仮面ライダー龍騎 ~EPISODE Kanon~   作:龍騎鯖威武

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第50話 「Last Regrets」

 

 

あゆはオーディンによって、洋館の一室に閉じ込められた。しかし抵抗する気力さえ湧かず、じっと座り込んでいた。

扉の外から、オーディンが話しかける。

「仮面ライダー龍騎カノンサバイブが生まれたことで、オマエ達のいる世界は、破滅の危機から逃れられた」

紅渡達の言っていた「2つの世界が織り交ぜられた象徴」は、仮面ライダー龍騎カノンサバイブそのもの。

『Kanonの世界』の住民である月宮あゆと、『龍騎の異世界』のサバイブ、さらに中核である龍騎と融合した存在が生まれたことにより、融合による世界崩壊は免れたのだ。

「だが…その途端、彼に訪れたのが「死」とは…皮肉だな」

 

オーディンはデッキを引き抜いて変身を解く。

 

部屋の前に複製の2枚のサバイブを置く。王蛇SとリュウガSが使用していたものだ。

「これで4枚。…理想には2枚足りんが、最後のサバイブと「無限のサバイブ」が手中にある今、もう実行に移しても良いだろう。コアミラーさえあれば、彼女からサバイブを弾き出さずとも、エネルギーを使える」

声が若干、若返る。すくなくとも、オーディンだったときのような威厳のある低い声ではなく、寂しげな青年らしい声だった。

 

あゆは部屋の中でつぶやき続けている。

「ごめんね…。ボクを助けてくれたのに…ボクは竜也くんを助けられなかったよ…」

涙が一筋、頬を伝う。

彼女の心にあるのは、竜也が死んだという絶望。そして何より、自分を庇ったことにより死んでしまったという後悔。

「ボク…もうこの世界が…きれいに見えないよ…」

 

秋子がテレビをつけると、臨時ニュースが流れていた。

「世界各地に出没した怪物ですが、ただいま、正体不明の鎧を着た武装集団達と交戦中です!しかし依然、怪物たちがとどまる気配はありません!皆様もはやく…」

「きっと…あの子達なら勝てます」

キャスターに向けていっているのだろうか、優しく諭すような声で呟く。

だが、つぎに頬に手を当てる。

「いいえ…勝つのではなく、守り抜く…でしたね」

そう言って、編集室のパソコンに文章を打ち始めた。

そのタイトルは…。

 

オーロラを超えた祐一達。

「なんだ、ここは…!?」

衝撃を覚えるのも無理はない。目の前には、洋館と鏡のオブジェ以外には何も無い、荒れ果てた世界が広がっていたのだから。

「ここは『龍騎の世界』。そしてオマエ達に続く戦いが始まった場所だ」

その声とともに、誰かが歩いてくる。

黒いコートに身を包み、短髪の冷たい目が特徴の長身の青年。

「だれ…?」

舞が警戒しながら聞く。

その答えは、ポケットからあるものを取り出すという形で返事をした。

「オーディンのデッキ…!」

「これが、私の素顔だ。いや…借り物である以上、素顔ではないな。人間としての姿…と言ったところだろう」

そう、彼は仮面ライダーオーディンだ。

しかし声と口調がアンバランス。そもそも、変身前と変身後で声が変化しているので、どうしても違和感を感じてしまう。

オーディンだった者の言葉に疑問を感じた栞が聞く。

「借り物って…どういうことですか…?」

 

「この青年の名は「秋山蓮」。仮面ライダーナイトとして、城戸真司と最後に戦った相手だ」

 

「今は魂が死して、私が実体を保つために、肉体を使っている。私の意思は此方にある」

そう言って、デッキを少し揺らす。

どうやら、今まで戦ってきたオーディンは、カードデッキに宿っていた意思らしく、人間としての姿は持たないようだ。

「まさか黒幕が、生き物ではなかったとは…といった表情だな」

秋山蓮は、少しだけ悲しそうな声でつぶやく。

「オマエ達のその先入観こそが、私が動く理由となった」

デッキを構えると、辺りに金色の羽が舞い、Vバックルを形成する。

「変身」

バックルに装填すると、金色の羽が秋山蓮を包み込み、仮面ライダーオーディンへと姿を変える。

「総てを教える約束だったな。見るが良い」

そう言って、オーロラを創り出す。

 

そこにはナイトやゾルダ、王蛇にファムなどと言った『龍騎の世界』の仮面ライダー達がいる。

 

「この世界で生まれた仮面ライダーは、13人が願いを叶えるために、最後の一人になるまで殺し合った。その中には城戸真司や秋山蓮、13番目として私もいた。尤も、城戸真司は戦いを止めるために奔走したのだがな」

オーディンの言葉に呼応するかのように、一人、また一人と仮面ライダーが死んでゆく映像が映し出される。

 

「私は…絶対、生き延びて…!」

「俺が…ゲームを面白くしてやったのに…!」

「俺の占いが…やっと…外れる…」

「なッ…!?グガアアアアアアアアアアアアアアァ!」

「何でこうなるんだよ…。俺は…幸せになりたかっただけなのに…」

「こんなことが…こんなことがある筈がない!認めないぞォオオオオオ!」

「香川先生…次は僕…誰…を…」

「ハハハハハハハハハハハ…!ハハハハハハハハハ!」

「俺…なんかライダー同士の戦いが…虚しくなっちゃった」

「真司…しんじぃ…靴の紐くらい…ちゃんと結べよな…」

 

 

「あうぅ…」「うぅっ…」「いやっ…」

名雪や真琴、佐祐理は、その残酷さが辛くなり、つい目をそらした。

「最後には…」

 

 

 

「死ぬなよ…蓮」「お前もな…!」

 

 

 

龍騎とナイトがモンスターの大群に立ち向かい、そして蓮と呼ばれたナイトが絶命していく姿が映し出され、映像は消えた。

「私は戦いから降り、戦うことを拒絶し続けた城戸真司が生き残り、願いを叶える力を手に入れた。だが…」

そう言って、荒れ果てた世界を見やる。

「モンスターによって破壊し尽くされた世界は死んだ。城戸真司は世界の真実に辿り着き「オリジナルの仮面ライダー」となって、全ての世界を守る宿命を背負った。私はオマエ達のいる『Kanonの世界』に辿り着いた」

 

「私の介入により『龍騎の異世界』が生まれて融合した。言うなれば、両親のいない龍崎竜也は私の息子だ」

そして、コアミラーに触れる。

「『Kanonの世界』を、私のいた『龍騎の世界』の様に破滅するようなことがない、理想の世界に…。そのために「総てを修正する」。そして…楽園を築く。これが私の目的、そして全て知っている事だ」

 

「さぁ…始めよう」

その瞬間、神崎邸から3つの光がコアミラーに向かっていき、オーディンの振れている手に伝わっていく。

「…総てを!」

コアミラーが吸収され、オーディンの背の鎧は、蛹の脱皮の様に剥がれ落ち、4つの翼が生える。

オーディンの最終形態。

 

「仮面ライダーオーディンコアサバイブ」

 

「マジかよ…」「オーディンが…サバイブに」

既に絶望的な状況だったのに、さらに絶望に陥れる最強のライダーが現れた…現れてしまった。

勝率は…ほぼ0%だ。

「さて…今度こそ最後の戦いにしようか」

しかし、祐一たちは全く引かなかった。それどころか、今まで以上に闘志を燃やしている。

香里は潤の手を握る。

「潤。負けないでね」

「おう!これが終わったら…」

「デートでしょ?じゃあ、しっかり頑張ってきなさい!」

「潤さんがお兄ちゃんになるの、楽しみにしてます」

佐祐理は手首の傷を隠していたリストバンドを外して、久瀬に渡す。

「わたしの隠し事は、あなたに預けます。だから、絶対に戻ってきてください」

「責任重大ですが…えぇ、任せてください」

名雪はサトルの背中に手を回して、懇願するように呟く。

「サトちゃん。わたし、やっぱり弱いから…サトちゃんが居ないと、強くいれない」

「うん。これからも支え続けるから…待ってて!」

真琴と美汐はミツルと向かい合う。

「ミツル…もう一人は嫌だよ」「真琴も…わたしも信じてます」

「安心しろ、証人付きの婚約があるからな。くたばれないさ。でも…まずは借りを返しきってからだ」

それぞれが大切な人と、戦う前に約束を交わした。

約束は守るために在る。…負けるわけにはいかない。

『変身っ!』

この言葉を、最後の掛け声にするために…。

 

あゆや祐一達のいた『Kanonの世界』に一人の青年が現れる。

オリジナルの仮面ライダーのリーダーである五代雄介だ。

「やっと青空が見えかけてきたのに…」

悲しい顔だった。

「こんな結末は…」

そう呟いて、後ろを振り向く。

 

そこには…。

 

オーディンCSは、ナイト達を見据える。

「ここまで争うことに、私は意味を感じない」

意外な言葉に、ナイト達は立ち止った。

「私の本来の目的は、全ての共存。争いの無い…誰もが共存できる世界。私が約束した世界」

「そんなこと言いながら、おまえはモンスターを使って、人を殺してるだろう!?」

ゾルダがオーディンCSに反論する。

彼は黙ったまま、右手を翳す。

ゴオオオオオオオオオオオォ

「「うおああああああぁ!?」」「あぁっ…!?」

その瞬間、今までよりも強い衝撃波が7人を襲う。

「ただ願うだけでは、満足に共存すらできないのが人間の世界だ。…違うか?」

 

キィィン…!キィィン…!

 

辺りから強い反応が感じられる。それは香里や栞、佐祐理など、仮面ライダーでない者達さえも感じ取る。

反応の主は…オーディンCSだ。

まるで、彼の怒りの様に…。

「これまで、ただ共に在ろうと願った者達が、誰かと違うという理由だけで…どれだけ傷つき命を奪われたのだ?」

「ぐっ…!」「くぅ…」

彼の攻撃から逃れようと、立ち上がろうとするが、ダメージが大きくて適わない。

「ただ共に在りたいと願っていたのに…皆と違うという理由だけで…一体、どれだけの人間が醜い争いを起こしたのだ!?」

「がっ…!ぐあああぁ…!」「祐…一…!」

すぐ目の前にいたナイトの首をつかみ、高く持ち上げる。体のダメージとオーディンCSの力が強すぎるために、離すことができない。

「自分たちと違う他人を蹴落とし、己が持つ欲望を叶えるために生きることが前提にある世界。それが今の人間の世界だ…」

「かはっ…がぁ…」

ナイトの力が抜け、意識が遠のいていく。オーディンCSは少し腕をおろし、顔の近くに持ってくる。

そして、暗示をかけるかのように強く、そして静かに言う。

「私はそれを総て破壊し、生きるためだけの世界を創る…」

 

「楽園だ…!」

 

「ヌゥアアァ!」

そして、ナイトを力一杯投げる。

「うああああぁ!」「祐一っ…!」

地面を転がったナイトを、ファムが必死に近づいて抱き起す。

オーディンCSの言葉に憤りを感じたライアが反論する。

「その為に…何の罪もない人を殺し続けるのか!?」

「その中の誰か一人でも、私の言葉に耳を傾けた者があるのか…?」

一定の距離を取って歩く。インペラーとタイガが構えを取って、攻撃に対応する準備をしている。

「私が動き出すまでの間…一体、誰が私に手を差し伸べた?」

強い語気だったが、どこか悲しみや苦しみも込められている。悲痛に訴えかけるような声。オーディンCSの

「ただ「共に在ろうとする願い」を…誰が聞き入れたのだ!?」

 

「誰一人いなかった…誰一人として…」

 

「それは、おまえが…」「違う!」

インペラーの言葉をオーディンCSは遮る。

「…人は人在らざる者とは、真に分かり合えない。私と人間達がそうだったように!」

「そんなの…おれ達が違うと証明する!」

全員が身体中の痛みに耐えて立ち上がり、オーディンCSに立ち向かっていった。

<SPIN VENT>

タイガとインペラーが同時にデストバイザーとガゼルスタッブで突き刺そうとする。

「オマエ達は一体、何のために戦うのだ?」

ゴオオオオオオオォ!

「たあっ!」「くそっ!」

<SHOOT VENT><GUARD VENT>

衝撃波を避けた2人の後ろから、ギガテクターを装備したゾルダが、ギガキャノンを発砲する。

「ふんっ!」

ズダアアアアアアァ!

「私を倒せば、それでオマエ達の願いは叶うのか?」

ズガアアアアアアアアアアァ!

「ぐぅああああああああああぁ!」

ギガキャノンの弾丸を弾き返し、それ以上の威力の衝撃波がゾルダを襲う。

ギガテクターで防ぐが、その威力は防ぎきれるものではなかった。

<SWING VENT><SWORD VENT>

そしてオーディンCSの死角から、ファムとライアが攻撃を仕掛ける。

「せえええええええええぇい!」「おぉりゃああああああああああああぁ!」

「そこには、全ての人が争わない平穏な暮らしが約束されているのか?」

オーディンが右手を翳した。

「くっ…!」「やべっ!?」

とっさにアドベントカードを引いて、防御の体制をつくる。

<GUARD VENT><COPY VENT>

ゴオオオオオオオオオオオォ!

「くっ…あああああああああああああああぁ!」「うおおおおああああああああああああぁ!?」

防御が意味を成さない。

だが彼に対する一撃を防がなければ、死が待っている。

…竜也のように。

<FINAL VENT>

「キイイイイイイイイィ!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉ!」

ナイトは飛翔斬でオーディンCSに突進する。

だが。

ガガガガガガガガガガ!

「なんだと…!?」

オーディンCSは、片手で一撃を防ぎきった。

「仮に叶ったとして、オマエ達はそこで生きていけると思っているのか?」

ドガアアァ!

「がはっ!」

そのまま振り払われ、壁に叩きつけられる。

 

 

 

「人在らざるもの…「仮面ライダー」になったオマエ達に!」

 

 

 

「甘い!…オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォ!」

ズガアアアアアアアアアアアアアアアアァ!

「がはあああああっ…!」「くっ…うわあああああああああぁ!」

オーディンCSが身体中からエネルギー波を出して、ナイト達を攻撃する。

全く歯が立たない。

香里達にも、その絶望は伝わってきた。

「そんな…!」「ここまで戦っても…勝てないのですか!?」

「負けては…負けてはいけません!」「お願い…神様…!」

「あうぅっ…!絶対に勝ってよぉ!」「こんな…こんな酷なこと…!」

倒れ伏した6人のライダー。その姿は既に人間の姿に戻っている。

「ちくしょおっ…!」「負け…ない…!」「なにも…何も出来ないのかよぉ!?」

「ここまで来て…!」「みんなが待ってるのに…!」「こんなところで…!」

もう立ち上がることは出来ない。身体中の傷や疲労、痛みがそれを許さない。

彼らが抵抗できないと分かったオーディンCSはゆっくりと歩き、彼らを諭すように淡々と話す。

ただ、その語気は未だに強い。

「人が人であり続ける限り、人にとって、真に共存できる世界は生まれない。それを人間自身が明らかにしているではないか…!」

遠くを一度見て、再び祐一達を見つめる。

睨むのではなく。

「オマエ達にとって、自らが「善」なのか?私が「悪」なのか!?」

オーディンCSの言葉は、現実として説得力を持って、祐一達の胸に突き刺さる。

対照的に、オーディンCSは手を差し出す。

 

「私と共に戦え…私と共に、この世界を創り直すのだ!」

 

その次の言葉は、どこか寂しそうな声だった。

「…私にはもう、オマエ達しか仲間がいない」

それでも、彼の言葉に賛同は出来ない。

「無理だ…!おまえの考えは…ただの独り善がりだ!」

祐一の言葉を無視したかのように、オーディンCSは続ける。

「忘れるな…どう足掻こうとも、デッキを手にした時点で…」

 

 

 

「オマエ達は既に人間ではないのだ」

 

 

 

 

 

 

 

続く…。

 

 

 

 

 

次回…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最終話「仮面ライダー龍騎」

 

 

 

 

戦わなければ、生き残れない…!

 








キャスト

月宮あゆ

相沢祐一=仮面ライダーナイト
川澄舞=仮面ライダーファム

北川潤=仮面ライダーライア
美坂香里
美坂栞

久瀬シュウイチ=仮面ライダーゾルダ
倉田佐祐理

水瀬名雪
沢渡真琴
天野美汐
虎水サトル=仮面ライダータイガ
斉藤ミツル=仮面ライダーインペラー

水瀬秋子

五代雄介=仮面ライダークウガ アルティメットフォーム

秋山蓮≠仮面ライダーオーディン




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