仮面ライダー龍騎 ~EPISODE Kanon~   作:龍騎鯖威武

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第36話 「絆」

ガッ!

M龍騎を攻撃するインペラーを、アギトSFが何とか押さえ込む。

その力は強力で、インペラーは必死に振りほどこうとするも、全く離れることはなかった。

「落ち着くんだミツル君!俺たちが必ず真琴ちゃんと竜也君を救う方法を見つける!だから…」

「それじゃ時間が無いんだろう!?真琴は絶対に守る!もう、あいつに苦しんで欲しくないんだ!もう、独りぼっちになることも嫌なんだよぉ!」

インペラーの声が上擦っているあたり、恐らく泣いているのだろう。ミツルが涙を流すことなど、M龍騎の中にいる竜也は孤児院で見たとき以来だった。

アギトSFはどうしようもない気持ちになり、一瞬だけ力が緩んでしまう。

その瞬間、インペラーはアギトSFの腕から抜け出し、M龍騎に再度、襲い掛かる。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉ!」

ドガァ!ガッ!

「ウアァ!お前っ…グアァ!落ち着けよ!(ミツル…)」

M龍騎は必死にインペラーの攻撃を防ごうとするが、かなり威力が高く、防御の体制で吹き飛ばされてしまう。

そのとき…

「(ぐあぁっ!頭が…!)お、おい坊主、どうした!?」

M龍騎の中にいる竜也の意識が頭痛を感じた。しかし、モモタロスは全く感じない。

そして竜也の意識の中に、あの声が語りかけてきた。

 

消エルノハ…アイツダ…!

 

「ウオオオオ!?」

さらに、モモタロスは竜也の体から弾き飛ばされた。憑依が解ける条件は、憑依した人間の肉体に強烈な衝撃を受けるか、憑依したイマジンが自発的に体から抜けるか、憑依した人間の意識が無理やりイマジンを追い出すことのみ。

しかし、最後の点は憑依される人間が時間の干渉を受けない「特異点」と言われる存在である場合のみ。竜也はそれに該当しない。

モモタロスの憑依が解けた理由も、上記のどれにも該当しない。

「はあっ!」

ガッ!

「…なに!?」

攻撃を防いだ龍騎は、インペラーを睨みつける。

「…っ!?」

それだけで、インペラーに強烈な悪寒が走った。

「…グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォ!!」

以前のように、龍騎は獣のような雄叫びをあげる。

ドガガガガッガガッガガ!!

「ぐあああああああぁ!?」

戦闘スタイルも滅茶苦茶になり、インペラーをボコボコに殴りつける。

タコ殴りとは、このことを言うのだろうか。

「やめて竜也くんっ!ミツルさんが死んじゃうよ!」「よせ、やめるんだ!」

「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァ!」

あゆとアギトSFが龍騎を押さえつけるが、それでも暴れようと抵抗する龍騎。

「竜也っ!?」

そこにオーロラが現れ、中から祐一、舞、久瀬、佐祐理の4人がヒビキと野上良太郎と共に飛び出してきた。

目の前の状況を上手く飲み込めなかった。

そこには、ぐったりとしたインペラーと、雄叫びをあげながら暴れる龍騎、そしてそれを必死に止めるアギトSFとあゆ。

「あれって…」

野上良太郎は暴れる龍騎を見つめて、何かを考える。

「グワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァ!!」

「きゃあっ!」「あゆちゃん!?」

龍騎はあゆを振り払い、その拍子にあゆは地面に倒れる。

アギトSFが押さえつけているものの、下手をすれば龍騎は彼の手を抜けて、周りの人間に危害を加えるかもしれない。

「もうやめて!お願いだよっ!」

「ガアアアアァ…!?」

倒れても起き上がったあゆは、次に龍騎を強く抱きしめた。

突如、龍騎は急に大人しくなる。

「…あ、あゆ?何で、おれにくっついてるの?」

次に発した声は普段と変わらない、いつもの竜也が不思議そうに、そして優しそうに尋ねる声だった。

「戻ったの…?」「戻ったって、何が?」

龍騎は先程の記憶が全くないらしい。

「一体どうしたんだよ、おまえ?」「あんな龍崎君、見たことない…」

「え?…え?」

久瀬や祐一が信じられないといった表情で龍騎を見つめている。

状況が掴めず、混乱している龍騎。

「ぐぅ…」

頭を抱えながら、ゆっくりと起き上がるインペラー。その間に変身は解け、ミツルの姿へと戻った。

アギトSFと龍騎も、津上翔一と竜也の姿に戻る。

 

それを少し離れた場所で見ている青年。穏やかな表情が印象的だった。

ただ、今の表情は悲しさを強く物語っている。

竜也達から視線を外し、灰色の雪雲に染まった空を見上げて、こう呟く。

「今日の空…澱んでるなぁ…」

 

それから数時間後、名雪とサトルは水瀬家へと帰り着き、竜也を探すことも忘れ、名雪は部屋に閉じこもり、サトルはその部屋の前でじっとしていた。

「なゆちゃん…。僕、君の悲しみを受け止められないのかな…」

ドアの前で呟くサトル。返事はない。

部屋の中では、隅で座り込み、以前のサトルの様に、瞳から光が消え去った名雪がいる。

「…僕ね、君のことが大好きだよ、何よりも…。だから、なゆちゃんが二度と笑えなくなるなんて…嫌だ!だから僕は…竜也君を…消す」

サトルもそんなことが正しいとは微塵も思っていない。だが、それしか方法はないのだ。

ずっと、自分を想い、支えてくれた名雪。どうしても彼女が笑顔であり続けられるようにしたい。この世界を守りたい。

その想いが竜也を守ると言う想いより強かっただけの話だ。

水瀬家を飛び出したサトル。

 

「そんな…」

竜也は、祐一達から、自分自身がどんな暴挙に出たか、野上良太郎達から、剣崎一真達が物語の矯正を始め、それを止めて欲しいなら、自分を消すようミツル達に言い寄ってきたことを知らされた。

「おまえっ!竜也を消すことに賛成するのかよ!?」

祐一がミツルの胸倉を掴んで叫ぶ。

それを払い除けて、ミツルが言い返した。

「おまえに何が分かる!?やっと心から愛せる人に再会できたのに、それをもう一度失うかも知れない恐怖が、おまえに分かるのか!?」

「祐一っ!ミツルっ!」「やめてください!」

だが、竜也や佐祐理がそれを引き剥がす。

「ミツル。まず、おれはミツルにとんでもない事をしてしまった。ごめん…」

「…やめろ」

頭を下げる竜也。

彼が悪いわけじゃない。むしろ自分が悪い。ミツルにも、それくらいは分かっていた。

だが、真琴を守るためには…。

美汐が傍に寄り添っているが、息を荒げ、意識が無い真琴を見つめるミツル。

「ミツルさん、真琴ちゃんが大好きなのは分かるよ。でも、竜也くんを連れて行かないで…。お願いだから…」

あゆが、今にも泣きそうな顔で懇願する。

「じゃあ…真琴を見殺しにしろと言うのか!?」

「あなたは、竜也が消えても良いの?」

「良いわけない!でも、真琴を失うことも、おれには耐えられない…」

ミツルにも何が正解で、何が間違っているのかさえ分からない。舞の質問に対する返答も矛盾してしまう。

「おれのせいで…みんなの幸せが壊れていく…」

地面を見つめ、強く拳を握り締める。

「竜也くん…」

「最悪だね、おれ。人を守る存在になりたかったのに、どんどん離れていくよ…」

悲しくて仕方ない。

それなのに…。

 

涙が流せなかった。

 

「竜也っ!」

潤が走ってきた。

竜也は自然と悪い方向へと考えてしまうようになった。

「潤も、おれを…?」

「違う。おれには、さっぱりわかんねぇ!」

しかし、潤は必ずしもそうではなかった。彼もまた苦悩していた。

「香里や栞ちゃんの苦しんでる姿は見たくない!でもよ、おまえを消したら、あの2人は結局、責任を感じて苦しむし、おれ自身もおまえを消したくはない。どっちを選べばいいか、わからねぇ!」

「僕は選んだよ」

潤の言葉に答えるようにサトルが現れた。

「なゆちゃんが、笑えなくなるなんて、嫌なんだ。だから君を消すよ、竜也君」

淡々と話していたが、その表情は苦痛に歪んでいた。

「なんで全部、竜也君が悪いの!?」

あゆが強く言い放ち、周囲は静まり返った。

「どうして、みんな悩めるの…?…ボクは…ボクはっ!」

「仲間だからだよ」

津上翔一が彼女の肩に手を置いて言う。

「みんな、竜也君のことを心から大切な仲間と思うから、世界や自分の愛するものと天秤にかけられる位、大切なんだよ」

 

「…やはり、そのようだな」

深いため息と共に聞こえた声。主は剣崎一真だった。

竜也たちは身構えるが、今の剣崎一真に敵意は感じられなかった。

「時間をやる。明日までにもう一度、どうするか考えろ。尤も、俺達の要求を聞き入れない場合は、武力行使だがな」

そう言い捨てて、オーロラを呼び出す。

「だが俺は…いや俺達は、お前達が運命を自ら切り開くことを、どこかで期待しているかもしれない」

この言葉は、竜也達には聞こえないような小さい声だった。

 

「この話し合いに、僕らは参加できない」

「俺達は一旦離れる。お前達のことは、お前達自身で決めろよな」

そう言って、ヒビキ、津上翔一、野上良太郎は別のオーロラの中に消えた。

残ったのは、竜也、祐一、舞、潤、久瀬、サトル、ミツルの仮面ライダー達。

そして、あゆ、佐祐理、美汐、意識の無い真琴の4人。

「どうして、こうなったんだろう…」

ポツリと呟く竜也。

「安心しろ、他の奴がなんと言おうと、おれはおまえの味方だ」

「わたしも…」「佐祐理もです!」

祐一と舞、そして佐祐理は、竜也のことを心から守ろうと考えている。

「だが、あの剣崎一真さん達から、仮に守りきれたとしても結局、世界は崩壊するんじゃないのか…?」

久瀬はどちらに着けばいいのか分からず、右往左往しているようだ。

「だからってよ、竜也を消すことに賛成しろって言うのか?こいつが言ってたろ、おれ達を人殺しにしたくないって!こいつを消すどころか、こいつの思いも無駄にするつもりかよ!?」

気持ちをストレートにしかぶつけられない潤は、とりあえず自分の考えていることを口にする。だが、それは彼なりに、必死に考えた言葉であることは間違いない。

「でもこのままじゃ、世界は崩壊するし、秋子さんやなゆちゃん、真琴ちゃん、栞ちゃんが、取り返しのつかないことになる!君だって、香里ちゃんや栞ちゃんとの事で、迷ってるはずだよね!?」

「それに、おれもサトルも、竜也がおれ達をどれだけ大切にしているかくらい分かっている。…だがおれは、自分のエゴを通したい。真琴を…救いたい!」

一方のミツルとサトルは、どうしても、自分の大切な人を守ろうとしている。

もともと、彼らが今のようになれたのは、真琴や名雪の存在が大きかった。それゆえに、彼女達を守りたい気持ちが強いのだろう。

美汐やあゆは、彼らの辛さを知っているため、何も口に出来ず、ただ唇を強く噛むことしか出来なかった。

「…おれのことだから、おれ自身で決めたい。みんなは家に帰って。…もしかしたら、明日は敵になってるかもしれない。だから、ちゃんと仲間でいられるのは、今日が最後かもしれない」

竜也が言う。いつものような意志のはっきりした、それに強い口調ではなかった。

「ありがとう。今まで一緒に戦ってくれて」

歩き去った竜也。しかし、彼は家に戻ることは無いだろう。そこには、あゆ、ミツル、真琴が新たな居場所としているからだ。

 

駅前の公園。

「なゆちゃん。僕、また分からないよ。…昔と何も変わってないね。全然、前に進めていないよ…」

サトルは一人で呟いていた。

「…サトちゃん。雪、積もってるよ」

聞こえるはずの無い声と思ったが、そこには確かに名雪がいた。

「わたしね…」

 

竜也の家。

「肝心なところで、あんなに荒れるなんて…。格好がつかないな」

ベッドで横になっている真琴に語りかけるミツル。

「おまえの声、また聞きたいよ…。そうすれば…」

その言葉に呼応するかのように、うっすら目を明けた真琴。

「真琴っ…!?」

「あうぅ…」

真琴は儚げに微笑みながら、ミツルの頬をそっと撫でる。

そして小さかったが、はっきりと聞こえた。

「ミツルぅ…。あたし、ミツルを支えられる?」

 

栞の病室。

今は体調が幾分、安定しているため、一般病棟へ移されたらしい。

「香里…」

そこへやってきた潤。栞のベッドの横で、香里がずっと彼女の顔を見ている。

「…昔ね、栞が病気になったときに、もうすぐ死ぬかもって言われたの。この子を失う辛さから逃げるために、妹なんていないって振舞ってた。病気が治って、わたしはきっと嫌な姉になったと思ってた。でも栞は、そんなことお構いなしにわたしと接してくれた。…なのに…こんなときに限って…何もしてあげられない…」

香里は肩を震わせて、泣いていた。潤は、自分で決めてきた言葉を口にした。

「…おれ、香里にも栞ちゃんにも、何もしてやれなかった。でも、2人を大切にしてるつもりだ。だから、おまえの願いなら叶える。…どうする?」

 

祐一と舞。

「必死に悩んでるんだよな、あいつらも」

「優しいから…。だから、みんな悩んでる」

2人は、紅渡達が物語の矯正を行なったとき、影響の無かった者たちだ。

だからこそ、苦悩らしい苦悩はしていない。

それこそが苦悩なのだろう。

「祐一は…?」

 

久瀬と佐祐理

「やっぱり、悩んでしまうのですね?」

「はい…」

佐祐理の言葉には、悲しさがあった。といっても、久瀬を責めていた訳ではなく、仲間同士で争う虚しさを痛感していたからだ。

「佐祐理もです。みんなのまえでは竜也さんを守りたいって言ってましたけど、実際はどうすればいいか、分からないんです。…世界が崩壊すると言う話も、信じたくないのですけれど、もしそうなったらって…怖くて…」

そして、自分にやれることが見つからないことも、悲しさを強くさせていた。

久瀬は佐祐理に向かって、強く言った。

「…こんなときだからこそ、しっかりしないといけませんね。あなたが不安にならないように」

 

竜也は1人で、城戸真司が乗っていた橙色のスクーターを走らせていた。

このバイクが城戸真司のように、何をするべきか導いてくれるかもしれないと思っていた。

実際は、そのようなことは有り得ないのだが。

(このバイクに乗るのは、この街に来たとき以来だったな…)

何気なくそう考えていた。

自分の故郷である「雪の街」が良く見える高台にスクーターをとめ、そのすぐ近くに座った。

「…苦しいよね」

ふと声をかけられた。そこには、30代ほどの青年がいた。

先ほど、竜也達のことを遠くから見ていた者なのだが、それを竜也は知らない。

「あなたは…?」

 

「俺は2001の特技を持つ男、五代雄介。よろしく」

 

そう言って、自分の名刺を渡した「五代雄介」は、竜也の隣に座り込む。

名詞には、先ほどの「2001の特技を持つ男」という言葉と、五代雄介自身をイメージしたのか、キャラクターが「サムズアップ」をしたイラストも載せてある。

彼の名前に聞き覚えがあった。

ヒビキが言っていた「オリジナルの仮面ライダー」のリーダー。

「五代雄介さんって、…もしかして渡さんや、良太郎さんの仲間の?」

「そう。真司と一緒に、君を消さずに世界を救う方法をずっと探していたんだ。…まだ、見つかってないけどね」

申し訳なさそうに笑う五代雄介。なぜか竜也は、彼を見ていると心が落ち着く。

一方、五代雄介は急に表情が曇る。

「…話は戻るけどさ。竜也君達の事、全部じゃないけど見せてもらった」

「この世界は崩壊しつつある理由が、おれだなんて…。人を守るどころか、破壊者だなんて…。それに」

五代雄介の方を向いて、怯えるように言う竜也。

「かけがえのない友達を攻撃してしまったんです。そのことを全く覚えてなくて…。もしかしたら、おれには破壊者に相応しい本性があるのかって思うと…」

「それは君じゃない」

竜也の言葉を遮るように、五代雄介は断言した。

「俺達は物語に大きな干渉はできるけど、この世界の状態じゃ、そのことについての真実を話すことは出来ない。干渉とみなされ、その影響で世界が壊れるかもしれないからね。でも、その君の知らない君は、君の意志じゃない」

その言葉から察するに、竜也にはまだ彼らの話せない大きな謎があるようだ。

「…結局、君はどうありたいの?世界とか関係なく、君自身は」

優しく問いかける五代雄介によって、竜也は気がついた。

いままで、自分のことではなくて、周りの人や世界のことばかり考え、自分の意見は抑え付けてしまっていた。

「もっと、我侭になってもいいと思うな。だって、君はこんなにも人を思いやれるんだから。…ね!」

その言葉の後に、親指を立てて竜也の前に差し出した。「サムズアップ」だ。

この仕草には「許す」という意味がある。

五代雄介は、もっと自分中心に考えても良いよと、許しを出したのだろう。

そうでないと、竜也は他の人のことばかり、考えてしまうはずだから。

「…五代さん、おれは」

 

次の日の朝。

竜也は城戸真司のスクーターに乗って、昨日と同じ場所に訪れた。

「真司さん。もし見ているなら、おれに勇気を下さい」

スクーターから降りるとき、城戸真司に話しかけるように呟いた。

「決まりましたか…?」

紅渡がいつの間にか現れ、竜也に問いかけた。後ろには、剣崎一真、天道総司、乾巧がいる。

「おれ達も決めたぜ!」

「みんな…!?」「来ると思ったが、意外と早かったな…」

遠くから声が聞こえ、祐一、舞、潤、香里、久瀬、佐祐理、サトル、名雪、ミツル、真琴、美汐がやってきた。

そして、最後にあゆが現れ、竜也の隣に立つ。

「結構、悩んだが、おれたちは竜也と世界を守ることにした」「わたしは…彼にいろんなきっかけを貰った」

「おれと香里の願いも一致したぜ!時間掛かったけどな!」「栞もきっと、そう思ってる…」

「僕の決断も同じだ。違うのはその過程だけ」「佐祐理も佐祐理なりに決めました!」

「なゆちゃんを守る方法は、別にあった!」「わたしも、みんなの笑顔をずっと見たい!」

「おれは両方救う。今はこれが、おれのエゴだ!」「あたしも、ミツル達を支えるの!」

「わたし達をねじ伏せるなんて、そんな酷な事はないでしょう?」

全てが吹っ切れたようだ。彼らは、世界と愛する者と竜也、全てを救う道を選んだ。

今は何も分からない。どうすれば救えるかも…。

だが、これが彼らの全力の答えであることは間違いない。

「貴方はどうするのですか?」

紅渡は、竜也に質問をした。

「おれは…」

しっかりと紅渡達を見据えてこう宣言した。

 

「おれも自分の気持ちに正直になります!…みんなと一緒にいたい!こんなに大切に想える友達や仲間、そして…誰よりも大切な人と!」

 

最後の言葉のとき、彼は間違いなくあゆを見つめていた。

あゆの手を強く握る竜也。

自分の大切なモノを離さないように、強く、強く。

「これが、ボクたちの答えだよ!」

「そうですか…。言っておきますが、これは彼らの意志です。手を貸すのは、無粋ではありませんか?野上さん達」

祐一達の言葉を聞いている途中から現れた、野上良太郎、ヒビキ、津上翔一は、紅渡の言葉に対して、そんなこと分かりきってるとでも言わんばかりに、動こうとはしなかった。

変身ツールを取り出す剣崎一真たち。

「ならば、運命に抗え。そして…勝ってくれ!」

「お前達の友を救う代わりに、世界崩壊を手助けすると言う「罪」。俺達が背負う!」

「おばあちゃんが言っていた…。例えどんな意志でも、そこには少なからず正義が存在する。お前達の意志と正義を、全力で俺達にぶつけろ」

「僕も貴方達を信じたい。世界の崩壊なんか関係なく、貴方達の心に流れる音楽を」

争う相手とは思えない言葉だった。

「変身」

目の前には、オーディンに並ぶといっても過言ではないほど、強大な仮面ライダーが4人。

『変身っ!』

それでも、雄々しく立つ7人の仮面ライダー。

 

この戦いに、正義はない。

そこにあるのは…、

純粋な願いだけである。

 

「しゃあっ!」

<SWORD VENT>

龍騎はブレイドKFに立ち向かった。

ガキィ!

しかし、彼らの勝利を望んでいるとは言え、ブレイドKFは一切、手加減はしない。

それは、龍騎達の願いに対する冒涜になるからだ。

「もっと全てをぶつけろ!戦えないお前の大切な者達の代わりに、お前が戦うんだろう!?」

ドラグセイバーを弾き、隙が出来た龍騎の脇腹を、キングラウザーで思い切り斬りつけるブレイドKF。

ズガアアアァ!

「ぐああああああぁ!」

 

「はあああああああぁ!」「くぅっ…!ぅああああああああああぁ!」

足の自由が利かないファムもそんなことを全く気にせず、ナイトと共に、キバEFに斬りかかる。

「そうです、戦ってください。貴方達の、心の音楽を聞かせてください!」

ザンバットソードが唸りをあげて、ナイト達に襲い掛かる。

ナイトは避けることが出来るものの、ファムには難しかった。

ザンッ!

「くあああっ!」「舞っ!」

思いきり切り裂かれてしまい、ファムの装甲には大きなヒビが入る。

「こんな所で倒れないで!もっと僕等に立ち向かうんだ!」

敬語ではなく、彼の心からの叫びがナイト達に響く。

 

「打ち勝ってみろ、神の速度を。ハイパークロックアップ!」

<HYPER CLOCK UP>

ズガガガガガガガガガガ!

「うおわあああああああぁ!」「うわあああああああああぁ!」

ハイパークロックアップの前には、ブライとゾルダも成す術がない。されるがままに、攻撃を受ける。

だが、それでも…。

「神は超えられねぇかもしれないけどな、超えるよりもやりたいことはある!」

「それこそが、この世界と龍崎君を救うと言うことだ!」

<HYPER CLOCK OVER>

ハイパークロックアップがきれたカブトHFは、合体最終剣「パーフェクトゼクター」を構えて、2人を見据える。

「…絆か」

 

<BLADE MODE>

ファイズBFはファイズブラスターの刃を展開し、タイガとインペラーに襲い掛かる。

「イィヤアアアアアアァ!」

「くうっ…!」「ちっ…!」

寸での所で避けるが、ファイズBFの攻撃はそれで終わりではなかった。

「ハアッ!」

ファイズブラスターの刃から高圧縮された「フォトンブラッド」のエネルギー波が、タイガとインペラーに襲い掛かった。

ドガアアアアアアアアァ!

「ぐおああああああああぁ!」「わあああああああああああぁ!」

あまりに強い威力。避けようとはしたが、広範囲の攻撃なため、避けることは許されなかった。

「そんなんで見つかるのか!?お前らの答えを!」

「…見つけるさ!」「て言うか…見つかったかも」

ボロボロの状態になっているが、それでも身体の苦痛に耐えながら立ち上がる2人。

 

龍騎達は絶望的といえるほど劣勢だった。

しかし、あゆ達は全く諦めていない。それどころか祈るように目を閉じ、彼らの勝利を願っている。

「ボク、信じてるからね…」

 

<STRIKE VENT>

「ガアアアアアアアアアアアァ!」

「はああああああああぁっ…だああああああああああああああぁ!」

呼び出したドラグクローで、ドラグレッダーと共に龍騎は「ドラグクローファイヤー」を放つ。

<SPADE 2 3 4 5 6><STRAIGHT FLUSH>

ブレイドKFも負けてはいない。

自身の鎧から現れた「ギルドラウズカード」をキングラウザーに読み込ませ、ブレイド通常形態の基本武装「ブレイラウザー」と同時に構えて、稲妻と光のエネルギーを同時にぶつける技「ストレートフラッシュ」でドラグクローファイヤーを相殺するようだ。

「オオオオオオオオォ…ウェェェェェイ!」

ズガアアアアアアァ!

結果は、ブレイドKFの想像通り。

しかし…。

「たあああああああああああっ!」「何ッ…!?」

ドガァッ!

「グウッ…!」

爆発が起きたため巻き起こった煙の中から、龍騎が奇襲をかける。

一瞬のこと故に、さすがのブレイドKFも遅れをとってしまい、攻撃を受けた。

 

<TRICK VENT>

「うおおおおおおおおおぉ!」

シャドーイリュージョンでキバEFも翻弄しようとするが、それを打破する方法はキバEFに有り余るほどあった。

ザンバットソードにある「ウエイクアップフエッスル」を、キバットに吹かせる。

「ウエイクアップ…!」

キバットがそう言うと、キバEFはザンバットソードの柄についている「ザンバットバット」を、その刃を研ぐようにスライドする。

「ハアアアアアアアアアァ…ハアアアッ!」

ズバアアアアアアアアァ!

分身のナイト全てを一網打尽にする「ファイナルザンバット斬」。

しかし、発動後に気が付いた。

「いない…?」

本体がいないのだ。倒したのは、全て分身。

<GUARD VENT>

「…まさか!?」

「てぇああああぁ!」

白い羽を散らしながら、ファムが高台から飛び降りつつ攻撃する。

「ハアッ!」

ザンバットソードでいなそうとするが、その姿は消えてしまう。幻影のようだ。

辺りを探し、ファムを見つける。今の彼女に大きく移動する力は残っていない筈。

その油断が、キバEFの大きな失敗だった。

「祐一、いま!」「おう!」

<NASTY VENT>

「キイイイイイイィ!」

「ヌアァッ…!?」

ダークウイングのソニックブレイカーを発動し、キバEFに怪音波で対抗する。いくら装甲が硬く、攻撃に優れ、速さも圧倒するのならば、どんなに鍛えても完全に消せない感覚を攻撃したのだ。

キバEFが怯んだ隙に、2人は精一杯の力をバイザーに込めて、彼を切り裂く。

「はあああっ!」「やあああぁっ!」

ザンッ!ズバァ!

「グアアアアァッ!」

いくら強固な鎧でも、2人のライダーの渾身の斬撃に耐えることは出来ない。大きくはないが、確実にダメージを負ったキバEF。

 

<SWORD VENT>

「おおぉりゃああああああああぁ!」

ブライのガルドセイバーには刃に炎を纏う力がある。

炎の刃でカブトHFに攻撃を仕掛けるが、

ガキィン!

あっさりと防がれた。

その間に、カブトHFはパーフェクトゼクターの柄にある赤いボタンを押す。

<KABUTO POWER><HYPER BLADE>

「タァッ!」

ズバァッ!

カブトHFの必殺技の1つ「ハイパーブレイド」がブライの身体に直撃した。

しかし…。

ガッ!

「お前…!」

「アンタのばあちゃん、言わなかったか?肉を斬らせて骨を絶つってよ!」

ブライは、なんとパーフェクトゼクターが鎧に抉り込んでいるにも拘らず、その刃を握り、カブトHFの動きも封じ込めた。これでは、ハイパークロックアップを発動しても意味がない。

<SHOOT VENT>

その間を見計らい、ギガランチャーを装備したゾルダ。

「くらえええええええええぇ!」

ズダアアアアアアアァン!

「ウアアアッ!」

彼らの身を削った攻撃に、遂にカブトHFも攻撃を許してしまった。

 

「こうなったら、ゴリ押しだ!サトル、いいな?」「わかったよ!」

<ADVENT><ADVENT>

「ガルルルルルルルル!」「ギギィ!」「キイイイィ!」

ガゼール軍団とデストワイルダーが、ファイズBFに攻撃を仕掛ける。

「そんなことで、お前ら突破できんのか!?」

ズダァン!

しかし、ファイズBFにそれは全く苦にならない。

「一か八か、掛けることも重要だよ!」

<FREEZE VENT>

「…お前ッ!?」

なんと、ファイズブラスターが機能停止した。と言っても、一時的なであるようだが。

「いぇあぁああああぁ!」「はああああああぁ!」

ドガァ!ガスッ!

「ウオアァ!」

ファイズBFの見せた一瞬の隙を2人は逃さなかった。

「別世界の仮面ライダーにも通用するんだね」「状況は、未だ劣勢だがな」

共に構えを取り、ファイズBFに対抗心を燃やす。

 

龍騎達は、状況を打破できたわけではないが、ブレイドKF達に一矢報いることが出来ていた。

これが、竜也が城戸真司から学んだ『意志』の力なのだろうか…。

「おれは、みんなと一緒にいたい!世界を破壊する存在がおれなら、おれが世界を救ってみせます!どんなに苦しくても、辛くても、これが今の、おれの戦える意味だから!」

龍騎はブレイドKF達に改めて叫ぶ。

微かにだが、ブレイドKFがキングラウザーに込めていた力が、ほんの少しだけ抜けた。

しかし、彼らはいまさら引き下がれない。

「ならば、受け止めろ!」「そして守りきれ!」「その意味で!」「僕等の力を押し返すんだ!」

<ROYAL STRAIGHT FLUSH><EXEED CHARGE>

<MAXIMUM RIDER POWER><1・2・3 RIDER KICK>

「ウエイクアップ・フィーバー!」

『ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァ!』

 

「…もう、分かったんじゃないのか?」

 

ドガアアアアアアアアアアアァ!

突如、そのことを察知したように、オーロラから一人の戦士が現れ、彼らの最大の攻撃を防ぎきった。

深い闇を思わせる漆黒の鎧。体中を走る稲妻のような金色のライン。

そして、慈愛に満ちた赤い赤い瞳。

その戦士の名前は…。

 

凄まじき戦士「仮面ライダークウガアルティメットフォーム」だ(以下、クウガUF)。

 

「雄介さん…!」

野上良太郎が驚いたような表情をみせる。そう、このクウガUFは五代雄介。

彼は、城戸真司とともに世界を救う術を探しており、この世界には訪れなかった筈だった。

「良太郎、翔一、仁志さん。ありがとう、俺や真司の代わりに竜也君達を救ってくれて」

心からの感謝の言葉を述べ、変身を解いた五代雄介。

竜也達と剣崎一真達も変身を解いた。

「邪魔をするつもりですか…?」

「総司、もういい。君のおばあちゃんが言っただろ、絆とは、決して断ち切れぬ、強い繋がりだって」

その言葉を聞いて、天道総司は後ずさった。

「巧。彼らには、こんなにも強く「罪」を背負っている。戦う「罪」を。それに、優しい「夢」も持っている。そんな彼らをねじ伏せるなんて、君自身の夢を壊してるんじゃないのか?」

「…アンタには、かなわねぇな」

乾巧も彼に言われて反論することが出来なかった。

「…俺は!」

「一真。本当は君が一番、この方法に否定的だったこと、俺は知ってたよ。でも、君は昔から自己犠牲になりがちだからね…」

剣崎一真の心を見透かしたかのように、言う五代雄介。

「渡。君が本当は押し潰されそうになってて、それをいつも隠すために、ああやって自分を見せなかった。でも、君のその想い、竜也君に届いてるよ」

「そう…ですか…」

 

「彼らに託してみようよ。この世界に来た士も言っただろう。「ここからが、彼らの物語」だって」

 

少しの間、沈黙が続いたが…。

「僕等は、みなさんがどうするか、もう少しだけ見守らせていただきます」

「もう一度言う。運命と戦え。そして、勝ってみせろ…」

「人が行くのは、人の道。お前達の道、もう少しだけ見せてもらう。天の道がそれを切り開くのは、もう少し後らしい」

「守ってみろ、お前達自身の「夢」を」

4人は、オーロラの中へ消えた。

あのときのような、冷酷な表情ではなく、どこか晴れ晴れとした表情だった。

「良太郎達も先に戻って。俺だけで言いたいことが少しあるからね」

「わかりました。…竜也君、モモタロスが言ってたよ。「お前の今を守れ」って。僕は、君達がこの世界の未来を守れるって信じてる」

「鍛えたりなきゃ、いつでも鍛えろよ。身体も心もな。シュッ!」

「君達の居場所、しっかり守りぬくんだよ」

3人も激励の言葉を残し、オーロラの中へと消えた。

 

あゆが思い出したかのように五代雄介に近づく。

「その声、もしかして…」

「そう。君に、竜也君を救ってくれるように頼んだのは、俺だよ」

「そうだったんだ…」

全てに納得がいったような表情のあゆ。

「君たちにこの世界の命運を託した。だから、俺達はよっぽどのことがない限り、この世界に干渉できない。だから、ここからは君達自身で戦うしかない。良いかい?」

「はい。みんなで一緒に戦えば、大きな困難も、必ず突破口が開けると思いますから。今回みたいに」

はっきりと答える竜也

何処かしら五代雄介には、決意の固まったような顔つきになったように見えた。

「安心したよ。…だから、この力を託そう。龍騎と似た戦士が居る『ドラゴンナイトの異世界』で、中核に当たる存在「仮面ライダードラゴンナイト」である、吉井明久君と苦楽を共にし、その人生を全うした相棒だ」

そう言って、城戸真司のスクーターに手を翳す。

すると、形は大きく変わり、赤い大型バイク「ドラゴンサイクル」に変形し、元の形に戻った。

「おおぉ…!」

予想できなかったことに、潤は目を見開いている。

「この力には、明久君やその世界の人達の想いがたくさん詰まっていた。あの世界では、その想いを受け継いだモノが生まれたけれど、このドラゴンサイクルには、まだやるべきことがある。君の力になることだ」

城戸真司のスクーターに込められた力を、竜也は触れることにより、感じたような気がした。

そして聞こえないだろうが、その吉井明久に向けて言葉を贈った。

「明久…。顔も知らないけど、君の相棒、受け取ったよ。いつか、お礼を言わせて欲しいな…」

「きっと逢えるよ!ボクは、そう思うな」

 

 

吉井明久…。

またの名を「仮面ライダードラゴンナイト」。

 

いつか、出会うときがあるのだろうか…?

 

「祐一君、これを。真司から預かっているモノだ」

五代雄介はそう言って、ポケットから1枚のアドベントカードを取り出し、祐一に渡した。

彼は、このカードを城戸真司から渡されたときの場面を思い出していた。

 

「五代さん、これを。竜也が信じた、今のナイトに渡して欲しいんです。あの世界に、最も近い俺は行けませんから」

「え…、でもこれは、オーディンも狙っているモノじゃ…」

「彼らなら絶対に大丈夫です。信じてください」

「…わかった。まかせて」

 

「これは…?」

「サバイブだ…!」

竜也には、はっきりと分かった。青い宝玉がある黄金の翼に、風を思わせる青い背景。

 

「SURVIVE~疾風~」だった。

 

「君達の力になれば良いと思う。…後は君達次第だ。おこしてくれ、「奇跡」を!」

屈託のない笑顔でサムズアップを贈り、五代雄介はオーロラの中に消えた。

「…良かったのか?城戸真司に逢わせてもらわなくて」

ミツルが竜也に聞く。

「うん。真司さんも戦ってる。だから、おれも戦わなくちゃ。大好きなみんながいる、この世界で!」

今の彼らなら、強く戦える。

なぜならば、彼らは城戸真司から受け継がれた「願い」を背負う戦士。

仮面ライダーなのだから。

 

 

 

続く…

 

 

 

 

 

次回!

 

               魔物って…何処から来たんだ?

 

不味いな…。奴にサバイブが…

 

               浅倉とは、絶対に決着をつける!

 

浅倉を倒すことも、それほど大きな意味がある。

 

               あれが、仮面ライダーナイトサバイブ…!?

 

 

第37話「疾風の剣」

 

 




キャスト

龍崎竜也=仮面ライダー龍騎

月宮あゆ

相沢祐一=仮面ライダーナイト
川澄舞=仮面ライダーファム

北川潤=仮面ライダーブライ
美坂香里

久瀬シュウイチ=仮面ライダーゾルダ
倉田佐祐理

水瀬名雪
沢渡真琴
天野美汐
虎水サトル=仮面ライダータイガ
斉藤ミツル=仮面ライダーインペラー

モモタロス

五代雄介=仮面ライダークウガ アルティメットフォーム
紅渡=仮面ライダーキバ エンペラーフォーム
剣崎一真=仮面ライダーブレイド キングフォーム

津上翔一=仮面ライダーアギト シャイニングフォーム
乾巧=仮面ライダーファイズ ブラスターフォーム
ヒビキ(日高仁志)=仮面ライダーアームド響鬼
天道総司=仮面ライダーカブト ハイパーフォーム
野上良太郎=仮面ライダー電王 ライナーフォーム

城戸真司=仮面ライダー龍騎(初代)

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