仮面ライダー龍騎 ~EPISODE Kanon~ 作:龍騎鯖威武
第49話 「風の辿り着く場所」
1年前。
「遂に見つけた…!」
龍騎とリュウガの最終決戦を見届けたオーディンは、嬉々として呟く。
リュウガは理想としていた働きかけは見せなかったが、結果的に最終目標とする「最後のサバイブ」を発見させてくれたのだから。
「確かに不自然な存在だったが、まさか、月宮あゆが最後のサバイブだったとは…」
7年間眠り続けていた彼女が何故、肉体を離れて存在していたのかも、これではっきりした。
しかし、あゆの意識体が最後のサバイブである以上、サバイブの力を奪い取ることは出来ない。
更に、意識体のあゆが消滅してしまったため、サバイブの力は極端に弱くなっているはず。
それでも…。
「彼女からサバイブの力を弾き出すためには…」
オーディンは、最後のサバイブを諦めることはしない。
いずれ、月宮あゆは目を覚ます。
その時こそ…。
「全てに決着がつく」
話は今の時間に戻る。
「うんしょ…もう…ちょっと…」「がんばって!」
家の中で手すりにつかまり、立ち上がったり、歩いたりとリハビリに励んでいるのは、月宮あゆ。
つい数日前、意識を取り戻し、竜也と本当の再会を果たした。
眠り続けていたために長かった髪の毛は、香里や名雪に頼んで1年前のような髪型にしてもらい、あの思い出のカチューシャもつけてある。
時間の許す限り、竜也はあゆのリハビリを手伝っている。
ミツルや真琴もそうなのだが、2人は仕事もあるので、頻度は竜也よりは少ない。
「お、やってるな。開いてたから、入らせてもらったぞ」「応援…」
その声に振り向くと、玄関に祐一、舞、久瀬、佐祐理がいた。
あゆは意識体だったときの記憶も持っており、彼らをはじめとした、今までの仲間や友達の事も、ちゃんと誰だか分かっている。
「あ、こんにち…うわわ!?」
歩けるつもりで4人に近づこうとして、バランスを崩して倒れそうになる。
「おっと…!」「あ…竜也くん!」
それを支えたのは竜也。この調子で、倒れそうになるあゆは、いつも竜也が支えている。
「あんまり、根詰めるのも良くないね。このくらいで、今日はおしまいにしよ。お客さんもきたし」
「そうだね」
竜也の言葉で、あゆはリハビリを一旦やめて、祐一達を家に上げて、リビングで話を始めた。
「あぁ~…入学したはいいけど、勉強が難しすぎるって…」「頑張りなさい。男の子でしょ、潤」
潤と香里は大学の帰り道。
ちょうど、同じ時間の帰りだった栞や美汐と出くわし、一緒に帰る。
「お姉ちゃんと潤さん。相変わらず、お似合いですね」「本当…微笑ましいです」
この1年の間に、香里と栞は、潤を下の名前で呼ぶようになった。
理由は栞曰く、いずれ兄になる人を苗字で呼ぶのは気が引け、香里は、潤に頼まれてしかたなく…とのこと。
「あったりまえ!おれと香里の最強カップルがいれば、どんな敵も楽勝だぜ!」
「まったく…言ってる意味がよく分からないわ」
あきれ果てて、やれやれと首を振る香里。しかし、彼女は表情を隠す事が上手くなり、それが本当の気持ちではないことは、潤もよく分かっている。
「最強カップルは、ここよ!」「だから、恥ずかしくないのか、真琴?」
潤の宣言を否定する声の主は真琴。一緒に居るミツルの腕に抱きついている。
「ふふ、まだ戦いが終わってない事が嘘みたいだね」「うん、みんな幸せそうだもん」
名雪とサトルも、彼らの姿を嬉しそうに見つめている。
この4人は、WATASHIジャーナルの仕事を終えて、帰りの途中であった。
彼らは間違いなく、幸せだった。
例え、戦いの中での僅かな安らぎの時でも。
「どこまで回復した…?」「まだ走れないけど、ちょっと歩くくらいなら出来るよ」
8年も眠っていたのに、数日でここまで回復した。
まさに奇跡としか言いようが無い。
「もうじき走れたら、また食い逃げを始めるのか?」「うぐぅっ!どうして知ってるの!?」
あゆが、7年ぶりに竜也と再会したとき、諸事情があったとは言え、食い逃げをしてしまった。
この事実を知っているのは、自分を除けば…。
竜也に視線を向けると、彼は冷や汗を垂らして、そっぽを向く。
しかし、逃げ切れない事を悟ったのか、両手を合わせて頭を下げる。
「…ごめんっ!3ヶ月くらい前に、あゆとの馴れ初めを話して…」「しゃべったの!?」
涙目になって机に突っ伏するあゆ。
「龍崎君…。月宮君に嫌われたね…」「あはは~、御愁傷様です~」「そ、そんなぁ~!?」
久瀬と佐祐理の追い打ちを受け、あゆに続いて、机に突っ伏する竜也。
「竜也くん、ほら!ボク、竜也くんを嫌ったりしないから!」
顔を上げたあゆは、竜也の体を、よいしょ、よいしょ、と言いながら起こす。
その姿を見ていた祐一は、竜也を見て少し笑いながら呟く。
「おまえ…随分と明るくなったな」「おれが?」
祐一の言葉に、竜也は首を傾げる。
「今思えば、1年前のおまえは笑顔も作ってたからな。今は間違いない、自然な笑顔だ」
そう、どんなに優しい笑みを浮かべていても、以前の竜也は本当に笑ってはいなかった。仮面ライダーという重荷を、いつもどこかで感じていた。
だが、今はそれを時には忘れ、本当の心からの笑顔を作ることが出来ている。
「多分、みんなや…あゆのおかげだよ」
そして…。
「機は熟した。…最後の戦いだ」
オーディンは、コアミラーに触れる。
「グウウウウウウウウウゥ!」「キシャアアアアアアァ!」「ブブブブブブブブ!」
その途端、その中から凄まじい数のモンスターが生まれ、オーロラを飛び越えて、竜也達のいる世界へと向かった。
「これが最後だ…これが…」
キィィン…!キィィン…!
「う…っ!?」
頭が痛くなるほどの強い反応を、竜也達が聞きつける。
これほどまでに強い反応は初めてだ。
「もしかして…」
あゆは何か分かる。
「あゆ…ここにいて。多分、これが…最後の戦いだと思う。祐一、舞さん!」
あゆを残して、竜也、祐一、舞は、戦いの場に赴く。
秋子は編集室の窓から、外を見つめている。
商店街のある場所には、爆発や、時折現れる青い影…レイドラグーンの編隊が見える。
「城戸さん…貴方の愛弟子さんは多分、最後の戦いに向かいましたよ」
少しだけ、下唇を噛む。
「…助ける事はできないんですか…?」
「なんて数だよ…」「これ…どうやって戦うんだ!?」
潤、久瀬、サトル、ミツルが、先にこの場に駆けつけていた。
そこには恐らく、万を超える数のモンスターが蠢いている。
商店街は既に崩壊しつくされていた。
「みんな!」「竜也、相沢、川澄!」
竜也達も駆けつけると、オーロラが現れる。
「来たな…」
そこからオーディンが現れる。彼と対面するのは、1年ぶりだ。
「1年ぶりか…オーディン」
モンスターを押しのけたオーディンは、竜也に問いかける。
「早速で悪いが「最後のサバイブ」の在り処、もう分かっているだろう?」
「…あぁ」
彼の捜し求めていた「最後のサバイブ」は、あゆに宿っていた。
意識体の記憶も持ち合わせているあゆには、おそらくまだその力が残っているはず。
「渡してもらおうか?」
つまり、あゆを渡せという事。
「断る!あゆを、おまえなんかに渡すもんかっ!絶対に!」
即座に却下する。
やっと大切な人とともに生きる事が出来るというのに、今ここで失うわけにはいかない。
「力ずく…か。あまり好みのやり方ではないが…止むをえん」
<<SWORD VENT>>
オーディンはゴルトセイバーを2本呼び出し、7人を睨む。
「いくよ、みんな。これを最後の戦いにしよう!」
竜也の宣言とともに、全員がデッキを構える。
「「「変身っ!」」」
龍騎、ナイト、ファム、ライア、ゾルダ、タイガ、インペラー。
ずっと戦い続けてきた仲間たち。
例え勝利の可能性が低くても、絶対に諦める事はしない。
<<SURVIVE>>
ナイトは疾風のサバイブを使って強化変身し、ダークブレードを引き抜く。
「はあああああああああああぁ!」
いっせいにオーディンに向かって駆け出す。
「ムンッ!」
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアァ!
オーディンは、地面にゴルドセイバーを叩きつけ、衝撃波で龍騎たちを攻撃する。
「来るぞ!」
<<BLAST VENT>><GUARD VENT><COPY VENT>
「キキイイイイイィ!」
しかし、龍騎たちも以前のように、黙って攻撃を受けるだけではない。
ナイトSは、ダークレイダーの放つダークトルネードで威力を下げ、龍騎、ファム、ライア、ゾルダがそれぞれ防具を装備して、攻撃を完全に防ぎきる。
「…ほう。1年の間に、戦闘技術、チームワークともに高まったというわけか」
もともと戦闘経験の長かった龍騎はともかく、ナイトS達も1年もの間、戦い続けてきた。
つまり、1年前の龍騎と全員が戦闘技術は同等、タイガやインペラーに至っては、それ以上になっているのだ。
「ならば…」
「グウウウウウウウウウウウゥ!」
オーディンが両手を振り上げると、シアゴーストやレイドラグーン達が龍騎達に襲い掛
かる。
「なるほど…数を増やして、此方の手を減らすわけか!いぇあぁ!」
インペラーが毒づきながらも、モンスターの軍勢を相手にする。
背後から、ハイドラグーンが近づいている。
気づいたのだが、正面からくるモンスターの数で、相手ができない。
「斎藤君っ!」
ダダダダダダダダダ!
数の多さによって、出来た隙はゾルダが助ける。
「久瀬、助かった!」「構わないさ。それよりも!」
<SHOOT VENT><SPIN VENT>
ゾルダはギガランチャー、インペラーはガズルスタッブを装備して、モンスターに立ち向かい続ける。
「斎藤君!上手く避けてくれ!」「任せろ!」
ズダァン!
接近戦で戦うインペラーに構わず、ギガランチャーを発射するゾルダ。
しかし、それは仲間を顧みないからではない。仲間であるインペラーが避けられると信用して放っている。
確実に1体ずつ倒しているインペラーの脇や首の横を通り越して、モンスターに叩き込まれるギガランチャーの一撃。
<SWING VENT>
「うぉらああああぁ!」
バチィィ!
ライアはエビルウイップを振り回し、モンスターを弾き飛ばす。
威力が弱まった時は、上手く手首を動かして1体のレイドラグーンを捕まえる。
「プレゼント、受け取れよぉ!」
ドガアアアァ!
捕えたレイドラグーンを思い切り投げ飛ばし、他のモンスターにぶつける。
<STRIKE VENT><SWORD VENT>
「やああああああぁ!」「でぇああああああああああぁ!」
ズバアアアァ!ドガアァ!
タイガはデストクローを、ファムはウイングスラッシャーを装備して、モンスターを一掃している。
「舞ちゃん!空から攻撃を!」「わかった…!」
ファムはタイガの肩を借りて、空中に飛び上がり、飛んでいるハイドラグーンやレイドラグーンを薙ぎ払いつつ、重力と回転の威力を加えて、一気に地面に飛び込む。
「はあああああああああああああぁ!」
ドゴオオオオオオオオオォ!
その威力は強く、辺り一帯のモンスターは一気に爆発した。
「サトル…流石」「僕も良いコンビネーションでしょ?」
そして、龍騎とナイトSはオーディンに立ち向かっている。
<<SHOOT VENT>><STRIKE VENT>
「ガアアアアアアアアアアアアァ!」
「はあっ!」「だああああああぁ!」
ダークアローとドラグクローファイヤーがオーディンに向かって飛んで行く。
<<GUARD VENT>>
ドゴオオオオオオオォ!
「ハッ…!」
それをゴルトシールドで防ぎきる。
しかし威力が高い技だったため、爆発で視界を奪われた。
<SWORD VENT><<SWORD VENT>>
「はああああああああああああああああああああああああああああぁ!」
煙の中から龍騎とナイトSがオーディンに突進する。
「無駄だ」
しかし、ドラグセイバーとダークブレードの一撃を、瞬間移動で避けるオーディン。
「祐一、おれの後ろに!死角を作らないで!」「あぁ!」
龍騎の言葉で、ナイトSは彼の背中合わせになるように立ち、死角を消す。
「ならば、真正面からの攻撃は耐えられるか?」
その声が聞こえた途端、ナイトSの目の前にオーディンが現れ、ゴルトセイバーが振り下ろされる。
それをダークブレードとダークシールドで防ごうとするが、威力が強すぎる。
ズガアアアアアァ!
「ぐああああぁ!」「祐一っ!?」
防ぐことは出来なかった。
ナイトSの実を案じた龍騎も、隙ができてしまう。
「ハアァ!」
ドゴオオオオオオオォ!
「うわああああああぁ!」
ゴルトセイバーで胸部を切り裂かれ、その威力で地面を転がる龍騎。
「竜也…くんっ…!」
近くの壁や瓦礫に寄りかかりながら、あゆが近づいてきた。
彼の危機を感じて、ここまで来たのだ。
「あゆ…!?来ちゃだめだ!逃げて!」
「いや…だよ…」
「うるさい!逃げろおおおおおおおおおおおおおおおぉ!!!」
あゆの言葉を聞かず、頭ごなしに拒否する龍騎など、初めてだった。
「月宮あゆ…!」
オーディンは彼女を見て仮面の奥で笑い、ゆっくりと近づいてくる。
「う、うぐ…」
龍騎の先ほどの剣幕や、オーディンへの恐怖から逃げようとするが、まだリハビリ中の彼女は走ることができず、ゆっくりと、しかも歩き始めの赤ん坊の様にしか歩けない。
「あゆちゃん!くそ、退けぇ!」「お願い、退いて!」
ライアやファム達もモンスターに阻まれて、近づくことができない。
オーディンはすぐに距離を縮めた。
「さぁ…最後のサバイブを渡せ」
「いや…!」
怯えながらも強く否定するあゆを見て、オーディンは組んでいた右腕をゆっくりと挙げる。
「頼んでいるわけではない、命令だ。渡す気がないのならば、なぜ此処へ来た?」
「竜也くん達が辛い目に遭ってるのに…ボクだけじっとするなんて嫌だから…!」
あゆが弱々しくも、はっきりと言い放つ。
「せめて、見守りたいの!」
「ならば、見届けろ」
オーディンは揚げていた右手を龍騎達の方向へ向ける。
「貴様の所為で、大切な者が死ぬ姿を!」
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアァ!
「うわああああああぁ!」「ぐああああああぁ!」
龍騎達は、辺りのモンスターと共に吹き飛ばされる。自分の所為で大切な人が傷つけられていく。
このままでは、命さえ…。
「やめて!お願い!」
オーディンの肩をつかんで、強く揺する。
「望んだのは貴様だ。それとも…」
仮面越しに睨み付けるオーディン。凄まじい威圧感を感じる。
「最後のサバイブを渡すか?」
「あゆ…渡しちゃ…だめ…だ!」
龍騎は、あゆに強く呼びかける。
「うん…わかってる…!」
あゆは龍騎を見ながら頷く。
「渡さないよ!例え竜也くん達が傷ついてるとしても、ここでボクがあきらめたら…みんなが傷ついてる意味が無駄になっちゃう!それにボクは…竜也くん達が絶対に負けないって信じてる!」
少し下を向き、俯くオーディン。
「渡さぬならば…まだ手はある。人間の肉体に憑り着いたサバイブの力は、同じサバイブの力を備えた仮面ライダーのファイナルベントにより、弾き出すことが出来る」
ゴルトバイザーを呼び出し、アドベントカードを引く。
そのカードは…。
<<FINAL VENT>>
「…!?」
オーディンの…いや、全仮面ライダーの中で最強の力を秘めた技を発動するためのカードだ。
「キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイィ!」
金色の不死鳥型モンスター「ゴルトフェニックス」がオーディンの背後に現れる。
その姿は神々しく、光り輝いていた。
だが、あゆから見れば、それは災厄の象徴に見えた。
「…これで終わりだ…!」
光の塊となったオーディンが、あゆに突進していく。
最強の一撃「エターナルカオス」。
逃げたくても、足が動いてくれない。
ダメージが大きいナイトS達も動けず、助けに行きたくても、体が自由に動かない。
彼女はもう助からないと、誰もが諦めてしまった。
…ただ一人を除いて。
ドンッ!
「きゃっ…!?」
動けなかったあゆを、何者かが突き飛ばした。
それは…。
「竜也くん!?」
龍騎だった。彼があゆを突き飛ばし、そして救った。
だが、それは自身を犠牲にしたことと同意。
凄まじい轟音と、目を開けられないほどの光が辺り一帯を包みこみ、周りの者の視界と音を奪う。
「何故だ…!?」
オーディン自身も驚愕していた。
まさか、他者をかばう人間がいるとは…。オーディンにとって、人間とは己の欲望で世界を崩壊させるほどの存在だと認識していた。
さらに、彼には動ける力は残されていないはず。
彼にとって、あり得ないことが重なった。
その象徴たる龍騎は今…。
鎧がボロボロに砕け、ヒビからは大量の出血をして、仰向けに倒れていた。
「竜也くんっ!」
あゆは必死に、倒れた血まみれの龍騎に近づいて抱き起こし、デッキを引き抜く。
「あ…ゆ…」
変身が解けると、もはや身体中が壊れかけた竜也がいる。
口からはおびただしい量の血が流れ、体の至るところは皮膚が裂けて血肉が見えている。
「竜也っ!」
祐一たちも変身を解き、竜也に近づこうとする。
あゆは、自分のダッフルコートが血まみれになる事も気にせずに、竜也を抱きしめる。
「どうして!?どうしてボクを庇ったの!?」
その言葉に、かすれた声で返事をした。
「…おれ…いままで…自分を…犠牲にしてきた…かもしれない…」
「え…?」
「でもね…自分の…命を投げ出すことはしなかった…おれが死んだら…戦う人がいなくなるからって…この世界の人を守れなく…なるからって…」
「訳が分からないよ!?」
やっている事と言っている事が矛盾している。あゆに竜也の思考は理解できなかった。
この時点では。
「だけど…一人のために…初めて自分の命を投げ出した…この世界の全ての人より…君を守りたかったから…。それで…守れた」
竜也にとって自分の命は、人を守るために存在すると考えてきた。だが、あゆの命は世界中の人よりも大切に思えた。
だからこそ、オーディンのエターナルカオスの餌食になるとしても、あゆを庇えた。
大切な…愛する者だから。
「そんな…!ボクなんかのために…!」
涙を流して、竜也を見つめるあゆ。
一方、竜也は虚ろな表情になりつつも、微笑む。
「いいんだ…。初めて…命を…投げ出す事に…戸惑わなかった…」
「やめて…そんなこと…言わないで!」
再びあゆが抱きしめると、竜也の口から嗚咽が漏れるような声が聞こえる。
少し離すと、竜也は泣いていた。
「あぁ…でも…やっぱり死にたくない…あゆと、もっと一緒に生きていたい…ずっと一緒に居たい…」
どうしても、未知の「死」という恐怖が竜也を襲う。そして、なにより独りぼっちに戻ることが怖い。
「竜也くん…!」
「ごめんね…。こんなときだけでも…カッコつけたかったけど…やっぱり死ぬのは嫌だよ…。傍にいて…お願い…」
竜也は子供のように、血だらけの手をあゆの腕にしがみつかせ、泣きじゃくる。
「じゃあ、死なないで!傍にいるから…!ずっとずっと!」
「…がはっ!?」
口から血の塊が吐き出される。
「おい…死ぬなよ…!」「まだ…終わってない!」
「こんなとこで、くたばる奴があるか…!?」「僕等はどうすれば良い!?」
「あゆちゃんを…置いていくの!?」「まだ借りは返しきってない!」
地面を這いながら、祐一たちがそう叫ぶ。
こんなに自分を想ってくれる仲間に恵まれた。
戦ってばかりだから、苦しいとは思っていたが、どこか幸せも噛みしめられた。
遠のく意識の中でも、喜びを感じられた。
「嬉しい…みんな…が…おれに…そう…言ってくれ…て…」
「竜也くんっ!竜也くんっ!」
あゆが泣いている。竜也はそれを見たくなくて、彼女の涙を拭う。
やがて、その手が力なく地面に垂れ下がる。
「竜也くん…?」
ゆっくりと目を閉じ、ゆっくりと最後の呼吸をし、そして停止する。
部外者として生まれ、城戸真司から仮面ライダー龍騎を継ぎ、残酷なほど過酷な運命に翻弄されつつも、大切なモノのために戦い続け、最後はその身を投げ出した龍崎竜也。
彼の命は…
完全に消えた。
「…寝たの?もう…起きてよ…。今はお昼だよ…?どうして…ねぇっ!どうして!?」
揺するが、彼はまったく反応しない。
生命には必ず在る筈の「死」という無情さが、あゆを襲う。
「いや…いやあああああああああああああああああああああぁ!!!!」
あゆは亡骸となった竜也を抱きしめて泣き叫ぶ。
もう…彼には温もりを感じられない。
「別れは済んだか?」「うぐ…!」
それを暫く見届けたオーディンは、あゆの手をつかんで立ち上がらせる。
「オマエ達も準備が出来次第、来い。全てを教えよう」
手を翳すとオーロラが現れ、2人を飲み込んでいった。
残った6人は、竜也の亡骸に近づく。
その場に香里、栞、佐祐理、名雪、真琴、美汐がやってきた。
彼女達は、倒れていた祐一達を支えて、竜也の場所まで連れて行った。
「おまえ…こんなところで死ぬのかよ…!」
ゴッ…!
祐一は竜也の胸を殴る。反応はない。
「竜也…さん?」
栞は、ゆっくりと竜也の前で膝を着く。
「嘘ですよね?…あゆさんを残して死んだんですか!?」
「龍崎君が…まさか…」「こんなことって…」
「信じられないよ…こんなの!」「やだやだ!竜也が死ぬなんて!」
「こんな形で…お別れするつもりだったんですか…?」
彼女達も、竜也の死が受け入れられなかった。それだけ、竜也はこの人々に影響があった。
「ですが、立ち止まるわけにはいかないでしょう?」
ふと、聞き覚えのある声がした。
「あんた…」「香川博士!?」
そう、香川ヒロユキ。背後には仲村ソウイチとNoMenの構成員と思われる青年達が立っている。
ざっと30人ほどだろうか。
仲村は下を俯いて言う。
「本当に残念です。彼のような平和を愛する勇敢な戦士を失った事は、我々にとっても戦力及び、精神面においても、大きなダメージを負うことになりました」
彼にも何らかの変化があったのだろうか…。以前は自分にとっての利害のみでしか見なかったのに。
さらに香川が言う。
「しかし、ここでじっとしていれば、いずれ世界はオーディンの思い通りの世界になってしまう。それだけは避けましょう。彼も…それを望んでいるはずです」
その後、顔を上げて後ろの構成員に宣言する。
「良いですか!これは、この世界の存亡を賭けた最後の戦いです!絶対にこの世界を守るのです!」
『了解!』
構成員達は一斉に返事をして、全員がオルタナティブと同じデッキを構える。
『変身!』
デッキを装填すると、オルタティブに似通い、それよりも、さらに金ラインやマークが省かれて、没個性的になった「オルタナティブ・トルーパー」に変わる。
「オーディンとの戦いは貴方たちに任せます。この世界は、我々NoMenが守り抜きます!」
「「変身!」」
香川と仲村もオルタナティブ・ゼロとオルタナティブに変わり、モンスターの群れに、トルーパー達と共に立ち向かっていった。
その後、少しの間があって…。
祐一が立ち上がり、残されていたオーロラに歩いていく。
「例え強大な相手でも、竜也は諦めない。最後まで立ち向かう。戦ってるのは…おれ達だけじゃない!」
振り向かずに、歩き続ける。
「これから、着いてくる奴は?」
無論、全員だった。
「竜也の願いを…継ぐ」「弔い合戦だ!」「次こそ、決着をつける!」
「僕も…最後まで戦うよ」「これで…あいつに借りを返しきろう」
香里や佐祐理たちも、着いてきた。
「あたし、見届けるから」「わたしも…最後まで!」「せめて、応援くらいは…」
「ふぁいと、だよ!」「ミツルの活躍、期待してるわよ!」
「ここでじっとしてるなんて、人として不出来でしょう?」
彼らは竜也の想いを背負って…。戦い、見守る。
「行くぞ!」
続く…。
次回…。
願うだけでは、満足に共存すらできない
違う、証明してみせる!
人在らざるモノ…「仮面ライダー」
私には、もうオマエ達しか仲間がいない
オマエ達は既に、人間ではないのだ
第50話「Last Regrets」
キャスト
龍崎竜也=仮面ライダー龍騎
月宮あゆ
相沢祐一=仮面ライダーナイト
川澄舞=仮面ライダーファム
北川潤=仮面ライダーライア
美坂香里
美坂栞
久瀬シュウイチ=仮面ライダーゾルダ
倉田佐祐理
水瀬名雪
沢渡真琴
天野美汐
虎水サトル=仮面ライダータイガ
斉藤ミツル=仮面ライダーインペラー
香川ヒロユキ=オルタナティブ・ゼロ
仲村ソウイチ=オルタナティブ
NoMenの構成員=オルタナティブ・トルーパー軍
水瀬秋子
仮面ライダーオーディン