仮面ライダー龍騎 ~EPISODE Kanon~ 作:龍騎鯖威武
第37話 「疾風の剣」
第37話 「疾風の剣」
オリジナルライダーたちが去って、2日が過ぎた。
「はあっ!」
ザァン!
「ミィィィ!」
ソノラブーマと戦っているのは、ナイト。
「よし…今こそ…!」
そう言ってデッキから、あのカード…「SURVIVE~疾風~」を引こうとするが…。
ブオオオオオオオオオオオォン!
「祐一、待って!」
<SWORD VENT>
「だあぁっ!」
ズバァ!
「ギギイイイィ!?」
けたたましいエンジン音を鳴り響かせるドラゴンサイクルに乗りながら乱入した龍騎が、それを引き止めた。
「サバイブをモンスター相手に使うのは、あまり良い事とは思えない。どうしてもその力が必要になったとき以外は、機会を見計らうべきだ」
「でも、早く…!」
「力を必要以上、誇示するのはダメだ!」
ナイトは、この場での戦闘を出来るだけ早く終わらせる事を最重要視していたが、龍騎はそれを否定する。
龍騎の強い語調に押され、デッキにかけた手を、ゆっくり下ろすナイト。
<STRIKE VENT>
「ガアアアアアアアアアァ!」
「はああああああああああぁ…だあっ!」
ゴオオオオオオオオォ!
「ガギャアアアアァ!」
ドラグクローファイヤーでソノラブーマは燃え尽きてしまう。
変身を解く2人。ドラゴンサイクルは、スクーターへと戻った。
「祐一。サバイブはアドベントカードの中でも、最も強い能力を秘めてる。必要以上の使用は祐一の疲労に影響が及ぼされるかもしれない…」
「…そうか。もっと考えないとな」
オーディンは、オーロラ越しに高校を見ていた。
最近、まともに戦えず、苛立っている浅倉も一緒だ。
「浅倉タカシ。この校舎内に「魔物」と呼ばれる存在が居る…。ファムである川澄舞と深く関わりがあるようだ。調べてもらいたい」
「チッ…くだらん」
浅倉は、戦いのない命令など聞きえれようとはしないらしい。
「黙って、私の言うとおりに動け。ファムとよく行動しているナイトと対峙すれば、楽しめるはずだ。…彼は今、最強のアドベントカードの一つ、オリジナルの疾風のサバイブを所持している。不味い状況ではあるのだがな」
その言葉で、浅倉の表情が変わる。
「ほう…。なら、龍騎以上に楽しめる相手がいるって訳か!」
ゲラゲラと狂気の笑い声を上げながら、オーロラの中へと消える。
取り残されたオーディンは呟いていた。
「龍崎竜也の別人格…奴は、近づいている。そして、不自然な存在の月宮あゆ…。まさか彼女に…」
竜也の家では、台所に家主の竜也が立っていた。もちろん自分を含めた、あゆ、真琴、ミツルの食事を作るためだ。栞がお邪魔している事も忘れてはいない。
栞は紅渡たちが去った後、異常な速さで回復し、今日で退院した。そのお祝いも兼ねている。
ちなみに今日はカレーである。
「…ちょっと、とろみが足りないかなぁ…」
「竜也く~ん!」
あゆが嬉しそうに、竜也に話しかけてきた。
「ん、あゆ、どうしたの?」
「えへへ…何でもないよぉ~」
ニコニコ笑いながら、真琴の部屋までトコトコと走っていった。竜也は首をかしげている。
大きな困難を乗り越えた事が、嬉しくて仕方がないのだろう。
それともう一つ。
「一緒にいたい!…誰よりも大切な人と!」
あのとき、紅渡たちに宣言した、竜也の言葉。
これも、あゆにとっては嬉しい理由の一つだ。彼女には、これは一種の愛の告白に思えたのだろう。その言葉の時点で、彼女を見つめて手を握ってくれた事は、その気持ちを助長させている。
「あゆさん。おねえちゃんから聞きました。でもわたし、負けませんよ!」
「えぇ!?」
あゆに宣戦布告(?)した栞は、頭にピロを乗っけてマンガを読んでいる真琴に話しかけた。
「真琴さん、マンガ見せてくれません?」「あうーっ!いま、あたしが読んでるのにぃ!」
「ウニャァ~」
「あ、ボクも!」「やめてよぉ!竜也にでも、遊んでもらえばいいじゃない!」
2人が真琴に話しかけ始めると、ピロは真琴の頭を離れ、ミツルの膝の上に飛び乗る。
ミツルは眉間に皺を寄せながら、ペンを走らせている。苛立っている理由はピロではなく…。
「うぐぅ…だって竜也くん、ごはん作ってるもん!」「そうです、わたし達と遊びましょう!」
「…おい、うるさいぞ!最近、仕事が山積みなんだから、静かにしろ!」
最近、インペラーとしての戦いが続き、WATASHIジャーナルの仕事がかなり残っているので、それを片付けているミツル。そこであゆと真琴、栞が大声で喧嘩を始めるので、3人を怒鳴った。
「す、すみません…」「うぐぅ…ごめんなさい」「あぅ~…だって、あゆと栞がぁ…」
「くっ…いちいち泣くな。これが終わったら、遊んでやるから。おれで良いならな」
「「「やったー!」」」
真琴は、あの事件をきっかけに言葉を取り戻した。
本人曰く「自分とミツルの愛のパワー」との事。
ミツルは「天道総司が、干渉を消すついでに、その症状も取り除いたんだろう」と邪険に扱ってはいるが、彼女の言葉について満更でもない。何しろ、聞きたかった人の声が聞けるし、ちゃんとしたコミュニケーションもとれる。つまり、もっと楽しい時間が増えると言う事だ。
「ミツル。とりあえず、ごはん食べよ。みんなも食べて!栞ちゃんと真琴ちゃんの全快祝い!」
「あぁ」「「「はぁーい!」」」
ちょうど夕食が完成したので、4人を呼ぶ竜也。
その後、辛いものが苦手だった栞はこう言った。
「カレー作る竜也さんなんて、嫌いです…」「うそぉ!?」
竜也は必死に謝って許してもらった。バニラアイスのご馳走、3回を条件に。
これが、栞が竜也と2人でお話しするための計算だったのは、ここだけの話。
夢…。
夢には終わりがある…。
どんなに楽しい夢も…
どんなに怖い夢も…
暖かい布団の中でお母さんに揺り起こされて…
夢は途切れる…。
ずっとずっと、変わらない朝の風景…。
でも今は…
夢に終わりがなくなったのはいつだったろう?
「遅いよ、竜也く~ん!」
頬を膨らまして、プンスカと怒っているあゆ。
「ごめんごめん。今日は、おつかいを先に終わらせたから!」
「あ、そうなんだ」
「そんな事より、はいこれ!」
竜也がそう言って、あゆに渡したモノ。
それは昨日、取り損ねた天使の人形だった。
「あ、これ…」
「何とか取ったよ!実は遅れた理由は、それも…」
困ったような笑みを浮かべ、頭を掻く。
あゆは、全ての事情を知って、竜也を怒ったことに強い罪悪感を感じた。
「ご、ごめんね!そんな事知らなくて…」
「いいんだよ。遅れたのは僕!そうそう、この人形にはね、すごい力があるんだよ!」
「ちから?」
竜也が待ってましたといわんばかりに、自慢げに言う。
「この人形はね、3つだけ、願い事を叶えてくれるんだよ!」
首を傾げるあゆ。
「どうやって、叶えるの?」
「僕!僕が叶えるよ!だから…僕のできる事だけに限っちゃうけど…」
どうやら、こんなマイナス要因は考えていなかったのだろう。うつむいて呟くように言う竜也。
「じゃあ、1つ目いい?」
「あ、ちなみに僕は貧乏だからね」
「ううん、平気。お金の事じゃないから」
人形を抱きしめて、目を閉じる。まるで祈りを込めるように。
「1つ目のお願い。…竜也くん。ボクのこと、ずっと忘れないで下さい」
「…こんなのは、ダメ?」
「僕にできることなら、なんでも出来る!だから良いよ!」
胸を張って、強く返す竜也。
「じゃあ、約束ね!はい!」
小指を差し出すあゆ。
「…なるほど!」
意味を理解し、その指に自分の小指を絡めた。
「指きった!」
そして、夜は明けてゆく…。
その日の夜。
「舞、行くのか?」
「…あと、少しだから」
祐一の制止を聞かず、夜の校舎へと足を踏み入れた舞。
本人曰く、魔物はもう2体にまで減ったらしい。
ケリをつけたい。
舞はそう願っていた。
「魔物だけじゃない。…浅倉とも、絶対に決着をつける!」
「浅倉を倒す事は、ただ、おまえのお袋の仇を取るって事じゃないぞ」
祐一は舞に言う。
「おれは、おまえや竜也達ほど、デカイものは背負ってない。浅倉を倒すって事は、また一つ、デカイものを背負うってことだ。それほど大きな意味がある」
正面を向き合って、聞く。
「それでも、やるか?」
「…うん」
いままで、祐一が提案した受け答えの、はちみつくまさんやぽんぽこたぬきさん等ではない。それだけ彼女の決意が強いということだ。
「佐祐理も…なにか手伝いたいです」「僕も力を貸したい」
そこに現れたのは、久瀬と佐祐理。
「いよっしゃぁ!このライ…あ、ちがった。ブライ様も一肌脱ぐぜ!」
「はぁ…このおバカは…まぁ、わたしたちも手伝うわ」「お薬もってきました!」
「僕だって、なにか頑張れると思うから!」「みんなでがんばろ。ふぁいと、だよ!」
「わたし達を頼ってください」「あたしとミツルのラブラブカップルに、まっかせなさい!」
「言ってて恥ずかしくないか、真琴?…川澄、せめて足止めくらいは出来る。サポートは任せろ」
「そうだよ。みんなで一つずつやれば、絶対に勝てる!」「ボクも、いっぱい頑張る!」
本当に、この者たちの絆は深まった。なにか困難があれば支えあい、助け合い、乗り越えていく。これからも。
「舞、おまえは一人じゃない。みんなで行くぞ!」
少しだけ。
舞は、少しだけ笑顔になったように思えた。
あくまで、思えただけだが。
魔物は、基本的に舞と祐一が担当。
ここにはモンスターも頻繁に現れる。それを倒すのは竜也、潤、久瀬、サトル、ミツルだ。
あゆたちは、あたりの観察や怪我をした場合の応急処置、逃げ道の確保などを行なっている。
「…来た!」
舞がある方向に眼を向ける。おそらく、そこに魔物がいるのだろう。
しかし…。
「よう、遊んでくれよ」
最悪の相手が現れた。
「浅倉…!」
「オマエなんざ興味はない。オレは龍騎とナイトを指名したい」
浅倉は舞の事など眼中に無いように、竜也と祐一を指差した。
「祐一、わたしがやる…!」
「オマエじゃないんだがな…。まぁ良い」
両者、デッキを構える。
「「変身!」」
王蛇とファムに姿を変え、戦闘が始まった。
「はああぁ!」「オオオオォラァ!」
「「「「「「変身っ!」」」」」」
竜也達も変身し、それを追うが…。
ガキィ!
「ぐあぁ!?」「おい、竜也!?」
見えない攻撃を受ける。
「もしかして…」「マジかよ、こいつが魔物って言うのか!?」
「僕も実際に見るのは初めてだ…!」「とりあえず、防御に徹するぞ!川澄が戻るまで持ち堪える!」
別の廊下で、ファムと王蛇の激闘が繰り広げられていた。
だが、状況は未だファムが劣勢。
「ウオオオオォ!」
ズガアアァ!
「ああああああぁ!」
ベノサーベルで切り付けられ、地面に座り込むファム。
「どうしたァ、その程度か…?オレに復讐したいんだろ、オマエ」
王蛇は、ファムを挑発するように覗き込む。
「うああああああああああああああああああああぁ!」
渾身の力を込めて、拳を突き出す。
ズガァ!ガキィ!
未だ防御に徹しているので、ダメージはさほどでもないが、いつまで持ち堪えられるか不安だ。
「くそ…どうすれば…!」「やべぇぞ!ガルドバイザーがヒビ入ってる!」
「くっ…!」
ナイトのダークウォールに魔物が攻撃を仕掛けたとき。
…イ…シテ…
ガキィ!
「…!?」
一瞬、声が聞こえた。
オモイダシテ…!
今度はハッキリと。
「何を思い出せって言うんだ!?」「祐一…!?」
ワスレチャッタノ…?「アノヒ」ノコト…
一瞬、あるビジョンがナイトの脳裏を掠める。
その中にいたのは…。
「舞っ!」
突如、龍騎達のもとから離れ、先ほどファムと王蛇が向かった場所へ走るナイト。
「竜也、行け!」「え…でも…」
「おまえほど頼りになる奴はいねぇから!相沢と川澄先輩を助けてやれ!」
「…わかった!」
ブライとインペラーに押され、ナイトの後を追う龍騎。
「グギャアアアアアアアアアアアアァ!」
ドガアアアアアアアァ!
「きゃあああああぁ!」
先ほどの拳は、ジェノサイダーによって当たらなかった。
地面に叩きつけられ、変身が解けた舞。
「消えろ、そろそろ…」
王蛇は人間の舞にも容赦はなく、ファイナルベントのアドベントカードを見せ付ける。
そこには王蛇、ガイ、ライアのシンボルがある。
恐らく、この時点で王蛇最強の技。まともに受ければ、舞の命はない。
「舞っ!」
そこにナイトが駆けつけた。
「祐一…?」「舞、もうやめろ!おれが代わるからな…」
ナイトは、傷ついた舞を優しく抱きしめ、ゆっくりと寝かせた。
「ナイトか!ハハハハ、お楽しみがやってきたなァ!」
「祐一!舞さんは…!?」
龍騎がそこに辿り着いたとき、既に始まろうとしていた。
「王蛇…おまえを倒す!あいつの代わりに、おれがそれを背負う!」
ナイトがアドベントカードを引き、それを翳した。
「アァ…!?」「祐一、まさか…!」
その瞬間、辺りに強い突風が吹き荒れる。
ダークバイザーを構えるとその形は変化し、翼召剣「ダークバイザーツバイ」になる。
そう、引いたカードは「SURVIVE~疾風~」。
ナイトの、いや、竜也達の所持しているアドベントカードの中で、もっとも強い力を秘めている。まさに「切り札」。
サバイブをゆっくりと、ダークバイザーツバイにベントインする。
<<SURVIVE>>
その音声は、オーディンと同じエコーの掛かった認識音だった。
ダークバイザーツバイから、「ダークブレード」を引き抜き、その刃を王蛇に向ける。
辺りの風は激しさを増し、ナイトを包み込む。
そこにいたナイトは、以前のナイトとは大きく姿を変えていた。
鮮やかな蒼い鎧、漆黒に染まる2つのマント。
これこそ、ナイトの最終形態。
「あれが…仮面ライダーナイトサバイブ…」
「オォ…それがサバイブの力か!?」
べノサーベルを振り回して歓喜の叫びを上げながら、ナイトSに襲い掛かる。
しかし、
「はあっ!」
ガキィン!
「ヌオォ!?」
ダークブレードで一閃するナイトS。王蛇のベノサーベルは、弾き飛ばされる。
一瞬、焦りを感じた王蛇が再びナイトSの方へ顔を向ける。
「せあぁ!」
ズバアァ!
「アガアアァ!?」
その瞬間、既にダークブレードは王蛇の身体を切り裂いていた。
地面を転がる王蛇。
「チィ…!」
<STRIKE VENT>
メタルゲラスのメタルホーンを呼び出し、攻守ともに優れた戦法を取るつもりだ。
だったのだが…。
バキャァ!
「何だと!?」
王蛇の手に収まる前に、ナイトSがダークブレードでメタルホーンを切り裂く。
すると、メタルホーンはガラスが砕けるように消え去った。
「くらえぇ!」
ザァン!
「グオアアアアァ!」
今まで、歯が立たなかった事が信じられなかった。そう思えるほど、王蛇とナイトSとの差は大きかった。これがサバイブの力…。
「クククク…」「…!?」
王蛇の喉を鳴らす笑いに、一瞬たじろぐナイトS。
「ハッハハハハハハ!最高だ!最高に楽しい!もっと遊ぼうぜ!もっとオオオオオオォ!」
彼にとっては、痛みさえ悦楽なのだ。
「遊びは、これで終わりだ…!」
ナイトSは意を決し、ダークブレードを振りかざし、王蛇の頭部目掛けて振り下ろす。
だが…。
「確かに終わりだ」
ズガアアアアアアアアアアアアアァ!!
「ぐあああぁ!?」「舞さんっ!うあああああああぁ!」「祐一!竜也!」
とてつもない衝撃波を受け、ナイトSは吹き飛ばされた。変身していない舞を庇うため、龍騎は舞の目の前に、立ち塞がった。
当然、そのダメージは全て龍騎に蓄積される。
現れたのはオーロラと…
「オーディン…!」
「ナイトサバイブ…」
オーディンはナイトSを忌々しげに睨む。喉から手が出るほど欲しいものを、所持しているナイトS。
「はあああああああああぁ!」
ナイトSはオーディンに向かって駆け出す。
サバイブなら勝てるかもしれない。
しかし、現実は非情なモノであった。
「フン!」
ズガアアアアアアアアアアアアアアアァ!
「がはあああああああああああぁ!?」
戦況はまるで好転していない。サバイブの力を持ってしても、オーディンには敵わないのだ。
「…行くぞ」
オーディンによって、王蛇はオーロラで去った。
「浅倉ぁ!」「落ち着け、舞!」
肩を庇いながら、王蛇を追おうとするが、ナイトSに止められる。
「…舞さん、魔物が居るんだ!手を貸して!」
彼女のダメージはわかっているが、舞しか魔物に対抗できない。
3人はブライたちの元へと走っていった。
続く…。
次回!
まただ…!また…!
わたしのせいで…!それなのに、わたしだけ!
自分を傷つけて何になる!?
良いぜェ…!
そんな…!あいつが…!
第38話「もう一つの疾風」
キャスト
龍崎竜也=仮面ライダー龍騎
月宮あゆ
相沢祐一=仮面ライダーナイト
川澄舞=仮面ライダーファム
北川潤=仮面ライダーブライ
美坂香里
美坂栞
久瀬シュウイチ=仮面ライダーゾルダ
倉田佐祐理
水瀬名雪
沢渡真琴
天野美汐
虎水サトル=仮面ライダータイガ
斉藤ミツル=仮面ライダーインペラー
浅倉タカシ=仮面ライダー王蛇
仮面ライダーオーディン