仮面ライダー龍騎 ~EPISODE Kanon~   作:龍騎鯖威武

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第46話 「茜色の終曲」

 

 

2011年1月7日。

目を覚ますと、そこは一度見たことのある場所だった。

「ここは…デンライナーの…?」

そう、デンライナーの食堂車。体を横たえているため天井を見上げており、そこから4人の怪人が覗き込む。

「気が付いたみてぇだな!雪山で、まっ黒野郎にやられてたところを、リーゼント野郎達が助けたんだ!」

「…あ!」

彼らには見覚えがあった。怪人でありながら、敵意を全く感じず、自分たちの味方といってくれた4人のイマジン。

「よぉ、久しぶりだな、坊主!」「元気?」「お前の過去、泣けたでぇ!」「あっはは~、ドラゴンつながり~!」

「モモタロス、ウラタロス、キンタロス、リュウタロス!」

ふと視線を奥にやると、見慣れない白い怪人が優雅に座っている。雰囲気からしてモモタロス達の仲間らしい。

辺りから白い羽がハラハラと落ちている。

「お前が我が友の友人か、苦しゅうない。我が名はジーク」

「おい、手羽!テメェはいつまで、ここに踏ん反り返るつもりだ!?」

「やめてよ、鳥さんイジメないでぇ!」

早速、モモタロス、リュウタロス、ジークのケンカが始まり、それを1人の少年が止める。

「ちょっと、やめなよ!またハナさんに怒られるよ?」

「いいじゃねぇか、明久。ケンカは青春の潤滑油だ!ぶつかり合うほど仲良くなれるんだからな!」

ケンカに賛成した1人は短い学ランにリーゼント、「友情」と書かれた学生カバンを持っている、いかにも不良っぽい雰囲気。ただ、明るい印象がアンバランスにも取れる。

もう1人は、彼とは対照的に優しい表情。しかし、どこか幼げな印象もあり、強い意志を秘めているようにも見えた。

「よぉ、自己紹介がまだだったな。おれは如月弦太朗。天之川学園高校の全員、そして全ての仮面ライダーと友達になる男だ!」

胸を二度叩いて、人差し指を立てた右手を竜也に向ける「如月弦太朗」。

なぜか、太鼓の音が聞こえたような気がする。

「話は仮面ライダーの先輩達から聞いてるぜ。おまえ、随分と苦労してるんだよな」

「うん…。誰よりも大好きだった人が…本当はもう…」

弦太朗はリーゼントをキュッと撫でて、竜也の肩に手を置く。

「よし決めた!おれとダチになれ!」「ダチ?」

竜也にとって、ダチとは聞きなれない言葉だ。

「知らねぇのか?ダチは青春の特効薬、何でも治しちまうんだ!おまえにも、おれという薬を飲ませてやるからな!」

「弦太朗…」

彼のような明るい笑顔を、竜也は久しぶりに見た。屈託のない、誰でも受け入れるような笑顔。その表情のまま手を差し出す。

「…ありがとう」

そう答えて、手を握る。弦太朗はその手を握り返し、拳骨を正面、上下、それぞれ一度ずつぶつける「友情のしるし」をした。

それをもう一人の少年が微笑ましく見つめていた。

「君も…誰かを待ってるんだね」

「えっと…君は?」

質問に対して、その少年はあるものを取り出すと言う形で答えた。

それは…

「龍騎のデッキ!?」

 

「吉井明久、仮面ライダードラゴンナイトだよ」

 

「これはドラゴンナイトのデッキ」

この名前は聞き覚えがある。以前、五代雄介から聞いた、龍騎と似た戦士の居る『ドラゴンナイトの異世界』の中核に当たる存在「吉井明久」。

「じゃあ、あのドラゴンサイクルの持ち主の明久って…!」

「僕だよ。僕と同じように苦しんでる仮面ライダーがいるって聞いて、城戸さん達に頼んで、この世界に飛んできたんだ。本当は、弦太朗と僕は2012年に居るんだけど、デンライナーに乗って、この時間に来た」

彼の口から衝撃の言葉が出てきた。彼は城戸真司と面識があるらしい。

「城戸さんって…真司さんを知ってるの!?」

「僕の世界に一度だけ訪れて、僕らを助けてくれたことがあるんだ」

「今、何処で何をしてるか分かる!?」

竜也は自然と「吉井明久」の肩を掴み、つよく揺する。

「い、いや…僕が知ってるのは、五代さんや野上さん達と一緒に行動していて、城戸さんの存在は、この世界に近すぎて干渉できないってこと」

「そっか…」

残念ながら、この2つは既に竜也が知っている事だ。

そこにモモタロス達が割って入ってくる。

「俺達は、良太郎や白マフラー達に頼まれてな」「オリジナルの仮面ライダーじゃなきゃ、世界の干渉とは見られないんだって」「せやから、ついでにこいつらも…ちゅーこっちゃな!」「ついでついで~!」

「おい、なんだよ、ついでって!」

リュウタロスの言葉に弦太朗が食って掛かり、ケンカが始まる。一応、彼が「ケンカは青春の潤滑油」と言った事を強調しておこう。

明久が竜也に語りかけてきた。

「僕はね、ずっと一緒に戦ってきた「相棒」がいたんだ。でもある事件に巻き込まれて、行方不明。でも、待つだけじゃダメだって思った。自分から動かなきゃ…ってね」

彼の手にはドラゴンナイトのデッキが握られている。彼の胸中に浮かぶのは、彼の大切な相棒…。

「だからいつか、また逢えるって信じて、他の仲間と戦い続けている。ちょっとボロボロになりかけてるけど…また立ち上がる。何度でも」

彼の瞳に見える意志の強さは偽りではないと、改めて思った。

まさに不屈の意志と言える。

「君も諦めないで。また戦いの中で苦しんだりするかもしれないけど、何度でも立ち上がって」

 

「それが…仮面ライダーだ」

 

「明久…」

彼の名を呼んだとき、デンライナーが止まった。

「おっしゃあ、出番だな!俺が主役だ!」「ちょっと先輩、待ってよ!」

「いよっしゃ、行くでぇ!」「それぇ!」

4人のイマジンは、我先と外に飛び出していった。

一方、じっとしていたジークだが…。

「おい、キッグナスみたいなヤツ!さぼんじゃねぇぞ!」「これ、何をする!?頭が高ぁい!」

弦太朗に引っ張られて、外へ連れ出された。

「ここは、僕らがやる。君は立ち上がって動いて。君と君の大切な人の約束を守るために」

そう言って、明久はドラゴンナイトのデッキを再度握り締め、デンライナーを飛び出した。

「おれとあゆの…約束…」

ポケットにある龍騎のデッキを握り締めて、明久に続いた。

ただし彼が向かった先は「2人だけの学校」だ。

 

キィィン…キィィン…

 

あれから祐一達は、モモタロス達から事情を聞き、竜也を探していた。

しかし、それを邪魔するように現れたモンスター、バズスティンガー達だ。

「蜂のモンスター…」「シアゴーストより手ごわそうだな…」

「待て待て待てええええええ!」

その声とともに、モモタロス達が走ってきた。潤はモモタロスを指差す。

「あ、赤鬼!」

「誰が赤鬼だ!?俺のカッコイイ変身、見せてやるからよく見とけ!」「それじゃ、行きますか」

モモタロスとウラタロスの合図で、4人は「デンオウベルト」を取り出し腰に巻きつける。さらにライダーパスを右手に、それぞれの対応した色のボタンを押す。

「「「「変身!」」」」

ベルトのターミナルバックルにライダーパスを翳すと、以前の野上良太郎と少し異なりながらも、似たプロセスでアーマーが装着されていく。

そのうち、モモタロスとウラタロスが変身した姿は、ディケイドが変身したD電王SFとD電王RFとベルト以外全く同じ「仮面ライダー電王ソードフォーム」と「仮面ライダー電王ロッドフォーム」だった。

キンタロスの姿は、頭部に斧と「金」と言う文字が合わさった仮面を装備した「仮面ライダー電王アックスフォーム」に変身し、リュウタロスは紫色のドラゴンが仮面になった「仮面ライダー電王ガンフォーム」に変身した。

「俺、参上!」「お前達、僕に釣られてみる?」

「俺の強さに、オマエが泣いた!」「お前達、倒すけどいいよね?答えは聞かないけど!」

彼らはそれぞれのキメ台詞を言いながら、ベルトにある「デンガッシャー」を組み立てる。

その途中で弦太朗、ジーク、明久も到着する。

「君達は、竜也を!きっと、あの黒い龍騎と戦いに行ったはずだから!」

「ここはダチのおれ達に任せて、早く行け!」

祐一達にとって、彼らが何者かは分からないが、手を貸してくれることは、なによりもありがたい。

「すまない、頼む!」「頼むぜ、リーゼント達!」「ありがとう…」

そう言って、祐一、潤、舞の3人は竜也を追い始めた。

弦太朗と明久は、バズスティンガー達を引き受けることにしたが、ジークは何故かやる気を起こさない。

「全く…この私が何故…」

「ジーク。この戦いで頑張ったらハナさんが喜ぶよ、きっと」

明久の言葉で、ジークの挙動が変わった。

「何、姫が!?良かろう。家臣たちよ、私と共に、存分に働くが良い!」

「うぉい、調子変えやがって、このキッグナスもどき!」

「弦太朗、いいから!準備して!」

ジークも黒いデンオウベルトとライダーパスを取り出し、腰に装着する。

それに続き、明久はドラゴンナイトのデッキを翳すと、デッキから電流が走り、それが腰にまで到達してVバックルと似たベルトが形成される。

弦太朗は「フォーゼドライバー」を取り出し、腰につける。そこにある4つの赤いスイッチを順番に押し、拳を握って構える。

<3><2><1>

「変身!」「変身」「KAMEN RIDER!」

<WING FORM>

ジークはモモタロス達と似たプロセスでアーマーが装着され「仮面ライダー電王ウイングフォーム」に変身した。辺りには白鳥の羽が舞う。

弦太朗が右手を高く上げると、辺りには大きな煙と機械のようなオーラが包み、それを

振り払うと同時に「仮面ライダーフォーゼベースステイツ」へと姿を変える。

明久の周りにドーム状の光が現れ、クロスしていく。それが一周すると、仮面ライダー龍騎によく似た「仮面ライダードラゴンナイト」に変わる。

「光臨、満を持して…」「宇宙、キターーーーーーーーーーーー!」

電王WFは手を上げて、ゆっくりと下ろす。

フォーゼBSは体を縮め、一気に広げて叫ぶ。その叫びは、宇宙の遥か彼方まで届くような叫びだ。

 

「みんな、行くよ!」

 

ドラゴンナイトの言葉で、全員がバズスティンガー達に走り出した

 

晴れた雪の林の中をただ歩き続ける竜也。

「はぁ…はぁ…」

ただ、彼女ともう一度会うために…。真実を確かめるために…。

「あゆ…」

彼の脳裏には、あゆとの思い出が蘇る…。

あゆの元気いっぱいの笑顔。この笑顔に何度救われただろう…。

自分が龍騎だと知っても、何一つ拒絶したりせず、ただ傍にいてくれた。

悩んだときも共に悩み、苦しいときは支えてくれた。

世界の崩壊の原因と知ったときも、ただ自分を守ろうとしてくれた。

彼女への想いは募って、それをうちあけたとき、総てを受け入れてくれた。

初めて、誰かを愛することを知った。

 

自分の命の全てを捨てても守りたいと思えた。

 

思えばこの街に戻ってこなければ、あゆと再会できなかった。

龍騎になって、一番長く留まっている場所は、自然とこの街になった。

もしかすると、戦い続けた自分に神が計らい、褒美をくれたのかもしれない。

ただ戦うだけだった自分に、安らぎを与え、そして愛すること教えてくれる彼女に再会させてくれたのかもしれない。

 

あゆといる時間が…かけがえのない「奇跡」だった。

 

そして、竜也は辿り着いた。「2人だけの学校」に…。

大きな切り株に腰掛ける。

思えば、これは夢の中では大木だった。

あゆが転落した事で、切り倒されたのだろう…。

瞳を閉じる。

閉じる事で…あゆを近くに感じる事が出来ると思った…。

「指きり…したよね…?」

 

Bビーと単身、戦っているのはドラゴンナイト。

「はあっ!」

ザァン!

「ビィィィ!」

ドラグセイバーを呼び出し、優勢に持ち込んでいる。

少し高く飛び、回転しながら、その遠心力を利用してBビーを再度切り裂く。

「よし…!」

「ハチ野郎!タイマン張らせてもらうぜ!」

<CROW ON>

クローモジュールを装備したフォーゼBSは、Bワスプと戦っている。

「いくぜいくぜいくぜェ!」

ギィン!

隣で、デンガッシャーSMを振り回している電王SFはBホーネットと対峙している。

一撃を与えると身体を縮めて、一気に伸ばす。

「俺、最高!」

電王RFと電王AFはBブルームと戦っている。

「虫を釣るのは、あまりやりたくないんだけど…」「待ったはナシやで!」

ガシッ!ドガアァ!

デンリールで引き寄せたBブルームを、電王AFがデンガッシャーAMで切り裂く。

重厚な一撃ゆえに、Bブルームにはたまらないダメージを負った。

「鳥さん、一緒に踊ろう!」「私には似つかわしくない戦いだが…姫のため!」

ダダダダダダダダダダダ!ビシュッ!ズバァ!

電王GFはアクロバティックにダンスを踊りながら、デンガッシャーGMを乱射する。しかし、それは正確にBフロストに命中している。

彼の動きに合わせるように電王WFのデンガッシャーBMとデンガッシャーHAMが舞う。

「みんな、ここは僕が!」

<FINAL VENT>

「ギャオオオオオオオオオオオオオオォ!」

「はあああああああああああああああああぁ…たあっ!」

龍騎達やリュウガとは違う、ドラゴンナイトのバイザー音声のあと「アドベントビースト」のドラグレッダーが現れ、龍騎と似た構えを取り、地面を蹴って高く飛ぶ。

「はぁあああああああああああああああ!」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアァ!

その動きはまさにドラゴンライダーキックだ。

その威力は龍騎と同様、凄まじく、バズスティンガー達のうち、ビー、ワスプ、ホーネットの3体を撃破した。

残るブルームとフロストはフォーゼBSと電王SFが相手するようだ。

電王SFはライダーパスを取り出してベルトにセタッチさせ、フォーゼBSはクロースイッチを切って、ロケットスイッチに差し替えた上で、そのスイッチとドリルスイッチを作動させる。

「必殺!」「おれも行くぜ!」

<FULL CHARGE><ROCKET ON><DRILL ON>

「俺の必殺技、パート2!」「うおおおおおおおおおおぉ!」

デンガッシャーSMから電流が走り、オーラソードが分離する。フォーゼBSは右手にロケットモジュール、左足にドリルモジュールを装備し、ロケットモジュールの推進力で、空高く飛ぶ。

<ROCKET DRILL LIMIT-BREAKE>

「ウォリャアアアァ!」「ライダーロケットドリルキイィック!」

ザァン!ドガアアアアアアアアアアアァ!ドゴオオオオオオオオオオォ!

電王SFの「エクストリームスラッシュ」と、フォーゼBSの「ライダーロケットドリルキック」。

残るバズスティンガー達もそれに耐えうる力は持っていなかった。

爆発四散し、後には何も残っていなかった。

「決まったぜ!」「いよっしゃ!」

「うむ、ご苦労であった。家臣たちよ」

「あぁ!?テメェは何もしてないだろうが!」「モモタロス、鳥さんイジメるなっていってるでしょ!」

電王WFの言葉で再び、ケンカが勃発する。

彼らを見た後、遠くを見つめるドラゴンナイト。

そう、彼らに出来る手助けはここまで。これ以上は、世界がさらに融合すると見られてしまうからだ。

だから、竜也とリュウガの戦いを助ける事はできないし、見届ける事もできない。

ただ、勝利を信じているだけだ。

それでも、彼らは確信している。

「僕に出来るのはここまでだ。後は、君が道を切り開くしかない…」

 

 

 

竜也は再び目を開ける。

そこは自分の家だった。部屋から出てきて、リビングへと向かう。

 

「竜也くんっ!」

 

入り口の前では、あゆが待っていてくれた。

「あゆ…どうして、君が?」

「竜也くん、可笑しなこと言ってるよ?ボクだって、この家の「家族」なんだから!」

「…そうだったね」

2人で一緒に、リビングに入る。

そこでは、ミツルと真琴が迎えてくれた。美汐も真琴と一緒に遊んでいる。

「珍しく寝坊か。客人が居ると言うのに」「あうぅ…もうお腹ペコペコよぅ…」

「じゃあ、今から作るね」「ボクも手伝う!」

「おはようございます、竜也さん。みんなで勝手に上がらせていただきました…」

「いいよ美汐ちゃん。お客さんはいつだって、大歓迎だよ」

さらに祐一、舞、潤、久瀬、サトルもいる。

「お、飯当番が一人増えたな。あと、キッチンの破壊者」「うぐぅ、破壊者じゃないもん!」

「祐一…」

ぺしっ!

「あたっ!」「川澄先輩のチョップが相沢に決まったぁ!」

「北川君、実況してる暇があれば、手伝ったらどうだい?」「いや、香里の手料理を食うんだ!」

「僕もなゆちゃんの料理、食べたくて…」

彼らも、食事を楽しみに待っている。

「なら、みんなの分も早速準備しなくちゃね」

キッチンに向かうと、香里、栞、佐祐理、名雪、秋子が準備をしていた。

「竜也さん。台所、お借りしてますね」「龍崎君にも手伝ってもらおうかしら」

「竜也さん、食材も買ってきましたよ!」「あはは~お料理は得意ですから」

「竜也君、なに作るか決めてる?」

名雪の質問に、少し首を捻って考え込む。

「そうだね…」「たい焼き!」

間髪入れずに、あゆが即答。

「それは、おやつにでもしようよ」

 

「なら、餃子を作ってみないか?」

 

振り向くと、そこには買い物袋を持った城戸真司が微笑んでいた。

「あ…真司さん!」

「お前、俺の餃子が好きだっただろう?…久しぶりにな」

そう言いながら、バットや小麦粉、水などを準備し始める城戸真司。

「わたしは城戸さんに賛成」「餃子の作り方、城戸さんに教わりたいです~」

香里と佐祐理も賛成し、城戸真司を手伝い始めた。

一通りの準備を終えると、あゆが手をポンと叩いて嬉しそうに言う。

「そうそう!今日はね、秋子さんと真司さんからクッキーの作り方、教えてもらうんだよ!」

「そういえば昔、作ってくれたっけ」

彼女は7年前、自分のやり方で作ったクッキーを彼に贈った事がある。しかし正直、あまりおいしくはなかったが、秋子や城戸真司から学ぶのならば、味は保障できるだろう。

「うん!昔よりもパワーアップしてるから、楽しみにしててね!」

あゆの屈託のない笑顔。久しぶりに見た気がする。

「期待してるよ」

 

 

 

 

 

…夢を見ていたらしい。

「おれはまだ…此処にいるのか…」

目の前に広がるのは、真っ白な雪景色と、ちらほらと立っている木々。

下を見ると、自分の体に少し雪が積もっていた。

「…この街に来たときも、同じような事があったっけ。もっとも、誰かを待ってたわけじゃないけど」

ふと空を見上げたときに、あゆの言葉が蘇る。

 

「例え竜也くんがどんな存在だって、ボクにはどうだっていいよ!…だって、竜也くんだもん…」

「竜也くんがボクのこと、好きでいてくれるのなら…ボクも、ずっと竜也くんのことを好きでいられると思う!」

 

「おれは、今でも君の事が好きだよ…」

届かない言葉。伝えたかった言葉。

それを空に向けて言う。

 

「ボクもだよ、竜也くん」

 

聞き間違いかと思ったが、間違いない。

「…だったら、どうして、もう会えないんだよ…?」

「もう…時間がないから。…今日は、お別れを言いに来たんだ」

優しく、穏やかに答える声。

「おれは、君に誕生日プレゼントを持ってきた」

「覚えてて…くれたんだ…」

その声は嬉しそうだった。だが、悲しそうにも聞こえる。

「贈るものじゃないけど…。探し物、見つけてきたんだ」

リュックと天使の人形を持って、切り株の向こうに行く。

そこには…

 

あゆがいた。

 

「ありがとう、竜也くん」

彼女に近づいて、リュックと天使の人形を渡す。

「遅刻だね、あゆ」

「ボク達の学校は、来たい時に来て良いんだよ?」

「そうだっけ」

少しの沈黙があって…。

「また逢えたね」

「うん…」

ゆっくりとあゆは頷く。

「…ずっと、ここには居られないの?」

「うん…」

「本当にもう…時間はないの?」

「うん…」

頷いてばかりだが、彼女にとってはそれが、今、答えられる一番の返事だった。

竜也にもそれは伝わった。

「そうか…」

しかし、ただ彼女が救われないまま終わって欲しくない。

だから…。

「だったら、せめて「3つ目のお願い」を叶えさせて。…約束したから」

「そう…だね」

竜也の言葉に、あゆは人形とリュックを強く抱く。

そして、彼女に出来る精一杯の笑顔を見せて…。

「お待たせしました。それでは、ボクの最後のお願いです!」

楽しそうに…。

「竜也くん…」

でも…儚げな笑顔だった。

「ボクのこと…」

 

 

 

「ボクのこと、忘れてください」

 

 

 

竜也は自分の表情が歪んだ事が分かった。

「ボクなんて…最初から、いなかったんだって…そう、思ってください」

そう言っているあゆの頬には、涙が流れ始めた。

「ボクのこと…うぐ…忘れて…」

その言葉は竜也には、真実とは思えなかった。

だから聞きなおす。

「本当に…本当にあゆの願いは「おれに忘れてもらうこと」なのか?」

俯いて、嗚咽を漏らしているあゆ。もう一度笑顔を作って、竜也を見る。

「だってボク…もう…お願い事なんて、ないもん…。本当は…もう食べられなかったはずのたいやき、いっぱい食べられたもん。本当は…もう会えなかったはずの竜也くんと、たくさん一緒にいられたんだもん」

途中からは、笑顔ではなく、泣き顔だった。

本当は別れたくなかった。ずっと一緒にいたかった。

だが、それは叶わない。

「だから…」

 

「だからボクのこと、忘れてください!」

 

「っ!」

竜也はあゆを抱きしめた。

「竜也くん…ボク、もう子供じゃないよ…」

「子供だよ」

初めて、あゆを罵った。

「自分の考えるままに突っ走ったり、できない事を無茶してやるし…。そのくせ、自分の事は一人で抱え込んで…。その、小さい体で全部…。君は…一人ぼっちじゃないんだ」

「うぐぅ…」

抱きしめている腕に力を込めた。

大切なものを離さないように、強く。

「その願いはダメだ、聞いてあげられない」

「竜也くん…」

「おれに、あゆを忘れられるわけがない!…それに、忘れたくない…」

もう、何もかも忘れたくない。

その先に非情な運命が待っていたとしても。

竜也の胸の中で、あゆが呟く

「お願い、決めたよ」

そして、竜也の顔を見る。

「ボクの最後のお願いは…」

 

「―――――――――――…」

 

風にまぎれて、よく聞こえなかった。

「あゆ、なんて言ったの?」

言葉が聞こえなかったはずなのに、あゆは満足そうに微笑んでいた。

もう一度だけ抱きしめた。

「竜也くん。ボクのからだ、まだ、あったかい?」

その腕や胸から、あゆのぬくもりを感じられる。

「あったかいよ。あゆは生きて、ここにいる」

最後の表情は、あの日と同じ笑顔だった。

「よかった…」

その言葉の後、竜也の腕からぬくもりが消える

 

そして、あゆは消えた。

 

膝を着く。

「あゆ…ごめん…。全部、おれのせいだ…おれがあゆを覚えていたら…。おれがもっと強ければ…」

残されたのは後悔の念だけ。

 

「そう…。総て…オマエの所為だ…!」

 

不意に聞こえる邪悪な声。

振り返ると、赤い瞳の竜也が近づいてきていた。

「おまえ…」

「もう分かっただろう。オレはオマエ自身だ。7年前、月宮あゆを失った悲しみ、何も出来なかった自分への怒り、憎しみといった、負の感情もろとも、記憶とともに分離した、もう一人の自分自身だ」

これで謎は解けた。7年前の事を中途半端に忘れていた事も、怒りの感情が少なかった事も、涙が流せなかった事も、全てこの「龍崎竜也の欠片」が理由だった。

「オマエが負の感情が強くなればなるほど、オレは強くなる。だからお前の仲間を攻撃したり、オマエを暴走させた。そして…準備は整った」

赤い瞳の竜也は竜也に一歩近づく。

「オレを受け入れろ。オレとオマエが一つになれば、それが本来の形になり、オーディンをも超える最強のライダーとなれる。その力で…」

 

「月宮あゆを救うことも出来る」

 

その言葉に反応した。

「あゆを…救える…?」

「オーディンの野望を奪い、オレ達が果たせば、人間1人の命を生み出すなど容易い」

しかし…

「でも…」

「目を背けるな。月宮あゆを見殺しにしたことを忘れるな」

「…っ!」

竜也の胸に強く突き刺さった言葉。

そう。7年前のあの日、竜也はあゆに何もしてあげられなかった。

見殺しにしたことと同意だ。

「さぁ…本来の形を受け入れろ。それとも、月宮あゆを見殺しにした罪を背負い、ずっと自分の感情から目を背けるつもりか…?」

「おれは…オレは…」

 

 

 

「竜也!」

祐一、舞、潤がそこにたどり着いたとき…。

総てが手遅れだった。

「一足遅かったな。「おれ」はオレを受け入れた」

2人の竜也が同化を始めていた。

赤い瞳の竜也が、竜也の中に手を突っ込み、ゆっくりと重なっているという異様な光景だ。

そして、2人の竜也は1人になる。

目を開くと右目は赤く、左目は黒い。

「…クハハハハハハハハハ!遂に為しえたぞ!オレはもう「記憶と感情だけの幻」ではない!オレは存在する…」

そう言って、デッキを翳す。それはリュウガのデッキ。

黒い光が瞬き、竜也にVバックルが装着される。

 

「最強のライダーとして!」

 

「変身…!」

そう呟き、ベルトに装填する。

そこに現れたのは、釣りあがった目を持つ黒い異形。

名を仮面ライダーリュウガ。

 

約束を交わした地で、黒い竜が降り立った…。

 

 

 

 

 

 

続く…。

 

 

 

 

 

次回!

 

                   竜也…

 

これが真の「おれ」だ

 

                   どうして…

 

苦しみを理解できるはずがないだろう

 

                   ボクの…願いは…

 

あゆは…ここにいる

 

 

 

 

第47話「奇跡」

 

 

 





キャスト

龍崎竜也=仮面ライダー龍騎

月宮あゆ

相沢祐一=仮面ライダーナイト
川澄舞=仮面ライダーファム

北川潤=仮面ライダーライア
美坂香里
美坂栞

久瀬シュウイチ=仮面ライダーゾルダ
倉田佐祐理

水瀬名雪
沢渡真琴
天野美汐
虎水サトル=仮面ライダータイガ
斉藤ミツル=仮面ライダーインペラー

水瀬秋子

如月弦太朗=仮面ライダーフォーゼ

モモタロス=仮面ライダー電王 ソードフォーム
ウラタロス=仮面ライダー電王 ロッドフォーム
キンタロス=仮面ライダー電王 アックスフォーム
リュウタロス=仮面ライダー電王 ガンフォーム
ジーク=仮面ライダー電王 ウイングフォーム

吉井明久=仮面ライダードラゴンナイト(断空我さんの作品より特別出演)

龍崎竜也の記憶と感情=仮面ライダーリュウガ

城戸真司=仮面ライダー龍騎(初代)
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