仮面ライダー龍騎 ~EPISODE Kanon~   作:龍騎鯖威武

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第十章 夢の跡
第41話 「闇と夢想」


 

夢…。

 

夢の始まった日…。

 

木漏れ日の光がまぶしかった…。

 

雪の感触が冷たかった…。

 

そして…

 

小さな子供が泣いていた…。

 

その泣き顔が…

 

今も思い出せない…。

 

 

「竜也く~ん…どこまで行くの~?」「いいから、いいから!」

森の中で竜也はあゆの手を引いて、ずっと歩き続けていた。

「もう歩き疲れちゃったよぉ…」「あと、ちょっと!」

そして、そこは開けた場所…。

 

大きな大木が一本、生えていた。

 

「うわぁ~!おっきな木!」「僕が見つけた取って置きの場所!」

あゆは嬉しそうに大木に近づいて、竜也のほうを振り返った。

「竜也くん、ボクが良いって言うまで振り返らないでね?」「へ?」

全く意味が分からない。なにか隠し事でもあるんだろうか。疑問を持ちつつも、竜也は後ろを向いた。

しばらくして…。

「もういいよ~!」

かなり遠く…というより、上から声が聞こえた。

「…うおっ!?」

あゆは、大木の大きな枝の一つに腰掛けていた。

「いい眺めだよ~!」「危ないって!降りてきなよ!」

その声を無視して、あゆはそこから見える街を嬉しそうに見下ろしていた。

「風が気持ちいいよ~!」

季節は冬で、辺りにも雪がたくさん積もっているというのに、風を心地よく感じるあゆ。

彼女の嬉しそうな姿を見た竜也は、もう注意する気にはなれず、微笑ましくあゆを見つめていた。

「そうだ、竜也くん。2つ目のお願い、良い?」

あゆは天使の人形を取り出して、竜也に見せる。

「いいよぉ!僕に出来ることならだけどぉ~!」

 

「ボク、竜也くんと同じ学校に行きたい…」

 

「こんなのダメ?」

「う~ん…。よし!今日からここは、あゆと僕の学校!」

竜也は大きく宣言した。

「好きな時間に来てもいいし、宿題もない!給食は…」

「たい焼き!」

あゆが竜也の言葉を遮って、大きく返事をした。

「うん、決まり!…最後のお願いはどうするの?」

「とっておこうかなって。何かあったときに…」

 

帰り道。

「そういえばあゆ。木登りするときに、どうして後ろ見なきゃいけなかったの?」

「そ、それは…うぐぅ…」

竜也は、あゆが顔を真っ赤にしたことは分かったが、理由が分からなかった。

あゆは自分のミニスカートを、手できゅっと握り締めた。

 

 

 

そして、夜は明けていく…。

 

 

 

 

その日。もう年末で、2011年も間近だ。

「編集長、具合は如何ですか?」「あぅ~…秋子さん、大丈夫?」

「おかあさん!」「もう起きれるんですね」

その日、秋子の病室には真琴、名雪、美汐、サトル、ミツルの5人が見舞いに来た。

「あらあら、みなさん。わたしは、もう平気ですよ。あと3日ほどで退院ですって」

「よかったよぉ…おかあさん…」

秋子は病床で上半身だけ起こし、頬に手を当てて微笑む。名雪は母親の回復が嬉しくて、少し涙を流していた。

「仕事ですが、編集員の皆さんや、私達が何とかこなしていますので、ご安心ください…」

「ふふ…ミツルさん、そんなにマジメにしなくても結構ですよ。ここは職場ではありませんから…」

その言葉を聞いたミツルは、鼻を少し掻いて、少しいつもの雰囲気に戻る。

「…ありがとうございます、水瀬の母さん」

真琴は悪戯っぽく笑う。

「あは、ミツルのマジメなところって、なんか笑える!」

「…今日のマンガと肉まん、なし!」

真琴の言葉でミツルは怒り、約束していた大好物の肉まんとマンガを買ってあげることを取り消しにする。

「あ、あうぅ~!ごめんなさい!許して~!」「真琴、自業自得ですよ?」

「美汐までぇ~!」

 

同じ時間に、祐一と久瀬は、舞と佐祐理の見舞いに行った。

「よ、舞、佐祐理さん」「お見舞いに来ました」

「…祐一、生徒会長さん…」「あはは~っ。2人ともよく来てくれましたね~」

ベッドで横たわり、至る所に包帯を巻いた痛々しい姿だったが、それでも2人の表情は穏やかだった。

久瀬は突然、頭を下げる。

「倉田さん…貴方が怪我を負ったのは、僕が貴方をちゃんと守ってあげられなかったし、貴方の親友である川澄君に八つ当たりした最低の男です。やっぱり…」

「久瀬さん…いいえ、シュウイチさん。舞から聞きました。舞のこと、一生懸命助けてくれたって。それに、あなたが怒った理由も」

佐祐理は優しく微笑み、久瀬の手をとった。

「嬉しかったです。佐祐理は…わたしは初めて誰かから、友達以上に大切な存在だって言われました。…だから」

「僕は貴方を守りたい。誰よりも貴方を…佐祐理さん」

舞がその様子を見て、くすりと笑った。

「またカップルが出来た…」「川澄君っ!?…2人が居る事をすっかり忘れてたよ」

2人はこうして少しずつ、変わっていく。ゆっくりと、時間を掛けながら…。

一方、祐一は少し暗い表情でこう言った。

「いい雰囲気の時にすまないけど、こんな報道があったんだ。見てくれ」

新聞を出し、3人に見せる。

 

‘’浅倉脱獄囚、重体で発見!?’’

~某市内の高校で、数週間前から脱走していた浅倉タカシ脱獄囚が重体で発見された。目撃情報によると、昨夜、そこで大きな轟音や、正体不明の黒い騎士(市内で噂される「仮面ライダー」の可能性が高い)の目撃が報告されている。浅倉は警察の管理化の下、集中治療を受けている。なお黒い騎士については、以前より目撃情報のあった「仮面ライダー」の中でも、一番初めに目撃されていた赤い騎士と非常に酷似しているとのこと。[執筆者・大久保大介]~

 

記載された写真には、浅倉の入院している病院と、目撃された「黒い騎士」があった。

「浅倉は…」

「確かにおれが倒した。トドメはオーディンだったが…。それよりも、この黒い騎士って部分に、引っかかる点があるんだ」

祐一が指差す写真。その姿は、かなりぼやけているが、よく知っているシルエットだった。

「えっ…龍騎!?」

「竜也はデッキを持っていないから、普通に考えれば、あゆってことになる。でも、あゆはあのとき、間違いなくおれ達と一緒に行動していた。竜也もそうだ。それにおれ達以外で、残るライダーはオーディンだけ…」

「じゃあ…」

 

「これは…誰だ?」

 

紅渡達や士達のように、別世界のライダーとも考えられるが、五代雄介が「自分たちはこの世界に干渉できない」という発言がある辺り、それはありえないだろう。鳴滝もこの世界に留まってはいないはず。翔太郎達や映司達も、単独で世界を渡ることはできない。

つまり、この黒い仮面ライダーは、この世界の仮面ライダーであることは間違いない。

「おれも、そのことで一つ気になっていることがある」

そこにミツル、真琴、美汐が入ってきた。

「編集長の見舞いにきて、ついでに寄った。オーディンが言っていた言葉に…「14番目の仮面ライダー」ってものがあった」

「わたし達の予想では、この黒い仮面ライダー龍騎が、おそらく14番目の仮面ライダー…」

真琴はミツルの後ろに隠れながら、その写真を指差す。

「あたし…この写真が怖い」

「安心しろ真琴。おれはおまえを全力で守る。それに竜也達もいる。怖い思いなんて、させない」

怯えきった真琴の頭を、ミツルは優しく撫でる。

「とりあえず、おれと久瀬先輩と斉藤で、この事を追おうと思っている」

「祐一、みんな…気をつけて」「わたしも、皆さんの無事を祈ってます」

「おう!舞、退院したら牛丼食べるぞ」「佐祐理さん、ありがとうございます」

舞は戦えない。痣は消えたが、王蛇との戦いのダメージは消えておらず、しばらく療養が必要だ。佐祐理も外に出る事はできない。彼女達は彼らの無事を祈るしかなかった。

 

それを病院の外で見ている竜也。その瞳の色は、血のように赤かった。

まるで先程の事を全て聞いていたかのように、彼らが話を終えると邪悪な笑みを浮かべ、その場を立ち去った。

昨日のようにあるものを取り出す…。

「ようやく、動き出すか?」

その声と共に、竜也はオーロラに飲み込まれていく。ただ、そのときの表情は全くうろたえていなかった。

 

約2時間後

栞と香里は、竜也の家に向かった。昨日の事を問いただす為だ。

異常なほど豹変した竜也。彼を変えさせたのは、一体何なのか…?

「竜也さん!」

「はい…。あ、栞ちゃんに香里さん」

家の扉から出てきた竜也は、龍騎を放棄した罪悪感からか、今までより元気がなかったが、優しい笑みを浮かべ、あのときのような恐ろしさは全くなかった。

「あ、あの…昨日の事で、聞きたいことが…」「…龍騎を捨てたこと?」

少し表情を暗くして、竜也が言う。しかし、栞が聞きたいのはそれではない。

「あ、いえ…夜にわたしと会ったときです」「夜…?」

栞の言葉に、竜也は首を傾げる。

「わたしがあゆさんのことを心配してるって言ったとき…「どけ、邪魔だ」って…」

「あなたがやる事とは思えないけど…あゆちゃんのことで、そんなに気が立ってたのかしら?」

「そ、そんな!?おれ、そんなことしてない!」

そう訴える竜也の表情に、嘘はない。栞にはそう思えた。

「そうですよね…ごめんなさい…」「栞、もういいの…?」

肩を落として、ゆっくりと帰路に着く栞。その姿を香里も追おうとする。

そのとき…。

「竜也くん、モンスターがいる!」「わかった!あゆ、ドラゴンサイクルを!」

家の中からあゆがデッキを握り締めて現れ、竜也の指示に従い、城戸真司のスクーターに乗る。

「変身っ!」

あゆが龍騎になると、スクーターはドラゴンサイクルに変形する。どうやらこれは、龍騎が変身する事により反応して、変形するものらしい。

「いくよっ!」

ドラゴンサイクルはエンジン音を轟かせ、出発した。

「後からおれも、追いかける!」「わたしも…!」「ちょっと、2人とも!」

竜也、栞、香里もそれを追った。

「…そういえば、あゆは免許もってるのか!?」

 

「ブブブブブブブブブブブブ!」

雷を発し、街を破壊していたのはクラゲ型モンスターの「ブロバジェル」。大きな頭が特徴だ。

「うわぁ!止まんないよぉ~!」

ドガアアアァ!

「ブベブバ!?」

そこにドラゴンサイクルに乗った龍騎が現れ、ブロバジェルを吹き飛ばした。その衝撃で、ようやくドラゴンサイクルは止まった。

「うぐぅ…バイクの運転、難しいよ…。ボク、免許もってないし…」

なんと彼女、無免許運転なのだ。龍騎になれば乗りこなせるとでも思っていたらしい。

「「あゆちゃん!」」

「あ、潤くんにサトルくん!」

反応を聞きつけてやってきたのは、潤とサトル。

「たしかクラゲのモンスターの…ブロバジェル!」「頭でっかちめ!おれ達が相手だ!」

2人はデッキを構える。

「「変身っ!」」

タイガとライアが出てきた途端…。

「グオオオオオオオオオオォ!」

ドゴオオオオオォ!

「どわああああぁ!?」「うああああああぁ!」

咆哮と共に、黒い大きな影が2人を攻撃した。

それは…。

「どうして…呼んでないのに…」

 

黒く染まったドラグレッダーだった。

 

「ドラグレッダー!?」「でも、黒い…」

ライアとタイガも、黒いドラグレッダーの存在を疑問に持つ。龍騎が自分達を攻撃するなどありえない。

そう考えているうちに…。

<STRIKE VENT>

他のライダーのバイザーよりも、くぐもった低い音声が流れ、青黒い炎が、黒いドラグレッダーのドラグブレスと共に、ブロバジェルに当たった。

ズガアアアアアアアァ!

「ブババババババババ!」

強い。おそらく、龍騎のドラグクローファイヤーを上回った威力だ。ブロバジェルは一瞬にして燃え尽きた。

「な、何が起こってるの…?」

今までの状況について来れず、戸惑っている龍騎達。

そこに、コツコツと静かだったが、煩いほど響く足音が聞こえた。

振り向いた先には…。

黒く染まった身体、妖しく赤く光る釣り上がった瞳、全身から伝わる強い殺気。

様々な点が異なっていたが、シルエットは間違いなく…

 

「龍騎…!?」

 

仮面ライダー龍騎そのものだった。右腕に黒いドラグクローが装着されているところから、先ほどのドラグクローファイヤーは彼のようだ。

その目を見ていると、彼らは覚えのある感覚に襲われる。

…暴走した龍騎に睨まれたときのような、強い悪寒だ。

「…ッ!」

黒い龍騎は一言も発さず一呼吸置くと、ドラグクローを捨て、ライアとタイガに襲い掛かった。

「お、おい!なんだ!?」「くっ!」

とっさに防御の体制に入るが…

ドガアアァ!ズガアアァ!

「ぐああああぁ!」「わああああぁっ!」

2人の防御の薄い場所をピンポイントに狙い、強い蹴りを放った。

決して、オーディンのような別格の威力ではなかったが、2人には十分すぎるほどのダメージがあった。

「…」

黒い龍騎は沈黙しつつ、2人に近づく。

「やめて!」「あゆちゃん…!」

そこへ龍騎が両手を広げ、立ち塞がった。その姿を見て、黒い龍騎は立ち止まる。

「キミは誰!?どうして、こんなことするの!?」「…」

黒い龍騎は黙ったまま、答えようとしない。その代わりにアドベントカードを引き、ドラグバイザーにベントインした。

<SWORD VENT>

やはり他のライダーとは違う、くぐもった低い音声の後、黒い龍騎の右手にドラグセイバーが収められた。やはり、龍騎と比べて黒い。

それを構え、龍騎に襲い掛かる。

「…ッ!」「うぐっ!?」

<SWORD VENT>

ガキィン!

とっさにドラグセイバーを呼び出し、防ぐ龍騎。少し遅かったらと考え、冷や汗が流れる。

押し返したいが、黒い龍騎の力が強く、それは敵わない。少しずつ防いでいる腕がしびれてきた。限界を感じ、なんとか打開策を考えていた龍騎に向かって、黒い龍騎が初めて口を開く。

「確かにオレは、オマエを望んでいる。…だが」

 

「オレが望む龍騎は…オマエではない」

 

「その声…もしかして、キミ…」

龍騎は、その声に聞き覚えがあった。若干、唸るように低く、声色が違っていたが間違いない。

「…ッ!」「きゃあっ!?」

確信を持たれたと思った黒い龍騎は、龍騎を振り払う。その衝撃と、変身時間が限界に達した事から、あゆの姿に戻った。

しかし、そんなことはお構い無しに再び立ち上がったあゆは、黒い龍騎の肩を持ち、訴えかける。

 

「ねぇっ!竜也くんだよね!?」

 

その言葉を聞いたライアとタイガも衝撃を受ける。

「な…」「あれが…!?」

しかし、黒い龍騎は答えようとしない。先ほどのように、口を硬く閉ざしたまま、沈黙を保つ。

「そこまでだ!」「現れたな、14番目のライダー!」

<<SURVIVE>>

「はあぁっ!」

突如、突風が吹き荒れ、その中からナイトSとゾルダとインペラーが現れた。

ダークブレードを、黒い龍騎に振りかざすが、とっさに避ける黒い龍騎。

<<TRICK VENT>>

ナイトSは、シャドーイリュージョンで3人に分身し、黒い龍騎を取り囲む。

「せぇあぁ!」「たあっ!」「はあっ!」

3人がそれぞれの攻撃を放つ。黒い龍騎はそれらを避けるが…。

ガキィン!

「グゥッ…!?」

サバイブの力は強力。全てをいなせる事はできなかった。一撃でも受ければ、そのダメージは身体に強く残る。黒い龍騎は地面に膝をつく。

「まって祐一くん、この人を攻撃しないで!」

それをみていた龍騎は、黒い龍騎を庇うように立ち塞がる。

「あゆ、どういうつもりだ!?」

インペラーの問いに、答える。

「この黒い龍騎は、竜也くんなの!」

龍騎の言葉で、たった今来た3人は硬直する。

「でも彼はもう、デッキを…」

ナイトSの言葉に答えるように、変身を解く黒い龍騎。

黒い破片の中から現れた、その姿は…。

 

邪悪に笑う赤い瞳の、龍崎竜也だった。

 

「オレを攻撃できないだろう?…今まで、ずっと戦ってきた仲間だからな」

両手を広げ、彼とは思えないような重く響く声で、笑みを浮かべたまま言う。

周りの人は、絶望的な表情で竜也を見ていた。

 

その様子を遠くで見ていたオーディン。

「もう1人の部外者…仮面ライダーリュウガ…」

 

 

 

続く…。

 

 

 

 

 

次回!

 

                     オレは誰とも手を組まない…

 

最初から…騙してたの!?

 

                     違う…あれは、竜也くんじゃない!

 

もう一度…戦う!

 

                     待っていた…!

 

竜也くん…。大切な人、失った事ある…?

 

 

 

 

第42話「ふれあいの練習曲」

 





キャスト

龍崎竜也=仮面ライダーリュウガ

月宮あゆ=仮面ライダー龍騎

相沢祐一=仮面ライダーナイト
川澄舞=仮面ライダーファム

北川潤=仮面ライダーライア
美坂香里
美坂栞

久瀬シュウイチ=仮面ライダーゾルダ
倉田佐祐理

水瀬名雪
沢渡真琴
天野美汐
虎水サトル=仮面ライダータイガ
斉藤ミツル=仮面ライダーインペラー

水瀬秋子

仮面ライダーオーディン
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