仮面ライダー龍騎 ~EPISODE Kanon~ 作:龍騎鯖威武
オーディンから渡されたサバイブ…。リュウガはそれをずっと見つめていた。
記憶に残る、あの言葉…。
「使え。複製だが、サバイブには変わりない」
「そんなものは必要ない。オレはオレ自身の力で「おれ」になる」
「欠片如きが、本体に敵うと思っているのか?」
「…」
「貴様にも分かりきっている筈だ。いくら増大したとは言え、欠片は所詮、欠片だ。パズルのピースはどんなに大きくても、その1ピースだけでは意味を成さない」
ガシャァン!
リュウガは沈黙したまま、近くにあった鏡を破壊する。
「オレはもはや、欠片と言う枠組みには治まらない。それを超越した存在…。オレ自身が本体だ!」
そう言って、サバイブのカードを毟り取るように掴む。
「だが、オマエの言うとおりだ。だからそれを否定する。このカードで…!」
そう宣言して手にした、最強のアドベントカードの一つ。
「いつか変わる…いや、もう変わっている。変わり始めている…」
そういったリュウガである竜也の表情は、笑っていた。酷く楽しそうに…。それでいて邪悪に…。
あゆが行方知れずになってから数日が経った。
2011年1月3日。
ミツルが戦線離脱したのと入れ替わるように舞が戦線復帰。
リュウガやオーディンは、未だ目立つ行動をしていない。
ガキィ!ドガァ!
「はあっ!だあっ!うおおおおあああああああああああああぁ!」
あれから龍騎は、まるで自分の命を削るかのようにモンスターと戦い続けている。
「よせ竜也!」「やめて…!」
これ以上、龍騎を放っておけば、彼が狂ってしまいそうだった。
ナイトとファムが彼を羽交い絞めにして、止めようとするが…。
「離してくれっ!あゆが居なくなったのは、おれのせいだ!だからっ…!」
2人を突き飛ばし、既にデッキから引いたアドベントカードを強く握り締める。
「これは、罰なんだ!」
<FINAL VENT>
「はあああああああああああああああああああああああああぁ!」
「ガアアアアアアアアアアアアアアアァ!」
「たあっ!だああああああああああああああああああああああぁ!」
ズガアアアアアアアアアアアアアァ!
魂を吐き出すような雄叫びと共に、ドラゴンライダーキックを浴びせる。
今までよりも威力が高くなっているような気がする。
辺り一面を炎で覆いつくし、モンスターの命を奪った。その命はドラグレッダーに吸収され、糧とされる。
「ガアアアアアアアアアアアァ!」
「はぁ…はぁ…」
変身を解き、地面に膝をつく竜也。
体を酷使しすぎている。いくら戦闘慣れしていたとしても、彼にも限界はある。
「ごめん…あゆ…」
それでも、戦わなければならなかった…いや、戦いたかった。
戦う事で悲しさを紛らわせていたかった。
「やっぱり、あいつは…」
先程の事を、祐一と潤から聞いたミツル。
彼は佐祐理の隣の病室に入院し、復帰もかなりの時間を有すらしい。
…サバイブの力の恐ろしさを、身を持って感じた。
佐祐理は退院できていないものの、病院内を動けるほどには回復しており、ミツルの病室で話を聞いていた。
「あゆがいなくなって、相当ショックみたいだ。まるでモンスターみたいに戦っている」
「おかしいと思っていた」
ミツルが竜也のことを信じていたとは思えない言葉が出てくる。
舞も不自然に思い、理由を聞く。
「竜也が…おかしい?」
「竜也は孤児院にいたとき、決して強いヤツじゃなかった。明るくはあったが、もともとケンカは弱かったし、明るい性格もどこか不自然だった。どんなにケンカで負けても、悲しい事があっても、次の日はそれを忘れたみたいに明るかった。今考えると、不気味な程に」
「どういうことだよ?」
祐一がミツルの言葉の真意を尋ねる。少し溜息をついて答える。
「ようやくわかった。その不自然さは、あいつの演技だった訳だ。ついにその限界が来たんだろう…」
「竜也さんが…ずっとお芝居を…」
あの優しい笑顔と穏やかな表情、そして誰にも負けないような強い意志を持った彼は、本当の彼ではなかった。
佐祐理だけじゃなく、この場にいる全員がおどろく。
ミツルが話し終えたと同時に、真琴がドアを開けて入ってきた。
「ミツルぅ!」
ガバッ!
「がはっ!?」
入ってくるなり、ミツルに抱きつく。彼は傷が癒えておらず、軽いとは言え真琴の体重はかなりのダメージとなった。
「今日もいっぱい、いーっぱい、お話しするわよ!」「は…はな…れ…」
ミツルが真っ青になっている事に気づき、慌てて離れる真琴。
「あ、あうぅ…ごめんなさい…」
「おれ達は、もう一度リュウガを探す。香里と栞が彼自身から聞いた話だと、リュウガは竜也の何かを知っているらしいからな」
ミツルは戦えない。傷が癒えるまでの間は、ただ彼らが奔走するのを見守るしか出来ない。
真琴の頭を撫でた後、祐一たちに懇願した。
「頼んだ。あいつの苦しみを…開放してやってくれ」
「はちみつくまさん」
夢…
夢に終わりがなくなった日…。
いつものように…
いつもの場所で…
ずっとずっと…
ただ待つことしかできなくて…
それしかなくて…
だから…
今も待ち続けている…。
竜也はとある店で、じっと何かを見つめている。
「むぅ…」
目の先には、いろんな髪飾りがあった。
実は、明後日に当たる1月7日は、あゆの誕生日なのだ。だから、そのプレゼントを決めるため、こうやって品定めをしている。
「女の子の趣味って、分かんない…」
ただ、竜也に妹や姉はいない。この時点では気付いていないが、母親さえも…。
なので、女の子にどんなものを贈ればいいのかが全くわからないのだ。
「ヘアピン…いや、ちょっとつまんないかな…。だったら、このリボン…でもあゆって、いつもリボンつけてるし…」
「あ、竜也くん!」
「おわっ!?」
後ろから突然、声をかけられ、その声の主があゆだったために、竜也は心臓が飛び出そうになるほど驚く。
「うぐぅ…そんなに驚かなくても…」
「ご、ごめんごめん!いやぁ…もっと肝が座んないとね!あは、あははははははは…」
必死に取り繕ってみるが、不自然なのがバレバレだ。
「えっと…何見てたの?」
「い、いやぁ…その…あれは…そう!お母さんが髪留め買ってこいって言われて!」
そう言って、すぐ目に付いた、安い髪留めを手に取った。
「これで、おつかい終了!」
…これをあゆに渡すわけにも行かず、315円が無駄になった。
「ねえ、もし良かったら、これから手伝って欲しい事があるんだけど…」
竜也の服の袖を掴んで、あゆが頼む。
「ん、いいけど…」
そう言って、辿り着いた先は…。
「ここに埋めるの…?」「うん、未来の自分か、誰かのために」
そう言って、以前渡した「天使の人形」をビンに詰めて、土の中に埋めた。
「目印も何もないから、見つかるかな…」
「見つかるよ。誰かが必要とするなら、きっとね!」
そう言って埋めた、この場所…。
ここは、後のあゆが必死に土を掘り起こしていた場所だった。
そして、夜は明けていく…。
2011年1月4日。
ベッドの上でゆっくりと目を覚ました竜也。
「もしかして、あゆの探し物って…あの人形…?」
気が付くと、体が動いていた。あゆの探し物を見つけるために…。
数日前のあの場所に向かう最中…。
「遅いですよ、竜也さん」
聞きなれた声だった。
「あゆっ!?」
振り向くが、そこにいたのは…。
「こんにちは」
栞だった。
「そうだよな、あの娘は「さん」なんてつけないもんな…」
いつも、ストールを羽織って動きにくそうな格好だが、今日はいつもより厚着で、動く事に事欠かないような格好であった。
「あゆさんの探し物ですよね…?」
悟ったような表情で、栞は質問をする。
「よく分かったね」「えへへ、観察力はあるんですよ?」
ニッコリ微笑んで返す栞。そして、真剣な顔つきになって一歩、前に出る。
「わたしにも、お手伝いさせてください」
彼女の気持ちはすごくありがたい。だが…
「…うれしいけど、これはおれとあゆの約束なんだ。おれだけで見つけたい」
そう言って通り過ぎようとするが、彼女に腕をつかまれ、引き止められる。
「あゆさんばかり、見ないで下さい…」
かすれたような声だったが、はっきり聞こえた。
「せめて…あなたは一人じゃないって、気付いてください…。そうじゃないと…あなたを信じた人の気持ちは、どこに行けばいいんですか…?」
彼女は泣いていた。自分のために涙を流してくれる人がいる。
大切な人が、近くに居過ぎたために、感覚が麻痺しているのだろうと竜也は思った。
「…そうだよね…おれはもう一人じゃないのに…。あゆがいなくなって、まるで独りぼっちになったみたいに、殻の中に閉じこもって…」
竜也は、あまり明るくないが少し微笑んで見せ、栞の手を両手で握った。
「ありがとう栞ちゃん。一緒に手を貸してくれないかな?」
「…はい!」
サトルは血相を変えて、リュウガを探し回っていた。
「ミツル君を、あんなに傷つけて…竜也君も苦しめる…。絶対に許せない!」
同行していた久瀬は、ふと思いとどまる。
「彼を止めないと、これから大変な事になるのは分かっているが…」
リュウガを止めなければならない。
だが、相手はサバイブを所持している。言い換えれば、ナイトSとほぼ同等か、それ以上。
この2人はおろか、こちらがサバイブを使わなければ7人がかりでも勝てるか怪しい。
さらに現在、竜也に続いた実力者のミツルが戦線離脱中。竜也は今、無理に戦わせるわけにも行かないので、実質5人だ。
勝率は高くはない。
「それでも止めなきゃ!絶対に!」「…あぁ!」
サトルと久瀬は改めて決意を固め、リュウガの捜索を再開する。
暫くして、竜也は栞と2人で、あゆと分かれた場所に辿り着いた。
「ここに…埋まってるんですか?」「うん…」
「よぉ!探しものなら、おれ達も手伝うぜ!」「2人だけじゃ、大変でしょ?」
後ろから声をかけられ振り返ったら、潤と香里が立っていた。その手には大きなシャベルが握られている。
「もしかして…後を付けてきて?」
「おう、気配を消すのは、お得意だからな!」「2人が気付かなかっただけよ。さ、早いとこ見つけましょ?」
「お姉ちゃん…北川さん…」
こうして、4人で探し物を見つけるために奮闘を開始した。
久しぶりに家に帰ってきた秋子は、名雪と一緒に夕飯を作っていた。
「今日は、おいしいもの沢山作りましょう」「うん、わたしもそれ位しか出来ないから…」
名雪は、せめてサトル達が戦いの疲れを癒せることを必死にやっている。
「おい、青髪女…トラ坊主達が危ねぇぞ…!」
ふと声がした。それは聞きなれない声だ…少なくとも名雪にとってだが。
「…?」「どうしたの、名雪?」
振り返るが、声の主らしき姿はない。それどころか、名雪と秋子以外に、この家に誰かいる気配はない。
しかし、声だけは届く。
「急いで…!」「このままやと、マズいでぇ…!」「早く!」
「おかあさん、少し出かけてくる!」
そう言って、名雪は走り出した。
取り残された秋子は、名雪が残した調理中の食材を見つめて、呟く。
「…あの子達は、ずっと戦っているのですね…。きっと…そうですね…?」
そして天井を見上げ、ここにはいない、ある青年の名を呼ぶ。
「城戸さん…」
一方、サトルと久瀬は、リュウガに遭遇していた。
「探したよ…リュウガ!」「君を…止める!」
目の前には赤い瞳の竜也が、後を向きながら笑みを湛えて立ち尽くしていた。
「次は…オマエ達だ…!」
そう言うと同時に、デッキをVバックルに装填しながら振り向く。
「変身…!」
掛け声と同時に、リュウガへと姿が変わった。少し顔を上げた瞬間、仮面の奥の目が妖しく光る。
「「変身っ!」」
2人もタイガとゾルダに姿を変えて、臨戦態勢に入る。
「はああっ!」「せぇあぁ!」
一つの場所に絞って、ずっとシャベルを掘り進める4人。
ガッ…!
「あ…!」
そのうち、栞がシャベルの手ごたえに不自然さを感じ、手で掘り進めると、程なくして小さなビンが出てきた。
「竜也さん…これじゃあ…!」
別の場所を探していた竜也が、その声に反応し、その方向を見る。
「…あった」
栞から手渡され、土を払う。
それはボロボロだったが間違いない。7年前、あゆに贈った「天使の人形」だった。
「うおぉ!?栞ちゃんに手柄、盗られたぁ!」「黙ってなさい!」
ゴスッ!
「ぐはっ!?」
潤は香里によって黙らされ、地面に這い蹲る。
「でも…もうボロボロだ…」
悲しそうに呟く竜也。
その人形はあちこちに土埃がつき、羽は片方がもげ、天使のわっかは取れていた。
彼の手にある人形を持って、栞はポケットの中から簡単な裁縫道具を取り出した。
「本当に何でもあるんだな…栞ちゃんのポケット。まるで、ドラえ…」「ふんっ!」
ガスッ!
「ぐへっ!?」
潤、2度目の撃沈。
「簡単になら、修繕できます。わたしに任せてください」
ガキィン!
デストバイザーとギガホーンの攻撃は、意図も簡単に防がれた。
「壊せ…!」
「グオオオオオオオオオオオオオオオオォ!」
ドガアアアアアアァ!
「ぐああぁ!?」「うわああああぁ!」
リュウガの言葉に反応するかのように、ドラグブラッカーが何処からか現れ、タイガとゾルダを弾き飛ばす。
地面を転がり立ち上がると、辺りは炎に包まれていた。
<<SURVIVE>>
その音声に振り向くと、目の前にいた者はリュウガSに変わっていた。
「…久瀬さん、勝てると思います?」「難しいだろうね」
「だが、無駄に足掻くだろうな」
続きの言葉を予想していたかのように、リュウガSが呟く。
ハッとして前を見ると、目の前にブラックドラグバイザーツバイを突きつけたリュウガS
が居た。
ズダアアアアアアアアアァ!
「があああああああああああああああぁ!」「うわあああああああああああああぁ!」
至近距離から凄まじい威力の攻撃を受け、壁に叩きつけられ、地面を転がる。
「次の一撃で…終わる」
トドメを刺すべく、引き金に指をかけるリュウガS。
そのとき…
<<SURVIVE>>
別の音声が聞こえ、辺りに風が巻き起こる。
正体はナイトSだ。少し離れた建物の屋上に佇み、ファムも一緒にいる。
「リュウガ!」「あなたを…これ以上、野放しにはさせない!」
同時に飛び降り、地面に着地すると、リュウガSに2人で斬りかかる。
「フンッ!」
ガキィ!
その攻撃はリュウガSにとっては避けがたく、防ぐと言う形に治まった。
「今だ!」
<SHOOT VENT><FINAL VENT>
「ガルルルルルルル!」
ナイトSの言葉で、ゾルダはギガランチャーを構え、タイガは冷気を拳に纏う。
「ウオオオオォ!」
ズガアアアアアアアアァ!
「ぐうっ…!」「ああああっ!」
デストワイルダーがリュウガSに襲い掛かるが、彼はそれを、ナイトSとファムを振り払う事で避ける。
ナイトSにとっては、強いとは言え大ダメージではなかったが、ファムは違う。
それでも、リュウガSに一瞬の隙を作った。
「いけええええええええぇ!」「うおおおおおおおおおおおおおおおおぉ!」
ズダアアアアアアアアアァン!ドガアアアアアアアアアアアアアァ!
ギガランチャーの弾丸はリュウガSに向かって発射され、タイガのクリスタルブレイクが同時にぶつかる。
間違いなく直撃だ。
だが…
簡単とは言ったが、見事に天使の人形は修繕された。
「栞ちゃん、ありがとう。本当に」
「良いですよ。竜也さんのお役に立てて、嬉しいです」
竜也に微笑みかけ、人形を手渡す。
「じゃあ、わたし達は帰るわね」「ちょ、香里~!香里さぁん!」
香里は、2人の様子を見て少し微笑んだ後、歩き去っていき、潤はその後を追いかける。
少しの沈黙の後…。
「竜也さん…あゆさんのこと…」「え…?」
小さな声だったので、聞き返すと…。
「あゆさんのこと…まだ好きですか?」
少し不安げに尋ねる栞。
「…うん」
俯きながら答える竜也。これは間違いない本心だ。
「わたしって…卑怯ですよね」「卑怯…?」
彼女は自嘲気味に笑い、後ろを向く。
「わたし…竜也さんが好きです」
「栞ちゃん…」
「わたしがどうして、竜也さんのお手伝いしたと思います?」
その声はなんとなくだが上擦っているように聞こえる。
「あゆさんがいなくなった今、もしかしたら、わたしに振り向いてくれるかもしれないって思ったからです…」
人形を見つけた喜びで、沈んでいた気分が少し元に戻ったからか、彼女の言葉が強く、そして重く圧し掛かった。
「自分でも、悪いって思います。それでも竜也さんに、わたしのこと見ていて欲しいです…」
そう言って、栞は振り返る。その瞳からは大粒の涙が流れていた。
「あゆさんを好きなままでいいです。竜也さんにとって、わたしは、あゆさんの代わりでいいです。だから…わたしを見てください。わたしを、竜也さんの支えにして欲しいです」
一歩ずつ近づく栞。彼女は自分の思いの全てをぶつけた。
しかし…
「君は「月宮あゆ」じゃない」
竜也はきっぱりと言い放った。
「竜也さん…?」
「君の気持ち、正直に言えばすごく嬉しい。久しぶりに胸があったかくなった。でも、君はあゆの代わりにはなれない。君は「美坂栞」だから。言われたとおり、おれはあゆが好きだ。この想いは多分、捨てられないし、この想いを残して、君と一緒にはいられない…。そうしてしまうと、最後には君を傷つけてしまうから…」
悲しい返事だった。
だが、その言葉の中には、本当に彼女を想う、真心が篭っているように栞は感じた。
そして、久しぶりに強い意志のこもった瞳の竜也を見た。
「おれは2人の女の子を幸せにできるほど、強くないよ…」
ただ、最後の言葉は悲しげな声だった。
「…優しいですね、竜也さん」
「優しくない、弱いだけだよ」
栞の言葉を強く否定する。
「竜也さんが…弱い?」
「…今から、あゆにも言わなかった、本当のことを話すよ」
一呼吸置いて、真実を話し始めた。
「おれは祐一や潤達より弱い。おれの判断が間違ってなければ、みんなはおれを強いと思い込んでるんだよね?」
栞には、意味が分からなかった。
龍騎である彼が…1年もの間、一人で戦い続けた彼が、弱い筈がない。
「これは全て演技。みんなに不安を与えないため、みんなが怖がらないように…強いフリをしているだけなんだ」
淡々とだが、すこし熱っぽく話し続ける。
「そして、いつの間にか、本当のおれが分からなくなった。偽った自分以外の自分が、分からなくなった。そして結局…彼女さえ守れなかった」
竜也は遠くを見つめる。その先には恐らく、もう一人の自分がいると感じて。
「多分…あの「仮面ライダーリュウガ」は、おれが分からなくなった「本当のおれ」なんだと思う」
キィィン…キィィン…
「栞ちゃん。君は偽ったり、見失ったりしないで。「本当の美坂栞」を」
そう言い残して、ポケットに人形を仕舞い、反応のするほうへ向かっていった。
取り残された栞は、下を向いて少しだけ悔しそうに、そして悲しそうに呟いた。
「そう言えるあなたを…わたし達が弱いと思えますか…?」
<<GUARD VENT>>
「終わりか…?」
リュウガSはとっさに、ブラックドラグランザーによる防御壁「ファイヤーウォール」を発動したため、無傷だった。
これほどにまで策をめぐらせても、リュウガSには傷一つさえつけられなかった。
タイガとゾルダにいたっては、ダメージが積み重なった事があり、遂に変身がとけ、気絶してしまった。
「マジかよ…!?」「そんな…!」
残されたナイトSとファムは絶望に打ちひしがれた。
しかし、それをリュウガSは待ってくれない。
<<SHOOT VENT>>
「ゼェアアアアァ!」
ズガアアアアアァ!
「ぐあああああああぁ」「きゃああああぁ!」
3人、しかもナイトSも同時に、ブラックドラグバイザーツバイから放たれる「メテオバレット」で吹き飛ばす。パワーの限界か、ナイトSは通常のナイトに戻る。
気絶したままの2人も壁に叩きつけられ、痛々しい出血が見られる。
少しずつリュウガSが近づいてくる。ナイトSでさえ敵わない脅威が、彼らの命を奪うために…。
「ダメなのか…!」
「やめて!もうやめてよ!」
言葉と共に現れたのは、名雪。
4人を庇うように立ち塞がり、両手を広げる。
その言葉に意識を取り戻したサトル。
「なゆ…ちゃん…!」
手を伸ばし、名雪を離れさせようと思ったが、身体中にダメージがあるため適わない。
「退け」
リュウガSは静かに、そして強く言い放つ。だが、名雪はそれに屈することなく一歩前に出た。
「退かない…!」
「ならば…潰す!」
名雪の拒否に対して、持っていたブラックドラグバイザーツバイから黒い炎を宿した刃「ドラグブレード」を呼び出し、ゆっくりと振り上げ、そして下ろす。
「はああああああぁっ!」
突如、2つの影がリュウガSに攻撃を仕掛ける。とっさに避けるリュウガS。
その姿は…。
「みんな!」「苦戦中か?」
竜也と、途中で合流した潤だ。すぐにデッキを構え、臨戦態勢に入る。
「「変身っ!」」
龍騎とライアは、リュウガSに向かって拳を握る。
が、当のリュウガSは戦う意志を見せない。変身をとき、赤い瞳の竜也に戻る。
「…」
じっと龍騎を見つめ、すぐに去っていった。
「…明日に見る夢で、オマエは全てを思い出す…」
少し後ろを向いて、そう言い残して…。
「おい、逃げるのか!?」「潤、とりあえず、みんなを!」
リュウガSには目もくれず、ナイトS達を抱き起こす龍騎。
「ようやく復活したって感じだな…」
変身が解除された祐一は軽く笑う。
「…いや、また演技することになっただけだよ…」
そう言った龍騎の仮面の奥の表情は、誰にも分からない…。
続く…。
次回!
そんな…
あれって…!?
うそだ…
さぁ…総てを受け入れろ…!
あゆが…
そんなの…信じない!
第45話「真実」
キャスト
龍崎竜也=仮面ライダー龍騎
あゆ
相沢祐一=仮面ライダーナイト
川澄舞=仮面ライダーファム
北川潤=仮面ライダーライア
美坂香里
美坂栞
久瀬シュウイチ=仮面ライダーゾルダ
倉田佐祐理
水瀬名雪
沢渡真琴
虎水サトル=仮面ライダータイガ
斉藤ミツル=仮面ライダーインペラー
龍崎竜也(?)=仮面ライダーリュウガ
仮面ライダーオーディン