ!時間掛かったけどな!」「栞もきっと、そう思ってる…」
「僕の決断も同じだ。違うのはその過程だけ」「佐祐理も佐祐理なりに決めました!」
「なゆちゃんを守る方法は、別にあった!」「わたしも、みんなの笑顔をずっと見たい!」
「おれは両方救う。今はこれが、おれのエゴだ!」「あたしも、ミツル達を支えるの!」
「わたし達をねじ伏せるなんて、そんな酷な事はないでしょう?」
全てが吹っ切れたようだ。彼らは、世界と愛する者と竜也、全てを救う道を選んだ。
今は何も分からない。どうすれば救えるかも…。
だが、これが彼らの全力の答えであることは間違いない。
「貴方はどうするのですか?」
紅渡は、竜也に質問をした。
「おれは…」
しっかりと紅渡達を見据えてこう宣言した。
「おれも自分の気持ちに正直になります!…みんなと一緒にいたい!こんなに大切に想える友達や仲間、そして…誰よりも大切な人と!」
最後の言葉のとき、彼は間違いなくあゆを見つめていた。
あゆの手を強く握る竜也。
自分の大切なモノを離さないように、強く、強く。
「これが、ボクたちの答えだよ!」
「そうですか…。言っておきますが、これは彼らの意志です。手を貸すのは、無粋ではありませんか?野上さん達」
祐一達の言葉を聞いている途中から現れた、野上良太郎、ヒビキ、津上翔一は、紅渡の言葉に対して、そんなこと分かりきってるとでも言わんばかりに、動こうとはしなかった。
変身ツールを取り出す剣崎一真たち。
「ならば、運命に抗え。そして…勝ってくれ!」
「お前達の友を救う代わりに、世界崩壊を手助けすると言う「罪」。俺達が背負う!」
「おばあちゃんが言っていた…。例えどんな意志でも、そこには少なからず正義が存在する。お前達の意志と正義を、全力で俺達にぶつけろ」
「僕も貴方達を信じたい。世界の崩壊なんか関係なく、貴方達の心に流れる音楽を」
争う相手とは思えない言葉だった。
「変身」
目の前には、オーディンに並ぶといっても過言ではないほど、強大な仮面ライダーが4人。
『変身っ!』
それでも、雄々しく立つ7人の仮面ライダー。
この戦いに、正義はない。
そこにあるのは…、
純粋な願いだけである。
「しゃあっ!」
<SWORD VENT>
龍騎はブレイドKFに立ち向かった。
ガキィ!
しかし、彼らの勝利を望んでいるとは言え、ブレイドKFは一切、手加減はしない。
それは、龍騎達の願いに対する冒涜になるからだ。
「もっと全てをぶつけろ!戦えないお前の大切な者達の代わりに、お前が戦うんだろう!?」
ドラグセイバーを弾き、隙が出来た龍騎の脇腹を、キングラウザーで思い切り斬りつけるブレイドKF。
ズガアアアァ!
「ぐああああああぁ!」
「はあああああああぁ!」「くぅっ…!ぅああああああああああぁ!」
足の自由が利かないファムもそんなことを全く気にせず、ナイトと共に、キバEFに斬りかかる。
「そうです、戦ってください。貴方達の、心の音楽を聞かせてください!」
ザンバットソードが唸りをあげて、ナイト達に襲い掛かる。
ナイトは避けることが出来るものの、ファムには難しかった。
ザンッ!
「くあああっ!」「舞っ!」
思いきり切り裂かれてしまい、ファムの装甲には大きなヒビが入る。
「こんな所で倒れないで!もっと僕等に立ち向かうんだ!」
敬語ではなく、彼の心からの叫びがナイト達に響く。
「打ち勝ってみろ、神の速度を。ハイパークロックアップ!」
<HYPER CLOCK UP>
ズガガガガガガガガガガ!
「うおわあああああああぁ!」「うわあああああああああぁ!」
ハイパークロックアップの前には、ブライとゾルダも成す術がない。されるがままに、攻撃を受ける。
だが、それでも…。
「神は超えられねぇかもしれないけどな、超えるよりもやりたいことはある!」
「それこそが、この世界と龍崎君を救うと言うことだ!」
<HYPER CLOCK OVER>
ハイパークロックアップがきれたカブトHFは、合体最終剣「パーフェクトゼクター」を構えて、2人を見据える。
「…絆か」
<BLADE MODE>
ファイズBFはファイズブラスターの刃を展開し、タイガとインペラーに襲い掛かる。
「イィヤアアアアアアァ!」
「くうっ…!」「ちっ…!」
寸での所で避けるが、ファイズBFの攻撃はそれで終わりではなかった。
「ハアッ!」
ファイズブラスターの刃から高圧縮された「フォトンブラッド」のエネルギー波が、タイガとインペラーに襲い掛かった。
ドガアアアアアアアアァ!
「ぐおああああああああぁ!」「わあああああああああああぁ!」
あまりに強い威力。避けようとはしたが、広範囲の攻撃なため、避けることは許されなかった。
「そんなんで見つかるのか!?お前らの答えを!」
「…見つけるさ!」「て言うか…見つかったかも」
ボロボロの状態になっているが、それでも身体の苦痛に耐えながら立ち上がる2人。
龍騎達は絶望的といえるほど劣勢だった。
しかし、あゆ達は全く諦めていない。それどころか祈るように目を閉じ、彼らの勝利を願っている。
「ボク、信じてるからね…」
<STRIKE VENT>
「ガアアアアアアアアアアアァ!」
「はああああああああぁっ…だああああああああああああああぁ!」
呼び出したドラグクローで、ドラグレッダーと共に龍騎は「ドラグクローファイヤー」を放つ。
<SPADE 2 3 4 5 6><STRAIGHT FLUSH>
ブレイドKFも負けてはいない。
自身の鎧から現れた「ギルドラウズカード」をキングラウザーに読み込ませ、ブレイド通常形態の基本武装「ブレイラウザー」と同時に構えて、稲妻と光のエネルギーを同時にぶつける技「ストレートフラッシュ」でドラグクローファイヤーを相殺するようだ。
「オオオオオオオオォ…ウェェェェェイ!」
ズガアアアアアアァ!
結果は、ブレイドKFの想像通り。
しかし…。
「たあああああああああああっ!」「何ッ…!?」
ドガァッ!
「グウッ…!」
爆発が起きたため巻き起こった煙の中から、龍騎が奇襲をかける。
一瞬のこと故に、さすがのブレイドKFも遅れをとってしまい、攻撃を受けた。
<TRICK VENT>
「うおおおおおおおおおぉ!」
シャドーイリュージョンでキバEFも翻弄しようとするが、それを打破する方法はキバEFに有り余るほどあった。
ザンバットソードにある「ウエイクアップフエッスル」を、キバットに吹かせる。
「ウエイクアップ…!」
キバットがそう言うと、キバEFはザンバットソードの柄についている「ザンバットバット」を、その刃を研ぐようにスライドする。
「ハアアアアアアアアアァ…ハアアアッ!」
ズバアアアアアアアアァ!
分身のナイト全てを一網打尽にする「ファイナルザンバット斬」。
しかし、発動後に気が付いた。
「いない…?」
本体がいないのだ。倒したのは、全て分身。
<GUARD VENT>
「…まさか!?」
「てぇああああぁ!」
白い羽を散らしながら、ファムが高台から飛び降りつつ攻撃する。
「ハアッ!」
ザンバットソードでいなそうとするが、その姿は消えてしまう。幻影のようだ。
辺りを探し、ファムを見つける。今の彼女に大きく移動する力は残っていない筈。
その油断が、キバEFの大きな失敗だった。
「祐一、いま!」「おう!」
<NASTY VENT>
「キイイイイイイィ!」
「ヌアァッ…!?」
ダークウイングのソニックブレイカーを発動し、キバEFに怪音波で対抗する。いくら装甲が硬く、攻撃に優れ、速さも圧倒するのならば、どんなに鍛えても完全に消せない感覚を攻撃したのだ。
キバEFが怯んだ隙に、2人は精一杯の力をバイザーに込めて、彼を切り裂く。
「はあああっ!」「やあああぁっ!」
ザンッ!ズバァ!
「グアアアアァッ!」
いくら強固な鎧でも、2人のライダーの渾身の斬撃に耐えることは出来ない。大きくはないが、確実にダメージを負ったキバEF。
<SWORD VENT>
「おおぉりゃああああああああぁ!」
ブライのガルドセイバーには刃に炎を纏う力がある。
炎の刃でカブトHFに攻撃を仕掛けるが、
ガキィン!
あっさりと防がれた。
その間に、カブトHFはパーフェクトゼクターの柄にある赤いボタンを押す。
<KABUTO POWER><HYPER BLADE>
「タァッ!」
ズバァッ!
カブトHFの必殺技の1つ「ハイパーブレイド」がブライの身体に直撃した。
しかし…。
ガッ!
「お前…!」
「アンタのばあちゃん、言わなかったか?肉を斬らせて骨を絶つってよ!」
ブライは、なんとパーフェクトゼクターが鎧に抉り込んでいるにも拘らず、その刃を握り、カブトHFの動きも封じ込めた。これでは、ハイパークロックアップを発動しても意味がない。
<SHOOT VENT>
その間を見計らい、ギガランチャーを装備したゾルダ。
「くらえええええええええぇ!」
ズダアアアアアアアァン!
「ウアアアッ!」
彼らの身を削った攻撃に、遂にカブトHFも攻撃を許してしまった。
「こうなったら、ゴリ押しだ!サトル、いいな?」「わかったよ!」
<ADVENT><ADVENT>
「ガルルルルルルルル!」「ギギィ!」「キイイイィ!」
ガゼール軍団とデストワイルダーが、ファイズBFに攻撃を仕掛ける。
「そんなことで、お前ら突破できんのか!?」
ズダァン!
しかし、ファイズBFにそれは全く苦にならない。
「一か八か、掛けることも重要だよ!」
<FREEZE VENT>
「…お前ッ!?」
なんと、ファイズブラスターが機能停止した。と言っても、一時的なであるようだが。
「いぇあぁああああぁ!」「はああああああぁ!」
ドガァ!ガスッ!
「ウオアァ!」
ファイズBFの見せた一瞬の隙を2人は逃さなかった。
「別世界の仮面ライダーにも通用するんだね」「状況は、未だ劣勢だがな」
共に構えを取り、ファイズBFに対抗心を燃やす。
龍騎達は、状況を打破できたわけではないが、ブレイドKF達に一矢報いることが出来ていた。
これが、竜也が城戸真司から学んだ『意志』の力なのだろうか…。
「おれは、みんなと一緒にいたい!世界を破壊する存在がおれなら、おれが世界を救ってみせます!どんなに苦しくても、辛くても、これが今の、おれの戦える意味だから!」
龍騎はブレイドKF達に改めて叫ぶ。
微かにだが、ブレイドKFがキングラウザーに込めていた力が、ほんの少しだけ抜けた。
しかし、彼らはいまさら引き下がれない。
「ならば、受け止めろ!」「そして守りきれ!」「その意味で!」「僕等の力を押し返すんだ!」
<ROYAL STRAIGHT FLUSH><EXEED CHARGE>
<MAXIMUM RIDER POWER><1・2・3 RIDER KICK>
「ウエイクアップ・フィーバー!」
『ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァ!』
「…もう、分かったんじゃないのか?」
ドガアアアアアアアアアアアァ!
突如、そのことを察知したように、オーロラから一人の戦士が現れ、彼らの最大の攻撃を防ぎきった。
深い闇を思わせる漆黒の鎧。体中を走る稲妻のような金色のライン。
そして、慈愛に満ちた赤い赤い瞳。
その戦士の名前は…。
凄まじき戦士「仮面ライダークウガアルティメットフォーム」だ(以下、クウガUF)。
「雄介さん…!」
野上良太郎が驚いたような表情をみせる。そう、このクウガUFは五代雄介。
彼は、城戸真司とともに世界を救う術を探しており、この世界には訪れなかった筈だった。
「良太郎、翔一、仁志さん。ありがとう、俺や真司の代わりに竜也君達を救ってくれて」
心からの感謝の言葉を述べ、変身を解いた五代雄介。
竜也達と剣崎一真達も変身を解いた。
「邪魔をするつもりですか…?」
「総司、もういい。君のおばあちゃんが言っただろ、絆とは、決して断ち切れぬ、強い繋がりだって」
その言葉を聞いて、天道総司は後ずさった。
「巧。彼らには、こんなにも強く「罪」を背負っている。戦う「罪」を。それに、優しい「夢」も持っている。そんな彼らをねじ伏せるなんて、君自身の夢を壊してるんじゃないのか?」
「…アンタには、かなわねぇな」
乾巧も彼に言われて反論することが出来なかった。
「…俺は!」
「一真。本当は君が一番、この方法に否定的だったこと、俺は知ってたよ。でも、君は昔から自己犠牲になりがちだからね…」
剣崎一真の心を見透かしたかのように、言う五代雄介。
「渡。君が本当は押し潰されそうになってて、それをいつも隠すために、ああやって自分を見せなかった。でも、君のその想い、竜也君に届いてるよ」
「そう…ですか…」
「彼らに託してみようよ。この世界に来た士も言っただろう。「ここからが、彼らの物語」だって」
少しの間、沈黙が続いたが…。
「僕等は、みなさんがどうするか、もう少しだけ見守らせていただきます」
「もう一度言う。運命と戦え。そして、勝ってみせろ…」
「人が行くのは、人の道。お前達の道、もう少しだけ見せてもらう。天の道がそれを切り開くのは、もう少し後らしい」
「守ってみろ、お前達自身の「夢」を」
4人は、オーロラの中へ消えた。
あのときのような、冷酷な表情ではなく、どこか晴れ晴れとした表情だった。
「良太郎達も先に戻って。俺だけで言いたいことが少しあるからね」
「わかりました。…竜也君、モモタロスが言ってたよ。「お前の今を守れ」って。僕は、君達がこの世界の未来を守れるって信じてる」
「鍛えたりなきゃ、いつでも鍛えろよ。身体も心もな。シュッ!」
「君達の居場所、しっかり守りぬくんだよ」
3人も激励の言葉を残し、オーロラの中へと消えた。
あゆが思い出したかのように五代雄介に近づく。
「その声、もしかして…」
「そう。君に、竜也君を救ってくれるように頼んだのは、俺だよ」
「そうだったんだ…」
全てに納得がいったような表情のあゆ。
「君たちにこの世界の命運を託した。だから、俺達はよっぽどのことがない限り、この世界に干渉できない。だから、ここからは君達自身で戦うしかない。良いかい?」
「はい。みんなで一緒に戦えば、大きな困難も、必ず突破口が開けると思いますから。今回みたいに」
はっきりと答える竜也
何処かしら五代雄介には、決意の固まったような顔つきになったように見えた。
「安心したよ。…だから、この力を託そう。龍騎と似た戦士が居る『ドラゴンナイトの異世界』で、中核に当たる存在「仮面ライダードラゴンナイト」である、吉井明久君と苦楽を共にし、その人生を全うした相棒だ」
そう言って、城戸真司のスクーターに手を翳す。
すると、形は大きく変わり、赤い大型バイク「ドラゴンサイクル」に変形し、元の形に戻った。
「おおぉ…!」
予想できなかったことに、潤は目を見開いている。
「この力には、明久君やその世界の人達の想いがたくさん詰まっていた。あの世界では、その想いを受け継いだモノが生まれたけれど、このドラゴンサイクルには、まだやるべきことがある。君の力になることだ」
城戸真司のスクーターに込められた力を、竜也は触れることにより、感じたような気がした。
そして聞こえないだろうが、その吉井明久に向けて言葉を贈った。
「明久…。顔も知らないけど、君の相棒、受け取ったよ。いつか、お礼を言わせて欲しいな…」
「きっと逢えるよ!ボクは、そう思うな」
吉井明久…。
またの名を「仮面ライダードラゴンナイト」。
いつか、出会うときがあるのだろうか…?
「祐一君、これを。真司から預かっているモノだ」
五代雄介はそう言って、ポケットから1枚のアドベントカードを取り出し、祐一に渡した。
彼は、このカードを城戸真司から渡されたときの場面を思い出していた。
「五代さん、これを。竜也が信じた、今のナイトに渡して欲しいんです。あの世界に、最も近い俺は行けませんから」
「え…、でもこれは、オーディンも狙っているモノじゃ…」
「彼らなら絶対に大丈夫です。信じてください」
「…わかった。まかせて」
「これは…?」
「サバイブだ…!」
竜也には、はっきりと分かった。青い宝玉がある黄金の翼に、風を思わせる青い背景。
「SURVIVE~疾風~」だった。
「君達の力になれば良いと思う。…後は君達次第だ。おこしてくれ、「奇跡」を!」
屈託のない笑顔でサムズアップを贈り、五代雄介はオーロラの中に消えた。
「…良かったのか?城戸真司に逢わせてもらわなくて」
ミツルが竜也に聞く。
「うん。真司さんも戦ってる。だから、おれも戦わなくちゃ。大好きなみんながいる、この世界で!」
今の彼らなら、強く戦える。
なぜならば、彼らは城戸真司から受け継がれた「願い」を背負う戦士。
仮面ライダーなのだから。
続く…
次回!
魔物って…何処から来たんだ?
不味いな…。奴にサバイブが…
浅倉とは、絶対に決着をつける!
浅倉を倒すことも、それほど大きな意味がある。
あれが、仮面ライダーナイトサバイブ…!?
第37話「疾風の剣」
キャスト
龍崎竜也=仮面ライダー龍騎
月宮あゆ
相沢祐一=仮面ライダーナイト
川澄舞=仮面ライダーファム
北川潤=仮面ライダーブライ
美坂香里
久瀬シュウイチ=仮面ライダーゾルダ
倉田佐祐理
水瀬名雪
沢渡真琴
天野美汐
虎水サトル=仮面ライダータイガ
斉藤ミツル=仮面ライダーインペラー
モモタロス
五代雄介=仮面ライダークウガ アルティメットフォーム
紅渡=仮面ライダーキバ エンペラーフォーム
剣崎一真=仮面ライダーブレイド キングフォーム
津上翔一=仮面ライダーアギト シャイニングフォーム
乾巧=仮面ライダーファイズ ブラスターフォーム
ヒビキ(日高仁志)=仮面ライダーアームド響鬼
天道総司=仮面ライダーカブト ハイパーフォーム
野上良太郎=仮面ライダー電王 ライナーフォーム
城戸真司=仮面ライダー龍騎(初代)